もし提督がアークスだったら   作:rufus

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12.宇宙人、食す

「ふう…やっと追いついたな…。怪我はないか?榛名」

「た、助かりました…呉の皆さん、ありがとうございます!」

 

 俺たちのそばに駆け寄ってきたのは、巨大な艤装を装備した四人の艦娘。

 呉第一艦隊。彼女らが呉鎮守府に所属する、主力艦隊のメンバー。

 艤装の大きさのせいでもあるかと思うが、どこかたくましさや勇ましさを彼女達から感じた。

 呉艦隊の一人が、俺の存在に気付き話しかける。

 

「あら?そちらの方は……」

「…自己紹介は後だ、来るぞ」

 

 援軍が来てくれたのは、とてもありがたかった。榛名も間一髪のところで助かった。

 だが、脅威が完全に消し去ったわけじゃない。

 

『キサマァァァァアアアアア!!!!』

 

 水飛沫が立ち込める前方から、戦艦水鬼が飛び出してきた。やはり最重要標的、不意打ちなどでは沈まないようだ。

 そして先ほどとは違い、自身の身体を怒りに任せているかのようだった。

 化け物は倒され戦力は落とされるわ、奇襲をかけられあわや死にかけるわ、まさに踏んだり蹴ったり。相当頭に血がのぼっていたのだろう。

 

「…武蔵!」

「承知!」

 

 戦艦水鬼に立ち向かうは、二人の艦娘。確か…長門と武蔵だったか…。

 タンカー護衛中に霧島から聞いたが、艦娘の中でもその二人だけは特に突出した武闘派だと聞いた。何がどう突出しているかは知らないが、かなり強いって事なんだろうきっと。

 

『沈メェェェエエ!!』

 

 勢いをそのままに、二人に殴りかかろうとする戦艦水鬼。

 一方呉の二人も、戦艦水鬼に接近する。敵のそばから砲撃して確実に沈めようという魂胆だろう。

 榛名のようにならなければいいが…。

 

「はぁぁああ!!」

「沈むのは貴様だっ!!」

 

 

 ガゴォォン!!

 

 

 …ん?これは砲撃の音じゃないような…

 

「うおわぁっ!?」

 

 直後、前方から凄まじい衝撃波に襲われた。あまりに突然の出来事に、身体のバランスを思いっきり崩し吹っ飛ばされる。

 態勢を立て直そうとジェットブーツの出力を上げるが間に合わず、そのまま海へ落ちた。

 

「て、提督!!大丈夫ですか!?」

「…ぶはぁっ!!なんだありゃ!?」

 

 海から顔を出して、三人が戦っている方に目をやると、何故かそこでは肉弾戦が繰り広げられていた。

 

「は、榛名…あれは何なんだ…?砲撃しないのか…?」

「あのお二方は砲撃戦よりも白兵戦を得意としてて…いつも深海棲艦と対峙する時はああいう戦い方をするんです」

「…武器は拳だけどな…」

 

 かなりの武闘派として突出していると聞いていたが、こういう事だったのか…。

 拳で敵艦を沈める武闘派。巨大な艤装を装備しているにも関わらず、二人は涼しい顔でバク転したり、ありえない高さまで跳んだり、もう「漢」娘と言った方がいいんじゃないんだろうか。

 

「大和ぉ!!陸奥ぅ!!ここは我々が引き受ける!今の内に能代達と合流しろ!!」

「はーい。了解したわ」

「私について来てください。他の鎮守府からも援軍が来ているので、そちらと合流しましょう」

 

***

 

 大和に促されるまま、殴り合う三人を置いて戦闘海域から脱出した。

 その途中、大和からこれまでの経緯の説明をされた。

 

 四国沖に深海棲艦が集結しているのは、タンカーが出発する前にはもう判明していた。また、敵の目的も当海域を通過するタンカーではないか、との予想が立っていた。

 しかし、タンカーの出発点である沖縄沖の油田発掘施設では、通信関連の整備はまだ完成しておらず、それを知っていた呉の面々は横須賀に連絡を取ろうと思ったが提督が不在。八方塞がりだったので、近隣の鎮守府と連携して急遽連合艦隊を結成。敵艦隊を撃滅することとなった。

 

「ってことは今飛んでるあの艦載機は佐世保の?」

「そうですね。タンカー付近は、佐世保の方々の航空力で安全の確保をしています」

「舞鶴と呉は敵の主力を叩くため、敵の本陣に突っ込んでるわよ」

 

 上空でタンカーの周りを行ったり来たりしている艦載機。あれは佐世保の艦娘のものだろう。ここに横須賀のあいつらはいないので、必然的にそうなる。

 後方に見える敵の本陣からは、幾度となく砲撃の音が響く。あれも他の鎮守府の艦娘のものだ。

 即席で作られた連合艦隊なのにこの連携っぷり。流石としか言いようがない。アークスではまずありえないことだ。

 

「しかしすまなかったな…。俺が鎮守府に残っていれば出発させずに済んだのに…」

「そうお気になさらず…。あなたが敵の数を減らしてくれたおかげで、舞鶴の方々への負担が減りましたし、戦艦水鬼の戦力も著しく減らしていただいて…」

「あの化け物を倒すなんて私達でもできなかったのに…。なかなかやるわね」

 

 …ん?

