しょしたい!   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 この作品のタイトルですが、これまで私の作品のタイトルは毎度『○○の○○』と言った風で、マンネリに感じていたんですよね。

 かと言ってアルファベットのみの英語のタイトルとかだと検索する時に打ち込むのが面倒だったりスペルを忘れたりする。

 結構考えた末にこれまで使っていなかった割とポピュラーな平仮名のタイトルに決まったのですよ。説明する必要が全く無い製作秘話ですけど。



第六話:課外授業

「ではこれより課外授業を行う!!!」

 

 

『おぉぉぉぉー!』

 

 

 ハリー先生の大きな声が狩り場に響き渡る。

 

 はい、班決めも終わりいきなりの展開ですが狩り場に出向くこととなった私たちシャルラ班(なぜか多数決で私が班長になりました)。

 

 現在『孤島』と呼ばれる狩り場に来ています。

 

 事前にハンターズギルドの調査で危険な大型モンスターはいないとのことですが各班にはそれぞれG級ハンターの護衛が一人ずつ付いていますので万が一が起きても大丈夫でしょう。

 

 ハンターが五人で活動するのは問題でしょうが私たちは将来を期待されている学者としてこの場に来ているので問題ないですし。

 

 

「それにしてもわざわざ学生の授業のためにG級ハンターを雇ってくれるなんて学院の上層部も太っ腹ね」

 

 

「それは僕のような超絶素敵な美男子が万が一にも死ぬようなことがあっては世界の損失だからだね」

 

 

「けどよー、俺達の班の護衛担当が担任のハリー先生っつーのは普段と変わり映えしねえから面白くねぇけどな」

 

 

「皆さん! 確かにハリー先生が護衛だなんて面白くないかもしれませんがもっと気合を入れてください。

 狩り場では一瞬でも気を抜いたら死んでしまうのですよっ」

 

 

 一応リーダーらしいことを言っておきます。

 

 もし何かあった時に『なぜ事前に注意を促さなかった!?』とか言われても困りますからね。

 

 リーダーたる者もしも何かあった時に責任逃れをするための言い訳の一つや二つ用意しておかないといけませんからね。

 

 

「お前たちぃぃぃ~↑

 ちょぉぉ~っと気を抜きすぎなんじゃないのかぁ!?」

 

 

「ハリー先生ももっと言ってあげてください。

 私は真面目に注意してるんですけどねぇ(チラッ)」

 

 

「シャルラ~。吾輩の前でそんなに真面目ぶらなくともお前の考えはお見通しだ。てやんでぃ!」

 

 

 ちっ、さすがはお父さんの友人のハリー先生だわ。

 

 みんなが気を抜いていることを利用して自分だけは真面目っぽく振る舞うことで『私の評価を相対的に上げよう作戦』をあっさり見抜くなんて。

 

 

「そんな事よりぃもっ!

 今日の目的である学者の基本その一、アイテムの採取&調合をさっさとこなすのだ。

 あと余った時間は課題でもある狩り場の絵を描いたり、持ってきた図鑑の挿絵と実物を見比べて図鑑がなくとも薬や食用になる植物などをなるべく多く覚えるのだぞ」

 

 

「はい先生♪」

 

 

 とりあえず笑顔で肯いておく。

 

 ハリー先生には効果は薄いけど私の笑顔は大抵の人には効果抜群なのよね。

 

 

「おーいハリー先生。質問があるんだけどよ~」

 

 

「なんだねダイヤージ」

 

 

 むっ、早速行動を始めたダイヤージ君。

 

 私も何かしないといけないですね。

 

 とりあえずその辺に落ちている石ころでも採取してスケッチでもしときましょうか。

 

 狩り場の風景をスケッチするのも学院を卒業して学者に実際になって狩り場に出向くことの多い書士隊に配属されたりなんかしたら絵の技術はいりますからね。

 

 対象をよく見て、描く! そして完成私の絵!!

