あの慌しい日から翌日。
薬のおかげで、くるみは助かった。
その日は少しだけ豪勢な食事が出た。
さらに翌日、全員で地下へ向かう前に、フランクは一人でこっそりと地下へ向かい。
死体を弔った。
そして、さらに翌日。
学園生活部は、屋上でゆきの提案でネックレスが添えられた十字架の前で祈っていた。
見守っていてくださいと。
そんな少女達は真摯で、何よりひどく悲しい。
(そろそろ潮時……だな)
だからこそ、フランクは今のパンデミックの真相を確かめたいという気持ちが逸る。
もしかしたら、ランダル・コーポレーションにウイルスの特効薬があるのかもしれない。
何よりスキャンダルの臭いが、ウィラメッテ以上に濃厚に漂っているからだ。
生活部が祈りを捧げる中、フランクの視線の先はランダル・コーポレーションただ一点。
別れの時間は近い。
最後に、ゆきからめぐねぇという言葉がたった数日の間に、目に見えて減った。
―――――――――――――
カメラを構え、シャッターを押す。
すると古めかしい軽やかな音が鳴り、カメラの下部からフィルムが出た。
そしてそのフィルムは時間の経過と共に、写った物が浮かび上がる。
フィルムには何も無い場所で見事なまでに転ぶゆきが写っていた。
「んーグッド」
「嬉しそうだな」
「フランクさん。前から欲しがっていましたからね。カメラ」
「被写体もいいからな。どんどん撮らないと。卒業アルバムの為にもな」
「でも、転んだ所なんて、撮らないでよフランクさん」
『いいじゃない。ゆきちゃんらしくて』
「えー」
「そうですよ。とっても先輩らしいじゃないですか。ふふっ」
カメラ一つで盛り上がる少女四人と一人のおっさん。
今日は巡ヶ丘学院高校文化祭。
午前は学校の施設を歩いて周り、今は放送室にいるゆうり以外は生活部の部室にいた。
「おっ、いい顔だ。貰い!」
「え、ちょっと。何撮っているんですか!?フランクさん!」
「悪い悪い」
みきが僅かに漏らした笑みをフランクは逃さず撮ると、みきは顔を赤くしてフランクを追いかける。
すると悪ノリしたゆきもくるみを加わり、四人で追いかけっこが始まり。
「あらあら」
ヘッドホンから流れる楽しげな声にゆうりも釣られて笑った。
その瞬間、僅かにゆうりの掛けるヘッドホンに雑音が流れた。
それは音が小さく、周波数もうまく合わさっていないからかよく聞こえない。
しかし、明らかにフランクとは別の男性の声であった。
『ゆきちゃん!大変!』
ゆうりの声は緊迫に包まれ、文化祭は静に終わりを告げた。
――――――――
学園生活部員とフランクは全員屋上へ集まった。
そして、上空を飛ぶヘリに向かい。
「おーい!!」
誰もが叫んだ。
叫び続けた。
そこに、希望があると信じて。
「たまげたな。生きてやがった。よし、待ってろ相棒!今行くぜ」
一方でヘリの方では、サングラスを掛けた男はそう良いながら、ご機嫌な表情で操縦していた。
後ろにいるゾンビの存在に気がつかず。
「ぎゃぁあああああああああああ!」
案の定、サングラスの男はゾンビに噛みつかれ、操縦者がいなくなったヘリはふらふらとした軌道を描きながら。
学校のグラウンドに、墜落した。
(何でいるんだ。アイツ)
声がフランクに届いていなかったので、仕方ない。
ただ、生活部が各々、落胆や失望といった顔を浮かべる中。
フランクの顔には、呆れの表情が浮かんでいた。
あのヘリのパイロットがフランクと知り合いという情報は、生活部が知ることは一切無いだろう。
それよりも、グラウンドに落ちた際に起きた揺れが、フランクは気になった。
「なぁリーサン」
「……何?」
「あいつ等に生前の記憶とやらがあるのなら、日本で地震が起きた時。あいつ等どこに非難するんだ?」
「まさか……!」
学校制圧際、校門を封鎖し。
ある程度はワイヤーで補強してあるが、それでもゾンビはあまりにも多く、大量に押し寄せられたら壊れかねない。
なので毎日、フランクは校門を開け。
校門付近にいるゾンビを処理して負荷を減らしているのだ。
「今日は大量だな」
「なぁ、フランクさん私も行ってもいいか?」
「私も、行きたいです」
「頼む」
いつもは生活部員には危険な目に合ってほしくないフランクだが、止めはしなかった。
もう離れる決心をした。
甘えられる日々は終わらせないといけない。
「武器がいるな」
フランクは、倒れていた手ごろな机を起こして、その上に野球部の木製バットと、技術室で見つけた釘。
そして、ガムテープを取り出した。
「何作るのフランクさん?」
「あれだよあれ!釘バット」
目を少しばかり光らせたくるみだが、すぐに異様な光景に困惑した。
釘バットといえば、バットに釘をトンカチ等で打ち込んで作るのが、当たり前だが、フランクはガムテープで作り上げていく。
そして数秒と待たずに出来たそれは、鈍器を使わずにガムテープで作ったはずなのに、ガムテープが一切張られていない釘バットが出来上がった。
「yeah!」
「うん。フランクさんが不思議なのはいつものことか」
くるみ言葉に、生活部の面々は無言で頷く。
「行くか」
今の墜落した揺れに反応したゾンビはどれだけいるだろうか。
もうすでに、校門に押し寄せているゾンビは普段の倍を超えている。
「いってらっしゃい」
「おう」
「いってきます」
くるみ、みきの順番で屋上を飛び出て行き。
最後にフランクは、親指を立てて、出発した。
デッドライジングの開発はカプコン。
つまり、そういうことです。