 俺が提督ってこと知ってる…?

 

「…なぁ、陸奥と大和と言ったか。俺の正体知ってるのか?」

「え…あぁ、はい。横須賀の提督であり、アークスの方、ですよね。事情は全て耳に入っています」

「最も、それ知ってるの呉と横須賀の面々だけなんだけどね…。他のとこにはどう伝えたらいいかしら…」

 

 なんだ、もう知ってたのか。

 上層部が適当に漏らしたんだろう。他の鎮守府に知られてないのは、着任して間もないし、仕方ないな。

 …大和が少し動揺したのが引っかかるが。

 

 数分後、ひたすら南へ航行しているとようやく護衛対象のタンカーが見えてきた。

 周囲には艦載機による厳重な防衛網が張られている。

 

「榛名!!」

「榛名さぁぁん!」

 

 近付くと、タンカーに乗っていた横須賀の面々がこちらに気付き、ものすごいスピードで近付いてきた。

 …榛名のもとへ。

 

「ちょ、ちょっと榛名!?主砲ボロボロじゃないですか!?」

「え、えぇ。主砲はめちゃくちゃになっちゃったけど、機関部は大丈夫ですよ」

「よかったー…。いきなり一人で飛び出していくもんだから心配したよー」

「心配かけてすみませんでした…。榛名は大丈夫です!」

 

 ボロボロになった艤装を心配しつつ、安堵の表情を浮かべる横須賀の面々。

 榛名はそれに笑顔で応える。

 榛名が今ここで仲間とまた会えたのも、呉の艦娘が助太刀に来てくれたからだ。改めてお礼をしなくてはな。

 

 

「あ、司令もおかえりなさい。タンカーで休んでていいですよ」

 

 と、穏やかな気持ちだったのだが、同時に胸に何かが来る。

 笑顔で霧島は気遣ってくれるが、明らかに対応の差が歴然である。

 

「司令官ー、まだ最重要標的倒していないみたいだから少し休んだらまた行ってねー」

「えっちょ長良…」

「榛名さんもタンカーへ上がってきてください!お昼一緒に食べましょ!」

 

 心配する必要もないというのは分かるが、こうも対応が違うと胸に鈍痛が…。

 

「…信頼、されてるんですね」

「同情はしないでくれ大和…」

 

 もはや皮肉でしかないぞ…大和…。

 

 

「おうおう、随分派手にやられたみたいやなぁ」

 

 

 あまりの対応の差に傷心している中、タンカーの上から誰かが顔を覗かせてきた。

 そして軽い身のこなしで海上へ飛び降りた。

 

「あら、貴方が来てたのね…龍驤」

「陸奥やないか!久しぶりやな!達者にしてたか?」

「えぇ、おかげさまで。貴方も変わりなくて良かったわ」

 

 陸奥と久々の再開を果たした、身長の低いツインテールの女の子。艦首の部分をモチーフにしたような帽子を被り、関西弁を使いこなす。

 名前を龍驤と呼ばれた彼女は、陸奥と談笑していると、ふとこちらに目を向けた。

 その目は、まるで奇妙なものを見つけたかのような目だった。

 

「…何でここに人間がおるん?ワレ艦娘やないしゃろ?男やし」

「あ、あぁ、俺か。俺は横須賀の提督を務めている――」

「なんやて!?提督やと!?何でこないなとこに提督がおるの!?」

「龍驤、彼は宇宙人なのよ」

 

 えっちょ、陸奥さん!?何さらりと暴露してるの!?

