東方生迷伝   作:ホワイト・ラム

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最早多くは語るまい……


龍の求める物

「お誕生日おめでとう、フノイちゃん」

杯正は目の前の全裸の幼女に、そう言って自身の上着を脱ぎかぶせた。

 

「フ、ノ……イ?」

フノイと呼ばれた少女が杯正の言葉をオウム返しした。

 

「そう、それが君の名前。決して消える事のない『不』滅『の意』志さ」

 

「ふーん……けどちゃんは止めてこども扱いはイヤ、さんつけて!!」

気の強そうな瞳を杯正に向ける。

その視線に杯正は少しだけ困ったような顔をする。

 

「解ったよ、今度からフノイさんね」

それだけ話すと、フノイを抱き上げいまだに呆然としてるレミリアの元に近寄る。

 

「スイマセン、勝手に話しちゃって……ここにはもう用は無いから帰りたいんですけど……良いですかね?お互い生きてたらまた会いましょう?その時は今日の無礼も謝ります」

 

そう言って頭を下げ、フノイを自身の元に呼ぶ。

「さあ、行こうか?」

「うん!!」

フノイが杯正に抱き着くと同時に、水の中に落ちるように杯正の身体に沈んでいく。

そしてもごもごと、杯正の背中からフノイの翼が生えそろう。

 

「それではみなさん、また会う日まで!!」

そう言うと、天井に向かって飛び立った!!

先ほどのフノイと同じように、溶け込むようにして杯正は消えたいった。

 

 

 

 

 

それから早2週間後……

 

狂弦、こいし、龍我の三人は博麗神社に呼ばれていた。

呼ばれた理由はもちろん杯正の対策である。

現在、杯正および紅魔館側の情報提供で判明した新しい『外来新種』フノイ。

この両名は現在も行方不明である。

 

「あんたさ、アイツの友達だったんでしょ?なんかアイツの好きそうな所とかないの?」

霊夢が座布団に座りながら狂弦にそう話す。

 

「悪いけど、アイツの行動は俺には読めない――というよりも理解できる人種の方が少ないんじゃないかな?」

 

「悪意はどうなんだ?お前って他人の悪意を読めるんだろ?なんか言ってなかったのかよ?」

そこに居合わせた魔理沙が、そう言いながら手持ちの魔道書をめくる。

 

「一応読めたけど、計画については何もなかったよ。距離が離れすぎているから追う事も出来ないしね……」

 

 

 

三人が話すなか、こいしと龍我は庭でうさぎを撫でていた。

「この子かわいい!!」

そう、言いながらこいしが龍我の連れていたうさぎを抱き上げる。

ジタバタと必死でうさぎが足を動かす。

 

「こらこら、いやがってんだろ?弱い生き物ほど大切に扱わないとな……」

そう言って、優しくうさぎを抱き寄せる。

その時チリンと小さく鈴の音が鳴った。

「首輪?」

うさぎの首に白い物が巻き付いていた。

「違う、ただの包帯と鈴だ。少し位おしゃれさせてやんないとな?」

そう言って、龍我が再び優しくうさぎを撫でる。

 

「わぁ……!!もふもふ!!」

こいしがうさぎを今度は優しく抱きしめる。

うさぎも目を細めて、鼻をひくつかせていた。

 

「それでいい、そいつを大事にしてやってくれ」

そう言うと同時に龍我は立ち上がるり、神社の入り口に向かう。

「何処かいくの?」

「野暮用だ……すぐに済む……」

一抹の不安を感じながらも、こいしは龍我を見送った。

 

 

 

 

 

「ここ等辺か……」

人里から離れた場所で龍我が、ひとり佇む。

辺りに岩や、木が生えた何処にでもある場所。

 

「こんにちは、来てくれたんだね?」

まるで水が湧き出るように、地面から黒い水が現れそれが人型に成る。

夜の様な黒い長髪。

 

「お前か?夜城たちが言ってたフノイってのは?まだガキじゃねーか」

やれやれと言った感情を露わにし、フノイを見据える。

しかしフノイはその言葉に機嫌を損ねた。

 

「むぅ!!今私の事こどもだって思ったでしょ!!しかも呼び捨て、私の事はフノイさんって呼んでよね!!」

そう言って、怒りをあらわにしながらその場で地団太を踏む。

 

「へいへい、で?そのフノイさんが俺になんの用だ?」

場合によっては戦闘に成る、龍我はその事を理解しポケットから拳を引き抜いた。

 

「うん?私ね、友達が欲しいの!!ううん、私だけじゃないよカンパイも新しい友達が欲しいんだって!!だからね?『創る』事にしたの!!私みたいにたーくさん友達を『創る』の!!そのために材料が必要なんだぁ!!」

そう言うと同時に嗜虐的にその顔が歪む。

足を屈めると同時に全身のバネを使い、龍我に右手を突きだす!!

