もし提督がアークスだったら   作:rufus

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5.宇宙人、戦う

 本当にギリギリだった…。あぶねえ…。

 いざ出撃すると、近海は深海棲艦がうじゃうじゃ。きっとレ級とかいう奴が率いてるんだな、と思いながら、走りながら撃破。帰り道を予め確保しておいた。

 到着すると、真っ黒いローブの深海棲艦が、腰から生えた気持ち悪い兵器を名取達に向けていた。

 俺は急いでテクニック…この星でいう魔法を準備、「フォイエ」という巨大な火球を発射した。

 結果思いっきり、黒ローブに命中。火球にぶつかった後、前方へ凄まじい勢いで吹っ飛んだ。

 

「あ、あれ……レ級は…?」

「黒いローブ被ったやつか?ならあそこにいるぞ」

 

 俺が指差す先には、背中を思いっきり焼かれ、悶絶するレ級。

 なるほど…。痛みはある上、しゃべるのか…。

 勿論、本来の目的である、「深海棲艦との接触」も欠かさず。まずは深海棲艦の中で上位体であるらしい、そいつから攻略していこう。

 

『テ、テメェエエ!何者ダッ!!』

「何者って、この子達の上司だけど」

『ナラナゼ…ナゼ人間ガココニイル!?』

「さあね。お前の想像に委ねるよ」

 

 かなり饒舌だなこいつ。

 見た目は、少女そのもの。しかしかなり血色が悪そうな肌の色をしている。目は青白い。髪は白。

 知らない人が一目見ただけでは、こいつがとんでもない化け物だという事には気付かなそうだな。

 

「四人とも、俺の側に寄れ」

 

 しゃがみこんでいた名取達は、ようやく我に返り俺に抱きつくような勢いで近くに寄ってきた。

 今に沈んでしまいそうな、ボロボロの艤装。目には涙が浮かべ、未だに身体が小刻みに震えている。

 

『オ前達!!奴ラヲ殺セ!』

 

 いつの間にか、駆けつけた別の敵艦隊が到着。

 俺達は周囲を囲まれ、逃げ場を無くした。

 

「て、提督…!」

「大丈夫、絶対沈めねえから」

 

 

 今に消えてしまいそうな、春雨の声。

 

 不安に怯え、涼風の身体は小刻みに震える。

 

 絶望的な状況の中、村雨は敵を観察し、打開策を探る。

 

 自分の力の無さに、不甲斐なさを感じる名取。

 

 

 それでも、彼女達の目は、生きる事を望んでいた。

 

 

 

「…みんな、聞いてくれ」

 

 敵に聞こえないように、小声で話す。

 

「今、金剛型の四人がこっちに向かってきている。けれど、今のこの状況だと、絶対に間に合わない」

 

 ここに来るまで、鎮守府と交信しながら作戦を練っていた。

 今回の問題点は、傷を負った四人を、どうやって敵の攻撃をかいくぐりながら救出するか。俺の力が戦艦レ級にどれくらい通用するかにもよるが、少なくとも四人をかばいながら戦闘するのはあまりに非現実的だ。

 そこで、俺の持つテクニックの力を使う事にした。

 

「え…」

「そ、それじゃあどうするのよ…?」

「俺が君達四人を、戦闘海域の外へ吹き飛ばす」

「「「「…え?」」」」

 

 俺がテクニックで四人を戦闘海域から脱出させる。吹き飛ばして。

 

「だ、大丈夫なの…?着地に失敗して轟沈したり…」

「金剛達の位置は把握できてる。そこへ飛ばして、四人にお前らをキャッチしてもらおうって魂胆よ」

 

 当然ながら、話を聞いた名取達はあっけらかんとしている。

 普通に考えてこれは無理だ。俺がアークスでない限り。

 

「…信じます。提督さんを」

「それしかないなら、提督を信じるしかないわねぇ」

「これで私達が助かるなら……頑張ります!」

「こういうのも粋だねぇ…。ついてくぜぇ、提督さんよ!」

 

 そして、彼女達が勇気を出してくれない限り。

 本当に感謝しなければならない。今回の状況だって、事前に情報収集をしっかりやっていれば、こんな事にはならなかった。いくら新任の提督だからって、艦娘が沈んでしまったら言い訳にはならない。

 

 俺が…彼女達の、生死を握っている。そう解釈しても間違いではないのだ。

 

「…ありがとう、みんな」

 

 

 

『オイ!ナニコソコソ話シテイル!?』

「あーごめんごめん、作戦会議してたわ」

『…フザケヤガッテ…』

 

 少女の可愛らしい顔は、凄まじい憎しみに包まれた醜い顔へと変化する。

 今にも怒りが爆発しそうな雰囲気だ。周囲の敵達も、戦闘に入る準備はできているようだ。

 

『沈メ…沈メェェェェエエエエエ!!!!!』

 

 よし、決行だ。

 

「リンドブルム!」

 

 武器に語りかけると同時に、俺は身体を翻し、名取達と向き合った。

 思いっきり右足を後ろに引き、フォトンをチャージする。

 一秒も経たない内に、武器内のフォトンは臨界を突破。最高威力になった。

 

 

「ナ・ザン!!!」

 

 

 右足は、名取達目掛けて襲いかかる、かと思いきやすれすれのところを通り、虚空を蹴った。

 が、それと同時に右足からチャージされていたフォトンが一斉に放射される。

 フォトンは放射されると同時に、風となった。風は四人を包み、四人の前で爆発した。

 

 

 ブォォォン!!!

