ここで出てくるルティナとは関係がありません
どういう事なんだこれは。
この星に来ているアークスは俺だけのはず。
それなのになぜ…しかもこいつ…
「ん、『どうして『五芒の二』がここにいるのか』って顔してるねぇ」
「その通りだ!ハルコタンに行ってたんじゃ…」
「それはこっちのセリフでもあるよ、『五芒の一』、『仮面』さん?」
久々に呼ばれた、俺の名前。仮ではあるが、一時期名乗っていた名前。
何はともあれ、助かったようだ。
アークスは六年前、復活した深淵なる闇を完全に撃滅した。
激闘の末、アークスのトップである六芒均衡の内頭二人を亡くし、三のカスラは重傷でフォトンが扱えない状態に。
結果、新たな六芒を迎え入れるに加え、六芒の任務軽減を目的とし、六芒に何かあった時の代打として
五芒星には、これまで部の長、副長や
とはいえ、ある程度実績がないと六芒の代わりに指揮管理など務まらない。
そこで選ばれたのが俺だ。
深淵なる闇の媒体としてこの世に何とか生き長らえてきた俺は、深淵なる闇の消滅と共にアークスに救出された。
やつが消滅したせいか、時間遡航の能力が消えていて、元の時間軸に帰る事ができなくなった。まぁ別にこの世界で生きていくのも別に悪くはないが。
そんな中、俺は五芒星に選ばれた。確かに俺は守護輝士の俺と同じで、パラメータも同じ。途中までは辿ってきた道のりも同じだ。俺は断る理由もないので、「五芒の一」になった。
二には、研修生時代一緒にウーダンを狩りに行ったり、それ以前、まだ何も知らない子供だった頃からずっと遊んできたデューマンの女性、ルティナが選ばれた。
あくまで俺の記憶は俺の時間軸での話で、実際こっちではどうだったかは知らない。
他にも、シャオのせいでこうなったのか、俺の親しい人物で構成された。実力は六芒も太鼓判を押すほどなので問題はないが。
「…五芒星の二人がここにいるとか大丈夫なのかよ」
「別に平気よ、他のみんなもうこっち来てるから」
「はぁ!?来てんの!?」
「あんたが一番遅く来たのよ。本当にのろまね…」
理不尽な怒られ方をするが、今はそれどころではない。
「…じゃなくて、まずはあいつを何とかしないとね!もうじき戦闘機来るし、艦娘たちも来るからそこで休んでて」
「おう…」
お言葉に甘えて、海面を凍らしその場に倒れこんだ。
「さーて!久々の戦闘ね!龍驤ちゃん、お願い!」
『おう!任しとき!』
一つ合図をすると、水平線の向こうから数十機からなる艦載機の部隊がやってきた。
狙いを定め、各々が機銃攻撃、雷撃、爆撃を仕掛け、取り巻きは全滅。ダークファルスもどきにダメージを与えている。
艦載機の操縦は、全て発艦させた艦娘が行っている。ラジコンを操っているといえば分かりやすいだろうか。
だがあれだけの艦載機を同時に操るというのは、相当な訓練をしないとできない。一度、横須賀の空母たちに話を聞いたが、それはもう大変だったようだ。
「で、あれが敵の親玉?」
ルティナはダークファルスに指を指しながら、俺に話しかける。
「そうだ。深海棲艦をまるでダーカーみたいに生み出すから、気をつけろよ」
「言われなくてもっ!!」
藍色の長い髪を翻しながら、敵へ向け突進していく。
手には彼女が最も得意とする武器、デュアルブレードが握られていた。武器の名前は、スレイヴデュアル。刀身からは黒いフォトンが渦を巻き、禍々しい印象を受ける。
「はぁっ!!」
突進した勢いで、そのまま敵に切りかかる。しかし、俺の時と同じようにダーカーウォールによって阻まれてしまう。
「くっ…かったい…!」
勿論彼女でもあの壁を容易く壊す事はできない。
彼女の突撃に続いて龍驤たちの艦載機が敵に攻撃を仕掛けるが、一切効かない。このままではこちらばかり消耗してしまう。何か、対策を練らないと。
色々考えていると、ルティナがこちらに戻ってきた。
「ねぇ『仮面』!シャオにAIS申請したら?」
ルティナが口にしたのは「AIS」と呼ばれる、アークスの搭乗型ロボット兵器。採掘基地防衛戦やマガツとの戦闘において大きな戦果を発揮した、言わば最後の切り札、と言っても過言ではない、強力な兵器だ。
確かにAISの攻撃ならば、短時間でダーカーウォールの破壊は可能だ。
しかし…
「おい、今アークスは何してると思う?」
「何って、マガツの殲滅……あっ」
現在、アークスは惑星ハルコタンに出現している巨大エネミー、マガツの完全撲滅作戦を進行している。
度々ハルコタンに現れては、破壊の限りを尽くす邪神マガツ。このエネミーを今後出現させないよう、完全な消滅を目的とした作戦だ。
この作戦では、アークスのほとんどの人員を動かしている他、AISやその他兵器も同様にその作戦に持っていかれている。
つまり、AISの数に余裕がないという事だ。
聞いてみないと分からないが、あまり期待はできない。そもそもシャオと通信できるかどうかが怪しい。
「戦闘機は派遣するよう伝えたが…向こうも忙しい。繋がるかどうかも分からん」
「えぇ…そんなぁ…」
八方塞がりの状態。向こうから攻撃を仕掛けてこない限り、相手にダメージを与えるのは難しい。
今も絶え間なく、艦載機による攻撃が続いているが敵は無傷だ。あれだけ攻撃しても、ダーカーウォールは壊れる事なくダークファルスの身を守っている。もしかしたら、採掘基地防衛戦などで見かけるあれらよりもよっぽど強力なものなのかもしれない。
こうなると結論は一つ。
「「…逃げるしかない」」
やってくる戦闘機に乗って、逃げるしかない。それが一番だ。
と思った矢先
「あ、戦闘機来たよ!」
水平線の向こうから、少し灰色がかった黒色の戦闘機が、まっすぐこちらに向かってきている。
敵もその存在には気付いたようで、何やら身構えている。攻撃を仕掛けるつもりなのだろうか、手にはダーカー因子が集められている。
折角戦闘機が来たにも関わらず、ここで堕とされるなんてことあってはならない。
「させるかぁああ!!」
ジェットブーツを用い周囲のフォトンを瞬間的に爆発させ高速移動、敵に不意打ちを仕掛ける。向こうもこれは想定外だったのか、咄嗟に俺の繰り出した蹴撃を腕で受け止めた。
勿論フォトンがふんだんに使われたキックを、ただの腕一本で止められるわけがなく、そのまま胴体に蹴りが入り思いっきり吹っ飛んだ。
「早く早くー!!」
背後では戦闘機がホバリングをして待機している。その下で、ルティナがテレパイプを展開してこちらを待っている。
蹴りがかなり効いたのか、敵は海上でうずくまっている。
『く、そぉ…』
まじまじとダークファルスを眺めるが、やはり本家のダークファルスとは少し違う。
そもそも何をどうやったらあのような存在が生まれるのか。この星には、フォトンを扱える者は誰一人としていないのに。
ダーカーの出現が観測されていない事も不可解だ。少し違うと言えど、あれだけ大量のダーカー因子を有する個体が居ればダーカーがいてもおかしくない。
謎は深まるばかりだ。
「…またな」
いずれ、こいつとは雌雄を決する時が来る。捨て台詞はこれでいい。
俺は身を翻し、戦闘機に乗り込んだ。