 

フノイの腕が龍我を貫こうとする!!

しかし!!

 

「まったくよ……どいつもこいつも……!!バカしかいねぇのか!?」

咄嗟に自身の右腕で殴り返していた。

それと同時に龍我の持つ『最強()に近づく程度』の力が使われる。

龍我とフノイの間には、体格差という大きな壁が存在する。

それは手の長さも含まれている。

龍我の拳は容赦なくフノイの右ほほにめり込んでいた!!

 

「ああ!!もう……痛ったいな~」

叩きつけられた岩から、フノイがゆっくりと起き上がる。

手加減したとはいえ、並みの人間なら一発で再起不能の攻撃だ。

この時点でフノイが人間でないことを察する事が出来る。

 

「どうだ?大人しく家に帰る気は無いか?何なら杯正とかいう奴も、ぶん殴ってやっても良いんだがな?」

ゴキゴキと肩の骨を鳴らす龍我。

しかし内心では、殆ど効いている様子が無いフノイに酷く焦っていた。

 

「まだまだ!!これからだよ!!」

フノイがそう話すと同時に、自身の右手を岩にペタリとくっつける。

すると不思議な事に、どんどんフノイが岩に溶けて行った。

まるで、水に潜るかのように姿が消えていく。

 

「ちぃ……なんかの能力か……厄介だ……なっと!!」

地面から、透過するように投げられた石をその場で叩き落す!!

息を付こうとした時、今度は石製の槍が2本、3本と連続で射出される。

 

仕方ないと龍我は、自身の羽を生やし近くの木に飛び移る。

 

(マジに厄介だ……こっちからは攻撃出来ないっぽいな……どう仕留める?)

思考に集中を振った瞬間、足にグサリ!!と激痛が走る!!

「ぐぅあ!?」

「きゃは♪」

混乱と同時にその方向を見ると、木の幹から石製に槍を持って上半身を生やしたフノイが笑っていた。

 

「……てぇんめ!!」

今度は加減なしにフノイの顔面めがけて拳を振るう!!

だが、この攻撃はフノイにダメージを与えることは無かった。

 

「な……にィ!?」

それは異様な光景、龍我の拳がフノイの顔面を貫通している。

いや、正確には貫通で有っているのかすら不明だ。

まるで、水の中に手を入れたような手ごたえの殆ど無い感覚だ。

 

「おじさんは私に触れられないよ?……可哀想だねぇ……悔しいね」

そう言ってゾッとするような笑顔をすると同時に、龍我の右手に触れようとする。

龍が身の危険を感じ急いで顔面を貫通している、手を引き抜こうとする。

 

地面に数滴赤い血が滴る……

 

「マジに化けモンか……!!」

龍我には中指から小指までが存在しなかった。

指が有った所には骨だけが残り、フノイの足元には丁寧にい分解された龍我の指だったモノが落ちていた。

爪、皮膚、神経、血管、肉と()()ごとに分解された居た。

 

「分解、分解♪たのしいな~、人間ってこんな材料で出来ているんだ!!」

そう言って足元の指の材料を興味深そうに見る。

そうしている間に龍我は自身の服を破き、自身の腕の止血をしていた。

 

(くそ!!何だりゃ?最初は地面に溶ける力だと思ったが違う、もっとやべぇ能力だ!!)

