絶剣~絶対無敵の剣姫~   作:melan

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みなさまお待たせいたしました。
新章突入です。ついに初のボス攻略へと物語は進んでいきます。



1層ボス攻略戦
(16)


 午前十時。いつも泊まっている宿泊施設の食堂で、ボクと姉ちゃんは、遅めの朝食の真最中だった。姉ちゃんは日刊SAO(ほとんどのプレイヤーは『新聞』と呼んでいる)をウィンドウに表示させ、トースト片手に記事に目を通していて、ボクはその姉ちゃんの姿を、テーブルの向かい側からぼんやりと眺めていた。

 

 ボクたちが使っている長テーブルの上には、コーヒーに似たこげ茶色の飲み物が、コーヒーカップに似た器に入って、姉ちゃんとボクの前に一つずつ置いてある。カップからは、十二月も半ばになって気温が下がっているせいか、ゆらゆらと色の濃い湯気が立ち上っていた。カップの隣にはトースト用の平皿があって、姉ちゃんの皿には一枚残っているけど、ボクの方はすでに空になっていた。

 

 静かだなぁ。

 

 のんびりとした朝は久しぶりで、外が快晴なのも手伝って、やもするとまた眠気におそわれる。ボクは大きなあくびをして、テーブルに身を伏せた。

 

 ついさっきまで、ここの前の通りは随分と賑やかだったらしい。部屋で寝ていて全く気付かなかったけど。ボクたちが降りて行ったときに、まだ食堂に残っていた、お隣の部屋に泊まっている女性プレイヤーに事情を聞くと、昨日ついにボス部屋が発見されたのに触発されて、集まる場所を求めて黒鉄宮前の広場に行っているらしい。嬉々とした足取りでそのプレイヤーも出て行ってしまった後、広場はお祭り騒ぎだと、シリカからも連絡があった。他のメンバーはどうしてるんだろう。たぶん、ボクたちとそう変わらないと思うけど。

 

 改めて言っておくと、今日はいつもより、三時間ぐらい遅れての朝食だった。

 

 今日の攻略はお休みだ。なにせ、昨日ボクたちはついに、全プレイヤーの念願であるボス部屋を発見したのだ。朝の八時に出かけて、攻略から戻ってきたのが深夜十一時くらい。ここ数週間は休みなくそんな感じだったから、一日くらい休息してもバチは当たらないと思う。

 

 

「今日はなにか面白い記事ある?」

 

 ボクは姉ちゃんに話しかける。姉ちゃんはいつも、新聞に面白い記事があると、分かりやすく要約して教えてくれるのだ。実際のところ、新聞は無料配信だから、見ようと思えばボクも見られるんだけど、ボクとしては、姉ちゃんが要約してくれた内容を聞いた方が、理解しやすくてありがたい。

 

 姉ちゃんは、口の中にあったトースト(仮)を、コーヒー(仮)で流し込んだ。

 

「私たちが、昨日の夜にボス部屋を見つけたっていう記事が載ってるよ。これについては号外でも配信されていたけど、今日のはかなりの拡大版みたい。……昨日のインタビューもある」

 

 ……うん、そうだろうね。むしろそうじゃなかったら、なんであんなに苦労したのか分からなくなる。

 

 ボクは昨日の夜の事を思い出して、げんなりとした。

 

 

 

 

「ボス部屋だ‼」「ついに見つけましたね!」「これでようやく次に進めるな!」

 

 と思い思いに歓声を上げてから一時間ほど。ボクたちはそれを本部に報告すべく、弾んだ足取りで迷宮区から脱出し、始まりの街まで来ていた。時刻はもう夜の十一時近くになっていて、レストランなどの他は、街中はひっそりとしていた。

 

「みんなも、喜んでくれますかね」

 

 みんな、と言うのは本部の人たちの事かな。シリカさんの声は、足取りと一緒で、軽やかに弾んでいた。あらかじめ、本部の高幡さんとディアベルさんには、ボクたちがボス部屋を発見したとメッセージを飛ばしてある。今頃大騒ぎだろうな、とボクも頬を緩めた。

 

