幸運の一番星に憧れた者   作:大夏由貴

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これからは基本的にこのは視点で話を進めようって言った筈なのに何故か半分程こなた視点になっていた。
どういうことなの・・・。


第一章 夏の日々
一話目 海へやって来た少女達


それは唐突な事だった。

 

「・・・こっちに来る?どういう事だ?」

『だからね、そっちの海に皆と一緒に遊びに行くって話。』

 

あれから一週間後、あと二日もたてば給料日がやってくるので今度こそクーラーを買って快適な日々を過ごそうという決意を固めて今日も今日とて頑張ろうとバイトに出勤しようとした時に珍しくこなたから電話がかかってきた。

まだ時間に余裕はあるし、何しろこなたからの電話だ。無視するなんて選択肢はハナから存在せず、会話を初めてしばらくたった後、その話題が出てきた。

 

我が家の近くには海がある。近くと言っても一km程離れているが。

この季節、この時期には海水浴を楽しむ為に多くの人がやってくるのだ。

 

「皆ってお前の友達か?いくら何でも高校生数人だけで神奈川まで来るのは親がいい顔しないんじゃねぇの?」

『だいじょーぶ!担任の黒井先生とゆい姉さんが引率してくれるから。』

「あー、確かお前の親戚のお姉さんだっけか。でもこの前話聞いた時その人車に乗ったら暴走するんじゃなかったっけ?」

『うん。だからかがみとつかさには人柱になってもらう。』

「なにげにひでぇなお前。」

 

さらりと友人を生贄に捧げる少女に対し冷や汗を流す。彼女は時々さりげなく知り合いに負担を押し付ける事があるので約束とかをする時は前もってどこか抜け穴が無いか確認しなければならない。昔は俺もそれに引っ掛かって大変苦労した。

 

「で、予定はどうしてんだ?日帰りか?まさかノープランって訳じゃねぇよな。」

『いんや、もう旅館とかも調べてあるよ~。この前このはに教えてもらった所。あと一応日帰りの予定。』

「あーだからあの時色々聞いてきたのか。」

 

この前のメールのやり取りの時にこなたからここの近くで良い旅館とかが無いか、という質問をされて不思議に思っていたのだ。

すぐさま捨てる為に紐で結んでいた雑誌類を取り出してオススメの旅館、ホテル等を調べ、その中から気軽に海に来れる場所、ウチのマンションからさほど遠くない場所を割り出し、値段的にもあまり苦しくない数軒を探し当てたが。

 

『そそそ。だから特に問題は無いよ。』

「いつ来るんだ?」

『明明後日だよ~。』

「そうか。何か手伝う事とかあるか?荷物運び位なら手を貸すぞ。」

『んーん、別にそんな大荷物を持って行ったりはしないから大丈夫。けどせっかくだからお迎え宜しく~。』

「ん、わかった。」

 

そうして通話を終える。三日後か・・・その日からはバイトのシフトも特に入ってないし行けそうだな。

 

「ってヤベェ、そろそろ行かねぇと。」

 

随分長い間話してたのか、もうあまり時間がなかった。

これから出ようという時に電話がかかってきたので既に準備は終えている。

すぐに外に出て鍵を閉め、駐輪場に向かう。

自転車を取り出し、急いでバイト先に向けて走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして当日・・・

 

「・・・遅いな・・・そろそろ来ても可笑しくねぇんだが・・・。」

 

俺は一足先に海水浴場に来ていた。

現在午後三時四十七分。途中のパーキングエリアで昼食をとったとしても流石に時間がかかりすぎだ。

もしや事故でもおきたのか?と心配し始めた時、

 

テロリン♪テロリン♪

 

メールが来た。見てみるとこなたからだった。

 

『件名:ゴメン!

 

本文:ゴメンね~。ゆい姉さんをかがみ達に押し付けたのは良いんだけど黒井先生まで運転に問題があったからそっちに着くの夕方位になりそう。

今日は一晩旅館で泊まる予定だからお迎えは明日で良いよ~。』

 

・・・それは引率者としてどうなんだよ。

そう思わずにはいられなかったが、とりあえず今日の所は一旦帰った方がいいようだ。

 

「結局無駄足だったな・・・。いや、この日射しの中日傘か帽子、日焼け止めが必要だとわかっただけでも収穫か。」

 

ぶつぶつ呟きながら近くのスーパーに停めた自転車を取りに行く。

この炎天下の中、出来るだけポジティブに考えないとやってられなかった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

