東方生迷伝   作:ホワイト・ラム

31 / 37
短編シリーズラスト。
次回から再び本編へ!!


歯と牙

竹林の中、複数の男たちの声が響く。

「おらぁ!!」

ドガッ!!バギッ!!

殴られた男が宙を舞い、傍に生える竹に激突する。

気絶したのかはたまた死亡したのか、殴られた男はピクリとも動かない。

 

指の骨をゴキゴキと鳴らす。

「次はどいつだ?」

まるで爬虫類の様な好戦的な眼をし、武器を持った他の男達を睨む。

その迫力に男たちはなすすべもなく逃げ出した。

 

「終わったぜ」

一息つきながら、近くに有った馬車に声をかける。

 

「ああ、解った。助かったよ……」

馬車の中から安堵の声が聞こえる。

馬車の中の男は、龍我の雇い主である。

商品を運ぶ仕事をしているのだが、山賊が多くそれに対する警護として雇ってもらっているのだ。

移動しようとして竹に手を付いた時、僅かな痛みが走る。

どうやら何処かひっかけたらしく、腕から血が流れていた。

 

「チィ……めんどくせぇ」

そう言うと近くに有った竹で、自分の血の出た部分をぬぐった。

 

自分の両親が死んで以降、龍我は定住する場所も無く旅を続けていた。

行く先々で新しく日雇いの仕事でしのいでいた。

本職もその一つだった。

 

 

 

商人の馬車も新しい街に付き、龍我はそこでお役目御免となった。

「ほら、アンタの分け前だ」

何処か怯えた表情で商人が賃金を渡す。

人間離れした龍我の事を、怖がる者は珍しくは無い。

それに対し龍我は気には留めない、人外に成った者の代償だと理解し自分に言い聞かせ続けている。

受け取った金を懐にしまい、街中を適当に歩く。

 

そう言えばそろそろ食事の時間だ。

空腹を感じた為適当な店を探す。

 

「ここにするか」

適当な店を探しだし入ろうとするが……

「お若いの、ここは止めた方が得じゃぞ?」

「あ”あ”?」

不機嫌になり、後ろを振り返る。

そこにいたのは70歳ほどの老人だった。

 

「ここはあまり美味い物はなさそうじゃぞ?ひひひ」

並びの良い歯をむき出しにして笑う。

 

「なんだ?てめぇは……」

「儂か?儂はな……ふーむ……名前を名乗っても良いが……意味はなさそうじゃしな……飯事翁(めしどきおきな)とでも言っておこうかの?」

にひひと再び歯を食いしばり笑う。

明らかに怪しい老人である。

こんなタイプには付き合わない方が賢明だと、龍我は判断した。

 

「付き合ってらんねー」

飯事翁を無視し、目の前の食堂に入っていく。

適当なテーブルに付き食事を注文しようとするが……

 

「若いの、そいつはやめた方が良いぞ?儂のおすすめはこれじゃな」

いつの間にか付いて来た翁が別のメニューを差す。

 

「なんの用だ?別にお前と飯を食うつもりはないんだが?」

睨みを利かせるが一向に翁は気にしない。

自身の行為が無駄だと判断した為、放っておくことにした。

暫くして両人の頼んだ料理が運ばれてくる。

 

「…………イマイチだな……」

一口食べた龍我は苦言を呈す。

食欲をそそる名ではあったが、味自体はあまり好みの味ではなかった様だ。

 

「ほぉれ~、言ったじゃろ?こっちの方が良いんじゃよ」

そう言って自分の皿を龍我に差し出す。

そちらは、見た目があまり良くないが、他のテーブルを見ると多く出ているメニューの様だった。

 

「……悪くない」

無言で口に入れた龍我が僅かに笑みをこぼす。

 

「そうじゃろ?若いの、名は?」

「かk……いや、違う龍我、龍我だけで良い」

 

「訳ありじゃな?そんな目をしておる」

いつの間にか箸を止め龍我を見据える。

その瞳には老人特有の、深い思慮が込められている様に見えた。

 

「アンタには関係ねぇよ、次は何処に向かうか考えているだけだ」

 

「はぉ~儂と同じく旅人か?」

 

「へぇ、爺さんアンタもか?」

 

「ああ、そうじゃ、世界各国美味いモンめぐりじゃわい」

そう言って、再び歯をみせ笑った。 

 

暫く談笑していた二人だが、会計時に問題が起きた。

翁の料金が多少足りないらしい。

本人曰くもうすぐ、金が入るらしいのだが……

仕方ないと龍我が払うのだが、いつの間にか翁は消えていた。

 

 

 

暫く龍我はその街に滞在していた。

運良く割のいい仕事が見つかり、その仕事に従事していた。

 

「コレも頼むぞ」

「了解だ」

街の中の金持ちの家の引っ越しの手伝いをしていた。

かなり条件が良く、肉体派の龍我には申し分ない仕事だ。

 

