いやー楽しみです(ゲス)
薬がある。
その言葉にどれだけ救われたか。
例の書類を見せてしまったみき。
くるみの気持ちを察せられなかったフランクは各々、罪悪感を抱きながら学校を走る。
そして地下の存在を隠していたシャッターを潜り、階段を降り。
対面した。
かつて佐倉慈だったモノを。
「あれが……」
「……やるぞ」
フランクは駆け足で飛び出し、拳を握り締めて顎を捉える右ストレートを放った。
肉と血が飛び散る嫌な音が鳴る。
大の男。しかも、従軍経験のあるフランクの放たれた拳は屍を軽々と吹き飛ばし、少しばかり腐った体が地面に強く打った為か、腕があらぬ方向へと曲がっていた。
「ギギギ」
「まだ動くかクソッ」
仰向けに倒れた屍に対して、フランクはそう毒づくと止め刺すべく、再び右手の拳を握るが、それをみきは制した。
「……まさかと思うが薬で治すとか言わないよな?」
「言いませんよ。もう、死んでいますから。ですが、この人は……学園生活部がやらなくちゃいけないんです」
くるみの言葉に、フランクはいざという時を考えて構えは解かないが、大人しく下がった。
「佐倉慈先生。はじめまして、直樹美紀。学園生活部の新入部員です。めぐねぇの話はみんなからよく聞きました」
みきは語る。
学園生活部の今を。
ゆうりは皆をまとめ。
ゆきはいつも明るく。
くるみは頼りになり。
変なジャーナリストがいること。
そんな人達がいる学園生活部から、どれだけ多くを貰い、救われ。
生き抜くことの意味を教えてもらったのか。
「もう、大丈夫です」
シャベルを握るみきの手は堅く。
その目に宿るものは、かつてのゾンビに対する怯えではなく。
大切な仲間を助け、明日をしっかりと生き抜こうとする強いものだった。
そして静かに振り上げられたシャベルは、一呼吸置いた後。
佐倉慈という人物との決別を表す様に勢いよく振り下ろされた。
床一面に血の池が広がり、それだけで留まらず、一部は跳ね上がる。
もう、屍は動くことはないだろう。
「行きましょう!フランクさん」
「あぁ、行こう。まぁその前に……」
返り血で濡れた制服を意を返さずに、みきはフランクを急かすが、頭の原型はすでに留めていないめぐねぇにフランクは跪き。
日本なので珍しくはあるが、一応は聖職者に値する教師という職業なので不自然な点はない、その首にかけられた十字架のネックレスを外し。
佐倉慈という教師がいたという証をフランクは持ち帰り、然るべき人達の場所へ返すことを決めた。
―――――――――――
ゆきに一言。
ただいまと、一声を掛け。何かが暴れる音に二人は嫌な予感を感じ、音でゾンビが引き寄せられるなんてことを考えず、勢いよく扉を開けた。
「STOOOOOOOOP!!」
「薬、取ってきました!」
「え?」
「薬だ」
「薬です!」
嫌な予感はした。
だが、運よく的中はしなかった。
ゆうりが包丁を振り下ろす寸前で止める事ができた。
「ミークン水と包帯をくれ。注射の準備をしておく」
「はい!」
ゆうりは安堵と緊張状態が続きで、放心状態になったので、どたばたとフランクとみきは準備に走り。
鎮静剤と抗生物質。
それと今の死体が歩く、パンデミックの原因となっている治療薬らしきΩマークの実験薬が混じったアンプルを注射器で吸い。
くるみの腕から薬を注入した。
「クルミチャンの気持ちを理解できなかった俺の責任だ」
「いいえ。くるみを行かせたのは私よ。私のせいだわ」
注射を刺した後、みきは疲れからか寝室に行き。
残ったフランクは両手の指を合わせたと思ったら、離し、また合わせと忙しなく歩き回り。
ゆうりはうな垂れて落ち込んでいた。
しかし、どう足掻いても後はソファに眠るくるみ次第だ。
「部長失格ね」
「何言っているんだ。リーサンじゃなければ誰があの三人をまとめるんだ」
「でも……」
「いいや、よくやっているさ。俺がいなくても大丈夫なくらいにな」
「それって……」
「とにかく、今はゆっくり寝るんだ。見張っておく」
大きなボトルに入ったオレンジジュースをフランクはポケットから取り出し、ゆうりに差し出す。
そして、それをゆうりは受け取ると一口飲んだ。
渇いた喉に通るオレンジジュースの甘さは米国産特有の無駄な甘さが口に残るが、今はその甘さが気持ちを落ち着かせる。
「フランクさん」
「何だ?」
「ありがとう」
「あぁ」
ゆうりはフランクの言葉の意味を理解した。
言いたい言葉はたくさんあるけれど、今はフランクの言ったとおり、ゆうりは寝ることにした。
ゆうりもみきと同様に、疲れていたからだ。
くるみの無事を祈りつつ、ゆうりは静にまぶたを閉じた。
―――――――――――
「よいしょ。よいしょ」
手錠を外してこそこそとくるみに近づくゆき。
くるみの頬を伝う汗を拭い。まだしっかりと暖かい腕を抱く。
「ずっと一緒だよ」
「夜更かしする悪い子は誰だ」
「うひゃぁ!!」
指でカメラを作りながら、ゆきに声を掛けたのは最初に着ていた男もののスーツ姿のフランク。
ゆきが来ることをフランクは分かっていたようだ。
「びっくりさせないでよもー」
「すまんすまん」
頬を膨らませてむくれた顔をするゆき。
だが、フランクに反省の色はない。
それよりも、意を決したようにゆきを真正面から見つめると。
くるみに繋がっていた手錠を回収し、ポケットからめぐねぇのネックレスを取り出しゆきに手渡した。
「こ、これ……」
ゆきの目から生気が抜けていくのが、はっきりとフランクには感じた。
ただでさえ、くるみが生死の瀬戸際なのに、今渡すのは最悪のタイミングだとフランクも理解している。
しかし、めぐねぇと決着を付けた今日。
ゆきに渡さなければいけない。
フランクはそう確信して、渡した。
「めぐねぇ……めぐ……」
「預かった物だ。けど、今は考えるな。クルミチャンが心配だろ?」
震えるゆきの手を握り。
フランクはそう強く訴える。
今はまだ考えなくてもいい。
めぐねぇという過去よりも明日を生き抜くべきくるみの方が大事だから。
「……うん」
ゆきからの重い返事を受け取り、フランクは起きるまで見ていると伝えると、椅子に腰掛け。
ゆきは、激しく動く心臓を手で押さえつつ、くるみの傍で眠りに付いた。
あと2~3話くらいで卒業です。
めぐねぇのネックレスの件ですが、原作だと誰が拾ったのか特に書かれてないのでフランクさんにまかせました。