見て見ぬふりをしているだけだ。
だがここなら好きに発して構わない!!
さあ、本能のままに戦おうじゃないか!!
龍我の勝利に会場がドッと沸く。
『タダのニンゲンが妖怪に勝利した』こんなことは滅多になかった。
「よう、夜城!!勝って来たぜ、ほら賞金」
観客席に帰ってきた龍我が分厚い封筒を投げ渡す。
「わわ!こんなに受け取れないって!」
狂弦の賭けた龍我の一人勝ちは大穴だった、そのため狂弦自体もなかなかの金額を得ていた。
これ以上の金は不要、さっさと立ち去りたいが……
「ここは妖怪の山だぜ?一回勝ったぐらいじゃ帰してくれねーよ。アイツらは勝負ごとにはトコトンやる気出すぜ?現に俺は今ご指名が来ている。最悪その金、治療費で消えるかもな」
笑ながら再びステージに向かう。
「お前はお前のやるべきことをやれ!!」
最期に龍我はそう言い放った。
「やるべきことか……」
渡された現金を持ってコロシアムから出る、目指すはコロシアムの横の建物。
「すいませーん。此処ってゲームできます?」
狂弦が入った建物は薄暗い遊戯場。
サイコロや花札、トランプゲームに珍しいスロットなどが狭い空間に敷き詰められていた。
(嫌な空気だ……他者を蹴落とす事に夢中なんだな……)
そのまま奥に進んでいく。
「あれぇ?人間なんて珍しいね?刺激に飢えたタイプかなぁ?」
従業員と思わしき白狼天狗が話しかけてきた。
偶に黒い髪が混ざった珍しい姿をしている。
言うまでもないがこちらをカモる気は満々だ。
「……ああ、試しに遊んでみたくてね」
「じゃあこっちに来なよ?でっかく遊んで儲けないかい?」
案内され施設の一番奥まで連れて行かれる。
そこには少し高い舞台とその目の前に赤いテーブルクロスが敷かれたテーブルが有った。
「ここはVIP専門の場所、何時もならあそこのステージで厄神さまが踊ってるんだけど……今日は居ないみたいだね……まあ、いいやポーカーしようよ?」
此処まで連れて来た天狗が笑う。
「いいよ、やろうか」
闘技場の上に上がる龍我。視線の先には一人の天狗。
「光栄ですね。私の挑戦を受けてくださるなんて」
天狗の名は写命丸 文。幻想郷最速の天狗で有る。
「天狗と戦ってみたかったんだ、むしろこちらが礼を言うべきだ」
そう言いながら肩を回す龍我。
「いけませんねぇ、人間風情が雑魚の河童一匹倒しただけで粋がるなんて……二度と外を歩けなくなるくらい、恥ずかしい負け方をさせてあげます!!」
その瞬間写命丸の姿が消える!
「チッ!マジに速ぇ!!」
即座に判断をし、右に躱すが……
「遅いですね……眠ってしまいそうです」
写命丸の蹴りが龍我の腹にめり込む。
「が……ブッ!!」
「惜しいですね~このまま吐いてくれれば、かなり情けない姿を皆さんに見せられたのに……」
腕を組んでやれやれと言った表情をする。
「知るかよ!!」
右の拳を握り殴りかかる。
「な……に?」
「言ったでしょ?アナタは鈍い……と!!」
写命丸は悠然と龍我の拳の上に立つ。
そのまま龍我の顔面に蹴りを入れる!!
蹴りの勢いで龍我が空中で回転する。
「あーあ、やっぱり人間は脆いですね~」
ニヤニヤと倒れた龍我を見下ろす。
「今更ですが、あの審判買収済みですのでアナタがいくらギブアップしても、通してくれませんよ?せいぜいボロボロになってくださいね?私が飽きるまで!!」
そう言って龍我を蹴りあげる!!
