徹 side
「それでは、第三試合を始めます。出場選手は前にお願いします。」
折り返しの三戦目、ここで、是が非でも勝利をもぎ取っておきたいもんだな。
こちらに残された精鋭は、秀吉、ムッツリーニ、幸平、須川。先程チラッとムッツリーニが出るような発言を聞いてるから次はムッツリーニか。
「‥‥行ってくる。」
「おう、頑張ってこい。」
「‥愛子、お願い。」
「りょーかい!」
相手は愛子、と呼ばれた緑色のショートヘアーの女の子。そーいや、前同じクラスにいたな。
フルネームは確か、工藤愛子、だっけ?
「‥‥貴様が俺の相手か。」
「君が
「‥‥そんな事実は、一切確認されてない。」
今さら隠すことかムッツリーニ。誰だBクラス戦の作戦中にCクラスで保健体育の授業をキラキラとした目で勉強してたのは。
「またまた謙遜しちゃって~。けどね、ボクだって得意なんだよ?君とは違って実技で、ね♪」
「‥‥俺がそんな言葉で惑わせられると思ったか(ポタポタ)」
イエース!よく耐えたムッツリーニ!いつもならブッシャァァァァァァって鼻血を出すところを、よくぞ耐えた!明久たちも称賛の拍手を送ってるぞ!
「ちぇ、以外に反応なくてつまんないの。まあいいや。ムッツリーニ君、科目は何にする?」
「‥‥保健体育で(ポタポタ)」
「わかった、承認する。それでは、第三試合開始!」
「「(‥‥)試獣召喚!」」
例の幾何学的模様から、先の二回と同様に二人の召喚獣が現れ、そして点数が表示される。
科目:保健体育
工藤 愛子 596点
596点だと!?最後に見たムッツリーニの点数が確か564点。エロの伝道師と呼ばれるムッツリーニより点数が高い奴が、この世にいただと!?
「おい、ムッツリーニは大丈夫なのか。」
「負けたな。ムッツリーニは工藤さんの溢れるばかりのエロさに敵わない。」
「あの太股に挟まれたい。」
Fクラス観客席から危険思想的な発言が聞こえてきた気がするが、ここは敢えて突っ込まないでおこうか。
「実技派と頭脳派、どっちが強いか証明してあげるね♪」
「‥‥その必要はない。知識こそ最大の武器。」
「ふーん、そんなこと言ってるけどさ。開始早々終わりにしてあげるね。」
《雷鳴》、工藤が腕輪発動のキーワードを口にすると、工藤の召喚獣の持っていた大きな斧が雷を纏う。工藤の召喚獣はそれを振り上げながら、まさに雷速でムッツリーニの召喚獣に迫り来る。
「バイバイ、ムッツリーニ君♪」
「‥‥《加速》。」
工藤の斧が降り下ろされる瞬間に、ムッツリーニの召喚獣がブレた。
斧は降り下ろされたが、ムッツリーニの召喚獣は斧が当たるところの後ろに先程と同じ体勢で立っていた。
「‥‥加速終了。」
先程のやり取りで減った点数が表示される。
工藤 愛子 戦死
土屋 康太 784点
実にまばたきするほどの間の出来事だった。
ムッツリーニの召喚獣は斧が降り下ろされる瞬間に瞬時に懐へ移動。
工藤の召喚獣の頭、首、両肘、両膝、最後にサマーソルトキックを顎にかまして、その回転で先程より少しあとに戻った。これが行われた時間、僅か0.5秒。
まばたきをしていれば見逃してしまいそうなほどの出来事に工藤も開いた口が塞がらない様子だ。
自信満々に解説しているが、実は俺も何が行われたか断片的に見えてない。
その操作を集中力を切らさずに行ったムッツリーニの精神力は、正しく俺ら7人の中ではトップクラスだろう。
「‥おいおい、いつの間にムッツリーニはあんなに点数をあげたんだ。」
「ああ、その事なんだがな。」
雄二の着目した点数の事なんだが、実は俺も一枚噛ませてもらってる。
~回想~
『なあ、ムッツリーニ。前、ムッツリーニの保体のテスト見せてもらったろ?』
『‥‥ああ、確かに見せたが、何か気になることがあったのか?』
『ああ、何か余分な解説が多くなかったか?』
『‥‥あれは俺のこだわり。』
『多分それをなくして答えだけを書いていけばムッツリーニならもっと高い点数とれるんじゃねえのか?』
『‥‥確かに一理ある。ババアにAクラスに勝てたら再試験してくれるように約束を取り付けたが、点数が足りてなければAクラスに入れない。今度のテストでやってみる。』
~回想終了~
「まさかほんとに200点近くも上がるとは思わなかったがな。」
「これがムッツリの中のムッツリか。」
「いや幸平、ここまでオープンだったらムッツリじゃないだろ?」
補足として、大島先生から後日聞いた話によると、保健体育は800点分しかテストを用意してなかったらしく、最後のテストがムッツリーニの手に渡ったときは、ノートパソコンと向き合い、真剣にもう100点分のテストを作ってたらしい。‥‥結局使わなかったらしいが。
「ごめんね、代表。負けちゃった‥‥。」
「‥私だって負けちゃった。愛子が負い目に感じる必要はない。」
「それでも‥‥。何だかみんなに顔向けできないや‥‥。」
「‥‥そんなことはないはずだぞ。工藤愛子。」
工藤にムッツリーニが一歩ずつ歩みながら言った。
「‥‥俺に負けたことが悔しいなら俺より高い点をとればいい。お前にとっては幸運なことに、俺は忘れっぽいんだ。もう、さっきの勝負の結果だって、忘れてしまった。」
ムッツリーニはそのあとも言葉を紡ぐ。それはまるで、世界の果てを見た旅人が何も知らない小さな子供に海を教えるかのような、優しい口調だった。
「‥‥だから、いつか俺が泣いて逃げ出したくなるような点数をとって、リベンジしにこい。いつでも待ってる。」
「‥‥‥うん!待ってろよムッツリーニ君!君よりいい点数とって、土下座させてあげるから♪」
そう言って笑う工藤の目には、光るものがあった。
なんか雰囲気が、こう、甘くなってきたな。いや、ピンクっぽくなってきたか?明久の時からそういうムードがムンムンだぞ。
‥‥まあ、別に構わないか。