???side
「‥‥わかった、その通りにすればいいのだね?」
「はい、他は私たちだけでなんとかできますから。」
「報酬はいつも通り、で。構わんだろう?」
「ええ、別に構わないわ。」
「あ、そろそろ戻りますね。じゃあ手筈通りにお願いしますね。」
徹side
「続いて4戦目、出場者は前へ。」
俺たちFクラスは二勝しており王手をかけている。更にまだ教科指定の権利がひとつ残っている。かなり余裕のある戦いだと思っていいだろう。
「わしが行こう。」
「頼んだぜ、秀吉。」
「それじゃあ、こちらからは僕が行かせてもらうよ。」
相手は学年で五本の指に入る成績の保持者、久保か。ここは科目を指定して安全にいきたいところだn《ピーンポーンパーン》
『高橋先生、西村先生、教頭先生がお呼びです。至急教頭室まで来てください。繰り返します。
「ぬ?こんなときに呼び出しか。おかしいな、教頭先生と何か会議でもいれていたか?」
「西村先生、急用かもしれませんので、ここは一回試召戦争を中断して、行くしかないでしょう。」
「それもそうですな。‥‥というわけだ。一旦中断する。なるべくすぐ戻る。」
そういうと鉄人と高橋女史は廊下へと消えていった。
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徹side
「なかなか戻ってこねえな。鉄人。」
その場に腰をおろして雄二や明久、ムッツリーニ達とこれからの作戦や最後のペア戦についての作戦会議を開いていた。
作戦会議が終了するまでかなりの時間を要したのだが、それでも鉄人は戻ってこない。
「‥‥喉が渇いた。」
「言われてみればそうだな。休みなしに喋ってたから、殊更だな。」
ムッツリーニや雄二の言った通り、確かに休みなしに喋ってるし、それに何だかAクラス教室は乾燥している気がする。
「それならうちのクラスにある冷蔵庫から好きな飲み物を持ってくといいわ。」
秀吉、にそっくりな姉の木下が話を聞いていたらしく、システムデスクの横側にある冷蔵庫を指差す。
「勝手に飲んでいいのか?」
「別に、どうせ勝手に補充されるし。」
ならお言葉に甘えて戴くことにしよう。
早速亮が冷蔵庫の取っ手に手をかけ開く。しかし、その中には飲み物らしい飲み物は一本も入っていなかった。
「あれ?入ってねえぞ?」
「ん?そんなことはないはずなんだが、ほんとだ。ないね。」
亮の入ってない、という抗議を聞きつけ久保がやって来て中を確認したがやはり飲み物はない。
「こっちの冷蔵庫にもないのう。」
「こっちのにもないよ?」
秀吉と工藤が続けて他の冷蔵庫を確認するが見事に中身は空っぽだ。
「‥おかしい、昨日補充したばかり。」
霧島がいうように昨日補充したのなら今日既に全部なくなっているというのはおかしい。
つーか、なくなったらすぐに補充されるはずだ。
「おーい、高橋先生から差し入れだぞー。」
声の方を見るとAクラス男子と思われる生徒がカートを押して近付いてくる。
「『少し遅くなりそうなので飲み物でも飲んで休憩していてください。』だとよ。」
カートの中にはドリンクピッチャーがいくつか入っていて何が入っているか書いてあるシールが貼ってある。中に人数分以上あるだろう紙コップも入っている。
「コーラに、オレンジジュースに、紅茶もあんのか。」
「ここは高橋先生の好意にありがたく乗ることにするかのう。」
秀吉が《ハチミツレモン》と書かれたピッチャーを取り紙コップに注ぎ始めると争うように他のやつらも紙コップに注いでいく。
俺もコーラを注ぐと一気に煽る。よく冷えていて美味しい。
「そんなにあせる必要はない気がするがのう。」
秀吉もそう言いつつ、紙コップの中を喉をならしながら飲み干していく。男らしいのみっpバタッ
「秀吉どうした!?」
「秀吉!?どうしたの!?」
何かが倒れる音がしたかと思ったら、秀吉がドリンクを飲み干してすぐにその場に倒れてしまった。木下が秀吉に真っ先に駆け寄った。
「幸平!医療キットを持ってきてくれ!亮は保険医と念のためAEDを!雄二!誰もこの教室から出すな!」
「わ、わかった。」
「り、了解だ。」
突然のことに動揺しつつも二人は直ぐ様Aクラスを飛び出していった。雄二は二つあるドアを施錠し、霧島と混乱に紛れて逃げない奴がいないか監視を始める。明久が秀吉に駆け寄っている間に状況把握にかかる。
まず、ハチミツレモンのピッチャーを開けてみる。中には生姜やレモンの他に青い花弁のようなものが浮いていた。原因は明らかにこれだな。ハンカチで手を保護し、手で扇ぐようにして匂いを嗅ぐ。
レモンやはちみつの臭いに紛れて瞬間鼻が痺れるような感覚に教われる。ハンカチ越しに触る感覚は
よく揉みしだかれている。
しびれる臭い、青い花弁、揉めば効果が強くなる。
俺の知ってるなかでそんな毒物あれしかない。
「トリカブトだ!すぐ吐き出させろ!」
ハンカチごとトリカブトの花弁を捨て去ると近くにあった水道で丁寧かつ急いで手を洗い、秀吉に駆け寄る。
「顔を地面に向けて、今吐き出させる!明久、雄二、離れろ!」
秀吉の口に手を突っ込むと、喉の奥を思いきり突く。
ゴポッ、と嫌な音がした後、秀吉の口から胃液と共に食ったものから何から何まで吐き出される。
出きったかどうかは素人目だと判断できないのでもう一、手を突っ込み吐かせると、今度は胃液と思われるものしか出てこなかったので毒物はすべて吐き出させたはずだ。
「テツ!救急車呼んだよ!」
「ナイスだ明久!」
顔色がよくないし、意識もハッキリしてない。早く来てくれ学校医!