 攻略を始めてから早数週間。休日なしで、朝から晩まで迷宮区に潜っていたボクたちは、何体倒したか分からないモンスターたちのおかげで、レベルは軒並み十を超えて、トップの姉ちゃんとキリトは十三まで行っている。さらに、お互いの事を知ったボクたちは今まで以上に連携がよくなって、身の危険を感じるような危機は、あのリトルネペントの大群とクイーンネペントと戦った時以来なかった。

 

 しかし、勢いよく攻略に臨んでいる割に、ボス部屋にはなかなかたどり着けなくて、長い事やきもきしていた。早く早くと焦りそうな心を抑えつつ、粘り強く攻略し続けて、ついに今日、発見したのだ。ベータテストの時とは比べ物にならないくらい、感動した。

 

 

 宮殿前の広場までやってきた。

 

 ここにも人は全然いなくて、広場の周囲に配置された明かりに照らされた黒鉄宮が、その威容を、闇に浮かぶようにして表していた。

 

「今日は、まだみんな居るみたいね」

 

 姉ちゃんの言葉に目を凝らすと、黒鉄宮の出入り口から、黒鉄宮のエントランスを行き来する人たちが確認できた。そして、いくつかある大きな窓から、煌々と明かりが漏れている。珍しいな、こんな時間に人がたくさん残ってるなんて。

 

 黒鉄宮の活動時間は、ある程度決められていて、大体朝の八時から夕方五時くらいまでだ。本部に所属している人たちもしっかりと訓練しなければいけないから、という処置で、本部所員の人たちは、この時間からレベリングに向かう人も少なくない(ディアベルさんもそんな人たちの一員で、レベルは攻略組のトップ集団とも遜色がないと聞いたことがある)。だから、一部の『夜勤』の人を除いて、黒鉄宮からは人がいなくなってしまうのだ。

 

 訝しみながらも本部に足を踏み入れる。

 

 うん、やっぱり。外から見えたように、本部はフル稼働状態だった。あちこちから人が行ったり来たり、忙しなく動き回っている。

 

 と、一人の所員がボクたちの姿に目を留めた。背の高い男の人で、年齢はたぶん、二十歳くらい。

 

「ええと、ランさんのパーティー、ですよね?」

 

「はい」

 

「やっぱり!」

 

 お兄さんは、細面(ほそおもて)だから余計に目立つ大きめの瞳を、まぶしいくらいに輝かせた。

 

「ボス部屋を発見したんですよね! 今、そのことで本部は持ちきりですよっ! 皆さん、お疲れさまでした! あ、申し遅れました、私、広報・新聞担当室所属のカイトという者なんですが、攻略担当室長への報告が終わったら、是非取材させていただきたいのですっ! アインクラッドに囚われた人全員の希望になるはずです! どうでしょうかっ⁉」

 

 ここまでのマシンガントークは初めてかもしれない、とボクが言いたくなるくらいの勢いに、姉ちゃんは大きく一歩たじろいだ。あの姉ちゃんを引かせるなんて……ある意味すごいなこのお兄さん。

 

「え、えと、そういうのは、ちょっと……」

 

「まぁそう言わずっ! お願いしますよ‼ これもアインクラッド民のためです! このニュースでみんながやる気を出してくれれば、解放はもっと早くなるんですよっ⁉」

 

「ニュースを流すだけなら、別に俺たちの取材なんて必要ないんじゃないか?」

 

 キリトが渋い顔で言った。のだけど、お兄さんには全く効果がないようだった。

 

「いえっ! 皆さんの活躍は以前から耳にしておりましたのでっ‼ どのように攻略臨んでいるのかをお聞きして、それを広めることで攻略に貢献したいのですっ‼」

 

 ボクたちは、どうする? と顔を見合わせた。攻略に貢献できるのならそれに越したことは無いけど、ボクたちはそんなに特別なことをしてるわけじゃないんだよね。

 

 よし、これは諦めてもらおう、と目線で話し合って、姉ちゃんがカイトさんに向き直った。

 

「すみません、私たちに特にお答え──」

 

 できることはありませんので。恐らく姉ちゃんはそう言おうとしたのだと思うけど、それはキラキラおめめのカイトさんには届かなかった。

 

「ありがとうございますっ‼ あ、攻略担当室長が皆様の事を待っています! 心待ちにしているようでしたので、速く行ってあげてください! では、後ほどっ‼」

 