はぁ・・・迂闊だった。まさか両方ハズレだったとは・・・。

ようやく辿り着いた海水浴場は既に人が殆どおらず、今から泳ぐなんて事は当然出来なかった。

結局その日はそのまま旅館で一泊。折角県外に来たのだから皆お土産をどうするか話している。私も昼過ぎまで待ってくれた彼の為にお詫びの品を買わなければ・・・。

その後は部屋に案内され、荷物を置いたら後は晩御飯の時間までにお土産を買っておこうという話になった。

 

そしてやって参りましたお土産コーナー。

皆どのお土産を買うか話しているけど、私はその前に適当なお菓子売り場に向かう。

 

「あれ?こなた、あんたどこ行くの?」

「いや~、今日ちょっと友達を待ちぼうけさせてたから先にそっちの方を買っておこうかなと。」

「おまっ、今日神奈川に来る予定伝えるの忘れたの!?その人が不憫過ぎるわ!」

 

どうやらかがみは埼玉で友達が待ってる間、それをすっぽかして県外に出ていったとでも思ったのか、信じられないとでもいうようにツッコンだ後、ジト目で私を見つめる。って違う違う。

 

「いやいやそうじゃなくてね?その友達が神奈川に住んでるからお迎えを頼んだのだよ。」

「あ、そういう事。それで結局来るのが遅れたからその人のお詫びにって事?」

「そゆこと。流石に何時間も待たせちゃったから何か買ってあげようとね。」

「まぁ確かにこの暑い時期にそんだけ待たせちゃね。っていうか原因が違っただけで結局その人不憫ね・・・。」

 

かがみが呆れたように呟く。いや、私も予想外だったんだよ。まさかあんな落とし穴があるなんて・・・。

そうしている内につかさやみゆきさん、ゆい姉さんに黒井先生までやって来た。

 

「こなちゃん、どうしたの~?」

「なんか此処に住んでる友達と待ち合わせしてたんだけど結局時間が合わなかったからお詫びの品を買うらしいわよ?」

「そうなんですか。それは早めに決めませんとね。」

「うぐっ、それって多分ウチらが運転遅れたからやろうな・・・。」

「うぅ・・・そうでしょうね・・・。」

「さて、どれを買おうかな~?」

「普通にその人が好きそうなヤツを買ってあげればいいんじゃないの?」

「いやね?あやつは何渡しても私から貰ったのは全部嬉しいって言うからね?」

「へぇ~。何?男?」

 

かがみが笑いながら聞いてくる。冗談のつもりだったんだろうけど・・・

 

「うん、そだよ。」

「「「「「・・・えっ!?」」」」」

 

皆が一瞬で固まる。おおう、良い反応。もう少し様子を見てみよう。

やがて黒井先生が一番早く我に返り、

 

「泉ぃぃいい!!お前こんな所に彼氏なんかおったんか!?何でや!ウチと同じネトゲーの住人のお前に何で男がおんねん!」

「おおーうこなた、いつの間にそんな人が出来たんだい?お姉さんビックリだ!」

「え、遠距離恋愛ですか?泉さんがそういった事をされているとは・・・少し驚きです。」

「え・・・ええ~!?こなちゃん彼氏いたの~!?私初耳だよ~!?」

「は、ちょ、嘘、ホントにそうなの!?」

 

うむ、予想以上に良いリアクションが取れた。そろそろいいかな?

 

「ううん、男だけど彼氏じゃないよ?」

「「「「び、ビックリした・・・。」」」」

「ありゃ、なんだ違ったの?」

 

ゆい姉さん以外は何か凄く疲れた顔をしている。作戦大成功。

 

「かがみ達にはこの前ちょびっとだけ話したでしょ?夏祭りの時。」

「ああ~、あの時言ってた複雑な親友。」

 

そう言うと思い出したのか、三人がうんうんと頷く。

ゆい姉さんと黒井先生が頭にハテナマークを浮かべる。そういえば二人はあの時いなかったっけ。

 

「成る程ね~。その親友が此処に住んでるんだ。」

「そういえばそのような話もしましたね。一度会ってみたいです。」

「あ、そっか。だからこなちゃん此処にしようって言ったんだ。」

「そゆこと。こういう時じゃないと中々会う事出来ないからね~。」

 

しみじみと呟く。最後に直接会ったのは中学の卒業式だったっけ?

