しょしたい!   作:ヨイヤサ・リングマスター

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第58話:ラージャ

 

 ミギンマルside

 

 

 

 

『ラージャ!』

 

 

 そう言って儂は無線機の連絡を切った。

 

 年のせいか、出歩くのがすっかり面倒になった儂は、普段はアリーナの地下に作られた儂専用の部屋に閉じこもっているのだが、今回のように依頼が来れば動くこともある。

 

 まぁ、モンスターの儂が、会話が出来るのはシャルラなんだがな。

 

 

「シャルラさんからですか?」

 

 

「あぁ、概ねシャルラ嬢ちゃんの計画通りに事が運んでいるそうだ」

 

 

 おっと、久し振りの連中に自己紹介をすると、儂はこのドンドルマの街にてアリーナの元チャンピオンだったミギンマルという、ただの最強のラージャンをしているものだ。

 

 

「ぷくくくくw

 それにしてもラージャンだから『ラージャ!』だなんて、さすがはミギンマルさんですね。

 ギャグセンスありすぎですよ。グー♪」

 

 

 ちなみに今のつまらんボケに嬉しそうに笑っているのが儂を倒し、今やアリーナの新チャンピオンとして最強の座を守り続けている種族(一応)イビル・ジョーのリッキーだ。

 

 笑いのツボがいまいち分かりにくい奴なんだが、それでも戦闘狂の儂を楽しませる強者であるところは評価している。

 

 

「さて、シャルラが言うには、この街のどこかに爆弾が仕掛けられているらしく、それを止めないと五分後に街がパーンと爆発しちまうらしいぞ」

 

 

「ふーん、でもあまり焦ってないところを見るとミギンマルさんには爆弾が爆発する前に止める方法があるんですよね?」

 

 

「勿論だ。この街全てを破壊させるとなれば地下にでかい爆弾を隠すというのが定石だ。

 しかもこの街は山のような地形に上へ上へと建物を造っていく構造になっているから街の地下は空洞が幾つもある。

 とまぁ、散々街の構造について説明したわけなんだが。

 ……実はその爆弾ってのが今この場所にあるんだわ」

 

 

 儂は部屋の隅に置かれていた物体にかかっていた布を捲る。

 

 するとそこには直径一メートルはあろうかという巨大な爆弾があった。

 

 いや、持ってきたのは儂なんだがな。

 

 

「以前散歩がてら、この部屋の壁に穴を開けてドンドルマの地下探索に出歩いていた時に見つけたんだ。

 なんか面白そうだと思ってこの部屋に持って帰って来たんだが……まさかここでこの爆弾の存在理由を知ることになろうとはな」

 

 

「いやいやいや、爆弾なんて危なっかしいもの、よく自分の部屋に持って帰ろうと思いましたね?」

 

 

「あん? んなモン怖がってたら最強らしくないじゃねぇか。

 部屋のインテリアにちょうどいいし。

 それに儂だけでなく、おめーも爆弾位じゃ死なねぇだろ? リッキー」

 

 

「まぁ、そうですけどね……」

 

 

 っと、そんな事よりも速いところ解体しないとな。

 

 シャルラがわざわざ言ってきたのは、爆発されると面倒だからだろうし。

 

 

「そんじゃ早速解体しようと思うんだが……これどうやって解体するんだ?」

 

 

「え? シャルラさんから爆弾を何とかするように依頼を受けといて解体方法を知らないんですか?」

 

 

「知らん。ぶっちゃけ知る必要がない知識は覚えない主義でな。

 もう、この、バラバラに切り刻んじまえば爆発しないんじゃねぇのか?」

 

 

 こう、携帯電話のストラップやピアスをたくさん付けた顔面刺青の殺人鬼のごとく。

 

 

「いやいやいや、衝撃で爆発するタイプだったらヤバいですよ!

 というか爆弾は大抵、衝撃で爆発しますし」

 

 

 ったく、うっせーなぁ。

 

 シャルラの奴はもう少し大胆な考えをしてたってのに、リッキーは臆病すぎるぞ。

 

 

「そんじゃ、爆弾共通の欠点である『水で濡らす』って方法はあるが……ここには水がないな」

 

 

「あ、僕上から持ってきますね。

 ちょっと待っててください」

 

 

「あ、おい!」

 

 

 行っちまった。

 

 それじゃここらで適当な話でもしてみるか。

 

 あれはまだ儂がアリーナに来る前のことだ。

 

 儂が道を歩いているとな、こう、正面から赤い洗面器を頭に乗せた男が歩いて来たんだがな……。

 

 

「ただ今帰ってきました~♪」

 

 

「はやっ!

 というかリッキー、それがおめーにとっての水なのか?」

 

 

 話の腰を折られた。もう話す気がしないから詳しくは自分で検索してくれ。

 

 なぜなら儂はすでにリッキーの連れてきた者を見て目を疑っちまったからだ。

 

 水を持ってくると言っておいて連れてきたのが……ダイミョウザザミなんだもんな。

 

 

「始めましてミギンマルさん。

 なんだか爆弾の解体作業をするから来い、と言われてやってきましたダイミョウザザミッス!