 所員の人はずっとキラキラしっぱなしで、最後に勢いよく頭を下げると、風のように奥の部屋へと入っていった。

 

 ボクたちの話、聞く気あったのかな……。

 

「……今の人……すごいテンションでしたね」

 

 呆然とシリカが呟いた。

 

 というか、取材、受けることになっちゃったなぁ。

 

 

 

「みんなよく頑張ってくれた! でも、本番はこれからだ。よろしく頼むよ!」

 

 いつものさわやかスマイルと、大量の書類が積まれた机に迎えられて、ボクたちはディアベルさんと握手を交わした。この部屋は宮殿の中の一室なだけあってかなり広いけど、何台もの机があって、そこに人がたくさんいると、余りその広さを実感できない。

 

「攻略中に、何か変わったことはあったかい?」

 

 ディアベルさんが姉ちゃんに問う。

 

「特には無かったと思います。ベータテストの時とも変わっていないみたいです」

 

「そうか。報告ご苦労様! 今広報に、ボス部屋を見つけたっていう号外を出してもらえるようお願いしたんだ。今日中に配信できると思うよ」

 

「それは……よかったです」

 

 さっきのことがあったからか、微妙な反応になった。

 

「どうかしたかい?」

 

 目ざとくそれに気づいたディアベルさんが、首を傾げる。いえ、そんな大したことじゃないんですけど、と前置きして、姉ちゃんはさっきの事を話した。

 

 ディアベルさんは苦笑を浮かべた。

 

「すまない。君たちから連絡をもらってから、みんな浮足立っているところがあってね。なにしろ、色々と対策はしているし、政策を打ち出してはいるけど、今まで実績と言う実績は無かったからね。初めて、攻略が進んだっていう実感が得られたんだと思う。どうする? オレから断っておこうか?」

 

 ディアベルさんの話を受けて、姉ちゃんはどうする? と目線で聞いてくる。そういう事ならしょうがないかな。確かに、今までこれと言って進展したと言えるようなことは無かったし、この際、そういう記事で盛り上げてもらうのもありかもしれない。そう思って、ボクは姉ちゃんに頷き返した。他のみんなも同様にしたのを見て、姉ちゃんは、「大丈夫です。取材、受けます」と言った。

 

 ディアベルさんは微笑んで、「そうか」と言うと、

 

「じゃあ、ボス攻略も頼むぞ!」

 

 右手を差し出した。一人一人、がっしりと握手をして、ボクたちは攻略担当室を出た。

 

 

 

 その足で広報・新聞担当室に入ると、さっきの比ではない人の入りだった。二、三十人は居そうだ。イスに座っている人は、みんな一様に書類やウィンドウに手を走らせ、すごい勢いで何事かを書き込んでいる。その書類やデータを預かった人は、それをこれまたすごい勢いで読んでいき、添削を入れていく。書き直しの部分があったのか、書いていた人に一度返し、それを何回か繰り返したところで、次の人に情報と書類が渡った。その人は構成担当なのか、文の位置をはめ込んでいっているようだ。

 

 それが終わったのか、構成担当の人が立ち上がった。書類が回されたのは広報・新聞担当室室長、兼編集長の、シンカーさんだ。シンカーさんはいつもの温和なイメージが嘘のように消えていて、調度攻略者と同じような、鋭い、油断ない目つきで紙面を繰っていく。その間、持って行った人は気が気でないのか終始そわそわしていた。

 

 納得のいく出来だったのか、シンカーさんはいつもの雰囲気にもどって、情報と書類(これはたぶん新聞の原紙なんだと思う)を返すと、何かを言づけた。なんて言ったのかは、シンカーさんが一番奥に座っているのと、たくさんの人が仕事をすることで出す音に遮られて、聞き取れないけど、渡された構成担当の人は嬉しそうに笑って、部屋を出ていった。「あれ、きっと高幡さんのところに行くんだろうね」隣でアスナがささやいて、ああ、なるほど、とボクは納得した。それで完成、ということになるんだろう。

 

 ついつい見入ってしまった。時計を見ると、いつの間にか部屋に入ってから十五分は経っていた。そう言えばカイトさんは……?