(この天狗ヤバイな……夜城と同じで拳が当たらねー)
「ポーカーで良いかい?」
天狗がニヤニヤと笑う。
「かまわないけど……ルールは?」
「普通のと変わんないよ?負ければああなるけど」
そう言って隣の卓の人間を指さす。
「いやだ!!やめてくれ!!もう帰してくれ!!」
中年の男が泣きわめく。
「バカな男だよ。人里で嵌められたかなんだか知らないけど……ギャンブルで食っていける訳ないのにねー」
猟師でもしていたのか背中には猟銃を背負っている。
「なあ、あの人の借金これで返せるか?」
そう言って龍我の賞金を白狼天狗に見せる。
「ん~?ヒィ、フゥ、ミィ……うん、返せるよ?」
札束を数えながら笑って答える。
「なら、コイツで離してやってくれ」
そのまま、現金を返さなかった。
「おにぃさん。やさしいね~、ソレここでは命取だよ?まあ、お金さえあればボクはいいんだけど……」
パチンと指を鳴らすと奥から天狗が出てきた。
「あの人離してあげてよ」
「かしこまりました」
2、3言話した結果、男はこちらに礼を言って帰って行った。
その様子を見た狂弦が立ち上がる。
「ちょっと!!どこ行くのさ!!」
先ほどの男が居た場所に座る。
よっぽど慌てたのか、猟銃が忘れてある。
「ソレ、使えないよ?見てごらん?」
白狼天狗に言われ良く見て見ると錆があちこちに浮いている。
男がずいぶん長く猟をしていない事を容易にわからせる。
「おとなしく、猟をしてればいいのにね……」
何処か馬鹿にしたように言う。
「悪いけどこっちを先にやっていいかな?」
狂弦はさっきの男のやっていたルーレットを希望した。
「あは!もう何度目でしょうね?地面の味がそんなに気に入ったのですか?」
写命丸によって再び地面に伏す龍我。
先ほどまでの湧いた会場は一気に冷めていた。
コレはもう戦いでなく、妖怪が人間をいたぶるショーだった。
「ん……流石に厳しいな……天狗は強ええ」
腕を押さえながら龍我が立ち上がる。
よろよろと力が無いのがわかる。
「うーん、いいですね。まだまだ楽しめそうです!」
そう言って、空に浮かび距離を取る写命丸。
「この場所にアナタは届かない!!」
上空から急降下し龍我を狙う!!
「だが!
そう言って右手の拳を握りしめ、
地面に敷かれた石畳が砕ける!!
「しまった!!」
此処で龍我は初めて相手に傷をつけた。
「やってくれますね……」
写命丸の身体に石がぶつかっていた。
「投げられた石は早い方がいてぇよな?お前のスピードだ、ぶつかったとしても相当痛いんだろうな?」
好戦的な目で写命丸を見る。
カランと乾いた音を立てルーレットがまわる。
狂弦がかけてのは赤。
確率としてはほぼ半分。
「なあ、天狗さん?もしここでイカサマがばれたらどうなるんだ?」
転がりつ続ける白い球を見ながら白狼天狗に聴く。
「ん?ボクに質問かい?イカサマがばれたらか……問答無用で負け、んで身ぐるみ剥いで下級妖怪のエサかな?」
悪びれるつもりもなくそう楽しそうに話す。
「ふーん……そう……か!!」
狂弦が机のテーブルクロスを持ち上げる!!
「な!何を!!」
ディーラーが驚き声を上げる。
「テーブルの右足にブレーキレバー、これで出目を操作していたな?後00に弱い磁石か……」
ディーラーのイカサマをあっさりと言いあてる!
「俺はお前たちの悪意が読める!!机したのカード、袖に隠したカード、重りの埋め込んだサイコロ、汚れでマーキングしたトランプ、あとなんかの方法で透明化したそこの妖怪!!全部見えてるぞ?人里の時とは違う!!」
席に座りながら賭博場に有るすべてのイカサマを言いあてた。
「なあ、イカサマがばれたら……どうなるんだっけか?」
狂弦が横の白狼天狗を睨む。
「ははは、スゴイよ!おにぃさん!!まさかこんな人間が居たなんて!!そうだね、ボクが言ったんだ!イカサマは負けだって、イイよ!このギャンブルおにぃさんの勝ちだ!……けど最後にボクと勝負してくれない?」
白狼天狗がカラカラと笑い出す。
「イカサマはしないのか?」
「したらおにぃさんにバレるんでしょ?しないよ」
二人は先ほどのポーカーの席に着く。
「自己紹介するよぉ、ボクは狗灰 机(いぬはい ですく)この山のプリチィな次世代の白狼天狗さぁ!」
そう言って自信ありげに、ですくが笑う。
あれー……なんか文さんがすごい嫌な奴になってる……どうしてこうなった!!
因みに透明になっていた河童はアノ河童です。