 

「うし!そんなら金はウチが払うで!元々ウチらがキチンと引率出来なかったからやしな。」

「それなら割り勘にしましょうよ。私にも責任はあるんだし。」

「おお!ホントに!?ありがと~先生!ゆい姉さん!」

 

そんな事でお詫びの品はショコラにした。何でも喜ぶって言っても彼の嗜好は理解しているつもりだ。結構甘党だからね、彼。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「あー疲れたー。アイス食おうアイス。」

 

家に帰って手を洗った後、すぐさま冷凍庫に入れてたアイスを取り出す。クーラーは買ったが届くのは明日の朝なので、それまでは扇風機一台で過ごさなきゃならん。

 

「ったく・・・折角今日どうするか予定立ててたのに・・・。プランの練り直しだな。」

 

ぶつぶつ呟きながら頭の中で予定表を組み直す。明日は今日より日射しが強いらしいからこなたに日焼け止めを持つように連絡を入れなければ。

 

「となるとフォローの為にこっちも色々持って行くか。他に持って行く物は・・・どっかで買うか。」

 

この前行ったデパートで色々売ってあったからそこで買い物でもしよう。食材も切れてきたし。

そうと決まれば行動も早くなる。アイスを食べ終わると財布を持ってかつてのデパートに旅立つ。

 

結局食材に加え、こなたの為に色んな小道具を買って帰った頃にはとっくに夕食の時間だった。急いで小道具を整理し、晩飯を済ませて風呂もさっさと入る。

 

そして夜、こなたに電話で明日の予定を聞いておく。

 

「それじゃあ昼前に海水浴場で現地集合って事でいいんだな?」

『そだね。今日は本当にゴメンね~。』

「気にすんな、こっちが好きでやっている事なんだから。」

『そう言ってくれると有難いね。けどこのはは泳がないの?勿体ない。』

「んな事言われてもまず俺水着持って無ぇから。昨日クーラー買ったから資金もほとんど尽きたし。」

『おお!ついにクーラー買ったんだ!』

「当然だ。この時期に扇風機一台で過ごすのは自殺行為だろ。」

『むしろよくここまでもったよね。』

「俺の鋼の忍耐力のおかげだ。誉めてくれてもいいぞ。」

『うんうん、偉い偉い♪』

「ありがと、それじゃあ明日会おう。」

『うん、じゃーね~。』

 

そう言って通話を切る。もうやる事は無いので今日は寝る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・・・

 

「ふぁ・・・。・・・もう朝か。」

 

ベッドで目覚めた俺はとりあえず時計の針を確認した。

現在午前九時半。ヤバイ、そろそろクーラーが届く。その前に朝飯を済まさねば。

今日はさっさとこなたに会いに行く為、早い内に準備を終わらせておきたい。

キッチンに向かい、何を作るか考える。食パンが尽きた為、今日は和風な感じにしよう。ちょうど昨日の味噌汁も残っているし。ていうか昨日パン買っときゃよかった。

 

「そうなると魚がいるな・・・よし、一応ある。」

 

冷凍庫を見たら鮭が丁度一人前あった。朝食の献立を頭の中で組み立てる。

とりあえず鮭を解凍して、フライパンで焼いていく。味付けは適当に塩胡椒を振って済ませる。

次に卵焼きを作っていく。薄焼き卵を作ってそれを巻いていき、一口大に切ればハイ完成。

味噌汁を暖めておき、大根卸しを用意して米を茶碗についでおく。皿に鮭と卵焼きを移し、鮭に大根卸しを乗せて、暖まった味噌汁を器に入れたら完成だ。本当はお浸しも作りたかったがもうあまり時間が無い。

 

「とりあえず食おう。あんま時間かけたくねぇし。」

 

朝飯を食ったら着替え、顔を洗っておく。歯を磨き終わる頃に宅配便がやって来た。クーラーを受け取った後、すぐに取り出してリビングに取り付ける。これでもう暑さに悩まされる事もなくなる。

 

満足げに頷き、部屋に戻って準備が完了した事を確認し、アイスボックスと愛用のバッグを手に今日こそこなたを迎えに海水浴場へと向かった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ふぁ~・・・。よく寝た~。」

「寝過ぎよ。あとはあんたとつかさだけよ?ほら、つかさも起きなさい!」

 

朝、私は布団から抜け出して体を伸ばしていた。

うむ、今日も良い天気だ。絶好の海水浴日和だろう。

 

「う~ん・・・もうちょっとだけ・・・。」

「いつまで寝てる気よ!?泳ぎに行くんでしょ!早く起きなさい!」

「ん~・・・わかったよぉ~・・・。」

 

傍ではつかさがかがみに起こされている。そんな状態で海に行って大丈夫かなと思ったが、旅館から出る頃にはいつもの調子に戻るかと思い直し、そっちはかがみに任せる事にした。

