Aクラスモブside
その日の昼休み、俺たちはある話題で持ちきりになっていた。
「なあ、聞いたか!Fクラスの噂。」
「ああ、聞いた聞いた。上位クラスを昼休みにはいる前に倒しちまうんだろ?かっけえよな!」
「そんなこと言ってると今度は俺らが攻めこまれるんじゃないのか?」
「はは、まさか。だってこっちには学年トップが勢揃いしてるんだぜ。」
「そうそう、霧島主席に、工藤さんに久保、木下さんに我らがアイドル、リンちゃんだっているんだ。いくら今までのクラスを簡単に倒してこれても、うちには勝てっこないよ。」
そんな風に、俺らは何気のない昼休みの男子トークを楽しんでいた。
少し強めに、ドアの開く音がした。
「昼食の途中に失礼する。俺はFクラスの藤崎徹だ。代表はいるか。」
Fクラス、という単語に辺りがざわついた。
「おいおい、まさか。」
「そのまさかだな。お、うちの代表立ち上がった。」
「何か話してるな。‥‥よく聞こえねえ。」
代表は藤崎と名乗った男の言葉にコクリと頷くと、すっと後ろへ下がった。
「我々Fクラスは御クラスに特別ルールの試召戦争を挑む!ルールは先程代表に伝えて置いた!明日、御クラスに馳せ参じる所存だ。時刻は一時間目の予鈴が鳴ってから。他のルールは代表に聞いてくれ。以上、失礼した。」
そう言うと、藤崎は立ち去っていった。
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新校舎屋上、
「ぐわぁぁぁぁぁあ!恥ずかしかったぁぁぁぁぁあ!」
「お疲れじゃ。ほれ。」
何だか宣戦布告が中二病チックになってしまったことへの恥ずかしさのあまり悶絶していると、秀吉が飲み物を放ってくる。
ソレを受けとると蓋を開け一気に流し込む。‥‥お、パイナップル味の炭酸ドリンクか。
「あのルールで納得してもらえたか?」
「ああ、最後の+αのおかげで乗ってくれた、ってところもあるだろうがな。」
雄二の考えた今回の作戦は
・それぞれのクラスから代表を六人を選出。合計五戦の勝負を行い、最後の一戦はペアバトルと
する。
・勝負の科目はAクラスが二回、Fクラスが三回とする。
・どちらかが力尽きるまでのデスマッチ。
・勝者は敗者に一つ命令ができる。
というものだ。FクラスとAクラスの総力戦では圧倒的にこちらが不利だと見込んだ雄二の作戦なのだが、それでも勝率は五割だろう。なんせ、相手の手の内が全く読めないからだ。
「‥‥もう代表は決まったのか?」
「その点は抜かりない。出るメンバーは俺、須川&福村、明久、ムッツリーニ、秀吉だ。」
「むう?今回はテツはでないのかの?」
「ああ、今回俺は見学させてもらう。それに近距離武器の扱いはまだなれてないしな。」
俺も一暴れしたかったが、遠距離武器を扱っていた弊害がここで出るとはな‥‥。
まあ仕方があるまい。
「午後からは補充試験だ。お前ら、いい点取ってこいよ。」
「任せとけ、史上最高の点をとってきてやる。」
「幸平に同じく、絶対Aクラスに入るためにな!」
幸平と亮が拳を突き上げると、明久たちも拳を高く突き上げ、お互いの健闘を称えあった。
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テツside
「いよいよだな。」
俺らの望みまであと一歩のところに立つことが出来た。
Aクラスには、特別ルールの試召戦争の開始を今か今かと待っているFクラスの奴等と、少しざわついているAクラスのやつらが終結していた。
ロープで簡易的な観客席が拵えられており、ロープの向こう側では俺らの代表とAクラスの代表がにらみ合いを続けている。
「それでは定刻となりましたので、これよりAクラスとFクラスの特別ルールでの試召戦争を始めさせていただきます。フィールド展開は西村先生に、主審は私、高橋が務めさせていただきます。そして、今回は副審としてFクラス藤崎君も参加します。」
‥‥!?待て!?そんな話、昨日一ミクロンも聞いてないぞ!?
「‥‥なお、これは学園長の指示です。『どうせ藤崎はいつも暇なんだから、使えることに使っていい。』とのことです。」
「あのババアは人の事をなんだと思ってるんだから。人権考えてほしいもんだ。まあいいか、わかりました。副審を務めさせていただきます。」
どうせ、この観客席にいても居心地が悪いだけだ。抜け出そうと思っていたところだから、いい口実が出来た。
「それでは、第一試合です。出場選手は前へ。」
「一試合目は俺が行こう。」
いきなり代表の出陣か。ここで勝っておいて勢いをつけようって寸法か。
「‥なら、私が行く。」
「霧島さんと坂本君、代表同士の戦いになりますが、どう思いますか藤崎君?」
「まあ、妥当な選択だろうな。Fクラスとしてはここで一発勝っておいて勢いをつけたい。対してAクラスは学年主席が自らうちの代表を討ち取りに来てるんだ。同じく勝っておきたい、ってところだろうな。」
‥‥あれ?副審の仕事って解説することだっけ?なんか違うような?
「‥科目はこちらが選ぶ。先生、現代国語でお願いします。」
よりによって現国か。雄二の苦手教科じゃねえか。
しかも相手は主席、全教科400点を越えてると考えてもいいだろう。
どんな腕輪を持ってるかも未知の領域だ。雄二に勝ち目があるのか‥‥?
