東方生迷伝   作:ホワイト・ラム

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恐ろしくてたまらないモノに何時からか怒りを抱いた。
それ恐怖させモノに対してか、それとも恐怖した自分に対してか……


羊と狼と黒い羊1

(頼む!気付くな!気付かないでくれよ~!)

 

息を殺し、木の陰で男がうずくまりひたすら願いつづける。

すぐ近くを、二足歩行するクマの様な生き物が通り過ぎる。

この男の名は屋社 美琴(やしろ みこと)。

森の中で目覚めて以来、半日以上歩き続けている。

森の中で幾度となく異形の生物に出会ったが、向こうより先に気が付くことで事なきを得ている。

クマの様な生き物が視界から消えたころ、木の陰から這い出てくる。

 

「助かった……こんな所で死んでたまるか!」

美琴は再び歩き始めた。

{死への恐怖}それが現在の美琴を動かす動力である、三体の生物に殺される体験をして以来死に対し非常に強い恐怖を抱いているのだ。

 

「あ……森がひらけたぞ!」

半日以上の移動でついに森からの脱出に成功した。

 

「里だ!人里が有る!」

遠くに人里を見つけ疲れも忘れ、一気に人里近くまで走り抜けた。

しかし里に入る寸前のところで……

 

「おい!貴様何者だ!」

里の入り口近くにいた屈強な男に足止めをされた。

里の入り口を警備する人員らしい。

 

「頼む!中に入れてくれ!昨日からずっと森の中をさまよっていたんだ!」

美琴が警備に縋り付く。

此処で放逐される事は緩やかに死を意味する事を理解していた。

 

「嘘を吐くな!昨日の夜から森にいただと?昨日は満月!妖怪どもが活気づく最高の日だ!森に居て生き残れる訳ないだろう!」

冷酷にはねのけられる。

 

「本当なんだ!信じてくれ!」

気力、体力ともに限界の美琴は何とか人里に入れてもらおうと必死で縋り付く。

 

「ええい、くどい!それ以上言うなら……」

 

「おい!そこまでだ!」

凛とした声が警備を制止する。

 

「上白沢様……」

声の主を聞いた途端警備の態度が軟化したのを美琴は感じた。

声の主は青いスカートの麗人、頭におかしな帽子のようなものをかぶっている。

 

「その格好……外来人だな?私は上白沢 慧音この里の守護者をやっている、立てるか?」

慧音は美琴に手を差し伸べた、その行動に無性に涙が出てきた。

 

「相当疲弊しているようだな……かわいそうに……私が責任を取るこいつを里に入れるぞ?」

美琴を立たせながら、警備に話しかける。

 

「上白沢様が仰るのなら……」

しぶしぶといった感じで警備は美琴が人里に入るのを認めた。

慧音に連れられ、里の中を歩く。

 

「さて、疲れているようだし何処かで一服しようか?この先にうまい団子屋が有るんだ」

優しい口調で美琴に話しかける。

 

「さあ、ここだ」

慧音は手早く二人分の注文を済ませるとゆっくり話しかけた。

 

「さて、お前は現状をどの程度理解してる?」

 

「いつの間にか森に居て、死んだと思ったら生きてて、何とかここにたどり着いた」

お茶を飲みながら、自分の理解している限りの状況を話す。

 

「そうか、ほぼここについては知らないんだな。1から説明しよう、ここは幻想郷。忘れられたモノたちが最後にたどりつく場所だ。」

慧音は真剣な顔をしながら湯呑みを手にした。

 

「忘れられた……モノ?」

美琴も確認するように言い返した。

 

「そうだ、妖怪や神様なんかが居るんだ、私自身も半妖だ。

お前はたぶん結界の間から入ってきてしまったんだろう、外来人といって偶にいるんだ」

湯呑みを机に置いた。

 

「外には帰れるのか!?」

今までの説明を聞いていた美琴が聞き返す。

 

「もちろん帰れる……と言いたいがお前微かに妖力が有るな?」

目を細め美琴を睨む。

 

「妖力?なんですそれは?」

またも知らない単語が出てきた。

 

