誰が倒れても、それでも先に……
だが倒れて行った物たちは何を考えてるのだろう……
水音が響きゆっくり揺れる白い靄が掛かる空間で、狂弦は目を覚ました。
間もなくして揺れているのが小さな木船だと解った。
小さな衝撃がして船が止まる。
「終点……」
船の船頭がくぐもった声でつぶやくと、何時から居たのか数人の老人たちが立ち上がり次々船の外に降りる。
「なんだよ此処……」
そう言いながら船から狂弦も降りた。
降りた場所は河原の様だった、小さな子供たちが石を積んで遊んでいる。
靄が掛かって遠くまで見渡せないが相当広い空間の様だ。
先に降りた老人たちが続々と歩いて行く。
「?」
狂弦もそれに習う様にゆっくり歩き出した。
最後に船頭を見ようとしたがすっかり姿を消していた。
オルドグラムの襲撃から一夜明けた朝。
雨が上がるように、夢が朝日に消えるようにオルドグラムは姿を消した。
人里は一時的な平和に包まれていた。しかし多くの家が焼け人が死に壊滅的なダメージを負った部分も多い。
今回は直接人里を狙うという、以前までに前例のない特殊なケース多くの人が不安を胸にしていた。
オルドグラムの残した傷痕は深い。
里の復旧に忙しく駆け回る人の中に古明地 こいしはいた。誰にも気づかれる事無くふらふらと歩いて行く。
ふらふら、ふらふらふらふら、ふらふらふらふらふら……
「狂弦……どこ?……」
ブツブツつぶやきながら生気の無い瞳で歩いて行く。
「紙芝居屋がねぇ……」
博麗神社の一室で霊夢、魔理沙、慧音、妹紅の四人が話あっている。
会話の内容はもっぱら昨日のオルドグラムに付いてだ。人里の人には無用の混乱を避けるため、本物のオルドグラムの事は話していない。
今回の異変は魔道書の暴走という事にしてある。
妹紅以外に人里で今回の真実を知るのは、門番と洋菓子屋のみもちろん二人には口止めしたが……いつまで隠せるかわからない。
しかしオルドグラムがその気になれば、里の子供は皆怪物に変化するだろう。
絶体絶命の緊急事態。
「正直言って状況は最悪……どんな妖怪よりも人間の方が恐ろしいのかもな……」
珍しく自重気味に魔理沙が笑う。
「そう言えば……あのⅤの子はどうしたのだ?」
「ああ、場所を貸して寝かしてるわ……あの子もおかしなヤツみたいだし……Ⅱ!!アンタの同族でしょ!?何か知らないの!!」
外に通じる障子を開き、外で兎をなでている龍我を怒鳴りつける!!
「よしよ……ん?知らんな。俺達はおかしな奴に選ばれて、自身の能力を発現させただけだ。選ばれたからにはそいつにも何らかの力が有るんじゃないか?」
それだけ言うと再び兎を愛でる作業に戻る。
「チッ!!それくらい知ってるわよ!!ああ、もう使えない!!」
そう言って障子を強く閉める。
「……ん?ここは……」
見慣れない部屋で少女が目を覚ます。
彼女自身知らないがそこは博麗神社の一室だった。
妹紅から話を聞いた霊夢は唯一のオルドグラムを追う手がかりとして保護されたのだ。
彼女の名は十村 麻衣(とむら まい)昨日までオルドグラム
意識が覚醒すると共に嫌な記憶が次々蘇ってくる。
「ようこそお嬢さん。私の研究施設へ……私はオルドグラム、よろしく頼む」
目の前のおかしな男が楽しそうに笑う。
この男に決して心を許してはいけない。麻衣は一瞬にしてそう思った。
「コレは私からのプレゼントだ、受け取ってくれるね?」
そう言って白い拳大の石を渡してきた、Ⅴという文字が書きこまれている。
「そしてもう一つ……これは気に入ってくれると思うよ?」
そう言ってオルドグラムは、麻衣の良く知る男を連れて来た。
「お父さん!!」
「麻衣!!」
二人はその場で抱き合った。
「いいねものだ、感動の再会という物は……だが!!それを壊すのはもっと楽しい!!」
そう言いだすや否や父親が苦しみ出した!!