 

 探してみても、見つからない。今はどこかへ行ってるのかな。

 

「シンカーさんに、挨拶しに行こうか」

 

 姉ちゃんの提案に従って、ボクたちは部屋の奥を目指した。

 

 

 

「やぁ、久しぶりですね、みなさん。あ、お嬢さん方は始めまして、かな? アスナさん、シリカさん」

 

 柔和に笑って、シンカーさんが右手を差し出した。こういうところではそういうものなのかな、ボクたちはまた、握手を交わす。

 

「お手柄でしたね。攻略本部設立メンバーとして、創立者のお二方が真っ先にボス部屋を見つけられた事を、嬉しく思います」

 

 創立者。シンカーさんの声には、敬意がこもっている気がした。ボクはそのことに、なんだかむずがゆさを覚える。実際の考案者は姉ちゃんだから、そこにボクを含めなくともいいような気がする。けど、ボクがそういう事を言うと姉ちゃんが怒るんだよね。

 

「それにしても珍しいですね、ここにいらっしゃるとは……」

 

 どうやらカイトさんの事は聞いていないようで、心底意外そうにしている。

 

「実は──」

 

 もう一度さっきのやり取りを説明すると、シンカーさんは珍しく苦笑いを浮かべた。

 

「すみませんね、ぶしつけな事をしてしまって。記者として集まってもらった皆さんは、ほとんどが元々は情報屋だった人なもので、好奇心に任せて行き過ぎてしまうことがあるようです」

 

「いえ、私たちもお受けすることで決めたので、そんなに気にしないで下さい」

 

 姉ちゃんが言うと、苦笑したまま「そう言って頂けるとありがたいです」と軽く頭を下げた。

 

「そういえば、遅くなってしまいましたけど、日刊誌刊行おめでとうございます。もう今では、街中では『新聞』って呼ばれていますよ」

 

「ありがとうございます。情報はやはり早くお届けできるに越したことは無いですから。週刊ではやはり限界がありましたね。ようやく編集部の体制も整って、ここまでこぎつけました」

 

 一週間ほど前から、『週刊SAOトゥデイ』は、名前から「週刊」が取れて『SAOトゥデイ』

として毎日配信されている。新聞に取り上げられる内容は、攻略に関するお役立ち情報や、本部の政策発表とその解説などを中心に、新スキルの情報や、フィールド内にあるおすすめの宿泊施設など、多岐にわたっている。プレイヤーの安否情報も、更新される度に掲載されていた(それによると、ここ一週間は死者が出ていないようだ)。

 

「そうだ、何か問題点があれば遠慮なく言って下さいね。参考にさせて頂きますので」

 

 軽い調子で言ったシンカーさんに、姉ちゃんが食いついた。

 

「問題点……は特にないですけど、一つお願いが」

 

「どうぞどうぞ! できる限り反映させて頂きますよ」

 

「あの……グ、グルメ情報を入れてもらえませんか?」

 

 シンカーさんは意外そうな顔をした。

 

「グルメですか」

 

「はい。食事はSAOで数少ない、貴重な娯楽ですし、きっと生活の質を上げることにつながると思います!」

 

 姉ちゃんはいつになく熱心だ。食べ物が絡むと人が変わるのは昔からそうだけど、これだけ熱心なのは、たぶんここのご飯がおいしくないからだろう。本当に、もう少しおいしくしてくれてもいいじゃないかと、食べられればそれでいい派のボクも思う。

 

 

 新聞のグルメ面について、二人が話している間に(十分くらいだと思う)、カイトさんが、「こちらからお願いしておいて、遅くなってすみません」としきりに恐縮しながら戻ってきた。時計はすでに、深夜〇時を回っている。さすがにボクたちも堪えてきていて、ボクはここに来てから何回あくびをしたか分からない。やるなら手短にして欲しいな。

 

 

「では、早速質問させて頂きます。ボス部屋を発見するに至った経緯を教えてください」

 

 カイトさんはすぐに仕事モードに入った。──のまでは、別に良かったんだけど。

 

「皆さんの趣味はなんですか?」

「パーティーの連携はどのようになさっているのですか?」

「皆さんの好きな食べ物はなんでしょう?」

「今までで一番危なかったのはどんな時ですか?」

「休日にあてた日は何をしているのですか?」

 

 次々に、切れ目なく質問が飛んでくる。パーティーは六人いるわけで、それだけでかなりの時間がかかってしまうというのに。

 

 ああ、もう一時だ……。まだ質問は終わらない。

 

 ふああ、もう二時だ……。まだ質問は終わらない。むにゃむにゃ。

 

 

 延々と続いた質問攻めは、「君たち、まだ居たのかい⁉」という高幡さんの声でようやく途切れた。最後の方はもうほとんど頭が寝ていて、なんて答えたんだか覚えてない。……ボク、変なこと言ってなかったかな。とりあえず高幡さんありがとう!

