徹 side
旧校舎と新校舎を繋ぐ渡り廊下。
A、B、CクラスとD、E、Fクラスを分けるその通路は今は戦場と化していた。
今回の雄二の作戦はこうだ。
・一階、二階、三階の渡り廊下で戦闘。制圧でき次第他の階へ移動。
・敵の目がそちらに向いている間に俺と明久が屋上から移動。
予め三階と二階の踊り場に 偶然壊れてしまった 掃除用具入れを直している田中先生に召喚許可をもらい一緒に二階のCクラス教室へ。
・Cクラス代表と近衛兵は明久が、教室の封鎖と教室に入ろうとする残党は俺が殲滅。
・予備部隊として雄二が天井上で待機している。
というものだ。
二階はシメジとベルリン率いるFクラスの8割が、一階には秀吉と幸平とFクラス1割。三階にはムッツリーニと亮とFクラス1割。
見ての通り、二階にほとんどの人数を割いている。これも雄二の作戦だ。
『人は見かけに騙されやすい。人数が多ければ強いとか、それに二階は特に重要拠点だ。守りも強固になる。だから二階には数と強そうな人、を配置する必要があったんだ。』
ここから見る限り、一階渡り廊下はほぼ制圧。秀吉と幸平以外は二階に既に向かっている。3階は制圧済み。二階のCクラスに背後から襲いかかるつもりか。
「明久、俺らもそろそろいくぞ。」
「りょーかい。」
旧校舎の屋上から新校舎の屋上までの回廊を封鎖するフェンスをムッツリーニ直伝のピッキング術で解錠すると、新校舎の屋上へ潜入。
後々のことも考え、施錠しておくことも忘れない。
新校舎の屋上の鍵も同じようにピッキング、解錠、施錠を済ませてから階段を足音を殺して降りていく。
三階と二階の踊り場に到着するとやはりいた田中先生に話しかける。
「田中先生、Fクラスの藤崎と吉井ですが、3階で試召戦争をしていたら担当の先生に急用が入り、いなくなってしまったので召喚許可をお願いできますか?」
「わかりました、トオル君と明久君。召喚を許可します。」
「ありがとうございます!試獣召喚!」
「同じく試獣召喚!」
田中先生は唯一俺を名前で呼んでくれる先生だ。
皆にテツ、テツ、と呼ばれているせいでふじさき てつ だと思われているようだが、正しくはふじさき とおる だ。最近はエギルまでテツ、って呼ぶからな‥‥。
おっと愚痴っぽくなってしまった。さあ、ミッションを遂行しようか。
「あれ~?明久君。こんなところで何してるんですか~?」
「ウチら以外の生命体と遊んでいたのね?これはお仕置きが必要ね。」
チッ、なんでこいつらが!?二階の渡り廊下を守らせてたはずなのに!?
渡り廊下を見れば、シメジとベルリンが抜けたことで戦線が瓦解しかけている。わざわざあそこはシメジもベルリンも得意な数学のフィールドを配置したのに。反対にFクラスのメンバーは総じて数学が弱い。
「おめえら、持ち場はどうした!?」
「持ち場もなにも、明久君が悪いんです。私たち以外の生命体と遊んでるから。」
「生命体なら犬だろうが猫だろうがミジンコでも私たちと以外遊んだらお仕置きって、婚姻届にかいてあるじゃない。」
その言葉に、俺の中の何かが崩れた。
持ち場もなにも?てめえらは仲間も守ろうとしないのかよ。
婚姻届?明久がそんなものにサインしたと思ってるのか?そしてその婚姻届自体も偽造だ。日本国憲法にそんな危険な法律はない。
俺の血液は逆流を始めたのかと言うほど熱を帯び、全身が物凄く熱い。
「誰が悪いとかそういう問題じゃない!
今問題なのはあの戦場がお前のせいで瓦解したことだ!‥‥本物の戦争なら、仲間が死ぬんだぞ!てめえらの根性、俺が叩き直してからぶっ壊してやる!」
「へぇ、私たちを相手にするんですか?」
「一度藤崎に痛い目会わせたいと思ってたの。ちょうどいいわ!」
FクラスVSFクラスはさすがに問題があるかもしれないが、やるしかない!というよりこいつら殺りたい!