「承認する。それでは、第一試合、始め!」
「「(‥)試獣召喚!!」」
二人の足元に幾何学的模様が浮かび上がり、二人を小さくしたかのような召喚獣がだんだんと現れ、点数が表示される。
科目:現代国語
霧島 翔子 597点
600点近いじゃねえか!?さすが学年主席、もしかしたら総合5000点ぐらいあるんじゃないのか。
「ずいぶんご立派な点数じゃねえか翔子。」
「‥幾ら雄二相手と言えど手は抜けないから。」
翔子ぉ?雄二ぃ?あいつらそんなに仲良かったの?初耳なんだが。
「皆の衆よ、この戦いが終わったら坂本雄二を紐なしバンジーの刑に処す。異論は?」
「「「「裏切り者には死を。」」」」
なんか不穏なやつらが動き出した。まあ、想定の範囲内だが。
「裏切り者にはs、ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「‥‥雄二を邪魔させはしない。なあ、明久。」バチバチィ
「おい!いきなり団員g めぎゃぁぁ!?」ドサッ
「そうだねムッツリーニ。ふう、それにしても処理に困るね。」
「に、逃げろ!?ここにいたら殺されr ぐぉ‥‥。」ドサッ
「気絶させるだけでよかったんだよな?」
勿論俺も雄二の邪魔をしようやつは消す。感謝してほしいものだ。他の二人と違って一瞬気管を圧迫させるだけでの気絶ですませているのだから。
ムッツリーニは明らかに改造されたスタンガンを首もとに叩き込んでるし、明久は鳩尾に拳叩き込んでるし。雄二に直接手を下させたらもっとひどいことになるか。
‥‥あ、雄二と霧島の会話が終わりそうだ。
「俺の苦手教科が現国だと知ってたからのその行動なんだろうが、おあいにくさまだな。」
坂本 雄二 593点
苦手教科だったはずなのにその点数差はたった2点。前のテストの時は250点前後だったはずなのに‥‥。
「俺だって、負けられない理由があんだ。そりゃ努力だってするさ。」
雄二の召喚獣はメリケンサックをぐっと握ると、踏み込みから一気に肉薄した。
霧島の召喚獣は少し短めの刀。短くすることで取り回しが聞くようになっているのだろうが、圧倒的手数のメリケンサックでの攻撃を全て受け止められるとは思えない。
雄二のラッシュが一発、一発、また一発と決まっていく。
霧島 翔子 576点
流石に戦闘となると霧島は不利だな。手数と通ってきた戦場の数だと、雄二の方が圧倒的に多い。それでも、隙をついて斬りかかれるのだから、霧島の操作能力も悪いわけではない。
ただ、相性が悪い。
「そうだな、ここで一発使っとくか。《豪撃》」
霧島 翔子 543点
坂本 雄二 543点
雄二が腕輪を使ったことにより、点数が並ぶ。ド派手な攻撃が起きない辺り、雄二の腕輪は自己教科系のものなんだな。
先程のラッシュがさらに激しくなり、霧島のガードが余計に追い付かなくなっていった。
雄二の召喚獣のメリケンサックが容赦なく霧島の召喚獣を襲う。
霧島 翔子 346点
「一気にかなり減らしてるな。《豪撃》はダメージ増加系の腕輪みたいだ。雄二の手数と相性がいい腕輪だな。」
単純ゆえに強い、一切小手先の勝負はしない雄二のケンカでの信条がよくにじみ出ているいい戦いだ。
霧島 翔子 157点
坂本 雄二 261点
雄二も攻撃を食らっているようだが、それでも優位なことには変わらない。
「翔子!次のラッシュで終わりにしてやる!」
「‥させない。《腐敗》。」
雄二の召喚獣がメリケンサックを握りしめ、霧島の召喚獣を殴ろうとした直後、メリケンサックが崩れ落ちた。
「‥私の腕輪は相手の武器を腐らせ、破壊する。どんなに強くても、武器がなくちゃ牙のない虎と一緒。」
‥‥なんだと。学年主席の腕輪、どんなチート腕輪だよ!?
霧島 翔子 57点
坂本 雄二 261点
「‥雄二、詰み。」
霧島の召喚獣が立ち尽くす雄二の召喚獣に刀の切っ先を向ける。それでも雄二は余裕のある表情を浮かべる。
「翔子、詰んだのはお前の方じゃないか?その点数の減りかただと、もう一度は《腐敗》は使えない。」
「‥そう、だけど武器を失った雄二はもう攻撃できない。」
「‥‥武器がない?そう決めつけるのは早合点だな、翔子。」
雄二の召喚獣は白いコートの内側から、黒いバトンのようなものを取り出す。
回りのやつらが一見したら、それは何かわからないだろうが、俺や明久は一発でなんだか理解した。
「‥‥特殊警棒!?」
雄二がゆっくりソレを引き伸ばすと、ムッツリーニもなんだかわかったようだ。
雄二の高い点数のわりには武器がメリケンサックで弱いと思ってたら、そういうことか。武器が二個装備されてるのか。
「さあ、これで対当だな。いくぞ!」
甲高い音が聞こえたかと思うと、特殊警棒と刀のつばぜり合い。以外と特殊警棒は丈夫に作られているようだ。刀に負けるどころか押し返してる。
霧島の召喚獣を押し返すと特殊警棒による二連撃。
霧島 翔子 16点
「これで終わりだ、楽しかったぜ翔子!」
雄二の雄叫びと共に、特殊警棒は降り下ろされ、霧島の点数は0となった。
「第一試合、坂本君の勝利です!」
一試合目は俺たちの勝利で幕を閉じた。