俺の前に現れたのは、深海棲艦の中で特に注意すべきとされている最重要標的の内の三体。
離島棲鬼、戦艦水鬼、そして空母水鬼。
向こうもこちらの存在に気付き、じっと見つめている。
『………ン?』
戦艦水鬼が何かに気付いたようだ。
『…アヤツ…人間デハナイカ?』
『エッ…イヤイヤソンナバカナ…』
ようやく気付いたのかお前等。
ことごとく艦娘を海に沈めさせたのに、艦娘の特徴すら忘れているのか。
『イヤ…確カニ人間ダ。ヤツガ持ッテイル武器ハ、艦娘ノ艤装トハ全ク違ウ』
『……確カニソウネ、戦艦水鬼。デモ…ドウシテ人間ナンカガココニ?』
『…艦娘デモナイ人間ガ、我々ヲ圧倒シテイルノモ、オカシイデス』
…何やら話し込んでいる。俺の正体でも探っているんだろうか。無駄だとは思うが。
「…先手必勝!!」
その隙に、俺はフォトンアーツ「ハトウリンドウ」を三人に向け放つ。
鞘に収まっていたカタナを一気に上へ振りかざす。すると、カタナから藍色の衝撃波が繰り出され、波を巻き込みながら、三人へ迫っていく。
途中随伴艦である、駆逐艦や軽巡洋艦が三人をかばうが、衝撃波の勢いを止める事はできず、勢いを失わないまま突き進んだ。
『…フン!!』
「なっ!?」
このフォトンアーツは、衝撃波が放たれてから遠くに行けば行くほど威力が上がる。途中誰かが邪魔をしてきても基本勢いは失う事は無く、ある程度のところで自然に衝撃波は消える。
しかし、戦艦水鬼はそれを自身の艤装でかき消した。
『……不思議ナ技ダ…。ダガソノ程度カ…?』
『グォァァァァァアアアア!!!!』
戦艦水鬼にまとわりつく怪物は、俺に向けて凄まじい咆哮を見せつけた。
戦艦水鬼の艤装は、まるで二次元に出てくるかのような、おぞましい化け物の姿をしている。巨大な口に、装備者以上の躯体には、多くの砲台が並んでいる。あれらをまともに食らったらひとたまりもない。
『…デハ、今度ハコチラカライカセテモライマスヨ』
『主砲…斉射…クタバレェ!!』
お返しに、向こうは三人同時にこちらに攻撃してきた。
戦艦水鬼は主砲全てをこちらに向け斉射。残る二人は白い球のような艦載機を飛ばす。
「…お前らもその程度か?」
迫りくる砲弾を、俺はカタナで弾き飛ばす。
弾かれた砲弾は全て艦載機に命中、全滅した。
『ナッ!?』
『ア…アリエナイ…』
「俺を倒すならもっと速い弾を出すんだな」
もっと強いものかと思っていたが、案外そうでもない。艦載機に関しては尚更で、立体的に戦闘を行うアークスにとって艦載機の攻撃は大して脅威ではない。ランチャーを用いれば艦載機など一斉に撃破できる。
問題なのが戦艦水鬼だ。どういう構造になっているかさっぱりなあの艤装もどきの化け物。ダーカーに侵食されていると考えても、とても似つかわしくない姿だ。一体何をどうしたらあんな風になるのやら。
『…タ級!』
「くっ!?」
右から誰かが俺に殴りかかってきた。拳をカタナで止めるが、素手なのにまるで金属で擦りあっている音がする。
殴りかかってきたのは戦艦タ級だった。
「邪魔…だっ!」
物凄い力で俺を押し倒そうとするが、何とかそれを弾き、反動でタ級が仰け反る。
その一瞬の隙を逃さず、俺はタ級の身体を一閃。タ級は爆発し、海へ沈んだ。
「…やっぱ数が多すぎるな…」
今俺は四面楚歌の状態。いくら敵の大将を翻弄できたとしても、この大艦隊にはまだまだ強い個体はいるし、数も前回の比ではないほど多い。
「…クラス、レンジャー、バウンサー」
とりあえず、様子を見よう。やはりはレ級の時のように、何も考えずに突撃するには少し場が悪い。周囲の敵も、ランチャーで足止めをしつつ、時間を稼ぎながら対策を練ろう。
向こうも、最初は囮を使って逃げようとしていた。戦いはなるべく避けたいのだろう。
俺は手に「シューティングドライブ」と呼ばれるランチャーを手にし、一人敵陣の中で戦い続けた。
***
あなたはいつもそう。勝手に一人になって、孤軍奮闘してる。
私はそれを後ろから見ている事しかできなかった。
『提督、出撃の準備が完了しました』
「分かったわ」
けど、今はもう違う。彼女達…艦娘達と一緒にあなたを守る。
「…第一主力艦隊、出撃せよ!」
呉の軍港から、六人の艦娘が、勢いよく飛び出した。