もし提督がアークスだったら   作:rufus

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8.宇宙人、遠征する

「遠征?」

「そうデース!勉強のためにも、一度同行してみるといいネー!」

 

 翌日の朝、今日の秘書艦である金剛に提案されたのは、遠征の同行だった。

 遠征とは、簡単に言えば鎮守府へ送られてきた依頼をこなす事。船団護衛や輸送任務が、主な内容だ。

 これをこなす事で、海軍や依頼主から報酬がもらえる。報酬は、お金や資材が主だ。

 着任二日目から、遠征の指示はきちんと出しており、報酬もそれ相応のものをもらっている。

 けど今回は、見聞を広めるため同行してみようと、金剛は言うのである。

 

「…俺の仕事はどうするんだ?」

「まだ係が決まっていない正規空母達にお願いしていマース!だからノープロブレムネー!」

 

 そう易々と艦娘がやっていい仕事なのか、提督の仕事って。

 約束してしまったものは仕方ないので、同行してみよう。

 

「…因みに聞くが、前任の提督さんとかはこういう事してたのか?」

「いや、全然してないネー」

「…宇宙人だからやれってか?」

「戦艦レ級を倒したほどデース!どんな敵が来ても平気デース!」

「お前なぁ…」

 

 確かに俺が行けばどんな敵が来てもどうにでもなりそうな気はするけど…。

 だとすると俺が提督やってる意味が無くなるような…。

 

***

 

「…というわけだ。今日はよろしくな」

「はい、よろしくお願いします!」「よろしくっ!」

 

 鎮守府を出てからすぐの海の上。遠征係に一連の事情を話し、今日の遠征に同行させてもらう。

 なお、遠征係のメンバーは、榛名をリーダーに、霧島、五月雨、長良だ。

 

「にしても、五月雨は秘書艦なのに遠征係でもあるのか。大変だな」

「秘書艦が非番の時、何もしないのは嫌ですから…」

「因みに、五十鈴さんも五月雨さんと交代で遠征に同行していますよ」

 

 榛名の付け足しにも驚く俺。艦娘ってみんな働き者だなぁ…。

 

「じゃあ早速行きましょうか!」

 

 榛名のその一言を皮切りに、俺達は鎮守府海域を飛び出した。

 

***

 

 今回の遠征の内容は、沖縄近海に新しくできた洋上油田から出発するタンカーを、目的地である呉鎮守府まで護衛する事だ。

 油田に到着すると、タンカーに石油を積んでいる真っただ中だった。

 タンカーの乗組員に軽く挨拶して、タンカーが出発するのを待った。…なお、俺の事を見た乗組員は、新型の艦娘かなんかだと思ったようだ。

 

「でも…っ…ふふっ…新型の艦娘は……っないでしょ…!」

「そんなに笑う事か?長良」

 

 それよりも、俺には気になる事が一つあった。

 

「にしても…横須賀の他に鎮守府ってあったんだな」

 

 秘書艦からも知らされてなかった、他の鎮守府の存在。海軍のお偉いさんからも説明も無かったので、今日まで全く知らなかった。

 これを口にすると、艦娘から残念がる声が。

 

「え、知らなかったんですか?」「これは予想外ですね…」「榛名…落胆です…」

「いやそんな事で落胆されても困るんだけど…」

「秘書艦さん。この事言ってなかったの?」

「言ってたと思ってたんですけどね…」

 

 無責任すぎるぞ、秘書艦さん。

 ともかく、タンカーが出発する前に、他の鎮守府に関して説明を受ける事に。

 

「横須賀の他に、京都府の舞鶴鎮守府、長崎県の佐世保鎮守府、そして最近できた茨城県の日立鎮守府に、今回の終着点である広島県の呉鎮守府。計五か所ありますね」

「え、そんなにあるの?」

 

 榛名の口から今ある鎮守府の数を聞かされ、全国あちこちに点在してる事に驚く。

 そんなにあるんならわざわざ一鎮守府だけの艦隊で出撃しなくてもいいのに。

 そう榛名に言うと、こう答えた。

 

「各鎮守府には、海軍の意向でそれぞれの役割が設けられているんです」

「役割?」

「例えば、日立鎮守府は全て駆逐艦で構成されています。その駆逐艦の速力を利用して、遠征に特化させて世界各地から物資を安全に本土まで届ける、という役割があります」

「ほうほう…」

 

 案外よく考えてるんだな、海軍って。俺を全然歓迎してなかったから、ただの堅物の集団かと思っていた。

 

「じゃあ横須賀は?」

「横須賀には、速力が一定以上の、高速艦で構成されています。敵が出現した際、一番に到着し遊撃する、というのが横須賀の役割です」

「要は切り込み隊長ってやつか?」

「そうですね」

 

 …何でこんな重要な事を秘書艦の方々は教えてくれなかったんでしょうか。

 まぁ口には出さないが。

 

 

ブォォォォン

 

 

 タンカーの汽笛が鳴り響いた。これは乗組員と事前に約束した、出発の合図だ。

 

「おし、遠征の始まりだ。各自持ち場につけ!」

「「「「了解!」」」」

 

 タンカーは広島、呉を目指し、少しずつ動き始めた。

 

***

 

「横須賀の方々がタンカーの護衛…ですか」

「はい、提督。およそ五時間後に着くとの予定です」

「…だが、彼らの通る海域は、今深海棲艦が多数見られている海域なのでは…」

「武蔵の言う通りだ。ここはいち早く連絡を入れて、別の鎮守府にでも進路を変更すれば、安全なのではないか?」

「そうは言ってもねぇ…長門、向こうはもう出発してる頃でしょうし、横須賀の提督さんは今不在なのよ?どうやって連絡取るっていうのよ…」

「……提督が不在、ですか?」

「えぇ、さっき阿賀野ちゃんに連絡取ってもらったらいないらしいのよ」

「こんな時に不在だなんて…。ツイてないですね」

「こうなれば…我々が動くしかなさそうですね。それでいいですか?皆さん」

「えぇ、大丈夫です」「御意」「了解した」「いつでもOKよ」

 

 

「…大和、武蔵、長門、陸奥。貴方達に出撃命令を下します」

 

 

「深海棲艦よりも早くタンカーに接触、迎える深海棲艦を横須賀の方々と共に、迎撃してください」

 

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