東方生迷伝   作:ホワイト・ラム

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名前は大切だ。
自分自身を位置づけるものである。
多くの人が生まれると同時に名前を貰うそして一生使い続ける……
もし自分が自分でなくなったら。
……その名は返さなくてはならないのか?


羊と狼と黒い羊3

「あれ……ここ何処だ?」

美琴が何処か知らない場所で目を覚ます。

内装を見る限り、赤色をメインとした洋風の建物の様だ。

美琴はベットに寝かされていた。

 

「前いた長屋とは……ッ!」

「長屋」という単語から自身の記憶がフラッシュバックする!

醜く笑う班長、武器を構え自身を襲った仲間たち……すべてが不快感と恐怖に満ちていた。

 

「俺は……なんでまだ……生きて……!!」

ぶり返した恐怖はもう収まらない、震える身体をただ自分自身で抱きしめた。

その時扉が開く。

 

「あ!お兄さん!起きたんだ!」

美琴が意識を失う寸前に見た少女、こいしだった。

 

「こいしちゃん?ここは?」

見るからに長屋とは違う設備の豪華さに自らの置かれた状況を考える。

 

(こいしちゃんはイイトコのお嬢様なのか?)

自身の疑問を押さえ話しかけた。

 

「ここは私のお家、地霊殿だよ?お兄さんが気に入ったからここまで運んだんだぁ、重くて大変だったんだからね」

腰に手を当て笑う。

 

「地霊殿?聞いたことないな……此処は里のどこら辺に有るんだい?」

 

「あはは!ここは旧地獄だから人里にはないよ?」

笑ながら聴き捨てならない単語を言った。

 

「旧地獄?俺は死んだのか?」

ショックを受けたが美琴は半分納得もしていた。

 

「違うよ、ここも幻想郷の中だよ、お兄さんは確かに死んでたみたいだけどね」

 

「死んでた?俺が?」

 

「そうだよ!もうグチャグチャ!お昼のハンバーグのタネみたいだったよ」

あははと再び楽しそうに笑う。

しかしすぐに笑うのをやめ質問を投げかけた。

 

「けどお兄さんはその後復活した、少なくとも人間じゃないよね?お兄さんは何?」

 

「そんな事言われても俺の方が知りたいよ」

そう言ってベットから立ち上がった。

会話の中でいつしか震えは収まっていた。

思い出すのは最初の日の事。

 

(あの妖怪どもに襲われた事は夢じゃなかったのか……アノ時も今回みたいに復活したのか?だとしたらなぜ?)

事の真実をしろうと思考を巡らせる。

 

「ぶー!私の事を見てよ!あなたのご主人様だよ?」

考え事している美琴の前をぴょんぴょんはねる、こいし。

 

「ん?ご主人様?」

思考をいったん中断する。

 

「面白そうだから、拾ったの!だから私がご主人様!」

えへんと胸を張るこいし。

 

「どういう理屈なんだい?」

あまりにも突拍子のない言葉に首をかしげる。

 

「あ!お姉ちゃんに教えなきゃ!こっち来て!」

こいしに手を掴まれ引っ張られる、抵抗しようとも力が強くあらがえない。

ずるずると引っ張られていく。

一つの豪華な扉の前で立ち止まる。

 

「ここがお姉ちゃんの部屋だよ。さ!いこ!」

躊躇なく扉を開けるこいし。

 

「あら、起きたのね。その子……」

扉の中にはこいしと同じく胸に球を付けた少女

 

「初めまして、こいしの姉の古明地さとりです」

胸の球がひらく、それは目になっていた。

 

「よ……妖怪……」

およそ人間にはない器官に美琴は声が上手く出せない。

 

「あら、気が付かなかったの?こいしが妖怪だと?なるほど変わったアクセサリーだとおもってたのね」

座っていた椅子から立ち上がり、さとりが美琴の考えを読む。

 

「そう、その通り。あなたが思ってる心を読む妖怪の覚りです」

続けてさとりが心を読んだ。

 

「参ったな……こりゃ」

あまりの驚愕の連続にむしろ思考が落ち着いてくる美琴。

 

「ねー!お姉ちゃん!飼っていいでしょ?」

こいしがさとりに話す。

 

「珍しく帰ってきたと思えば、これ?」

さとりが美琴を一瞥する。

 

「いや、これは勝手にこの子が言ってるだけで……」

美琴がさとりに向かう。

 

「ええ、ええ{幼女に飼われて喜ぶ趣味は無い}ですか……」

再びこころを読むさとりに居心地が悪くなる。

 

「ここに居たくないなら帰っていいですけど、他に居場所が有りますか?」

さとりの言葉にハッと気が付く美琴。

 