 

「あ、みゆきさんおはよ~。」

「はい、おはようございます。今日も良い天気ですね。」

「そだね~。とりあえず布団を片付けるとでもしますか。」

 

まずは布団を片付け、まだぼんやりしている頭をシャッキリさせるために洗面台で顔を洗う。

戻った時にはつかさも布団から出ていた。まだ若干眠たげだが。

 

「おはよぉ~。今日って海に行く日だったっけ?」

「いや、それは何かおかしくないか?間違ってはないけど。」

「つかさ、もう神奈川には着いてるよ。今は此処来て二日目。」

「あれ?あ、そっか!」

 

と、妙なコントをして朝御飯を食べる為にテーブルを出した後、女将さんに頼んで朝食を出してもらう。

 

 

朝御飯を食べた後、海に行く為に荷物を整える。

 

「わぁー!よく晴れてて絶好の海水浴日和だよ~!」

「全く、昨日はどうなることかと思ったわよ。」

 

つかさが外の景色を見て声を上げる。かがみは昨日随分消耗したようだ。分かるよ。だから押し付けたんだし。

う~ん・・・いちいち向こうで着替えるのも面倒だし、

 

「私、最初っから水着着てっちゃおー。」

「あんたはまたそんな子供みたい・・・んなぁ!?」

 

スク水を着た私を見て驚愕の顔をするかがみ。

 

(コナタサン、それはマジッスか・・・!?)

 

「てか、その歳でスクール水着とか聞いた事無いぞ・・・。」

「そういうニーズもあるんだよかがみん。」

 

スクール水着の中央→[6-3 泉]

 

(い、一体いつの水着だぁ!?)

 

かがみが何故か冷や汗を流し始めた。どったの?

 

 

 

 

 

海の家で着替えを済ませた私達はとりあえずその辺をぶらつく事にした。ざっと見たところ彼はまだ来てないみたいだし。

ちなみにゆい姉さんと黒井先生はパラソルの下で談笑している。

 

「大体あんた、運動神経良い癖に何で浮き輪なんて持ってんのよ。」

「別に泳げるからって海の中はザンザンクロールしないじゃん?気分はレジャーなのだよ、レ・ジャ・ア。それにこのニーズに合わせるとビジュアル上スク水と浮き輪は外せないんだよ~。」

「そういうニーズの人は海なんて来ないんじゃないの?」

 

なんて事話しながら歩いていると、

 

「ねえねえ、そこの君達。ちょっと俺らと一緒に遊ばない?」

「おー、お前やるなあ。結構上玉揃いじゃん。」

「えっ?えと、私達ですか?」

「おおう!ナンパだ!」

 

と、二人の男の人達に引き止められた。まさか実際にこういうイベントを体験をするとは!

 

「あれ?もしかして子供連れ?」

「小学生?初めまして~。」

 

・・・うん、まぁそんなとこだろうと思ったよ。ロックオンされていたのは三人だけだったみたい。

 

「失敬な、同級生だよ。」

「ええ!?嘘!?このナリで!?」

「随分個性的なグループだなぁ。まぁいいや、それでどう?」

「え、えっと・・・どうしようお姉ちゃん。」

「ど、どうしようって言ったって・・・どうする?」

「す、すみません・・・こういった事にあったのは初めてなので・・・。」

 

フム、やっぱり皆ナンパされたのは初めてみたいだからどう対応すればいいか迷っているみたいだ。

 

「ねぇ良いでしょ?人数多い方が絶対楽しいし!」

「そうそう、遊ぼうよ。」

 

声を掛けてきた方の男性がしつこく誘ってくる。ニヤついた顔がちょっと気味が悪い。片割れの男性も便乗してくる。う~ん、どうしようか・・・。

 

・・・?うん?なんだろ?片割れの男の人、なんか見覚えが・・・?

 

と、ちょっとした違和感に首をかしげていると結局話がまとまらなかったのか、かがみ達が私に意見を聞いてくる。

 

「ああもう!どうしたらいいと思う?こなた。」

「・・・え?」

 

私の名前を聞いた瞬間、片割れの男性が硬直する。

 

「ねぇ、いいからとりあえず一緒に行こうよ。」

「ち、ちょっと!離して!」

 

ナンパしてきた男性が強引にかがみの腕を引く。その瞬間、

 

「やめろこの馬鹿!!」

 

ガンッ!