左手で、今度は木の一部をへし折り投げつける。

 

「無駄だって言ってるのに……」

心底飽き飽きと言った顔で、その場で指を眺める。

透過、透過、透過……

傷付ける事すら出来ずに、フノイを透過する木たち。

 

「せっかくだから教えてあげるよ……私はね?物を自由に分解できるの、そしてまたそれを自由に組み立てる事が出来る……こんなフウにね?」

フノイがそう言うと、木が積み木のように分解された。

カン、コンと軽く音を立て積み木が組たてられる。

そして今度は、一つにくっつく。

 

「カンパイは私にこう言ってた……『フノイさんの力は僕の望む世界を作るために必要だ』って『和と不和を自由に出来る』んだって……とっても面白いよね!!オジサンにもそんな力が有るんでしょ?」

ゆっくりフノイが近づいてくる。

 

「ねぇよ……俺の力は何かを作ったり出来ない、何処までも自分の為の力だ……誰かを守ろうとした事もあるさ、敵とも和解できるハズの時も有った」

龍我の脳裏に鈴をつけた少女と、好々爺と言った感じの老人がよぎる。

尚も龍我は言葉を続ける。

「だがな……所詮!!龍は一匹だけだ、誰かと共に歩む事は無い!!俺は、龍は壊すだけだ!!なら、ここでお前は()が、ぶっ壊す!!」

そう言って大きく咆哮を上げる!!

身体が、青い鱗に包まれ鋭い牙と爪が生える!!

更に尻尾と翼までもが生えそろう!!

 

「理性なんて関係ねェ!!和も不和もだ!!全部俺が叩き壊してやるぜ!!」

圧倒的なプレッシャーを纏い、フノイに跳びかかる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十数分後……

「あはははは!!きれいきれい!!とっても素敵!!」

辺りが滅茶苦茶に破壊された場所で、幼女が青い結晶を手の中で弄ぶ。

うれしそうに飛び跳ねるその姿は、無邪気さにあふれている。

 

「これで新しいお友達が出来るよ!!あはははは!!」

青い結晶にはⅡの数字、足元には()()()()()で有った者が倒れていた。

残酷な事に最早半分人の形はしていなかった。

 

「オジサンばいばーい!!」

幼女がその塊にそう話空へと飛び立って行った。

 

「龍我!!オイ!!」

それとほぼ同時に、狂弦たちが走ってくる。

先ほどの戦闘での破壊音と、龍我の上げた咆哮に呼ばれたのだろう。

 

「うっ……!!」

霊夢があまりの惨状に目を背ける。

何時から居たのか萃香までもが、龍我に駆け寄る。

 

「一体何が有ったんだい!!」

萃香が必死に、龍我の顔を覗きこむ。

 

「……フノ……イと……戦った……アイツは……物を融合、分解させる……距離を……とれ……」

 

フノイの能力をゆっくりと話した。

 

「そんな事はもういい!!早く病院へ!!」

狂弦が今にも崩れそうな龍我を持ちあげようとする。

 

「もう……無理だ……すまねぇ……結晶……取られた…………」

そう言って自嘲気味に話す。

 

「なんで!!なんで一人で行った!?仲間は?なんで仲間を呼ばなかったんだ!!」

魔理沙が同じく龍我に詰め寄る。

 

「な……かま……?」

不思議そうに龍我がつぶやく。

 

「そうだよ!!俺達仲間だろ!?一緒に酒飲んで、馬鹿みたいに騒いで、んでお前がそれを仏丁面で眺めながらうさぎ撫でて!!」

狂弦が涙ながらそう話す。

 

()は一人だ……壊す事しか……出来……な」

 

「馬鹿野郎!!私はアンタと飲む酒好きだったよ!!勇儀もきっとそうさ!!」

 

「オルドグラムの時、一緒に里守ったろ!!みんなお前に感謝してるんだぜ!?」

 

「そのうさぎ……きっと龍我の傍が好きだったハズだよ?」

 

「おねぇちゃんが言ってたよ?あなたは不器用だけど優しい人だって!!」

 

「あなたも間違いなく異変解決の立役者の一人よ!!」

萃香、魔理沙、狂弦、こいしさらには霊夢が次々と龍我に語りかける。

その言葉に龍我がふっと笑う。

 

「1000年……以上生き……た。だが……仲間なんぞ……守る事なんて……終ぞできな……い……と思ってた……うれ……しいね……ずっと、欲しかったモン(最強の名)より……ずっと良いモンを……手に……いれ……た……もう、()は一人じゃ……な……い……」

それだけ言うと満足そうな顔で、龍我は白い砂に成り消えて行った。

 

あとに残されたのは数人の男女。

優しくて不器用な男の生き様の目撃者達。




彼は最後に欲しい物を手に入れたんです。
きっと今日という日の為にずっと世界を巡っていたのでしょう。
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