バカな僕の第二の人生   作:アルカリ電池

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翌日。今日は7月の第1土曜日。
毎月この日はかかりつけの病院に通院して検査することになっている。


結果は、普通の人に比べれば決して良くは無いが、経過は比較的良好だそう。
それを聞いて私は少し安心したし、お母さんもとても喜んでいた。

検査を終えた病院から出ようとすると、空は厚い雲に覆われ、強い雨がふっていた。
検査が長引いたのもあって、辺りは薄暗くなっていた。

「お母さんは車をとりに行ってくるからここで待ってなさい。」
お母さんはそういって駐車場に走って行った。


しばらくしてお母さんの車がエントランス前にとまり、なかでお母さんが手招きをしている。

私は小走りで車に向かい、ドアを開けて助手席に乗り込んだ――――



私と雨といるはずのない彼

「ん・・・・んぅ・・・・」

「あら、起きたの?すぐ家につくからもう少し待ってなさい。」

ふと目が覚めると、おかあさんが話しかけてきた。

 

そう言われて窓の外を眺めると見覚えのある街並みが見えた。

日は落ち、窓から見える家や街灯には明かりがついていた。

雨は相変わらず降り続いていた。

 

 

窓の外を眺めていると公園がみえた。

その公園ある程度広く、いつも人がたくさんいて、友達同士遊んでいたり、親子で遊んでいたり、親同士が話し合っていたりして賑わっている所。

私はよくこの公園に来て、決まったベンチに座って、その賑わいを眺めていた。

 

 

暗く誰もいない公園の、そんな自分の指定席にふと目を向けるとそこにはなぜか電灯に照らされた―――横たわる人影が見えた。

 

雨でよく見えないがその人影に見覚えがあった。

 

それはあの『彼』のようにみえた。

 

だけどそんなはずはない。彼がこんな所に居る訳がない。

 

でももし、あの人影が彼だったら?

 

なぜ彼がこんな日に、あの場所に?

 

 

そんなことを考えているうちに車は公園を通り過ぎてしまった。

 

「お母さん、車を止めて!」

 

私はいつの間にかお母さんにそう叫んでいた。

 

「どうしたの瑞希?そんなに慌てて・・もうすぐお家に着くわよ?」

 

そうは言いながらもお母さんは車を止めてくれた。

 

「ごめんなさい!私、どうしても行かなきゃいけないの!」

 

私はシートベルトを外してドアを開けて車から飛び降りると、今通った道を走り出した。

 

 

お母さんが何かを叫んでいたが、雨音でよく聞こえなかった。

 

 

 

 

私の頭の中は、彼のことで一杯だった。

 

服が濡れる事も、靴が汚れることも気にせずに走った。

 

息はすぐに上がったけど、それでも足を止めなかった。

 

 

人影がはっきり見えるくらいまで来た。

 

その人影はやっぱり彼だった。

 

あと少し・・・

そう自分に言い聞かせながら最後の力を振り絞った。

 

 

 

ベンチの前にたどり着き、彼の顔がはっきり見えた。

 

だけど声をかけることができなかった。

 

それは全力で走ったせいで声が出せなかった訳ではない。

 

疲れて荒いはずの息。

 

でも私は、息をするのも忘れていていた。

 

 

いつも明るく、楽しそうに笑っていた彼、

 

でも今は暗く、悲しい顔をしていた。

頬が酷く腫れ上がり、滴り落ちる雨粒が、涙のようにも見えた。

 

「あきひさくん!」

 

絶え絶えになった息で声を絞り出しながら彼を抱き起こした。

いつもの私ならこんな大胆なことはできないだろう。

でも、そうせずにはいられなかった。

 

彼の体は石のように冷え切っていたが、心音は確かに聞こえた。

 

「あきひさくん!!あきひさくん!!」

 

だけど何度名前を呼んでも返事は無かった。

 