 

「痛っ!?」

 

片割れの男性がナンパの男性に拳骨を食らわせる。

いきなりの急展開に目を白黒させる私達。

殴られたナンパの男性が片割れの男性を睨み付ける。

 

「ちょっと、いきなり何スンですか!」

「お前こそ何するつもりだった!?今止めなかったらどうなっていたことか・・・。」

「ハァ?何言ってんスか?」

「いいから少し黙ってろ!」

 

怒鳴られて怯んだナンパ男。そして片割れが姿勢を正して私に向かう。え、私!?

急に礼儀正しい態度をとった男性に混乱する私。皆も何が起こっているのかが分からないようだ。いや、一番分からないのは私なんだけど!

そして片割れが口を開く。

 

「ご迷惑かけて申し訳ありませんでした!泉さん!」

 

・・・静寂が、この場を包んだ。

え、いや、ホント何?ドユコト?

 

「あ、あの~・・・?」

「どんな罰でも受けます!ですから総隊長にこの事を伝えるのは・・・!!」

「ちょ、ちょっと道背先輩?どうしたんスか?」

 

いきなり謝罪され、罰を受けると言われて何がなんだか分からなくなる。

・・・ん?総隊長?・・・あっ!もしかして!

 

「何急に謝っているんスか!そりゃ、少し強引だったかもしれなかったですけど・・・」

「バカッ!お前この人の事知らねえのか!」

「いや、知りませんけど・・・」

「総隊長のご友人の泉こなたさんだよ!!」

「ええ!?この人があの!?」

「そうだよ!お前も謝れ!」

「わわっ、す、スンマセンでした!」

「・・・えーっと、何が起きてる訳?コレ。」

 

かがみ達が凄く戸惑っていたけど今はちょっと置いておく。

 

「えっと、もしかして桜道警戒隊(さくらみちけいかいたい)の人?」

「ハイッ!三番隊隊長、道背(みちせ)はしのぶです!」

「お、同じく三番隊副隊長、鳴跳(なるとび)くぬぎです!」

「うわぁ、アレまだ解散してなかったんだ・・・。」

 

直立姿勢のまま自己紹介する二人の台詞を聞き、遠い目をする私。

思い出した。このはしのぶって人は中学の時、彼の喧嘩に巻き込まれた私が戦闘不能にした連中の内の一人だ。あの後彼の舎弟になるってしつこく彼に付きまとっていたから印象に残っている。

 

桜道警戒隊とは、そういった彼の舎弟になりたいという人達が集まって勝手に作り上げた親衛隊のようなものだ。殆どが彼に助けられた人だけど、中には彼と喧嘩して彼についていくと決めた人もいる。所詮烏合の衆のような軍団だったからそのうち勝手に瓦解するだろうと二人で結論付け、放置していたからとっくに無くなったと思っていたのだが・・・。

 

「よくまぁ続けられたもんだね。絶対に組織として成り立たないって思っていたんだけど。」

「一番隊隊長が規則、人員配置、各々の役割を作り上げたおかげです!」

「どこにそんな情熱があったのさ・・・。そんなの他の事に使えばいいのに。」

「いや、あんたが言うな。」

 

落ち着いたのか、かがみがツッコンでくる。心外だなぁ、私は他人に迷惑掛けるような情熱はそんなに持ってない。

っていうか一番隊とか三番隊とか総隊長とか、絶対その一番隊隊長ブ○ーチ好きだよね。

 

「まさか泉さんのご友人に迷惑を掛けるとは・・・!本当に申し訳ありませんでした!」

「い、いや、別にそこまで謝らなくても・・・。」

 

かがみ達にも頭を下げ、誠意を示すはしのぶ君。かがみ達はさっきと百八十度違う態度をとられ、反応に困っている。

 

「本当に申し訳ありません!ですから総隊長にこの事を伝える事だけはご勘弁を!」

「あーうん、分かった分かった。黙っておくからもういいよ。」

「ありがとうございます!」

 

感謝の為、また頭を下げる二人。いや、もういいから。

ちなみに同じ埼玉に住んでいたはしのぶ君が何故神奈川にいるのか不思議に思ったが、聞いたところ三番隊は彼の近くで敵対勢力がいないか調査し、本部に連絡を入れる役割を持っているらしい。

それで丁度夏休みだったので一週間程神奈川に滞在する事にしたようだ。

ナンパをしていたのも海に調査しに来て違和感無く妙な噂話がないか確認する為だったようだ。いやその前に本部って何、本部って。

 

結局その後また調査を再開する為に色んな人達に声を掛けて回ると言って、他の人達に話し掛けて行った。

 

「何ていうか・・・あんた一体中学の時何してたのよ。」

「誤解だよ~。私は殆ど何もやってないって~。」

「殆どって何だ、殆どって。」

 

かがみが呆れて私を見る。ホントだよ!八割位は彼のせいだって!

