悲鳴の様な音を立て、地獄の扉が無理やり開かれた。
その瞬間狂弦は自分が呼ばれているのを、強く感じた。
それだけで全身に力が満ちるのを感じた、自分を呼ぶ声の方へ、光に向かい、そして扉の外へと、全力で駆け抜ける!!
「あんたには感謝している、ありがとう……」
「……グット、ラック、ボーイ……」
扉を開いた「黒幕」へと言葉を交わし遂に扉の外へと駆け出す!!
それと同時に場所が変わる。
本物も地獄から良く知る旧地獄へと……
「来たな?」「こっちだ!!」「早く!!」
見覚えに有る悪霊たちが、狂弦の手を取る。
「みんな……」
それは地獄の中で燃やされていた悪霊たち、何度も会話を繰り広げた友達。
「これを……」
悪霊たちが最期にくれたのはⅣの結晶。
「持っていてくれたんだな……」
結晶に触れると同時にソレは体に溶け込んでいった。
「さぁ、行こうか!!」
そのまま旧地獄から飛び出す!!
そしてこいしを守る様に立つ!!
「ただいま、待たせたね」
「おかえり……」
目を覆いたくなる惨状に狂弦は今、再び立ち上がった!!
「行きましたか……行ってしまったものはもうどうしようも有りません。せめて他者の為に与えられた時間を一生懸命に生きなさい、それがアナタのできる善行です」
去ってゆく狂弦を映姫は見送った。
それにしても厄介な事に成った、この混乱で多くの魂が逃げ出した可能性が有る。
どうした物かと映姫は頭を悩ませた。
「ほぅ?Ⅳの力で蘇生したか?……いや、Ⅴの力か?まぁいい……いずれにせよ!!ゴミが一匹増えただけだ!!物語の住人よ、【浮上しろ】!!コイツを血と肉と絶望の塊に帰るのだ!!」
オルドグラムがそう怒鳴ると共に、狂弦の周りに無数の異形達が現れる!!
「狂弦!!逃げて!!」
こいしが悲痛な声を上げるが……
「大丈夫、何も怖がることはないんだよ」
そう言った瞬間、無数の弓が、鉄塊が、車輪が、野獣の爪が同時に降り注ぐ!!
「ははは、さっそく死亡だな!!……何!?」
笑声を上げるオルドグラムが、固まる。
そこにはすべての攻撃を紙一重で回避した男が立っていた!!
「ああ、こっちはこいしちゃんが持っていてくれたんだね」
そう言って近くに居た妖怪から、古ぼけた猟銃を受け取る。
その余裕に満ちた様子にオルドグラムが焦りだす。
(なぜだ?完璧に殺したハズだ!!なぜ恐れない!!なぜ恐怖しない!!)
「殺せ、コイツを殺すんだぁ!!」
グリモワールに魔力を送り込み、異形共を操ろうとする。
しかし異形達は動かない……
「おい、どうした!?なぜだ!!なぜそいつを攻撃しない!!」
「無駄さ。少しだけ、ほんの少しだけ俺の力は成長したみたいなんだ、他人の悪意に干渉できる。
この子たちはもう何かを恐れて暴れたりはしないよ……」
その言葉にオルドグラムは歯噛みする。
異形達は人の精神の奥にある、攻撃願望を具現化させたものであるた害意が無くては戦闘では役に立たない!!
「まだ、だ!!まだ私自身が居る!!永遠の器を持つ私が!!」
左腰のステッキを抜き、狂弦を切りつけようと走り出す!!
この男は生かしておけない!!自分よりも優れた人間は誰ひとり居てはいけないのだ!!
「むぅううううああああああ!!」
クサナギを発動させ、狂弦の頭蓋を砕こうとする!!
「甘い!!」
それに対し狂弦は瞬時に猟銃に妖力を纏わせ、ステッキを受け止める!!
しかし武器の差か、次第に押され始める!!
「ふははぁ!!良いぞ!!私に跪け!!私を……私を恐れろ!!」
歪に顔をゆがめるオルドグラムに対し、狂弦は懐から一枚のカードを取り出す。
「……発動【悪路『
銃口から発される光の軌跡!!
それは打ち上げ花火の様に空に上がり……
悪意を纏った怪人を容赦なく打ち抜く!!
「がぁぁああ!!よ、よくも!!」
光弾に貫かれたオルドグラムが、よろけ狂弦から距離を取る。
「まだ、まだ私には永遠の器が有る!!お前の攻撃は最終的には無意味だ!!私が!!私が頂点!!私が人間を総べる王だ!!」
最早『王』とはとても言う事の出来ない姿で、尚もオルドグラムは嗤い続ける。
全身の傷がふさがりつつあるが、その姿は滑稽さと狂気に塗れていた!!
そんな様子を狂弦はジッと見ていた。
「違うさ。お前は王なんかじゃない!!『黒幕』からもらった魔力、妹紅さんから奪った不老不死、他人をだまして脅して手に入れた異形、何一つお前の力じゃない!!お前はただ他人の力を使っているだけの空っぽの人間だ!!」
そう言って指をオルドグラムに付きつける!!
「か、空っぽだとぉ!?私ほど満たされた人間は、完成された人間は居ないというのに!!取り消せ!!私の踏み台の癖に!!ただ壊されるだけの存在の癖に!!ゆるさん!!ゆるさんぞ!!絶対に貴様は殺す!!【浮上
オルドグラムの両手に大量の魔力が集まる、それと同時に異形達が溶けて消えていく。
「これで、お前を消してやる!!」
爆発的な力の激流が狂弦を襲う!!
