あの名探偵の世界に転生したら、死神が怖い   作:鈴水

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本人の意志とは別に

「よかったわ・・・」

 

母が、何かを呟いている。

 

「貴女、あんまり友達と遊びに行ったりしないし、とても心配してたのよ」

 

夜美は、あまり活発な子供ではなかった。

前世を思い出す前も、一人で本を読んでいるのが好きで、友達は少なかった。

最近では、学校も終わったらすぐに帰ってくるし、居間で何やら難しい本を読んで寝るまで過ごしている。

 

親としては、もう少し交友を広く持ってほしいと思っていたし、学校では一人で居るんじゃないかと心配していた。

 

「あゆみちゃんのお母さんともお話したけど、アガサさんも落ち着いた方みたいで、安心して任せられるみたいだし」

 

夕飯の用意をしながら、しきりに話しかけてくる母。

 

「当日は、豪華なお弁当作っちゃうから、期待しててね」

 

楽しそうに語る母は、まるで自分がお出かけするみたいにはしゃいでいる。

これでは、どっちがキャンプに行くのか分からないではないかと愚痴りたくなってくる。

 

 

----

 

精神年齢は大人であるので、夜美はそこまではしゃぐ気にもなれないし、メンバーがメンバーだけに、むしろ行きたくない。

 

だけど、子供らしいことは今まで全然してきた記憶がないし、世話のかかる子供ではなかった。

昔から寡黙で、困らせるようなことはあまりしなかった。

 

 

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物心着く頃には、親に迷惑を掛けちゃだめだと思っていた。

何でだか、記憶が戻る前だというのに、精神だけは落ち着いていたように思う。

あるいは、無意識の部分で、覚えていたのかもしれない。

 

「おかあさんに、めいわくかけたくないから」

 

何かある度に、そう言って我慢ばかりしてきた。

その度に、母や父は夜美に言って来た。

 

「もう少し、我儘をいっていいんだぞ」

 

「ええ、その方が、嬉しいわ」

 

晩婚で、体質もあり長らく子供を授かることの無かった夫婦には、一人娘というのは可愛くて可愛くて仕方がなかった。

 

買ってほしいと言えば、何でも買って与えてしまうくらい、両親は夜美に甘く接するつもりであった。

 

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回想を終え、夜美はお茶を飲みながら一息つく。

そんな思いがあるからか、夜美は今回の事を、今さら断れる気がしなくなっていた。

 

当日、体調を崩してずる休みしようかと思ったが、そんな風に振る舞えるほど、心は子供ではなかった。

 

それに、数少ない今世の友からのお願いである。

 

「覚悟を決めるか・・・」

 

誰にも聞こえない声で、夜美は呟く。

 

もしかしたら、旅行先で殺人事件が在ったという事実の方が、両親に心理的な負担を掛けるかも・・・?と一瞬思ったりもしたが、警察から連絡が行く訳でもないだろうし、私が黙っていればいいのかもしれないと考えた。

 

それに、まだ「起こると決まった」訳ではないと、自分に言い聞かせる。

夜美はこれでも、今の両親の事は嫌いではなかった。

むしろ好きであると言っていい。

 

 

考えに没頭していると、夕食前であったのに、睡魔が襲ってきた。

 

うつらうつらと、夕食ができて母に起こされるまで、夜美は眠りに落ちていた。

 

「夜美、夕飯よ。夜に眠れなくなるわよ」

 

ゆさゆさと、母に体を揺らされながら、ゆったりとした時間が、流れていく。

こんな時間が、夜美は嫌いじゃなかった。

 

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