つかさとみゆきさんも返答に困ったように笑っている。うう・・・何でこんな事に・・・。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「やっと着いた・・・。途中でジュース買っといてよかった。じゃなきゃ脱水症状になる。」

 

駐輪場に自転車を停めて海水浴場に辿り着いた俺。あまりの暑さにジュースを買ってしまったがその選択は間違ってなかったようだ。アイスボックスの中身?これからこなたとその友人達に渡すのにバリエーション減らす訳にはいかないだろ。

バッグを持ち直し、こなたを探す。色々詰め込んだからか随分重く感じた。

 

「さて、こなたはどこかね?」

 

彼女は見た目が小さい割に髪は超ロングヘアーなので結構目立つ。

だがこんな日だからか、昨日より多くの人が集まっている。この中から彼女を見つけるのは少し骨が折れるかもしれない。

とりあえず海の家にでも行くか?と考えた時、

 

「お~い!このは~!」

 

と、間違える筈もないたった一人の親友の声が聞こえた。どうやらこっちから探す必要は無かったようだ。

 

「おう、こなたか。・・・お前まだそのスク水着てたのか。」

「いやいや、コレを捨てるっていう選択肢は無いって。絶対勿体無いでしょ。」

「そうだな、今でもソレを有効活用しているお前が言うとどこか説得力あるな。」

「むう、それ誉めてんの?」

「一応。」

 

こなたが声を掛けてきたが、その姿がスク水姿だったので一応ツッコミを入れておく。

 

「へー、その人があんたの言ってた親友?」

「うん、そだよ。」

「そいつらが友達か?確か引率の教師と親戚もいるって言ってたけど・・・。」

「先生とゆい姉さんはあっちでパラソル立てて駄弁っているよ~。」

 

後ろから三人の女子がやってきてその内の強気そうな一人が話し掛けてくる。どうやら引率係の二人は別行動しているようだ。

 

「紹介するね。友達のかがみとつかさとみゆきさんだよ~。」

「柊かがみよ。宜しく。」

「妹の柊つかさだよ~。」

「初めまして。高良みゆきと申します。」

 

少女達が各々自己紹介をする。かがみと呼ばれた少女がぶっきらぼうに、つかさと呼ばれた少女がのんびりと、みゆきと呼ばれた少女が丁寧な対応をした。

・・・高良みゆき?どっかで聞き覚えがあるような・・・。

 

「かがみとつかさは双子なんだよ~。」

「へぇ、珍しいな。二卵性か?」

「そうだけど・・・何で分かったの?」

「いや、あんま似てねぇし。」

「あはは~、確かにそうかも。」

 

柊妹が苦笑する。

 

「で、今度は皆に紹介するね。中学の頃からの親友のこのはだよ~。」

「夜桜このはだ。宜しくな。」

 

こちらも自己紹介を済ます。ひとまずは悪くない初対面だろう。

 

「あ、このは、何かジュースとか持ってない?ちょっと喉乾いた。」

「それならアイスボックスに何本か入れているぞ?お前達も何か飲むか?」

「え、いいの?」

「いいんだよ。結構な人数で来るって聞いていたから準備は怠らなかったし。」

「ず、随分用意周到だね・・・。」

「このははこういうのはあんまり手を抜かないからね~。」

「それでは、頂いても宜しいでしょうか?」

「おう、遠慮はしなくていいぞ。」

 

アイスボックスを肩から降ろし、中から様々な飲み物を取り出す。只の天然水から始まりお茶、果汁飲料、炭酸飲料、カフェラテ、コーヒーなどなんでもござれだ。

皆適当な飲み物を選んで飲み始める。

 

「ぷは~。キンキンに冷えてやがる!犯罪的だ!」

「満足してもらって結構だが所持金無くなるまで焼き鳥とポテチを買い漁ったりするなよ?」

「残念ながら今は財布を持っていないんだよ。誠に遺憾である。」

「いや、別にしなくていいから。」

「っていうかこなた!あんたお詫びの品は?」

「あ、海の家に置いたまんまだった。」

 

は?お詫び?