「学校医を呼んできたぞ!」
「先生!あとの処置はお願いします!とりあえず全部吐かせました!」
亮と学校医と幸平が医療キットを持ってやって来たので処置を任せて状況把握を再開する。
「ムッツリーニ、カートを運んできたやつの顔覚えてるか。」
「‥‥ほくろの位置から髪型まで全て覚えている。」
「つれてきてくれ。」
ムッツリーニがAクラスの観客席に探しにいった。
‥‥しかし妙だ。先生が差し入れた飲み物に普通そんなものは入ってないはず。
秀吉以外誰も倒れなかったのだから他の飲み物には毒物は(いまのところ)入っていないと考えられる。更に秀吉以外にハチミツレモンを飲んだやつもいない。
そもそもなんで秀吉がハチミツレモンを選んだか。‥‥確か秀吉は演劇部か。
今度主演がどうのこうのっていってたな。歌うパートがあるとも言ってたし。
そうか、喉のケアのために少しでも喉に良さそうなものを飲んでいたのか。
他のやつらは喉の乾きを癒すために炭酸飲料やお茶に食いついた。
まるで、秀吉だけを狙ったかのような犯行だ。
まず、高橋女史が入れたという線は一旦除外する。動機がわからないし、先生にこの犯行を行ってなんの利益がある?と考えたら辻褄があわないので除外する。
というより先生が教頭から呼び出されるなど予想外の事態だったはずだ。そもそも先生が飲み物を差し入れたかどうかも怪しい。
「‥‥連れてきた。」
「サンキュームッツリーニ。おい、お前先生から直接飲み物の差し入れを受け取ったか?」
「ち、違う。俺は渡されたんだ。姫路と島田に。先生からの差し入れだって。」
姫路と島田ぁ?
辺りを見渡す。あの二人は‥‥‥‥いない。
「そういうことかよこんちくしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一部辻褄があわないが全て納得がいった。
飲み物は姫路と島田が用意した。ハチミツレモンにだけトリカブトの花をよく揉んだもの仕込ませた。恐らく他のやつらは炭酸飲料に食いつくと予想したので秀吉だけが飲みそうな飲み物に仕込ませた。理由は何故か、俺の推測だがあいつらの目的は《この次の代表戦でどちらかが出る》
ということだろう。勝った方が負けた方のいうことを聞くというルールの名のもとに何か企んでいる、こんなところだろう。
ただ、あのタイミングの先生二人の呼び出しはあの二人にとってあまりに都合がよすぎる。
教頭室に呼び出しだから先生にもグルがいるのかも知れねえのか!?それともほんとたまたまなのか!?
ドタドタドタ、と走る足音が聞こえ、救急隊員が流れ込んでくる。
「急いで運ぶんだ!」
「急いで担架!担架!」
救急隊員は流れるように秀吉を担架に乗せ走って運んでいく。
その流れを呆然と見つつ、俺はゆっくり歩き始める。
「どこにいくんだ?テツ。」
「とめないでくれ雄二。俺はあいつらを殺らないと気がすまないんだ。」
「‥‥姫路と島田か。」
雄二も同じように考えて同じ結論に至ったらしい。ならなおさらこの気持ちがわかるはずだ。
「もしかしたら秀吉が俺らの前でもう笑わないかもしれないんだ。それに、俺は誰かの泣き顔を黙って見過ごせると思うか。」
教室の端っこで、木下がうずくまっていた。工藤や霧島が大丈夫、きっと大丈夫。と励まし続けている。
「それでもお前が手を汚す必要はない。証拠はムッツリーニが探してくれる。そうすれば法の鉄槌があいつらに下るさ。」
「嫌だ、俺の手が汚れても良い。あいつらを殺したいんだ!明久を暴行する度に怒りが湧いてきていたが、もう限界だ!」
「俺だって同じ気持ちだ。だけど、暴力や犯罪に同じ手段で返すのは、結局あの二人と同じになっちまう、そう思わないか?」
「思うよ!‥‥けど、この怒りを!どうすればいいんだ!教えてくれよ!なあ!」
「テツ‥‥。」
「嫌なんだよ。何もできないのが。そんな俺には、もうコリゴリなんだ!」
俺の頬に涙が一本筋をつくる。雄二に肩を優しく叩かれその場に泣き崩れてしまった。