それで後ろめたさが消えると思っているのか?
応えは否、決してそれは消える事は無い……
カチャカチャ……
「お変わり!!」
「ハイハイ、今付けて――」
「さとり様、俺も欲しいから。俺が代わりに付けてきますよ」
「それじゃあお願いできるかしら?狂弦?」
平和な食事風景、さとりが居てお燐が居てお空が居てこいしが居て最後に狂弦がいる。
オルドグラムが再起不能になり2週間が経過した、半壊した地霊殿は旧地獄の仲間たちのお陰も有り8割がた復旧している。
あれから様々な事が起きた。
オルドグラムを倒した後その場に現れたのは、幻想郷の管理者 八雲 紫だった。
「霊夢がやられたとあって飛んできたのだけど……どうやらその必要は無かったみたいね。貴方は……外来種と言うべきなのかしら?なんにせよ今回はひとまず礼を言っておくわね、さぁて……もう一人の外来種が荒らした部分を直さなくてはいけないわ、それでは皆様ごきげんよう」
そう言って彼女は隙間の中に消えて行った。
霊夢と魔理沙は奇跡的に生還し、現在永遠亭で療養中らしい。
紫の手回しか、このオルドグラムの起こした異変は
半分と言うのは、麻衣がオルドグラムとして里を襲った事だけが記録として残る、という事だ。
もう半分のオルドグラムの地下での行いは、まだ術式が里に子供に残されている事、巫女が敗北した事を加味し、
不安は残せない、有った事自体消された。
幸いオルドグラムの悪行を知るのは当事者を覗けば、洋菓子屋のみ(門番の妻は衰弱死した)であるためすぐに完了した。
狂弦の活躍、オルドグラムの悪意、そして巫女の敗北はすべて闇に葬られ、麻衣は最悪の魔法使いとして汚名を着せられることとなった。
素直な話、とてもではないがさとりたちは納得できなかった。
しかし
狂弦本人が「もういい」との事ですべては忘れられて行った。
狂弦自身はこうしてまた、家族と食事をとれるだけで十分なのだ。
「ハイ、ごはんのお変わり持って来たよ?」
そう言って白米をこいしに渡す。
数日前に恐ろしい戦いが有った事を、優しさで埋めるような日常が流れていく……
食事も終わり、復興した自身の部屋で風を感じる狂弦。
「みんな強いよな……あんな事が有ったのにもう立ち直ってる……」
部屋の窓からは多くの妖怪達の暮らしの灯りが見える。
「守ったんだ……俺が、みんなと一緒に……少なくともあの灯りは俺達が……」
そう言って地霊殿に庭の一角にある簡素な墓を見る。
優しき少女、十村 麻衣ここに旅立つ。
墓にはただそうとだけ、書かれ小さなベルが置かれていた。
この場所だけなら、麻衣は汚名を着ないで済むのだ。
悪意も善意を優しさも欺瞞もすべて日常として流れていくのだろう……
「少し眠ろうかな……」
僅かな眠気を感じ窓を閉じようとした時――ガラっと逆に窓が開かれる。
窓からヒョイっと誰かが顔を出す。
白い体毛に黒いブチに赤い目、さらに犬の様なピンと立った耳。
狂弦はその姿に見覚えが有る!!
「やっほ~おにぃさん!!元気してたぁ?ですくちゃんとーじょ~」
そう言って部屋に窓から侵入するのは、(自称)次世代型白狼天狗の
「狗灰
狂弦が驚き声を上げる!!正直言ってこの瞬間まですっかり忘れていた!!
「うう~ん!!せいか~い。さすがのおにぃさんでもぉボクの事覚えてたみたいだねぇ?そぅだよぉ?元美少女白狼天狗のですくちゃんでしたぁ~。あ!!元は白狼天狗に掛かるからねぇ~、美少女の方じゃないよぉ?」
最後に会った時の様に、気の抜けたしゃべり方をする。
「どうしたんだよ一体?」
「うぅん?宴会のお誘いだよぉ?上の世界のぉ、こわぁ~い巫女さんと欲張りな魔法使いさんから~」
そう言って、簡単にだが博麗神社で宴会が開けれる事を知らせる。
簡単に言えば異変解決の祝勝会みたいだ。
「……なんでお前が知らせてくれたんだ?」
ここでふと疑問に成った事を聞く。
正直言ってですくが巫女と知り合いとは思えない、何か意外なつながりが有るのだろうか?