どういう事かさっぱり分からないという疑問が顔に出ていたのか、こなたがたはは、と笑って説明する。

 

「いやね?昨日このはを待ちぼうけさせちゃったからそのお詫びに何か買ってあげようかなと思ってね~。」

「何だそんな事か。俺が好きでやっている事だから別にいいって言ったろ?」

「ん~?何?私からのプレゼントは受け取れないとでも?」

「いや、そうじゃなくてな・・・。」

「ならいいじゃん♪コレだって私が好きでやっている事なんだから。」

「・・・ハァ、ホントお前には敵わないな。」

 

苦笑して飲み干して空になったペットボトルをしまう。後でその辺のゴミ箱にでも捨てよう。

 

「う~ん、なんか見れば見るほど恋人同士にしか見えないわね。」

「そうだね~。こなちゃん凄く楽しそう。」

「中学の間ずっと行動を共にしていたという位仲が良かったらしいですからね。久しぶりに会えて泉さんも嬉しいのでしょう。」

 

三人にそう言われ、俺とこなたは顔を見合わせる。

恋人同士か・・・。

 

「端から見たらやっぱりそう見えるのかね?」

「そうなんじゃない?警戒隊の人達も皆そう思っているみたいだし。」

 

こなたと一緒に顎に手を当てて考える。

・・・ん?警戒隊?

 

「・・・オイコラ、警戒隊ってどういう事だ。」

「あ、やっぱり知らなかった?さっき隊員二人に会ったけどアレ解散どころか進化してたよ。」

「知らねぇ。全っ然知らねぇ。は?何、あいつらずっとバラけずに組織紛いの事してたの?」

「そーみたい。一人中々頭が回る人がキチンと組織化させたらしいよ?」

「・・・マジか。」

「マジです。」

 

オイオイ、もうとっくに消えたと思っていたのにまだ絶滅してなかったのか・・・。

しかしそれならここしばらくの不自然さも納得できる。中学卒業後もしばらくは喧嘩ばかりの日々だったのだが、数ヶ月経つとその頻度が異様に少なくなったのだ。絡んでくる不良達が急に減ったので疑問に思っていたのだが・・・成る程、あいつらが先に処理していたのか・・・。

 

「にゃろう・・・俺に黙って喧嘩相手を潰しているとは・・・随分と舐めた真似してくれるじゃねぇか・・・。」

「お~い、このは~?顔が段々怖くなってきてるよ~?あとその理屈はおかしいと思う。」

「・・・あぁ、わりぃ。」

 

気付けば他の三人が若干引いてた。しまった、折角の悪くない初対面が・・・。

 

「すまんすまん、ちょっとしばきあげる連中が頭に思い浮かんだんでな。少し気が立ってた。」

「いや、今のは少しじゃないと思うけど・・・。」

「こ、怖かった~。」

「私、額に青筋たてる人初めて見ました・・・。」

「このははいつも通りだね~。」

 

その後は俺以外の四人が海を泳いだりして時間を潰し、お昼時となったので皆にも誘われ、一緒に昼飯を食べる事になった。折角なのでついでにこなたからのプレゼントも受け取っておくことにする。

 

そんなこんなで海の家。

 

「やっほー、お帰りこなた~。」

「ただいま~。それじゃ、お昼ご飯食べよっか。」

「失礼しまーす。初めまして、こなたの親友の夜桜このはっていいます。以後、宜しく。」

「おお~。アンタが泉の親友か!ウチは黒井ななこや。コイツらの教師やっとる。」

「初めまして~。こなたの親戚の成実ゆいだよ~。これから宜しくね~。」

 

中では引率者の二人が席を確保していた。

すぐにお互いに自己紹介を済ます。話に聞いたところでは完全駄目人間という印象しか持てなかったが・・・見たところどこか酷いという事はなかった。ひとまずは皆料理を頼んでおく。

 

「で、で?このは君、うちのこなたはどう?」

「どう・・・とは?」

 

何やら成実さんが近づいてきて話掛けてくる。

 

「決まっているじゃない!彼女にしたいかどうかよ!なにしろ中学の頃はべったりだったんでしょう?そこまで一緒だったなら付き合ってもおかしくないのに!それにこの子結構可愛いし!」

「ああ~、そういう事ですか。」

 

前言撤回。色々酷かった。

 

「あ~、ゆい姉さん。このはにそういう事言っても意味無いよ。」

「へ?どゆこと?」

「えーっと、今の質問に答えるなら・・・」

「あぁ、始まった・・・。」

 

こなたが頭を押さえてため息を吐く。

 

