東方生迷伝   作:ホワイト・ラム

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誰だろうと過去を振り返る事はある。
泣いた笑った喜んだ怒った。
記憶に有るすべてが万華鏡のように様々な姿を見せる。
今日という日は未来の私にどう映るのか……


日常前線異常なし1

「ただいま~」

「ただいま」

こいしと狂弦の二人が地霊殿に帰ってくる。

あの後狂弦は龍我の話を聞き、前向きに生きることにした。

「悩んでいても始まらないよな?」

そう思えるのはこいしの言葉が有ったからかもしれない。

「(俺ってこいし(この子)に助けられてばっかりだな……これからはその恩返しがしたいな……)」

狂弦はひそかにそう決める。

 

 

「おかえりなさーい!」

「おかえりなさいませ」

お空とお燐が出迎えてくれた。

「アレ?二人とももうお仕事は終わり?」

「そうなんですよ、何故か最近死者の数がめっきり減っちゃって……」

「燃料が足りないってレベルじゃないんだけど……」

二人が考え込む。

「ふーん、お姉ちゃんはどうって?」

「こんなことも有るだろうって……」

「じゃあ大丈夫だよきっと」

こいしが明るく言う。

「そんな事よりトランプしない?今地上では流行ってるんだって」

こいしがスカートからトランプを取り出す。狂弦と帰りに買ってきたものである。

「気晴らしも大事だと思うよ?」

狂弦もそれに賛同する。

「お姉ちゃんも一緒に呼んで遊ぼう!」

そうして5人でトランプをすることになった。

 

 

シャッツ!シャッツ!シャッツ!

テーブルにカードをシャッフルする音が響く。

パシッ!パシッ!パシッ!

5人に順番にカードが配られていく。

沈黙が卓を支配する。

先ほどまでのホンワカした空気は一変!ざわざわ……とか聞こえてきそうな雰囲気!

「改めてルールを確認したいんだけど」

狂弦が沈黙を破った。

「いいわよ。種目はシンプルにポーカー、ジョーカー、レイズは無しチェンジは一度のみ。合計で10回勝負。そして……優勝者はもっとも下の者に自分の頼みを聞かせられる」

さとりが紙に書かれたルールを読み上げる。

「よし、解った」

事の初めはこいしの一言。

「狂弦、ケーキが食べたい!優勝したらケーキ買ってきてくれない?」

その言葉に各々が自分が勝利者の時の願望を言い始めたのだ!

気が付けば賭け状態に!

 

狂弦はカードをめくる。

右から順に♠3♦8♥2♣8♥5

(現時点でワンペア……♠3♥2♥5が有るからストレートを狙うのも……)

そこでハタと気が付く。さとりのサードアイがこちらを見ているのを!

(当たり前だが心が読まれている!)

「ナゼミテルンデス!!」とか言いたかったがそう言う能力なので仕方がない。

狂弦が諦めるとさとりがニヤリと笑った。

しかしポーカーは運の要素が強いゲーム。心が読めるだけで決まらない。

「2枚チェンジ~」

そうしている間にもお空が2枚のカードを卓上に裏で置く。

「アタイ3枚で」

同じくお燐もカードを2枚変える。

「私は5枚」

パラリとすべてのカードを捨てるこいし。

さとりがここで歯痒そうな顔をする。

こいしは無意識で行動するため、さとりが唯一心を読めない相手だ。

「俺は1枚」

♠3を捨てる狂弦。

「ではオープン」

各メンバーが自身のカードを公開する。

こいし、お燐がブタ。

お空がAのワンペア。

さとりが4のスリーカード。

そして狂弦は……8のワンペア。

今回はさとりの一人勝ちになった。

「まだまだゲームはこれからだ!」

そう意気込む狂弦だが……

 

「私の勝ぃ!」

こいしがガッツポーズをする。

「ウエエィ……マジかよ……」

敗者は狂弦一人になった。

「それじゃあ、明日人里でケーキ買ってきてね!」

「……解りました……」

狂弦!自腹ケーキ決定!

「……と言っても明日の地霊殿の家事当番俺だし、地上ってどうやって行くんだ?」

気が付けばこいしに地霊殿に連れて行かれていた狂弦、当たり前だが地上への帰り方も知らない。

「しょうがないな~。じゃあ私が明日の家事手伝ってあげるから、その後一緒に人里行こう?」

「まあ、それなら……」

楽しそうに話す二人を見てさとりが卓を立つ。

「そろそろ夕飯の時間ね、準備してくるわ。お空、お燐手伝って頂戴」

「は~い!」

「解りました」

さとりに続き二人も卓を立つ。

「あらら……お姉ちゃん達いっちゃった。狂弦、賭けとか関係なくもっとしようよ!」

「うん、いいよ」

そう言って再びポーカーを始める二人。

 

 

地霊殿の廊下を歩く三人。

「はぁ、久しぶりに疲れたわ……」

さとりがぼそりとつぶやく。

「まあ、大変でしたしね」

その言葉にお燐が同意する。

「うにゅ?そんなにゲームって疲れるの?」

訳がわからないというように話すお空。

「結局最後まで気づかなかったのね……」

お燐がため息を漏らす。

「良いお空?さとり様はこいし様を勝たせようとしてたの」

「どうして?」

「どうしてって……」

「あの二人はね。能力の相性がとてもいいの」

さとりが優しい表情で話す。

「相性?」

「そう。狂弦は悪意を読み取る程度の能力、本人の話によれば人や妖怪の悪意をシルエットの様に見ることが出来るらしいわ、近づけば心の中の具体的な内容まで見えるらしいけど……悪意は誰にでもあるの、心を読まれないこいしにさえ。だから狂弦はこいしが無意識でも見つける事が出来るの。

かつてこいしは人の心の醜さに心を閉ざしてしまった。そして今その醜さを見る狂弦をこいしなら支えてあげる事ができると思うの。

あの二人はお互いの弱点を補っているのよ。

だからかしら?なるべく二人は一緒に居させてあげたいの」

その時さとりは地霊殿の主ではなく、妹を思う姉の顔をしていた。

「そうなんだ~」

「あたいは早く気が付いたからよかったものの……」

「相手の心を読んで、手札と役をコントロールするのは大変だったわ」

さとりは相手の手札だけでなく、捨てたカードも読める。

しっかりした計算ではないがトランプ52枚で全員に配る札はそれぞれ5枚。

心が読めないこいしを除き、この時点で52枚中20枚が公開された事になる、さらにそこから全員が平均して2枚カードを交換する事になると、さらに自分以外で6枚内容がわかる、半分が内容としてわかっているのだ。

後は狂弦が強ければなるべく強い手札を、弱ければわざと弱い手札を作ることで順位をコントロールしたのだ。

「さ、ゆっくり話す暇はないわ。腕によりをかけて食事を作りましょう?」

「「ハイ!」」

三人は食堂に消えて行った。

 

 

何もない平和な日常が確かにそこには有った。

悪意の醜さに心を閉ざしたさとり妖怪と、死を恐れるあまり悪意を読む力を持った元人間。

二人は今確かにここで同じ時を過ごし、同じ空間を共有している。

このなんでもない日を懐かしむのは何時なのか……

 




酸っぱいモノが飲みたくて~
買いに行ったよコンビ二へ~
「レモン20個分のビタミンC」
「一日に必要な分のビタミンC」
どっちがビタミンC多いんだ!?
イチゴ牛乳買って帰った。
それが俺のニチJYO!!
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