東方生迷伝   作:ホワイト・ラム

9 / 37
強いとはなんだろう?
力が強い事か?知識が有る事か?財産が有る事か?
他人から自由にものを奪える事か?
自分のものを絶対に守る事か?
きっと答えは一つではない……


迫る暴龍3

旧地獄の地霊殿に続く街道。

整備された道の真ん中には二人の人物。

一人は地霊殿の新たな住人 夜城 狂弦それに相対するのは地上から来た謎の男、龍我。

今二人が激突する。

 

「まずは様子見だ!」

バッと狂弦が両腕を広げる、それと同時に10発前後の白い光弾が龍我に向けて放たれる。

龍我は迷うことなく、狂弦ひいては光弾に向かってとびかかった。

 

「な!?」

狂弦は驚き声を上げる、それは自殺行為ともいえる龍我の行為に驚いたのだは無い。

パァン!と子気味良い小さな音がして狂弦の光弾が掻き消えた。

龍我は素手の一撃によって光弾を破壊したのだ。狂弦の驚きを余所にニヤリと僅かに口角を上げる龍我。

 

弾幕を通過しそのまま狂弦に向かい突進する!

 

(チィ!悪意を読み取る程度の能力!)

距離が近づいた事により、龍我が狂弦の能力の射程範囲内に入る!

こちらに対する攻撃の悪意を読み取る!

 

龍我が地面を蹴り、狂弦に向けて跳躍する。

すでに右手の拳は固められており狂弦を粉砕しようと狙う!

人間をはるかに超え、妖怪すらも片手で叩き潰す純粋にして圧倒的な力、それこそが龍我の力!

渾身の力を込めた龍我の大ぶりの一撃、それが狂弦の腹を狙う!

狙うのだが……

 

「何ぃ!?」

龍我が驚きに目を見開く、狂弦はいともたやすく攻撃を回避した。

たとえ妖怪すら簡単に粉砕する力も、当たらなければ全く問題ないその事をその身を以て証明した!

 

(右、右、フェイント、左、下、下、上!)

龍我の圧倒的な攻撃のラッシュを受け流す!

 

「どうなってやがる……未来予知の類か!」

この時初めて龍我の持つ余裕に陰りが見え始めた。

しかしそれは狂弦も同じ事だった、悪意を読み取ることで攻撃の予知はできるがそれでも一撃でも受ける事は回避したかった。

薄氷の上を渡るような戦いに精神的にダメージを受けているのだ。

 

「こちらから決める!」

狂弦は懐からスペルカードを取り出した!

そして声高らかにカードの名を唱える。

 

悪手『天使と悪魔の|狂反射『共犯者』』!!

 

途端に狂弦の動きが変化する。その事に最初に気が付いたのは拳を振るっていた龍我だった。

相変わらず回避に徹底した戦い方、しかしその回避の結果が異常なのだ。

どんな攻撃も紙一重で回避するのだ。怯まず続けさらに、二発、三発と攻撃を繰り出すがすべてを紙一重でかわしていく。

 

「必要最低の移動しか、しやがらねぇ。マジにたった一歩たりとも余分にうごかねぇ……いったいなんなんだ?」

ある意味攻撃はすべて当たっていると言ってもいいだろう、龍我の袖が体の表面をこする。

自身の悪意を読み取る能力を使い、脊髄反射のみで攻撃を回避する自動回避。

それこそが狂弦の使用した回避用スペルカード、悪手『天使と悪魔の狂反射』である。

狂弦は常にミリ単位で龍我の攻撃を回避しているのだ。

此処でこの「ミリ単位」というのが非常に有効になる、攻撃は自動で回避されるため超近距離で生じる相手の隙を簡単につくことが可能となるのだ。

 

「吹き飛べ!」

狂弦の両手から再び光弾が発射される!

先ほどとは龍我の立ち位置も違う、自分が放つ拳よりも近距離で光弾が発射されるため叩きつぶすには距離が近すぎるのだ!