 

「君、皆さんは攻略直後で疲れているんだから、もう休ませてあげてください」

 

 高幡さんが優しくたしなめると、カイトさんは、本部長直々に言われたからか呆気にとられ、次いで時計をちらりと見て、しまった、と言う表情になった。

 

「すみません! 時間をすっかり忘れていました‼」

 

 そうしてようやくボクたちは解放された。

 

 

 

 

 ああ、昨日は長い一日だったなぁ。回想から帰ってくると、姉ちゃんはまだ新聞の内容を説明してくれていた。どれくらい回想してたんだろう。

 

「──あと、『ボス攻略パーティー選抜トーナメント大会』を開催するって。一面に大きく取り上げられているよ」

 

「トーナメント⁉」

 

 意識を引き戻して真っ先にそんな単語が飛び込んできて、ボクは思わず、ガタンと大きな音を立ててイスを倒しながら立ち上がった。ボーっとしていた頭は一発でクリアになった。そんな勢いで立ち上がったボクを、姉ちゃんは小さくない驚きをもって見つめた。でもしょうがないと思うんだ。だってトーナメントだよ? トーナメントだよ⁉ 燃える。もうめっちゃ燃えるよ、ボクは勝負ごとに目がないんだ。 

 

「それってどういうものなの?」

 

 急き込んで聞くと、姉ちゃんは勢いに圧されてか、わずかに身を逸らせながら、

 

「名前の通り。このトーナメントで上位八パーティーに残ったら、ボス攻略に参加できるんだって。結構高いハードルだけど、面白そうだね」

 

と、興味深そうに言った。トーナメントでボス攻略の参加者を決める。なんかますます燃える展開になってきた。

 

「トーナメントってどういう事をするの? 剣道みたいに一人ずつデュエルしていくとか?」

 

 思いついたままボクが訊ねる。

 

「違うみたい。まず参加資格は、パーティーメンバー全員のレベルが十を超えていること、だって。で、審査を通った三十二組のパーティーが、トーナメント参加資格を得る」

 

「へぇー、審査なんてあるんだ」

 

「人数が多すぎるからね。前に攻略組の人数が発表されたときは八○四人で、パーティー数に直すと一三四組だって。そのうち、パーティーメンバー全員がレベル十を超えているのは、五十三組って出てる」

 

「そんなにいたんだ!」

 

 ずっと攻略に出ていたのに全然気付かなかった。結構倍率高そうだな。そっちの方が面白いけど。

 

「で、審査の内容は?」

 

「パーティーメンバーのレベルの平均で、上位三十二組、だって」

 

これだと審査っていうより足切りの延長じゃないかなぁ。姉ちゃんは、ぼやくように言葉を継いだ。

 

「私たちのレベルの平均は十二を超えているから、問題ないと思うわ」

 

「でもそれなら、そもそも参加資格をトップの三十二組ってことにすればよかったんじゃない?」

 

「……本線に出場できなくても、参加申請したなかで上位三十二組に入ったパーティーは、新聞のランキングに名前が載るみたい。名前ってつまり、パーティー名のことね。スポーツの世界ランキングみたいな感じでやるって書いてある」

 

なるほど、そうすると有名になれるわけか。姉ちゃんは、「このランキングでトーナメントの組み合わせも決めるみたい」と付け足した。

 

「試合の戦い方は?」

 

「えーと……まず、大将を一人ずつ決める。次に、大将同士で初撃決着モードでデュエルを申請する。あとは、パーティー全員で協力して、相手の大将にこちらの大将の攻撃を当てればいい、って書いてある。これなら確かに、パーティーの連携も必要になってくるから、一対一のデュエルよりもボス選抜には向いているかも」

 

「それだと、大将に攻撃できるのは大将だけになっちゃうんじゃない?」

 

「うん。他の攻撃はたぶん、システムに弾かれてしまうと思う。逆に言えば、弾き飛ばすことはできるわけだから、やりようは色々とね。どちらにしても、大将は強い人がならないと、折角パーティーが良い調子でも、勝ち上がれないってことね」

 

 ふぅむ。すると、大将はキリトか姉ちゃんの二択かな。デュエルであることを考えると、姉ちゃんの方が良いかな?