 

「はぁぁ!?宇宙人!?まんま人間やがな!」

「いやそういう種族なんだって…」

「足元にある変な武器を見て、まだそうだと思う?」

「……何やそれ。随分けったい形の武器やな」

 

 足元で煌々ときらめくジェットブーツ。確かに、人一人が海上に長時間も浮けるような技術はこの星にはない。正直、これが武器かどうかの区別も、この星の人からしたら分からないかもしれない。

 

「へぇぇ…。まぁええわ。その話は後でじっくり聞かせてもらうわ。それより情報共有といこか」

 

 話を戻す龍驤。すっかり忘れていたが、今は戦闘中。今この場は戦場なのだ。

 ひとまずタンカーの上へと上がる。すると甲板には横須賀の艦娘の他にも大勢の艦娘が集結していた。

 

「うーん…随分派手にやられましたね…。これは明石でも直せないですよ」

「そうですよねぇ…。霧島、貴方の艤装と半分こ…」

「いや無理ですから。こんな船の上で換装なんてできないです」

 

「能代ぉ~あの雲見てよぉ~。何だか矢矧っぽいくなーい?」

「…状況を弁えてよ阿賀野姉。今私たちは戦場にいるんだよ?」

「えぇ~でも敵全然いないじゃ~ん」

「海の向こうでドンパチやってるあの大艦隊が見えないのかな!?」

 

「ねぇねぇ飛鷹~。ちょっと艦載機分けてくんな~い?」

「えぇ、なんでよ。偵察隊戻ってきたでしょ?」

「いやぁそれが数が合わないんだよねぇー…」

「それ早く言ってよ!!これ以上被害大きくなったらどうするの!?」

 

 …随分のほほんとした甲板だなおい。これでよく海の治安を守れたもんだ。

 

「何しとんやあんたら!?はよ警備に行かんか!!」

「あ、龍驤さん!今12時過ぎなのでみんなで戦闘糧食を食べようと思ってたんですよ!」

「随分呑気やな五月雨!?今にも敵艦が来るかもしれんのやぞ!?」

「まぁまぁ~あたし達の偵察機あんだから大丈夫だよぉ~」

「隼鷹!ワレが持っとる酒瓶何なんや!?あれほど持ってくるなってゆうたのに!!」

「はい!戦闘糧食です~!」

「あ、ありがとうなぁ阿賀野。……やなくて!!のんびりしてる暇はないんやぞ!?」

「あ~!貴方が横須賀の提督さんですねぇ~。よろしかったらこれどうぞ~!私が作ったんですよぉ〜」

「お、おう…」

「あんたも素直に受け取らんでええねん!」

 

 緊張感の無さすぎる甲板で、龍驤だけは険しい顔でとにかく突っ込む。苦労人とはまさしく彼女の事を指すだろう。

 阿賀野と呼ばれた艦娘から渡されたのは、竹の葉で包まれた何か。受け取らなくていいと言われたが、正直腹は減っている。龍驤には申し訳ないが、ここはありがたく頂こう。

 紐を解いて開けると、中には綺麗な形をしたおにぎりが三つ入っていた。

 

「中の具はみーんな一つ一つ違いますよぉ」

「へぇ…そうなんだ…」

 

 随分手の込んだ事をしたもんだ。これだけの数のおにぎりを、しかも全部別の具を入れるなんて。

 作ってくれた阿賀野に感謝をこめて、おにぎりを口に運ぶ。

 と、思った矢先、同じく戦闘糧食を食べていた艦娘が何やら騒めいている。

 

 

「うっ…!何この辛さ…カラシ…!?」

 

 霧島がおにぎりを食べ、苦痛の表情を浮かべている。食べたおにぎりの中には黄色のペースト状のものが。あれはどう見てもカラシだろう。 

 すかさず榛名が水を用意し、コップを霧島に手渡す。

 

「だ、大丈夫ですか?ほら、霧島お水を…」

「ちょ…阿賀野ぉ!おにぎりの中何を入れ――」

「おいしーい!これ、中ショートケーキ入ってますよ!」

「よくそれを美味しいと言えるな五月雨!?というか、何でこんなもんが具になっとんねん!?」

 

 五月雨はおいしいと言ったが、おにぎりの中には間違いなく、生クリームと細かく刻んだイチゴとスポンジケーキが入っていた。よくも器用にあれをおにぎりの中に入れられたな…。

 俺も心配になって恐る恐るおにぎりの中身を確かめてみる。

 

「…うげ…」

 

 一つ目が角砂糖。二つ目がコンソメの素。三つ目がカレーのルー。何故か調味料の類しか入っていなかった。

 

「えへへ~、提督さんと一緒に作ったんだぁ~」

「なっ!?なんてことしてくれたの阿賀野姉!?あの人料理下手なの知らないの!?」

「私がしっかりサポートしたから大丈夫だよぉ~」

「ちっとも大丈夫じゃないよ!ってあぁぁぁ!?隼鷹さんが伸びてる!?」

 

 …本当に大丈夫なのかこの面子。

 

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