「そうですね、まず彼女にしたいかどうかって方はそもそも文字通り住んでる所が違いますからね。いくら此処から埼玉までが移動出来ない事はない距離と言ってもやはり学生の身分ですから色々キツいんです。付き合っても中々会う事は出来ないでしょう。やれる事といえばネトゲーで話をする位です。」

「いや待て、何故そこでネトゲーが出てくる。電話やメールでいいでしょ。」

「そして可愛いかという話ですが・・・」

 

柊姉がツッコンできたがスルーしておく。

そこで一旦区切り、息を吸って、

 

「可愛いのは当然でしょう、だってこなたなんですから。いや、それ以外でも戦っている時は凛々しいし、普段は凄く面白いし、たまに見せる柔らかい笑顔はもう綺麗としか言いようが無いです。そもそも性格からして最高ですし、一緒に喧嘩した時なんか叫びそうな位にワクワクしましたね。俺の知らない事を沢山知ってるし、子供みたいな無邪気なところもあれば大人みたいな静かな雰囲気を纏うところがあってとても良いです。一緒にいるといつも楽しい気分にさせてくれますし、嫌だった事もこなたがいると途端に面白く感じるから不思議です。俺にとってこなたは幸運の女神ですね。」

 

最後まで言い切ってふぅ・・・と息を吐く。少し喉が乾いたので水を取り出して飲んでおく。

 

「・・・いっつもこんな感じに熱弁するからさ、色々恥ずかしいんだよ。」

「な、なんか物凄く強烈だね・・・。」

「ここまで堂々とベタ褒めすると聞いているこっちまで恥ずかしくなるな・・・。」

「・・・ねえ、ホントなんでアンタ達付き合っていないの?」

「うわぁ~、今の凄くプロポーズっぽかったよ。」

「下手な告白よりもとても熱意を感じましたね・・・。」

 

ふむ、そうだろうか?俺にとって当然の事を言っただけなのだが。

 

「ていうか他はともかく戦っているとか一緒に喧嘩したとかは何なのよ。」

「・・・初めて会った時は衝撃だったな~。」

「・・・そういや夏祭りの時そんな事言ってたわね。」

 

何やらこなたが遠い目をしていた。そういや初めて会った時は俺と不良達との喧嘩真っ最中だったからな。

 

そんな事をしている内に頼んだ料理がやって来た。ちなみに俺が頼んだのはお好み焼きだ。

 

「おお!期待通りだ!」

「何がそんなに嬉しいのよ。」

「だって海の家を絵に描いたようなのが出てきたんだよ?見よこの具の無いカレー!流石海の家!」

「確かに普段食べるとどうかな~っていうのでも、こういう所で食べると美味しく感じちゃうよね~。」

「まぁ確かにそうだな。実際は凄く適当に作っているってのに何でかね?」

「いや、決めつけるなよ。」

 

色々意見を言いながら食べ始める俺達。うん、やっぱり改めて食うとそんなにうまくない。何でだろ。後でこなたのカレー一口貰おう。

 

「んっんっんっ・・・ぷは~、やっぱ海のビールは最高やな~!たまに冷えてない奴とかあんのんやけどな~。」

「大体、フランクフルトが一本三百円もするのもおかしいんですけどね~。」

「そうそう!生焼けとかだったりしてね?けど気にせず食べちゃう。」

「普通の店だったらクレーム来てもおかしくないよな。だけどここだと何故かあまり文句も出ないという。」

「せやな~。」

 

・・・納得するのはいいんですけど黒井さん、そんなに飲んで大丈夫か?一応今日帰る予定なんでしょう?

 

「私このチキンの油っぽいのとかスパイスかかりすぎているのとか実は好きだったりして。」

「こういったプレーンの焼きそばも中々いいですね。」

 

他にも色々感想を言って同意したりして話し合っていたのだが、唐突に柊姉がジト目で、

 

「・・・ねえ、」

 

と呟く。

 

「そんな盛り上がる程美味しい?」

「別に?褌一丁で海を走る程じゃないよ。」

「また何かのアニメネタか?」

 

呆れた顔でこなたにツッコむ柊姉はどこか疲れているような気がした。もっとテンション上げていこうぜ。

 

 

 

 

 

その後こなたからお詫びのショコラを貰った。流石こなた。俺の好物を理解してる。

しばらく海を泳ぎ、夕方になり帰路につく。

結局黒井さんは飲みすぎてフラフラになり、こなた達はもう一泊旅館で過ごすようだ。

だがその時こなたが驚くべき発言をした。

 

「ねえ、折角だし今日はこのはの家に泊まっていい?」

「良いぞ。」

 

しまった、即答してしまった。

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