「消えるのはお前だ!!悲しみしか生まない悪意は俺が許さない!!」
自分の持つ猟銃に全力で力を注ぎこむ!!
命符【
オルドグラムの魔力を打ち抜く!!そしてその奥に居たオルドグラムでさえも!!
カランッ……
乾いた音を立て、オルドグラムのステッキが地面に落ちた。
オルドグラムの腹に大穴が開いており、向こう側の景色が見えていた。
「は、わた……し、は、まだ、再生能力……がぁ!!」
突如オルドグラムが落ちていた木材で、自分の喉を刺した!!
当たり前の様に傷がふさがるが……
「な、んだ?……どうして今、私は……自分を刺したん……ぐがぁ!?」
さらに次は自分の右足を木材で突き刺した!!
「アンタの悪意に干渉した、『他者へ向ける悪意を自分へ!!』悪意を捨てるんだ、そうすればアンタは助かる筈だ……」
「断る!!なぜ……ッあ!!貴様に!!ぐぐぅ!?指図を受けねば……がはっ!!、ならぬ!!私の欲望だ!誰にもやらん!!…………ふはは!!最後の最期で勝のは私の様だなこれを見ろ!!」
オルドグラムは近くに倒れていた、麻衣を掴み上げる!!
「コイツを……助けたければ!!私にかけた能力を解け!!」
先ほどの木材の先端を麻衣に付きつける!!
しかしそんなオルドグラムを余所に、弱弱しく麻衣が笑う。
「ずいぶん三下みたいな事するのね……けど、もう手遅れよ、アナタは詰み」
「ほざくな!!塵芥!!【浮上
再びオルドグラムに魔力が宿り始める!!
「おい!!もう辞めろ!!」
「煩い!!私が頂点――」
ガシャ……
オルドグラムの足元の瓦礫が、崩れ始める!!
「な、何を!?」
オルドグラムは気が付かなかったが、ここは灼熱地獄に蓋をする様に作られている。
蓋の上で散々力を使った為、地面が一部脆くなっていたのだ!!
「う、うわぁ!?」
麻衣を掴んだまま、オルドグラムが灼熱の地獄へと落ちてゆく!!
「危ない!!」
落ちてゆく麻衣をこいしが掴む!!
「あ、あの時の子だよね……ずいぶん、ちゃんとしたジャン……」
こいしを見てにっこりと笑う。
「い、今引き上げるから……!!」
「もう、意味はないよ……私は復讐を果たしたんだ……」
そう言って力を抜くが……
「まだだ!!俺も居る!!」
狂弦も麻衣の腕を掴む!!
「あなたのお陰なんでしょ?狂弦が戻って来たのって!!ならお礼しないと!!」
「こいしちゃん持ち上げるよ!?」
「うん!!」
狂弦とこいしは麻衣を何とか引き上げた。
しかし……
「二人ともありがとう……けどさっき言ったみたいにもう、時間切れなんだ……」
そう力なく笑うと、麻衣の身体が少しずつ透けはじめた。
「どうして!?」
「えへへ、力の使い過ぎ……ずっとオルドグラムに使われてたから……けど悲しまないで……やっとお父さんの所に行けるんだ……最後にあの悪魔も倒した……私ね?もう後悔とか無いの……だから、せめて笑って送って?……名前も知らない……私のヒーロー達……」
「夜城 狂弦だ……」
「古明地 こいし……」
「へえ……最後に友達が出来たみたいだね……私は……十村……麻衣……ありがとうね?」
そう言って麻衣は完全に消えて行った。
悪魔の魂は灼熱地獄へ……炎の中、永遠が終わる時まで永遠に燃やされ続ける。
一人の少女の魂は空へ……あの世で自らの父親と再会することが出来るだろう。
Ⅴ死亡 Ⅵ再起不能
ふぅ……オルドグラム編はこれにて終了です。
次回からはまた日常回へ!!
ではオルドグラムのプロフィール紹介
オルドグラム・ゴルドミスタ。
800年前の錬金術師。
錬金から魔術を学んだ中途半端な魔法使い、捨虫が出来ないので死亡するが自身の魔術書に魂を移植し、復活を待つ。
幻想郷に流れ着き、紙芝居屋が偶然拾った事で憑りつかれる。
そして自身の欲を満たす為暗躍する。
基本武器は左のステッキ。剣であり杖であり槍であり魔術の媒体でもある。
グリモワールオブ・オルドグラム。オルドグラムの頭脳と魂を移植した危険な道具、ある意味でこれが本体。本だけに。
紙芝居屋として、子供に魔術が暗号化した童話を読ませ、疑似魔術師を作り自分に魔力が来るようにしていた。
また、魔力を逆流させ子供を異形に変えさせる事も出来るが、細かな動きは出来ずおおざっぱにしか動かせない。
名前に由来は凄まじく適当。
学者のニュートンが元ネタnew⇔old+㌧⇔㌘
さらに錬金という事でミックス、ゴールド。
オルドグラム・ゴルドミスタ!!
同情の余地がない完全な悪人を目指したキャラクター。
何度も言ってる様にかなりのお気にいり。
友人曰く性格が作者に似てるらしい……そんな馬鹿な……!!
麻衣ちゃんは次回で。