 

「くそ!」

舌打ちをしつつ初めて前でなく後ろに回避する龍我。

 

「やるじゃねーか……」

自身の光弾を受け僅かに焦げた袖をつかみながら笑う龍我。

距離が離れた事によりスペルの効果が解除される。

 

「萃香ぁ!こいつ結構やるみたいだ。アレやるぞ!」

龍我が道端の岩に座って酒を飲んでいた萃香に話す。

 

「了解~ヤバくなったら、ね」

ふりふりと手をこちらに振る。

 

「むうううぅう!」

龍我が全身に力を込める!龍我の身体が変化していく!

 

「ハアッ!」

その場で跳躍する龍我!

一瞬にして再び狂弦に肉薄する!

 

(やばい!回避が!追いつか……)

そう考える間もなく腹に強烈な一撃!そのまま壁に叩きつけられる!

 

近くで見ると龍我の姿はまさに異形の一言だった。

耳の近くまで避けた口、そしてそこから見える犬歯の様な多数の牙、両腕は青い鱗に包まれ指の先には鋭い爪が生えそろっている、これだけならまだシルエットでは人に見えるかもしれない、しかし蝙蝠の様な羽が生え尻にはワニのような尻尾、明らかに人とはかい離した姿。

一言で言うなら龍人というのが正しいのだろうか?

 

「GYYYGAAAAA!」

雄たけびを上げる龍我だったモノ。

 

のろのろと立ち上がる狂言。

 

(やばいぞ……なんだコイツ……コイツを先に行かせる訳にはいかない!)

狂弦の脳裏に地霊殿の仲間たちがフラッシュバックする。

友達になろうと言ってくれたお空、猫の姿でこちらをびっくりさせたお燐、仕事と済む場所をくれたさとり、そして自分を拾ってくれたこいし。

この男は地霊殿を襲撃すると言っていた。

 

(そんなことはさせない!)

龍我に向かい再び立ち向かう!

自身に残されたすべての力を一発の造花の光弾に込める!

自身の命さえ掛けるような気持ちでこいしの弾幕をモデルにした最高の一発を精製する!

 

 

しかしそれはいとも簡単に龍我によって握りつぶされてしまった!

 

「ガゥルルル!」

 

「あぁ……」

握り潰され消えていく薔薇の花びら……

それを見て笑っているのだろうか?龍我の爬虫類の様な瞳がこちらを見る、そして再び衝撃!

旧地獄の家の壁に叩きつけられる!

 

「JYAGYEEE!」

聞き取る事すら不可能な声でこちらにラッシュを叩き込む!一撃受けるたびにボギン!バギンといやな音がする。

 

(こいつを先に行かせちゃいけない!)

それだけが狂弦の頭の中にあり、痛みとその気持ちのみで意識を保っていた。

しかしカードを使う余裕はもちろん光弾一発精製する力すら残っていなかった。

トドメとばかりに龍我が狂弦の前髪を掴み立たせる、そして右手を握りしめるとそこから圧倒的なプレッシャーを感じた。

そしてそれを狂弦に振りおろそうとした時、龍我が吹き飛んだ!

 

「あーあ、また暴走か……いい加減にしてほしいね」

狂弦の目の前には龍我と一緒にいた萃香が立っていた。

 

「GYAAGYAAAAA」

再び雄たけびをあげ萃香に殴りかかる!

 

「甘いっての!」

懐に入り込みクロスカウンター!

再び吹き飛ぶ龍我!

倒れた龍我に馬乗りになりボコボコと叩く!

見た目だけならば、幼女が日曜の父親を起こすような光景だが……

 

「もういいかな?」

ぴくぴくとしか動かなくなった龍我を見下ろし萃香が狂弦に近づく。

 

「悪いね、アイツ不器用なんだ」

そう言って腰のひょうたんに口を付ける。

狂弦の意識はそこでとぎれた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。