もし提督がアークスだったら   作:rufus

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9.宇宙人、突撃する

「なんやてぇ!?四国地方沖に深海棲艦が多数出没ぅ!?」

「まぁまぁ、瑞鳳特製卵焼きでも食べて落ち着いてくださいよ、龍驤さん」

「んなもん食うてる場合かっ!?今沖縄周辺の油田からタンカーが呉に行こうとしてるんやで!?」

「確かにこれは急を要するわね…。隼鷹、私達で援護しちゃう?」

「えー。あたしまだお酒飲んでたいんだけどぉー」

「何で朝っぱらから黒霧島飲んどんねん!!仕事をせい仕事を!」

「み、皆さん落ち着いて…。私の作った味噌汁でも飲んで心を落ち着かせましょう?」

「何で祥鳳も瑞鳳もなんか食わせて落ち着かせようとすんねん!?朝飯ならさっき食うたばかりやわ!」

 

「…相変わらず、軽空母の方々は賑やかですね」

「…そうかなぁ……とりあえず眠いや…」

「雲龍姉!まだ起きてから一時間しか経ってないよ!起きて今日の仕事やろ!?」

「雲龍姉さん…私の膝でよかったら…」

「天城姉は何で誘ってるの!?雲龍姉を甘やかさないでよ!」

「寝るー………Zzz」

「寝ちゃいやぁぁぁあああ!!!」

 

***

 

「おい鳥海!四国沖で深海棲艦が大量発生だってよ!やべえじゃんこれ!」

「とか言いながら、摩耶めちゃくちゃ嬉しそうね…」

「嬉しがってないで、早く出撃するわよ、二人とも」

「そんなとげとげしちゃだめよぉ~高雄ぉ~」

「愛宕は甘やかし過ぎなのよ…全く…」

 

「今日の出撃誰が出るんだろうね、加古」

「さぁねぇ…?とりあえずわたしゃ寝るわ…」

「こぉら加古!!すぐに寝ようとしちゃだめよ!」

「いってえよ衣笠!耳!耳痛い!」

「…青葉、見ちゃいました…」

「別に変なものでもないですよね…青葉さん…」

 

「やったぁー!!夜戦だって!夜戦っ!」

「…姉さん、今朝ですよ」

「敵さんがおでましかぁ…ここは、那珂ちゃん単独ライブ開催かなっ?」

「…那珂ちゃん、それマイクじゃなくて魚雷だよね」

 

***

 

 異変はすぐに気付いた。

 タンカーの船橋から、海の一部が少し黒く染まっているのを、乗組員の人達が聞かせてくれた。

 至急、全員をタンカーのデッキへと集合するよう命令。対策を練るため会議を行う。

 

「確かにここからでも見えますね…」

「ありゃまさしく深海棲艦だよねぇ…あれ」

「あれだけの数を振り切って呉に行くのは無理がありますね…」

「ざっと100は超えますかね…」

 

 海が黒い正体。遠くから見ても、それは深海棲艦であることが分かった。

 その数、霧島の言う通り、目視しただけで100は超えるだろうか。水平線の近くにそれはあるので、このタンカーの速力ではまだ安全…だと思いたい。

 

「乗組員さんから、周辺の鎮守府に救援要請は出したみたいですよ」

「……100…か」

 

 俺的には全然余裕な感じがした。

 という事で、早速行動に移す。

 

「じゃあ俺が全部倒してくるわ」

「「「「え!?」」」」

「お前たちはここに残って、敵艦載機を撃墜しておいてくれ。後俺の討ち漏らしがこっち来るかもしれないからよろしく!」

「ちょっ提督!いくら戦艦レ級倒したからって無理だよ!」

「そうです!だいじょばないです!戦うなら私達も…!」

「全員が向こういったら、敵の待ち伏せにどう対処するんだ?」

 

