ラストスタンド   作:インノケ

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2話

「クソ! あんな馬鹿でかいの、見たことねえぞ!」

「いいからちゃんと見てろ! 俺たちにできるのはそれだけだ!」

 街の最外壁の見張り台で、二人の兵士が望遠鏡をのぞきながら話している。彼らの見る先には、まだ数キロは離れているというのに既に肉眼でも確認できる大きさの、山のような怪物がいた。

 ワームと呼ばれるそれが初めて人類の前に姿を現したのは、入植から100年が経過した頃だった。地中深くで眠っていた彼らは、人間が大規模な採掘を始めたことでその眠りから覚め、ついに街を襲うようになった。あまりにも巨大なそれに人々は恐れをなしたが、立ち向かうことを諦めはしなかった。人々は、それを「押さえつける」ことのできる巨人、「スタンド」を建造し立ち向かったのだ。

 

 しばらく言い争っていた兵士たちは、背後からワームとは違った振動を感じ、振り返った。白い蒸気と青い燐光を纏いながら、一歩ずつ、轟音を響かせやってくる巨人。二人の顔に、既に恐怖はなかった。二人は目を合わせ頷くと、望遠鏡に戻る。

 スタンドが来た。この街、この星の人間にとって、スタンドは拳であり、盾であり、魂であった。いかに過酷な環境であろうとも立ち上がり、生き抜くことをしてきたマルクースの人々にとって、スタンドは存在そのものでその魂を示す城だった。ゆえに人々はスタンドに自分を重ね、ある者は顔を上げ、ある者は奮い立ち、またある者は自らも戦わんと声を上げた。スタンドがあり続ける限り、彼らは決して折れず、決して諦めないのだ。

 

 やがてスタンドが兵士たちのいる外壁の門へやってくる。

「動きは遅いがとにかくデカイ、気を付けろよ!」

「10分もしないうちに外壁に到達する見込みだ。頼んだぜ!」

「おう、任せろ!」

 兵士たちとラッセルは短いやり取りを交わす。今兵士たちにできることはワームを観測し、ラッセルに得た情報を伝えることだけだったが、兵士たちはそれができることを誇りに思った。スタンドは自分たちとともに戦うと信じていたからであった。

 

 ラッセルは歩を進める。足を持ち上げるたびに蒸気が吹き出し、もう一方の足が踏ん張る。巨大な人型のそれを、ラッセルは一人で動かしていた。本来人形石のみで動かすスタンドだが、人形石の産出量の少ないシャイアンのスタンドは蒸気機関を併用することでその巨体を動かす。しかし、ラッセルはそれを力不足と感じたことはなかった。

「ある物で何とかする、俺ららしいじゃねえか」

 呟きながら、スタンドはワームへと向かっていく。あちらもスタンドを捉えたのか、お互いにゆっくりと近づいていく。ミミズの身体に巨大な口を付けたような異形の怪物は、スタンドの身長の半分はあろうかという口を開き、絶叫を上げる。それを挑発と取ったラッセルも叫び返す。

「ここから先は、ぜってえに行かせねえぞお!」

 スタンドが唸りと蒸気を上げ走り出す。乾いた地面は大きくひび割れ、巨大な足跡を残していく。スタンドが巨大な右腕を振り上げ、ワームの先端部へと掴みかかる。ワームはそれをギリギリでかわすと、腕を振り切ってがら空きになった脇腹へと食らいつく。

「なんだ、なにかしたか? ああ?」

 しかし、スタンドはびくともしない。兵装を持たないスタンドにとって最大の武器は、その堅牢さであった。いかなる攻撃も、その質量と鉄壁の装甲で受け切り、跳ね返す。城のような外見は、外装そのものが要塞と同じ作りで出来ていることによる者なのだ。

 スタンドは脇腹に絡みついてきたワームの首を巨大な左手でがっちりと掴む。それを確認するやいなや、ラッセルが傍らのパネルを操作する。手首からから凄まじい量の蒸気と光があふれ出し、轟音が響く。

「こいつで、どうだあ!」

 ラッセルが叫んだ瞬間、ぐしゃりと音を立てワームの頭端が地面に落ちた。スタンドが、その強靭なパワーでワームの身体を握りつぶしたのだ。ワームの断末魔が辺り一帯に響く。しかし、残ったワームの巨大な体は未だのたうち回り、その動きを止めない。

「仕上げだ」

 スタンドはワームに近づいていくと、両腕でその体を掴み、膝をついた。押さえつけられたワームは、それでもなおスタンドを跳ね除けん勢いでスタンドの腕の下で暴れる。

「とっととおとなしくなれよ……!」

 押さえる腕からは絶え間なく蒸気が噴き出される。凄まじいしぶとさを持つワームは、完全に動きを止めなければ間違いなく街に被害をもたらす。それを防ぐために、スタンドは最期の瞬間までワームを押さえ続ける必要があった。

 

 10分ほどそうしていただろうか。ワームは、完全に動きを止めた。スタンドが蒸気を吹きあげながら立ち上がる。夕日にたたずむスタンドの姿はシャイアンの街からもはっきりと見ることができた。人々が歓声を上げる中、ダヤンが呟く。

「父さん……」

 呟く彼を見たノーナは、その異変に気がついた。彼の左腕の人形石と、首から下げたゴーグルが共鳴するように燐光を放っているのに。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

デモンベインとかああいう城みたいなロボット大好き~と話をしていたら書いていた次第です。拙い文章でしたが、少しでも共感していただけたら幸いです。

含みを持たせた(つもり)の終わり方ですが、特に続きを書く予定はありません。

こういうロボットもの増えたらいいななどと思いつつ筆をおかせていただきます。

本当にありがとうございました。
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