「そうだよな……長屋に俺の居場所はない……本当に行く場所が無いんだ……」

幻想郷の住人でもなく、もはや人間でもなくなった美琴。

外に帰ることも、人里に帰ることも出来ないのだ。

 

「なら、ここに居てよ」

こいしが美琴の腕に抱き着く。

 

「ああ、解ったよ……ここでしばらくお世話になっていいかな?」

こいしの頭に手を置きながらさとりの方を向く。

 

「かまわないわ、ただし無償でとはいかないわ。あなたにはこの屋敷の雑用とこいしのお付きをお願い、あなたならこいしを見つけられるでしょうから」

さとりから二つの条件が出される。

しかしその中で疑問に思う単語が有った。

 

「こいしを見つけられる?」

 

「あら?気づいてないの?」

さも意外そうにさとりが驚く。

 

「あの……気づいてないって?」

 

「無意識で力を使っていたのかしら?あなたには能力が開花している、それも私達に近い力が」

さとりがそう言い放つ、にわかに信じられない美琴。

 

「能力?程度のってやつですか?」

慧音や班長から聞いた事が有った、この幻想郷には何人か能力を持つ妖怪や人間が居ると。

 

「どうやら本当に気づいていないみたいね。なら教えてあげるあなたは{悪意を読み取る程度}の能力を持ってるわ」

さとりに宣言される。

 

「悪意を読み取る?」

イマイチ自身の能力にピンとこない美琴。

 

「今まで思い当たる節はないかしら?妖怪を察知して物陰に隠れたり、自分を罠に嵌めようとした人間たちを目の前にして気分が悪くなったり、とか」

美琴の記憶を呼んださとりが具体例を挙げた。

 

「ああ。なるほど……」

思い起こせばいくつもその兆候は出ていた、自身の能力についてついに理解する美琴。

 

「人里の人間も酷い事をするわね、ですか……さとりさん優しいんですね?」

美琴は先ほどのお返しとばかりにさとりの中に沸いた、班長達への悪意を読み取ってみせた。

 

「あら、いきなり悪意を読むなんてマナーが悪いわ」

たしなめるような感じでさとりに注意される。

 

「ははは、すみません。なんか急に読み取れはじめちゃって……」

照れ隠しのように自身の頭を掻く美琴。

 

「さて、こいしが無意識になって出かけてみたいね。あなたの力でこいしを追って、まかせたわ」

そう言って再び椅子に座るさとり。

 

「はい、わかりました!」

扉から出ると同時に自身の能力を発動させる、なんとなくだが悪意の位置がわかる。

誰かに向ける悪意、物に宿る悪意、誰でもいいから発散させたい悪意、そして自身に向けられる悪意。

 

「見つけたよ。こいしちゃん」

屋敷の出口近くにいたこいしを呼び止める。

 

「わぁ!すご~い!よく見つけられたね!」

こいしが目を丸くする。

 

「ああ、悪意が読めるからね。実際に目で見る必要が無いんだすごいでしょ?」

得意げに美琴は語る。

 

「あはは、すごいすごい!これから旧都に行くんだけど一緒に行こ?」

 

「はい、お供しますよっと!」

笑ながら地霊殿の扉を開ける。

 

「きれいだな……まるで夜のお城みたいだ……」

自身がさっきまでいた地霊殿を見て感想を述べる。

 

「そうかな?いつもいるからわかんないや」

隣でこいしも同じく地霊殿を見上げる。

 

「俺の両親ってさ、二人とも楽器好きなんだよね……」

突然語りだす美琴、こいしはそれを黙って聞いている。

 

「特に弦楽器がすきでさ……『音楽を聴いてケンカするヤツはいない!』って言ってた。俺の名前 美琴って言うんだけど、命のみことと、弦楽器をかけた名前なんだよ。俺はもう人間じゃない……だから両親の苗字は名乗れない……命も失ってきれいな弦もない……」

 

「だから此処の名前を貰うよ。こいしちゃん今日から俺の事は夜城 狂弦(やしろ きょうげん)って呼んでくれ」

美琴改め狂弦はこいしに向かってそういった。

 

 

「悪意を読み取る能力ね……」

地霊殿の一室、自身の部屋でさとりが狂弦の力に思いをはせる。

 

「私は覚り妖怪、心を読める妖怪。善意も悪意も……けど彼は悪意しか読めない、悪意だけを深く深く読んでしまう、あなたは大丈夫なの?」

さとりの脳裏には自ら第三の目を閉ざした妹の姿が現れていた。




ふう、やっとひと段落。
次回からは名前の変わった主人公の活躍が開始されます!
因みに名前を変えた理由は。
「よし!主人公の名前は夜城 狂弦にしよう!」
「けど名前に{狂}って親絶対つけないよな……」
「よし!ならば主人公ぶっ壊そうぜ!」
「それだ!」
という理由で彼は死にました!南無三!
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