 明らかにこっちに来いと言っているような、真っ黒な大艦隊。これは敵の陽動作戦という可能性もある。現状の戦力から、こうした方が一番だと感じた。

 その旨を伝えると、反論していた口はすぐに閉じられ、それ以上反論することはなかった。

 

「それにあれだけの大艦隊なんだ。近くの鎮守府が気付いていないわけないだろうに」

「…援軍、ですか」

「そ。まぁタンカーの護衛に人を行かせるけどな」

 

 四人を背を向け、装備の準備をする。

 

「…提督、私達を戦わせたくない、と思っていらっしゃるのですか?」

 

 榛名は、物悲しそうな顔で俺に聞く。

 

「別にそういう事じゃない。さっき言ったのが、心の底からの理由だ」

 

 昔から、俺は周りから嘘をつくのが下手だと言われていた。もしかしたら、今ついた嘘ももうバレてるのかもな。

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

 タンカーのデッキを一杯使って走り、海へと飛び出した。

 

***

 

「クラス、ブレイバー、バウンサー」

 

 ジェットブーツ「バイオリアクト」を使いながら、手には俺が最も得意とするカタナ。

 「オロチアギト」と銘打たれたこのカタナは、俺の相棒と言っても差し支えないほど、長い間共に戦ってきた武器だ。

 

 そう…あの時も、手にはこいつの姿があった。

 

 フォトンの力で、超高速で敵陣に突っ込む。もう敵の艦種も目視で分かるほど、近付いた。

 案の定敵はこちらの存在に気付き、一斉にこちらを向く。

 

『キタナ…ヤレ!!オマエラ!!』

 

 レ級と戦ってから、俺は深海棲艦に関して調べる事にした。

 深海棲艦には、大きく分けて二種類に分けられる。

 我々と話す事ができるか、そうでないかだ。

 例えば、駆逐艦イ級。まるで黒い岩のような外見のイ級は、一度の戦闘で多く見られ増産型の兵器のようなものではないかという説が挙がっている。

 また同型艦が数多く見られるのは、軽巡ホ級、重巡リ級、戦艦ル級、雷巡チ級など。これらも、イ級同様、歩兵の様な感じで数多く存在するのではないかとされている。

 

 が、それとは比べ物にならないほど強力な個体が、ここ最近現れるようになった。

 彼らは海軍から最重要標的に定められており、十分な兵装をせず接触した場合や遠征中に遭遇した場合は、第一に撤退を優先すべき、と海軍から通達があるほど、強力な敵である。

 彼らの共通するべき点は、量産型と呼ばれるほど同型艦が圧倒的に少ない事と、会話により我々と意思疎通ができる事。

 俺が倒した戦艦レ級。彼女も最重要標的に定められており、同型艦は確認されているだけで他に二人しかいないらしい。

 意思疎通ができる…という事は、彼らに知識と自我がある事を意味する。そのため彼らはもっぱら艦隊の中心、旗艦として随伴艦を指揮し、艦娘も顔負けの戦略を展開している。

 一個体としてみても他のそれよりも圧倒的で、おまけに艦隊を指揮して統率が執れる。海軍が警戒するのも無理はない。

 

 という訳で、こんなでっかい艦隊なんですから、最重要標的の内誰かいるだろうと予想していたが、予想通りどこからか指揮する声が聞こえる。それも三人ぐらいの声が。

 

「連れてこなくてよかったわ…」

 

 戦艦ル級を、身体ごと真っ二つにしながら呟く。

 

 最重要標的に現れる特徴。

 それは奇しくも、あのダークファルスと同じ特徴でもあった。

 ダークファルス。ダーカーを統率する固体であり、【双子(ダブル)】の造りだす模倣体(クローン)を除けば同種は存在しない、アークスが倒すべき最大の敵。

 そのダークファルスに共通する特徴。それは、会話によって意志疎通ができる事。

 

「おらぁ!!」

 