「これで最後だ」

巨大なクローゼットを馬車に乗せ雇い主に、報告しにゆく。

 

「おにーさんありがと!!」

その家の娘が、笑顔で龍我に近づく。

「気にするな、そういう仕事だっただけだ」

 

何時の様につれなく話すが……

「お兄さん怪我してるよ!!ほら!!こっち来て!!」

数日前、山賊たちと戦った時の傷を運悪く見つかってしまった様だ。

一気に不安そうになり、何処からか包帯を取り出し龍我の腕に巻く。

 

「お揃いだね!!」

そう言った娘の腕には赤いリボンと、三つの鈴が並んでいた。

 

「ああ、そうだな……」

何処となく、心がざわつくのを感じながらその一家を見送った。

 

「久しぶりだ……久しぶりに誰かに笑いかけられた気がする……」

一人残された龍我は自身の腕に巻かれた包帯を見つめていた。

 

 

 

 

 

3日後……

「そろそろこの街ともおさらばだな……」

そうつぶやきながら、一人街を再び歩く。

 

「おーう、若いの、ここに居ったのか」

「ジジイ、この前振りか?」

後ろから声を掛けられるが、それは数日前に有った翁だった。

 

「この前はすまんかったの。ほれ、収入が入った」

そう言って、懐から財布を取り出す。

そして財布を漁り、現金を龍我に渡す。

 

「…………ありがとよ……ところで……少しいいか?場所変えるぞ?」

 

「なんじゃ?儂になんか用か?」

 

財布に付いていた有る物を、見て龍我の表情が曇る。

訝しむ翁を連れ、山賊と戦った竹林まで移動する。

 

「爺さん、アンタその財布の鈴……何処で手に入れた?」

龍我は翁の財布に付いた鈴を指さす、その鈴は間違いなくこの前の少女の物だった。

 

「これか?拾ったんじゃよ、良いデザインじゃろ?」

はぐらかすように、明るい表情をする翁。

更に龍我は質問を続ける。

 

「なぁ、さっき財布を出す時見えたんだが……アンタの胸の絵ってなんの絵だ?」

 

「儂の懐の……?ああ、これか?若いときヤンチャして入れた刺青――」

 

「嘘をつくんじゃねぇ!!俺にも似たようなモンが有るんだよ!!」

そう言って自身の右手を開きⅡの数字を見せる。

その数字に翁の態度が変わる。

 

「ほぉ、儂以外で有ったのは初めてじゃわい……」

そう言って自身の服を肌蹴させる、そこに刻まれたのはⅦの文字。

 

「この数字持ちの意味は理解してるだろう?アンタ、さっきの財布、盗んだヤツだな?」

ギラリと視線を翁にそそぐ。

 

「何を言っているんじゃ?儂がやった証拠は何処にある?」

両手を上げ、自身のみの潔白を訴える。

 

「証拠は無いさ、だが『無い』事が今回は証拠だ!!……この竹林、実は少し前俺が派手に暴れた場所だ、当然流血騒ぎになった。

その時、竹に血を付けちまったんだが……きれいさっぱり拭き取られている!!

最近雨が降った事はねぇし、わざわざ竹林を掃除するヤツもいねぇ!!もっと掃除するのはかなり大変だがな……仮に出来たとしても、なんかの力を持ったヤツだけだ!!

そうだろ!?Ⅶ!!」

追いつめるように龍我が翁に迫る。

 

「クヒ!!クヒヒヒ!!何じゃ?いきなり探偵ごっこかの?実に下らんな!!儂が?殺して道具を奪ったと?武器はなんじゃ?動機はなんじゃ?死体は?他の荷物は?お前さんの推理は穴だらけじゃの!!カカカカカッカカ!!

じゃが……正解じゃよ……路銀が必要だったのでの……」

 

カツーン!!

と音を立て、翁の歯がかみ合わされる。

 

「じゃが……一つだけ……間違った部分が有るの……儂は道具目的で殺してはおらん……食う事が目的よ!!」

その瞬間翁の姿が変化する!!

若々しく、そして巨大化した口を持った怪物へと!!

 

「食う事は支配する事じゃ!!弱肉強食こそが世界の真理!!食っ(征服し)てやるぞ!!若いの!!」

「バッカ野郎がぁあああああ!!!」

 

 

 

 

 

身体に僅かな振動を感じる。

そして誰かが呼ぶ声も……

「……萃香か……」

 

いつの間にか眠っていたようで、目の前の鬼が酒臭い息を吐きながらこちらを揺らしていた。

「なんだい!!せっかくの宴会だってのに一人で!!みんなと萃まって飲もうじゃないか!!」

そう言って龍我に酒の入ったジョッキを渡してくる。

 

「……ん?どしたの?」

何かこちらの様子がおかしい事に気が付いたのか、不思議そうな顔をする。

 

「少し……昔を思い出しただけだ……」

そう言って懐から、古い包帯を取り出す。

何故か小さな鈴が三つ付いてチリンと鳴った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。