 以後よろしくお願いします♪」

 

 

「いや、終わりが近づいた物語は後半にかけて新キャララッシュするもんだが、お前はこれ以上出番ないと思うぜ」

 

 

 というか名前が『ダイミョウザザミッス』とは随分と手抜きな名前だなぁ、おい。

 

 

「とりあえず爆弾を濡らせばいいんですよね?

 それじゃ早速」

 

 

 止める間もなく爆弾にダイミョウザザミの固有技、泡ブレスを吹き掛けやがった。

 

 ダイミョウザザミの泡ブレスは爆弾を濡らすだけではなく、ブレスと名の付く通り、爆弾を起爆させちまうってのにこいつはアホか!?

 

 と思っていたらリッキーの奴が、

 

 

「あぁ、大丈夫ですよ。ミギンマルさん。

 僕の龍属性ブレスを応用した『ブレスアーマーAT(アナザータイプ)』を使って爆発の被害を一切外に出さないようにしましたので」

 

 

「なら最初からそうしとけよ!

 それに、それならダイミョウザザミなんてわざわざ連れてくんな!」

 

 

 まぁ、俺達、爆弾解体班はこんなことをしていたってわけさ。

 

 

 

 

 ロンside

 

 

 ふはははは! すでに私は地下の用水路を伝うことで、ドンドルマの街から遠く離れた場所に来たぞ。

 

 これであとは街が吹き飛ぶのを待って、生き残りを何人かまとめて再び書士隊長らしい行動を見せつければドンドルマの街以外にいる貴族や王族の人脈を利用して返り咲くことも可能だ!

 

 人生バラ色、今日と言う日も、いつかは『こんなこともあったな~』と思い出せる日が来るのかもしれないな。

 

 うむ、これも私の平穏な人生における数少ない冒険譚として脚色したらまた本として出版しよう。

 

 残念ながら、書士隊長室に置いてあるコレクションである『キリン娘グッズ』も消えてしまうが予備として大陸各地にある私の別荘に幾つも保存してあるから良しとするか。

 

 ふふふ、最後の最後であのシャルラ・アーサーを出し抜いてやったとはさすがは私だ。

 

 ふはーはははははははは!

 

 

ゴウッ

 

 

 その時何かが上空を横切った。

 

 

ドシンッ

 

 

 その時何かが目の前に降り立った。

 

 

『あんたが私の娘を殺そうとした人間か。

 なんともまぁ、貧相な面をしているじゃないの』

 

 

「…………」

 

 

 目の前に降り立ったのは自然災害と同義の存在。

 

 見た者に生きることを諦めさせてしまう『死』そのものの存在。

 

 その名はクシャルダオラ……

 

 

『人間のあんたに言葉が通じるとは思えないが一応説明しておくわよ。

 主に読者に向けてだけど。

 そして面倒だから詳しい説明は次話あたりで娘が語るから私個人の意見を短く言うだけになるけど……。

 

 あんた邪魔なのよ』

 

 

 そして再びゴウッ、っと。

 

 風のブレスが何の前動作もなく私に向って放たれ、私の体は空高く舞い上がる。

 

 

「ぐぉぉぉぉぉぉー!!!」

 

 

 身動きの取れない空中に投げ出された私をクシャルダオラは器用にその前脚で掴むとさらに上空へと飛びあがる。

 

 

『別に殺しはしないさ。

 この作品はギャグであり百合である作品。

 ハッピーエンドを目指しているんだから人死になんて御免だからね』

 

 

 何か言っているが私を殺す気はないようだ。

 

 どうにか隙を作って脱出を試みなければ……

 

 

『そうだ、確か古塔でミラルーツの奴が使用人を欲しがっていたね。

 人間は器用だし頭もいいからあの子に渡すというのも悪くない……いや、いい♪』

 

 

 私にはモンスターの言葉は分からない、だがたった一つだけ分かることがある。

 

 それはこのクシャルダオラが私を逃がす気はないという事実だけだった……。




 この作品を描こうと思ったきっかけでもあるゲーム『マール王国の人形姫』に出てくるゴロンゾという意地悪で利己的で最後は自らの欲望で身を滅ぼしたオチ担当のキャラがギュスターブ・ロンと重なってしまったのですよw

 爆弾についても、カプコンですし「ラスダンは崩壊、または大爆発の法則」に従ってドンドルマの街完全崩壊エンドでも良かったんですけどね。

 ドンドルマは拠点であってラスダンではない、というのもありますが。

 シャルラ以外にも「気合」の一言で爆弾の爆発にも、降りかかる瓦礫にも怪我ひとつなく済みそうな人が多い気がしたのでやめました。
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