 けれど、俺個人としては、ダークファルスほどのダーカー因子は有していないと感じた。

 周囲を圧倒するその強さ。その根源は体内に含有するダーカー因子の量の差だ。確かにレ級と戦って、他のと戦うと、力の差は歴然だった。非常に多くのダーカー因子を持っているのは分かるが、ダークファルスほどではない…どうしてもそう思ってしまう。

 何度もダークファルスと対峙してきた俺だからこそ、そう思うのだ。

 

「邪魔だっ!!」

 

 そもそも、それよりも根本的な問題に、この星に存在するものをダークファルスと同等か、それに近い状態まで近づけるのは同じダークファルスでも難しい、というのが挙げられる。俺がアークスになってから新しいダークファルスは確認されていない事から、今のダークファルス達にはそのような力は無いと推測する。

 また、仮にダークファルスがこの星にやってきていたとしたら、シャオがそれに気付かないわけがない。

 

 …俺の推測は、こうした理由で未だ推測の域を出る事はなく、シャオにも報告できずにいた。

 こうして考えると、まだアークスがこっちに来られないのは、逆に都合が良かったのかもしれない。

 後、もしかしたら、シャオも気付いているかもしれない。向こうから俺の事をモニタリングしているんだから。

 

「…やっぱ多いな…」

 

 そうこう考えながら敵をばったばった倒していくが、やはりキリがない。

 最重要標的の三人の姿はちらちら見えるんだが、後少しのところで届かない。

 

『クッ…!タッタ一人デコレダケ倒ストハ…!』

 

 敵はたった一人ですごい数を倒していく俺に警戒し、囮を残し主力艦隊を少し後退させていた。

 このままだと逃げられるな…。

 俺が一人でこの戦場にやってきた理由。それは艦娘達が深海棲艦と対峙する回数をなるべく少なくしたいのもあるが、それとは別に、最重要標的をアークスシップへサンプルとして送る事だ。

 レ級の分析結果はまだ報告されていないが、サンプルはいくつもあった方がいい。

 

「消えろっ!!」

 

 フォトンアーツ、カンランキキョウを発動。俺を中心に、円形の青白い斬撃が放たれる。

 この攻撃は、駆逐ニ級二隻、重巡リ級elite一隻、空母ヲ級を三隻に命中。六隻一気に爆発し、海に没した。

 

「まだまだぁ!!」

 

 次にカタナを両手で真上に上げ、意識を集中する。するとカタナの刀身がフォトンを纏い、元の大きさの三倍以上に巨大化した。

 フォトンを十分に吸収して、放つ。

 

「カザン、ナデシコォォ!!」

 

 カタナを思いっきり振り下ろす。振り下ろした勢いで、前方に衝撃波が発生。瞬く間に敵を10隻以上撃沈させた。

 

「…見えたっ…!」

 

 衝撃波により敵が沈み、道ができた。その道の先には旗艦の三人が、こちらを睨みつけていた。

 あれは…。

 

 

 

『タッタ一人デ…ココニ来ルトハ…イイデショウ……』

 

 ゴスコリ風な衣装が特徴とされ、性能は最重要標的の中ではバランスのとれたものとなっている。

 名を、離島棲鬼。

 

 

 

『ドイツモコイツモ…役ニ立タヌトハ……』

 

 圧倒的な火力とその装甲で、数々の艦娘を海に沈めた、化物。

 名を、戦艦水鬼。

 

 

 

『コレ以上ハ…進マセナイ…!』

 

 あらゆる艦載機を持ってしても、彼女の航空隊には勝てなかったとされる、空の番人。

 名を、空母水鬼。

 

 

 

 艦娘からしたら、悪魔のような編成。逃げ出す子もいるかもしれない。

 けれど、俺は艦娘達を守る、義務がある。

 俺だから戦える。俺じゃなきゃ、誰も倒せない。

 

 俺は彼らに、カタナを向けた。

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