「「試獣召喚!!」」
シメジとベルリンが召喚獣を召喚した。その間に明久に 行け! とジェスチャーを送り、Cクラスに向かわせる。
科目:日本史
藤崎 徹 411点
VS
姫路&島田 345点&46点
相手は大剣とサーベル。たいしてこちらは、今回の作戦用、もとい学園長からスナイパーライフルのプログラミングを微調整をしてる間に、と試運転を頼まれた
超特大ガトリングに台をつけたもの、ほぼ固定砲台だ。
一度おいたらほとんどそこから動かせない。とんでもない装備だ。
「そんな大きな武器、動かせるわけないじゃない!」
「藤崎くんは口だけなんですね~。行きますよ美波ちゃん!」
そんなことをいって、二人同時に丁寧に一直線にならんで、真正面から突っ込んできた。
だが、こいつらは気づいてない。
ガトリングなのに巨大な理由と、
何故台がついているかを。
「「鉄人(我が)特製ガトリングの真骨頂を特と味わえ!」」
!?何処からか鉄人の声!?
一発引き金を引くと、一分で3500発ばらまくといっていた銃口が火を吹く。
二重銃口になっているのでその二倍、7000発をばらまく。まあ、20発当てないと一点減らせないんだけどね。ガードされていたらそれより燃費が悪くなる。飛んだじゃじゃ馬をプログラミングしたもんだ。
弾幕にふさわしいほどの弾の狂喜乱舞が、シメジとベルリンを襲う。
「くっ、何よコレ!?全く前に進めないし、ガードしてもどんどん点数が削られる!?」
「美波ちゃん、安心してください!ガトリングは弾切れしたらしばらく打てないはずです!危なくなったら点数に余裕のある私の後ろに隠れてください!弾切れしたら勝負をかけます!」
それでも前に進めないぐらいだから足止めには有効な武器だな。
さて、シメジとベルリンの望む弾切れは来るのやら。
これが巨大な理由はいたって簡単。
《本物にこだわった鉄人が20分打ち続けても弾切れしないような弾の量を計算してその大きさ分をガトリングに追加したから。》
姫路&島田 156点&5点
お、もうこんなに削れた。
島田の召喚獣が姫路召喚獣の後ろに隠れる。
まだまだこちらの弾数には余裕があるがな。さて何分持つかな?
姫路&島田 56&5
お、もう百点も削れた。
敵を蜂の巣にするって、何だか病み付きになりそうな快感があるね。
フハハハ!
姫路&島田 4点&3点
姫路side
点数がもう一桁になってしまいました‥‥。
「あれ?瑞希!弾切れよ!撃ってこないわ!」
「ホントです!今です美波ちゃん!」
藤崎くんを殺れる時が来ました!私と美波ちゃんは忌々しいガトリングを回り込んでその後ろいるはずの藤崎くんの憎い召喚獣に斬りかかる、筈でした。
「はい、残念!上でした。‥‥死に晒せ!」
そこに召喚獣はおらず、藤崎くんの声がしたかと思うと、上から黒いぼろマントに身を包んだ召喚獣が、ナイフを手に飛来しました。
徹side
召喚獣の腰からハンティングナイフを取りだし、シメジとベルリンの召喚獣を上から襲う。
一応近距離用の武器もこうして用意されている。 けど、ハンティングナイフって確か対獣よようだったような?
狙うは首、二人の召喚獣の首を手早くはね飛ばす。
ポトリ、と召喚獣にしてはグロい生首が落ちてくるとアノ表記が出てきた。
姫路&島田 戦死
「戦死者は捕囚~!」
呆然と立ち尽くす二人。いい様だぜ。
そこに鉄人が現れ、二人をドナドナしていく。
あれ?ほしゅうの字が違ったような?
まあいい、スッキリしたし明久のところへ行こう。
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たどり着くと、明久が苦戦を強いられていた。即急に助けが必要だな。幸い、誰もこちらに気づいていないようだ。明久の召喚獣は刀と黒コート。対するは代表の小山が三叉戟、取り巻きの二人がポールアーム。明久の得意の接近戦に持ち込めてない。
ガトリングをかましてやろうかと考えたが、ガトリングには《二十分撃ったら五分のクールタイム》というオマケがついている。接近戦で行くしかない。
そうこうしている間にも明久はピンチに晒されている。小山の召喚獣が突きの構えを取るか否かのところでもうダッシュ。そのまま、明久目掛けて突き放たれた小山の三叉戟を脇に挟み、小山の召喚獣を抱え込むようにタックル。
科目:日本史
Cクラス代表 小山 243点
CクラスモブA 176点
CクラスモブB 97点
吉井明久 264点
藤崎 徹 253点
先程のやり取りで相手の点数が少し削れた。‥‥げ、失敗した。
三叉戟がもろ腹に刺さってる。クリーンヒットしてるせいか俺の点数が150点近くごっそりとなくなってるし。
「テツ!来てくれたんだね!」
「おう、取り巻きは俺が何とかするから、明久は敵の大将を討ち取れ!」
明久がコクリと頷くと、小山の召喚獣目掛けて走っていく。反応が遅れた近衛兵達が小山の援護にいかないようにハンティングナイフで牽制。
相手がポールアーム二人、こちらはハンティングナイフ。さすがに分が悪い。
明久さっさと討ち取ってくれよな!