 

 

 題:『地面』。

 

 

「うん、よく描けたわ。さすがは私。

 我ながら地面を歩く虫や石ころの様子が上手く描けてる♪」

 

 

「いやいや、地面の絵を描いたところであとで提出する時に手抜きって言われるんじゃないの?」

 

 

「む、そういうノレッジちゃんはどういう絵を描いたんですか?」

 

 

「私? 私が描いた絵はこれよ♪」

 

 

 ノレッジちゃんの紙には空が描いていました。

 

 題:『空』

 

 色は紙一面青一色。雲も太陽も書かれていません。

 

 

「って、私よりも手抜きじゃないですかぁー!

 そんなので、よくも私の絵を馬鹿に出来たものですねー!」

 

 

「私の絵は芸術的センスにあふれているのよ。

 具体的には感性、みたいな? とにかくそういうセンスが凄いのよ。

 というかそれでごり押しするからいいのよ」

 

 

 何とも大胆な考え方。

 

 しかしこれをごり押しするってどうやればハリー先生に認められるんでしょうか?

 

 

「ダイヤージ君はどう?」

 

 

「俺は紳士として手を抜くことはしねぇよ。

 見ろ! この『イビル・ジョー』の絵を!

 やっぱ本物を目の前にして描くとよー、すっげぇリアルに描けるんだよな」

 

 

「え? 本物を見ながら?」

 

 

 ノレッジちゃんと私の視線が交差する。

 

 

『グォォォォォォォー!』

 

 

「イビル・ジョーがいるぅぅ-!?

 いやそんな訳がない! これは幻よ!」

 

 

「そうですね。これは幻です……ってなんでですかー。

 ノレッジちゃんしっかり現実を見ないと駄目ですよ」

 

 

 しかしこれほどの超危険モンスターがいるのならば付添いのG級ハンターに任せて学生の私達は逃げるのが無難なんでしょうね。

 

 でも私たちの班の担当って……

 

 

「はーっはっはっはぁー!

 この古龍キリンの討伐を成し遂げた経験豊富な吾輩、トレジャーハンターのハリーがこいつを押さえつける。

 シャルラ! 班員を連れて今すぐベースキャンプまで退避。

 それと同時にベースキャンプにいるほかのハンターにも救援要請を出すのだ!」

 

 

「ハリー先生! 俺も手伝うぜ。

 ここで女子を逃がすために足止めに専念する俺ってよぉ、最高にグレートじゃね?」

 

 

「うむ、実にグレートだぞダイヤージ!

 むしろパーフェクトと言っても過言ではないな。

 我ら二人の力をあのイビル・ジョーに見せてやろうではないか!」

 

 

 まったくなんて事でしょう。安全なはずの課外授業がいきなり危険極まりない生か死かのバトル展開に突入だなんて……

 

 それにダイヤージ君は武器も持っていないのに素手で戦うのでしょうか?

 

 この物語は狩り要素のない安全、楽しい、ハッピーエンドな展開が売りなのにこれじゃあいけませんね。

 

 

「なぁに、吾輩のことなら心配するな。

 シャルラだけでなく吾輩にとって生徒とは命を賭しても守りたい愛すべき存在なのだからこれくらい当然だ!

 それに今週末にキリン娘愛好社より発売の『週刊キリン娘』の最新号をまだ読んでいないのだ。

 最新号はかつてのキリン娘愛好会の初代会長ハターン・モンスータ氏のコメントが掲載されるそうだから絶対に死ねないのだ!」

 

 

 いやいや、カッコいい笑顔で言ってもカッコ良くないですよ?

 

 前半の内容が後半のセリフで台無しになっちゃってるじゃないですか。

 

 

「シャルラちゃんとりあえずここはハリー先生に任せて私たちは避難しましょ!

 あわあわあわあわ!!」

 

 

「はぁ~。ノレッジちゃん落ち着いてください。

 ほら、私の水筒あげますからシャル茶でもどうぞ」

 

 

「ありがとう……って名前からしてそんな怪しげなお茶飲めるかぁー!