『瑞希!勝手に飛び出して!また風邪でもひいたら・・・』

 

そこに傘をさしたお母さんが、小走りで近づいてきた。

 

「あっ・・お母さんたすけて!・・・あきひさくんが・・・あきひさくんが死んじゃう!」

 

「何を言ってるの瑞希?男の子がそう簡単に死ぬわけ・・・」

 

お母さんはそこまで言って言葉を切った。

お母さんにもあきひさくんの状態が解ったのだろう。

 

「とりあえず、車に運びましょう」

 

「うん・・・」

 

お母さんは持っていたもう1本の傘を私に渡した後、彼を背負って公園の出入り口に向かって歩き出しました。

私もそのあとに続いて歩きました。

 




「お母さんはお風呂の準備をしてくるから、瑞希はその子の濡れた服を脱がして毛布に包めておいてくれない?」

「え?」

「はいこれ、タオルと毛布、服はこの籠にでもいれておいて。」

「ちょっとおかあさん!?」

「ふふっ、じゃあよろしくね~」

「ま、まって・・・」

お母さんそういって浴室に行ってしまった。


私は今、家のリビングで気を失っている明久君を抱えている。


確かにお風呂はすぐに沸く訳じゃないから、濡れたままにしておくのはまずい。

だけど異性の、しかも気になっている人の服を脱がすなんて・・・・

でもこのままじゃ、本当に死んじゃうかもしれない。

「あきひさくん・・・ごめんなさい」

私は気を失っている彼に謝りつつ、濡れて体に張り付いたTシャツに手をかけた。

「うぅぅ////・・・」

私は恥ずかしくて目が開けられなかった。

それでもTシャツの裾をまくり上げ、何とか脱がそうとした。

「んしょ・・・んしょ・・・」

手探りでシャツから頭をだし、手を抜いた。

何とかTシャツを脱がすことができた。

それを手探りで籠のなかにいれる。

「つ、次はズボン、だよね・・・」

そう呟きながら手を腰のあたりに持っていく。

そして手が布地に触れ、その一番上をつかむ。

そこには2枚の布地があった。

「こ、これって?」

まさかパンツ?

パンツだよね?

そうパンツ

・・・パンツ

「――――////」

声にならない叫びをあげながらどうするか考えた。

1度に脱がしたほうが楽だよね!?

いやいくらなんでもパンツまで脱がさなくても・・

それにこの後体を拭くんだし、

とりあえずズボンだけでも脱がそうか?

うん、それがいいよね!


「よいしょ・・・」

彼の体を少し持ち上げ、ズボンをお尻から抜く。

そして足を持ちあげながらひざと足首を抜いた。

そのズボンをまた手さぐりで籠に入れる。

「ふぅ・・」

とりあえず脱がし終えたことに安心した私は一息ついた。

そして、籠の隣に置いてあったタオルに手を伸ばし、彼の胸に手を回す。

そこで気が付く。

今、裸の彼に後ろから抱きついていることに―――――


「きゃあああああああ////////!!」

私はとっさに彼を突き飛ばしてしまった。

「あっ・・あわわ・・」

抱きついていたことと、突き飛ばしてしまったことに慌てて、つい目をあけてしまった。

「え・・?」

目に映ったのは、床に倒れた彼の体。
それはあざだらけで、とても痛々しい体だった。

まさか突き飛ばしただけでこんな怪我を?

そんなことがあるはずない。
私の力じゃ力いっぱい殴ったところであざの1つもできるとは思えない。

それに中には治りかけた古い傷もあった。

だからこれは以前からあったものなのだろう―――


――でも、今はそんなことを考えている暇はない。

「・・・とりあえず、体を拭いてあげなきゃ・・・」

力なく横たわる彼を、濡れた体のままにして置く訳にはいかない。

「考えるのは・・・あとでもできるから・・・」

そう―――自分に言い聞かせながら彼の身体を拭いた。
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