 

 

『ナッ…!?』

 

 反動で横に一回転するが、もう一度振り返ったその場所には、彼女達の姿は無かった。

 後は金剛達が上手くキャッチしてくれるのを祈るが…。

 

『…て、提督!』

「五十鈴、どうした?」

 

『さ、作戦、成功よ!金剛達がきちんとキャッチしたって!!』

 

 すぐさま朗報は飛んできた。

 思わず、笑みが零れる。

 

 本当に…よかった。四人とも無事で。

 

 

 

『貴様ァ…ヨクモォォオオオ!!!』

 

 後は俺が、こいつらを叩きのめすだけ。

 

『て、提督!提督も早く海域から脱出を!』

「いや、俺は深海棲艦倒してから帰るわ」

『え…そ、そんな無茶よ!いくら魔法の使える宇宙人でも、数が多すぎる!』

「まぁ安心して、司令官の帰り待っとけ。じゃあ通信切るわ」

 

 イヤホンマイクの電源を切り、鎮守府との交信を断ち切る。

 

 これで…心置き無く戦える。

 

『私達ヲ…倒スダト?ハッ!!笑ワセテクレル!!コノ数ニ勝テルトデモ!?』

 

 よく見てみると、さっきより数が増えている。

 深海棲艦に関してはこれっぽっちも調べてないので、誰がどういう特徴なのかはよく分からない。

 黒い鉄の塊みたいな怪物もいれば、大きな盾を持った長い髪の女の人。へそを出して結構際どい格好をしてるショートカットの少女。

 結構種類があるんだな…と思いながら、この数をどうやって倒すか考える。

 カタナで一人一人倒すか…いやすごく面倒だな。ワイヤードランスで縦横無尽してもいいが…黒い塊みたいなのには刺さらなそう。

 

『消エロォォォオオ!!!』

「クラス…フォース、バウンサー」

 

 レ級が俺に殴りかかる。

 それを見た俺は驚愕した。レ級の移動速度が異様に早かった事。

 ロッドと呼ばれる、この星では杖とか言う武器で受け止めるが、後少し遅れてたら思いっきり殴れてた。

 やっぱり、あれを選んでよかった。

 

「さて、終わりだ。深海棲艦共。」

 

 

「…俺の家族を、殺そうとした罪。償ってもらうからな」

 

 

 

「…ザンディオン」

 

 

 

***

 

 手に持つロッド、「サイコウォンド」が煌々と光る。リンドブルムと交代して、足に装着された「バイオリアクト」も、チャージされたフォトンを完全に放出できず、未だ電撃と風をまとっている。

 

『コ…コンナ…コト……アリエナイ…』

 

 周囲の敵達は、一人の例外なく倒れている。すでに海の底へと沈んでいった者もいる。

 レ級は自身の持つ艤装が完全に破壊されてもなお、俺に抵抗しようと足掻く。

 

「上には上がいるって事よ。よく覚えとけ」

 

 必死に立ち上がろうとするも、電撃を思いっきり食らったレ級の身体は麻痺し、思うように動かせていない。

 足掻きも空しく、少しずつ身体は海へ沈んでいく。

 

『……沈ムノカ…私ハ…』

 

 さっきまでの威勢はどこへやら、彼女の声はとても悲しそうだった。

 まるで、さっきまで沈みかけていた名取達のように。

 

 彼女の顔は、艦娘達…いや人間そのものだった。

 

『アァ…故郷ニ…帰ルンダナ……私ハ……』

「…させねえよ」

『エ……?』

 

 俺は、すっかり忘れていた。

 

「おいシャオ!!聞こえてんだろ!!シャオ!!」

『な、なんだいいきなり。びっくりさせないでくれ』

「こっちに輸送機を寄越せ。このレ級をそっちに送る」

『…何でまた。君にしては珍しいじゃないか』

「深海棲艦の調査をするには、一人ぐらい研究材料として送らないといけないだろ」

『まぁそうだけど…』

「それにこいつは深海棲艦の中でも特に強い個体だと聞く。もってこいじゃないか」

 

 もし、ダーカーに侵されていたのなら、フォトンによってダーカー因子を取り除くと、元の姿に戻る。

 レ級の姿は、「元に戻っていた」。

 

「でもこれで分かったろ、シャオ」

『…そうだね。少しこちらでも検討してみるよ』

 

 

 深海棲艦は、ダーカーに侵されている。

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