明久side
僕はアニメが好きだ。
だから、僕の召喚獣の武器が刀だった時は異様に興奮した。
観察処分者の仕事の合間、何度もアニメの技を真似してみた。
少しは様になってきた。
目の前にはアニメで言うひとつのダンジョンのボス。必死に覚えた技を振るうには絶好のチャンス。
近くには僕の勝利を信じる最高の仲間。
「‥最高に胸が高鳴るシチュエーションじゃないか!」
僕は僕自信を奮い立たせると、構えをとる。
古武術でよく用いられる走法《縮地》で距離を一気に縮め、
昔瞬間最高視聴率30.6%を記録したお化けアニメ《戦国大反乱》の第十話で主人公の使った剣術、《顎砕》で小山さんの召喚獣の顎を斬り、更に刀を急転換、《柄聖》で首を、《耳哭》で左耳を斬りつける。僅か1.64秒の出来事に小山さんに明確な驚愕と恐れの顔が見える。
雄二が昨日いっていたことを思い出す。
『この戦争の講和は有利な方向に持っていきたい。あいつらに、とくに代表に、俺らの事を恐れさせるようにしてくれ。』
最後に《羅貫》で小山さんの召喚獣を貫く。
それだけで小山さんの召喚獣は亡きものとなってしまった。
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「さあ、Cクラス代表 小山サン?楽しい楽しい戦後対談と行こうじゃないか。」
先程の明久のラッシュの後だからか、小山の顔には明確な恐怖が見える。
雄二の作戦成功だな。
‥‥それにしても、明久にあんな才能があったとは。目の前で《戦国大反乱》の技の数々を見られるとは思いもしなかったぞ。しかも主人公の勝ちパターンの技の数々。
久々に、エギルと観るかな。《戦国大反乱》。
「‥条件は何よ。」
「そうだなあ‥‥。3ヶ月の試召戦争禁止と、‥‥クラス設備の降格を無しにする代わりに、あることをしてもらいたい。」
クラス設備の降格なし、その言葉にCクラスの奴等と小山が揺れた。
「俺らは近々Bクラスに攻めこもうと思うんだが、その時にこの教室を貸してくれ。」
小山の顔が険しくなる。まあ、そうだろうな。戦争の時にクラスを貸してくれ、って。下手したら巻き込まれかねないからな。
「何、別にお前らを巻き込もうとしたり、ここを拠点にする訳じゃない。ただ二人ほどここに伏兵を忍ばせようと思ってな。あ、根元に密告はなしだぜ。密告がわかった時点で、お前らのクラスはちゃぶ台とござに早変わりだ。」
‥‥うわあ。これが交渉だ、って思いたくないような交渉の流れだ。全く戦ってないのにこうして勝ち誇ってるところにも若干イラっとするが、我らの大将だ。致し方あるまい。
「わかったわ。その条件のもうじゃない。」
「そんじゃ、この講和書に、サインをしてもらおうか。」
小山が綺麗な字でサインをすると、ソレを近くにいた鉄人が受けとる。
鉄人は大事そうに仕舞い込むと足早に立ち去っていった。
「そんじゃ、この教室を使うときは使者を送るから、楽しみにしていてくれ。」
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徹side
雄二や亮達との審議の結果、明日も補充試験をせずに攻め込むことにしたようだ。
試召戦争が思いの外早く片付いたので補充が必要なやつらは今、補充試験を受けている。
俺もさっき終わったところだ。中庭で羽でも伸ばすかな。そうとなれば自販機でコウラ・コーラを買い、中庭へ向かう。中庭には既に先客がいたようで、そいつのとなりに腰かける。
「のう、テツよ。」
「なんだ?秀吉。」
俺はペットボトルの蓋を勢いよく開けると一気に喉に流し込む。弾けるような感覚がコレまたたまらん。
「お主は、姫路達をどう思う?」
「どう思う、か‥‥。何だか異様に明久に執着してるよな。ヤンデレを通り越して最早人間のやることしてねえよ。あいつら。」
「お主もそう思うか。‥‥しかし、考えてほしいのじゃ。あやつらがああなったのは一年生の終盤じゃ。それまでそうなる兆候なんぞ、なかったはずじゃ。」
‥‥言われてみれば確かに。そんな感じは中盤ぐらいの時はしなかったなあ‥‥。
「ということは、何か意図的なモノを感じる、そう言いたいのか?」
「うぬ、詳しくはわからんがの。あ、この事は他言無用じゃ。わしとテツだけの話と言うことでお願いするぞい。」
「りょーかい。」
俺は返事を返すとまた喉にコーラを流し込んでいった。