「ああ~それでねぇ?もみーセンパイにやられたトコが痛いからぁ~。病院で見てもらったんだけどぉ、その時入院していた二人にたのまれたんだよねぇ~」
ころころと楽しそうに笑う。
「宴会か……悪いけど俺は行かない――」
「おっと!?そうはいかないよ?おにぃさん。この宴会は細やかな抵抗らしいんだ」
「抵抗?」
今までのふざけた様な態度が消え真剣に話始める。
「巫女さん達は賢者様のやった事が、気に食わないみたいだねぇ。そりゃそうだよ、要するに『臭い物には蓋をしろ』って事なんだし……けど、おにぃさんの活躍が無かった事には出来なでしょぉ?だ・か・ら・宴会!!行きなよ、おにぃさんにはその権利と義務が有るんだよぉ?」
じゃあね
と言うと同時に再び窓から外に出て行った。
「宴会か……」
狂弦はですくが消えて行った窓をずっと見ていた。
(俺も進まなくちゃいけないんだな……きっとそれが残された者達の義務だ!!)
ベットから立ち上がり、こいしを探し始めた。
チリーン……
何処かでベルが鳴った、心なしかうれしそうな音色だった気がした……
翌日 博麗神社にて……
「うわ……コレはすごいな……」
「そう?狂弦は初めてなんだっけ?」
「飲むー!!」
「あッ!お空!!勝手に……」
「はぁ……みんなすぐに行ってしまうんですね」
地霊殿の全メンバーが地上に出ていた。
狂弦は、はしゃぐ妖怪達を呆然と見ていた。
「おにぃさん?こっちこっち~」
ですくが酒瓶片手に手を振る。
「狂弦行こう?」
こいしが狂弦の手を引く
「ああ、今いくよ!!」
「お!?来たな?一緒に飲もうぜ?」
「あら、やっと出てきたのね?良さそうなのは粗方飲まれたわよ?あとでお賽銭入れておいてくれない?」
魔理沙、霊夢と多くのメンバーが狂弦を誘う。
「今日はたくさん飲むぞ!!」
狂弦が笑顔でそうつぶやく。
数時間後意識が無くなるまで彼は飲みまくった!!
狂弦は意識を取り戻すと同時に、一人の男を探し始める。
「やぁ、やっと見つけたよ……龍我」
その男こそ、狂弦と同じ数字持ちの龍我だった。
「ん?ああ、夜城か……良い夜だ、和気藹々としてる、こんな日に飲む酒が一番うまい」
そう言ってグラスを傾ける。
「……黒幕にまた会った」
「……!!」
狂弦の言葉に龍我が持っていたグラスを止める。
次に口を開いたのは龍我だった、
「……それで?」
「もう一回会ってみてわかった。アイツは何かを企んで俺達を作ってる訳じゃない」
狂弦の持つ悪意を読みとる程度の能力。
それは死後の世界でも有効だった、もちろん対象が「黒幕」だったとしても。
「ほぅ……なら目的はなんだ?」
「なんて言うんだろ?ホントに偶然出会った、強い願いを持った人物の願いを叶えて回ってるんだよ。黒幕自身人の願いを叶えるシステムと言ってもいいのかもしれない……彼に善悪の感情は無いんだと思う」
狂弦がそう言い切る。
龍我はただそれを静かに聴いていた。
「願いを叶える……システムか……すべて俺達の側か……」
強さを求め身体を強化された龍我、死を恐れ他者の害意を読み取る様に成った狂弦、父親と再会するために反魂を可能とした麻衣、大きすぎる欲を満たそうと、魔道の力を手にしたオルドグラム、全ては受けて次第……
「きっとアイツは今日も願いに惹かれて、何処かを彷徨ってるんだ……」
狂弦がそう一人つぶやく。
何処かの暗い道……
ノイズで形成された人型が音も無く降り立つ。
身体中に数字が表れては消える、を繰り返す。
一つ、額の
彼は名も無き存在、何時から居るのか、不明だが人の願いをこっそりとかなえる未知の存在……
彼は人の願いに呼ばれ奇跡を与える。
しかし彼の奇跡には定員が存在する。
10名、それが彼の同時に起こせる奇跡の数だ。
さて、次はだれが奇跡を手にするのか……
それは彼にも解らない。