 わざわざ持って来たんかいっ!?」

 

 

「いえ冗談です。

 水筒の中身はお茶ではなく『すいとん』ですので。

 まぁ、冗談はさて置いといて。とりあえず私あの子と話をつけてきますね」

 

 

 実はモンスターと人間のハーフの私は人語もモンスター語も両方仕えるバイリンガル美少女だったのです。

 

 なのであのイビル・ジョーも説得すれば帰ってもらえるのでは? という作戦なわけです。

 

 見たところジョーにしては体も小さいしまだ子どもなのでしょう。

 

 

『ハローハロー、私の言うこと分かりますかー?』

 

 

 モンスター語で会話を試みてみる。

 

 

『ん? 君は人間……ではなくハーフなんだね』

 

 

『よかった通じるみたいですね。

 で、ちょっと君に頼みがあるんだけどここでいま暴れるのはやめてくれませんか?

 私たちここで色々とすることがあるから今君みたいな大型モンスターに狩り場に出てこられると困るんですよ』

 

 

「おい、シャルラ。何を言ってるんだ?」

 

 

「ハリー先生は黙っていてください。

 私の固有スキルでイビル・ジョーには戦わずに帰ってもらおうと説得してるところなんですから」

 

 

 ちなみにモンスター語は人間には聞きなれない言語なはずです。

 

 

『邪魔が入りましたが私の要件はこれだけです。

 すぐにどこかに行ってもらえないでしょうか?』

 

 

『うん、それはいいんだけどさ。

 イビル・ジョーって種族は生まれつき体温が高くないと生きていけないんだけど僕お腹が空いちゃってるんだ。

 早い所何か食べないと死んじゃうんから人気のない場所には移動するけどこの狩り場自体からはしばらく移動出来ないよ』

 

 

 そういえばイビル・ジョーは高い体温を維持するために常に何かを食べ続けてないといけないんでしたね。

 

 私はお母さんの影響から『冷やす』のはある程度できますが温度を上げるというのは難しいですからね。

 

 ……でも待って。

 

 もしかしたらこの子、アレに利用できるかもしれませんね(ニヤリ)

 

 

『ちょっと提案なんだけどさ。

 あなたの体温ってあとどれくらいの時間食べなかったら死んじゃうの?』

 

 

『うーん、正確には分からないけどあと3時間以内に何でもいいから口に入れないと体温が下がって死んじゃうと思う。

 すでに自食作用(オートファジー)が発動しちゃってるし』

 

 

 これはチャンスね。あと3時間もあれば十分だわ。

 

 

『ならばあなた。私の友達にならない?』

 

 

 ちょうど街で暮らすのにモンスターの友達(・・)が欲しかったのよね。

 

 課外授業もこれからも何度かあるでしょうし、狩り場への足代わりになる大型モンスターというのもいいですね。

 

 

『私の友達になったらドンドルマの街でお腹いっぱいご飯を食べられるよ。

 おまけに無駄に人間から命を狙われる心配もいらないけど。

 どう? 私の友達にならない?』

 

 

『食べるのに困らないならこちらからお願いしたいくらいだよ♪

 ここに来る前も人間たちからモンスターというだけで襲われたし君がいるなら人間を襲わなくて済むもんね』

 

 

 あら、どうやらこの子けっこう大人しい性格のようですね。

 

 イビル・ジョーは総じて好戦的で食事こそ至上の喜びとし、その副次的効果として戦闘行為自体も楽しんでいる節があると考えてきたのですがこの事を調べていけばモンスター生態学に新たな発見があるかもしれませんね。

 

 

『分かったわ。それじゃあこれからよろしくね。

 ……えーと、あなた名前ってある?』

 

 

 

『僕の名前はリッキーっていうんだ。

 ママがつけてくれた立派な名前だよ♪』

 

 

 なかなかに素直で可愛らしい子じゃない。

 

 この子となら仲良くやっていけそうな気がするです。

 

 

「あー、ハリー先生。

 見ての通り説得は終了しました。この子はもう襲ってきませんので私の友達として連れて帰りたいと思うのですがいいですか?」

 

 

 あら? 先生ったら顎を大きく開いて固まっちゃってますね。

 

 モンスターと会話したくらいでそんなに驚くことかしら。

 

 とにかくこれで私は野望へとまた一歩近づいた気がするです。(野望については今はまだ秘密ですよ♪)

 

 初めての課外授業はこんな感じで幕を閉じたのでした。チャンチャン♪

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