何も無い白い空間、其処に1人の少年が横たわる。
その横には何処か落ち着かない様子でその少年の横を行ったり来たりする女型のシルエット。
人として完璧過ぎるプロポーションで黄金律とはこの人の為にあるのかと問いたくなる程の美人。
しかし、背には純白の翼が生え頭上には光る円環が浮く。
詰まる所、神だ。
「バルサミコ酢!!」
「どんな夢見てんですか……………まぁ起きたなら良いです、それでは………って寝ないでくださいよ!」
どんな夢を見たのか疑問だが突然飛び起きて何か言ったかと思うと再び寝そべる。
神様必死に体をゆすったり大声を出したりして起こそうと試みるが「バルサミコ酢」と言うだけで起きようとしない。
どんだけバルサミコ酢なんだよ。
「もういいです、怪我しても知りませんからね!!えい」
腕を掲げ振り下ろすと小さな雷が少年の元に落ちる。
漫画よろしくにビリビリとなりプスプスと黒焦げる少年。
突然目を開いたかと思うと飛び起きて
「おいあんた!もう少しでバルサミコ酢将軍を倒せた所だったのに何で起こすんだよ!!」
「私の容姿とかこの空間についてとかじゃなくて文句ですか……ってバルサミコ酢将軍って誰だよ!!」
愚痴が飛び出す神様。
うん、バルサミコ酢将軍って誰だよ。
「バルサミコ酢将軍を知らんとは貴様モグリだな」
モグリも何も少年の目の前にいるのは人知を超越した存在。
そんな存在に対してモグリと言い放つ少年の気心が知れる。
「っていうかこの状況に何か無いんですか!?」
「あれだろ異世界に行ってモライマース、チートモライマース、ハーレム作ってモライマース、モライマース将軍だろ」
「何でも将軍つければいいと思ってんじゃねぇよ!
まぁ大方当たってますけども………」
「いいか、現実ってのはもっと目を背けたくなるモノなんだ。
だから俺は産まれた次元が違うと嘆きながら生きてきた。
だからオタクにとって夢のようなこの状況はあり得ない。
つまり夢だ」
「はぁ…………正直これはあんまり使いたく無いんですがね」
指を弾く。
すると少年は何か重要な事に気が付いたようにハッと目を見開く。
「おーけ、分かった。お前を信じようここは現実だ」
少年の意識を操作して無理矢理自分の話を理解させたのだ。
「貴方は死にました。
本来なら異世界へ転生して貰うんですが貴方は運良く物語の世界へ行ける事になった。
貴方の言う二次元というやつです、その世界は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』」
やっと真面目に話せる事に微かな喜びを感じながら神は話を続ける。
「既存の物語……原作というやつは壊れたりしません。
その原作とは全くの別物なので。
チートとは行かないかもしれませんがある程度の力を渡しましょう」
「マジですかぁぁぁぁぁ!!」
両手で全力のガッツポーズをする少年。
先程とはえらい態度の違いだがそれは神が意識の操作をしたおかげだ。
喜びが最高潮に達したのか只管ランニングマンをする少年。
完全完璧である神からすれば人間は謎に満ち興味深い生き物だが目の前の少年はその謎よりも更に謎だった。
「それじゃあ、行きなさい。
そして私に見せてください、貴方の物語を!!」
神が手をかざすと大きなゲートが現れる。
少年は意図を察したのかランニングマンのままゲートをくぐって行った。
少年が通るとゲートは閉じてその場には神1人となる。
誰も居なくなった空間で神が独りでに呟く。
「あの子の事……龍斗君の事を頼みますよ。
ヘファイストス……期待は出来ないけどヘスティアも」
神は白い閃光が迸るとその場から消えてしまった。