 

「開催日時は……十二月二十・二十一日、両日とも午後一時から、だって」

 

「六日後かぁ。連携の確認をしないとね!」

 

そして次の日から、ボクたちはパーティーで訓練を始めるのだった。

 

 

 

 

 トーナメントの開催が知らされてから五日。今日の新聞には、大会申請者のランキングが掲載されていた。パーティーはそれぞれ名前を付けるように言われている。ボクたちのパーティーの名前は、実は前から決めていた。

 

『スリーピングナイツ』

 

 それがボクたちのパーティーの名前だ。ボクと姉ちゃんはもちろんの事、ナーヴギアをかぶって、この世界にいる限り、ボクたちは眠ったままだ。その中でも戦う意思と決意を込めた。発案者は姉ちゃんで、反対する人は誰もいなかった、どころか、みんな(ボクも含む)でこの名前を絶賛した。姉ちゃんは少し照れくさそうにしていたけど、採用されて嬉しそうだった。

 

 さて、今日、ついにこの名前が、世間にお披露目になる。そうなるとやっぱり順位が気になる。せっかくだから天辺にこの名前があるといいなぁ。

 

 スリーピングナイツの面々を、ボクたちの部屋に招いて、ボクたちは円になって床に座り込んだ。いつも通りパースさんは泰然としているけど、その他のメンバーは、緊張の面持ちで新聞に目を遣っていた(今回はみんなで一緒に確認したいと言うことで、わざわざ少しお金を払って、紙の新聞を購入した)。

 

 大丈夫なはず。だってかなり頑張って攻略とかレベリングとかやっていたんだし。

 

 そう落ち着かせようとしても、頭の端に不安の影がちらつく。本部の制止を無視して、無茶な攻略をし続けている可能性もあるし、そもそもで、ボクたちより単純に能力が高い人がいても、何もおかしいことは無いんだ。

 

 ごくり、と誰かがつばを飲み込んだ。姉ちゃんが、ゆっくりとゆっくりと、指先を新聞の左下隅に引っ掛け、目的のページに挟む。

 

「じゃあ、行くよ……?」

 

 ひっそりとした声。ボクたちは頷く。

 

 バサ、と勢いよくめくられた新聞紙。

 

一番上は……。

 

 

──攻略組 パーティーメンバー平均レベルランキング──

 

 

1位 スリーピングナイツ  12.33 ポイント

2位 リベルタドーレス   12.17 ポイント

3位 風林火山       11.83 ポイント

4位 ブルー・ドラゴンズ  11.50 ポイント

5位 アインクラッド解放隊 11.33 ポイント

 

  ……

 

 おお‼ と場が湧いた。

 

 やった、トーナメント圏確保! というかホントに一位だ‼

 

「ねえ、風林火山ってクラインさんのところじゃなかったっけ?」

 

 興奮しながらも、他のチームをしっかり見ていたらしいく、姉ちゃんが目を輝かせた。そういえば前にそんなメッセージをもらった気もする。よく覚えてるなぁ。キリトは少し思い出すのに時間をかけて、

 

「そういやアイツ、そんなこと言ってたな。クラインのやつ随分強くなったんだなぁ」

 

 感心したように言う。なぜか目線が保護者みたいになってる。自分が教えたからかな。ボクとしては、こう思う。

 

「クラインさんと戦うの、楽しみだなぁ!」

 




お読みいただいてありがとうございました

トーナメントが始まります。これだけ攻略組がいればこうなるんじゃなかろうか、という妄想設定です。

クラインさん、原作では結構後の方に攻略組に入りましたが、最初から自分たちだけを強化するようにしていればもっと強かったと思うんですよね、という評価で3位にさせてもらいました。

次回もできる限り早く投稿できるように頑張ります‼
では、また(^O^)/
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