「知らないのか?知らずに生きてきたのか?それともこっちで目覚めたのか……どちらにしろ結界から妖力を持つ者は出れないんだ」

慧音の言葉に美琴の目の前が真っ暗になる。

知らない土地、知り合い皆無、妖怪、さまざまな絶望が心を支配した。

 

「そんな!じゃあ俺はどうやって生きろって言うんだ!」

絶望から美琴が語気を荒げ立ち上がる。

 

「落ち着け、さっき外来人は偶にいると言ったろ?里の端にそいつ等が集まってる長屋が有る、そこに住め、仕事も手配してやる」

落ち着き払った様子で言い返した。

 

「そうかぁ、俺とおんなじ立場の奴ら居るんだ……」

自分と同じ立場の人間がいる、その言葉に安堵しホッと胸をなでおろす。

 

(こいつ、今僅かだが妖力が上がった……注意が必要だな)

 

「ん?なんか言いました?」

美事が慧音の様子を見る。

 

「い、いやなんでもないぞ、さ!団子を食ったらさっそく案内しよう!」

 

「はい!お願いします!」

二人は外来人が居る長屋まで歩いて行った。

 

「おお!上白沢様!よくぞいらしてくれました!そちらは?」

長屋の中に居たのは40過ぎの男といずれも30後半といった男たちだった。

 

「ああ、昨日結界の中に入り込んだみたいなんだ、お前たちと同じ外来人の様だから仲良くしてやってくれ」

慧音がリーダー格の男に話しかける。

 

「ええ!もちろん、同じ出身のよしみですし、仲良くやって見せますよ」

リーダー格の男は笑いながらこちらを見ていたが、美事はどうも気分が悪くなるのを感じた。

 

「ではよろしく頼む」

 

「はい!わかりました!」

そう言って慧音は去って行った。

後に残されたのは美琴と10人前後の男たちだった。

 

「よく来たな、さっそくだがお前には明日から一緒に働いてもらうぞ?」

リーダー格の男がそういって近づいてきた。

 

「はい!XX県に住んでます!屋社 美琴です!よろしくお願いします!」

元気よくあいさつした、このメンバーから見離される事は緩やかな死を意味する、美事は何としても食らいつこうと考えた。

 

「あーよろしく、俺はこのグループの班長を任されてる、君も俺の事は班長って呼んでくれ」

リーダー格の男、班長がにこやかに話す。

なぜか美琴にはその顔がひどく恐ろしいものに見えた、手を引いてしまった。

 

「まあいいか、俺達の仕事は簡単に言えば畑仕事だ。俺たちは共同で畑を作ってる、開墾して耕す、野菜を育てる、収穫し里に売るまでがサイクルだからな?」

班長が自身の仕事を説明する。

 

「はい!わかりました!」

その日は新参者の参加という事もあり長屋で祝宴が行われた。

慧音が顔を出し、長屋のメンバーとも酒を酌み交わした、長屋だけでなくもともとこの人里に住んでいた人も騒ぎを聞きつけ集まり、なかなかの人数の祝宴になった。

自身の妻を連れてきた人もおり、たくさん集まった住人の中には子供もおり祝宴に参加していた、美琴自身いつの間にか帽子をかぶった胸にチューブの付いた球の様な物を付けた子供が、酒を飲んでいたので注意しようと思ったが、だれも注意しないのでこれがここの常識なのだと理解した。

場所が変わっても、手を取り合えば生きていける、美琴はそう思った。

しかし

翌日から美琴のつらい日が始まった。

もともと大学生、鍬自体持った事無く夏は終わったとはいえ、一日中日光にさらされ体力がひどく消耗している。

手はたちまちマメだらけになり、終わる頃には泥だらけだった、何より苦痛なのが周りの人間からどこか疎外される事だった、あまり大っぴらにはされないが新参ものと若造という事もありどこか距離を置かれているのがなんとなく理解できた。

気のせいだと思いたかったがどうもそうはいかなかった。

そしてついに美琴にとって運命の日が訪れた。




2話目です。
今回は主人公の名前と、数人ですが原作キャラも登場させました。
口調などが心配ですが、その他原作との矛盾が有れば指摘してください。
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