「ガはぁ!!ゲブ!!」
胸をかきむしり、吐血した。腕には見た事の無いような複雑な模様が浮かんでいた。
「お父さん!!大丈夫!?しっかりして!!」
苦しむ父親を必死になって助けようとするが、麻衣は医者ではない。助ける術は何も持たない。
「ほぉら。早く助けないと苦しんで死んでしまうぞ?願え!!死にゆく父を生き返らせたいと!!ほぉら、どうした?」
おかしくてたまらないと言った嫌な笑顔でこちらを見下ろす。
「いやだぁ!!いやだぁ!!」
悲痛な叫びが響くと共に崩れゆく男の身体が再生を始めた……
これこそが真の悪夢の始まりだった。
「おお!遂にか!!待っていたぞ!!この日を!!」
オルドグラムは再生しつつある父の頭を踏みつぶすとゆっくりと麻衣を抱き上げた。
「ありがとう。私は君の様な父親思いの子が現れるのをずっと待っていたんだ!!」
悪魔が笑った気がした。
そんな最悪の記憶が力業によって遮られた。
突如ガシッと肩を掴まれる!!
「ヒッ!!ナニ?何が起きたの!?」
混乱気味に話す。するといつの間にか自分を小柄な少女が掴んでいた!!
「だ、だれなの!?」
「私はこいし……古明地……あなた狂弦と同じ種類なんでしょ?あの魔法使いにしたみたいに狂弦を生き返らせて!!」
妖怪の力を使って激しく詰め寄る!!
「きょ?誰……なのそれ?たぶん無理だよ……私は魂に肉付けするだけ……魂が無いと出来ない、それにたとえ体が再生出来ても一日も持たない……すぐに土になるだけ!!」
舞の口から次々紡がれる絶望的な言葉、どんどんこいしの顔から生気が失せていく。
「無理な……の?」
力なくその場に倒れ伏す。妖怪は精神に依るモノ、絶望が彼女の身体を蝕んでいるのだ。
「やぁ!おにぃさん。この前振りだねぇ?」
静かな場所で誰かが手を振ってくる。
「え!?お前は……ですく!?」
狂弦が驚いた相手は、この前会ったばかりの白狼天狗のですくだった。
「ここは一体どこなんだ?」
今持った質問をですくに投げかける。
「気が付いてないのぉ?ここはあの世。ほら、みーんな生気が無いじゃない?」
その場で両手を広げる。
その言葉に狂弦は顔を青くする!!
「そんな!!こいしちゃんは!?帰らなくちゃ!!」
走り出そうとする狂弦の肩を掴むですく。
「忘れたのぉ?おにぃさんはあの船に乗ってこっち側に来たんだよぉ?こっからは帰れないよ……?」
「知るか!!俺を待ってる奴が居るんだ!!帰らなくちゃいけない!!」
乱暴にですくの腕を振り払う!!
ですくはその様子を見てにんまりと笑う。
「いいねぇ!!面白くなってきたよぉ!3人であの世から逃げ出そうかぁ?死ぬくらいの不運を貰ったんだぁ、生き返るくらいの幸運あってもいいよねぇ!!」
相当機嫌がいいのか黒ブチの尻尾が激しく揺れる。
一方狂弦は意外な言葉に反応していた。
「3人って?」
「ああ。アッチ、アッチ」
そう言って視界の端を指さす。
そこにはせっせと石を運ぶ少年が。
「あの子面白いんだよねぇ……ボクにゲームを挑んできたんだぁ、条件は……」
「ですくさんとのパイタッチです!!」
勢いよく少年が走ってきた!!
「ぱ、パイ?若いというか……欲望に弱いというか……」
「死んでるから何も怖く無いんです!!」
無駄に良い笑顔をする少年!!
「いいよねぇ!!こういう付き合うイコール生殖!!って子、肉食系って大好き!!」
そう言って尻尾を楽しげに振る。
「はじめまして!!詩堂 善(しどう ぜん)です!!仙人志望で頑張ってます!!」
少年、詩堂が元気に答える!!
「よぉーし!!この三人であの世から逃げ出すよ!!」
ですくが楽しそうに飛び跳ねる!!
最初から一度はやりたかったセルフコラボ。
遂に実現!!
暫くは善くんが加入します。