バカな僕の第二の人生   作:アルカリ電池

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明久Side

目が覚めると、僕はソファーの上に寝ていて、目には見覚えのない天井が映った。

「あっあきひさくん!気が付いたんですね!」

そんなことを考えていると、誰かが僕の顔を覗き込んできた。

見えたのは、色素の薄い髪をなびかせた女の子の顔―――

照明の陰になっていて、顔がよく見えない。

だけど、僕はそれが誰だかすぐに解った。

「みずき・・・ちゃん?」

「よかった・・・死んじゃったかと思って・・・本当に・・・」

そして彼女は僕に抱きついてきた。

なんなんだ?なんでみずきちゃんが抱きついているんだ?

ここはどこなんだ?

訳が分からない・・・

「あきひさくん、公園で倒れていたんです。だから、お母さんと一緒に私の家まで運んできたんです・・・」

・・・そうだ・・・たしか僕は公園で・・・・

「いくら呼びかけても、ぜんぜん目を覚ましてくれなくて・・・」

そういいながら僕の胸に顔をうずめている・・・!?
「み・・みずきちゃん!?とりあえず・・・離れて貰えないかな?」

「ふぁあ!!?ごごごめんなさい・・・私、つい////」

そう言いながら、彼女は離してくれた。

やっと見えたその子の顔は真っ赤になっていて、
頬には涙がこぼれていた。


それを見た僕は、痛む体の事も忘れて飛び起きた。

そして掛けてあった毛布がめくれ、何も着ていなかった僕の体があらわになり―――

身体のあざを晒してしまった。

「あ・・・」

見られた―――

誰にも見られたくなかった・・・

誰にも知られたくなかった僕の秘密を・・・



よりにもよって彼女に―――


僕の秘密と届かない思い

僕は物心ついた時から家事をしていた。

 

家の手伝いなどではなく、家事のすべてをやっていた。

 

親の世話を子供がするのは当たり前で、

 

いうことを聞かないとはたかれるのも当たり前、

 

失敗をしたら殴られるのも当たり前、

 

反抗したらを折檻されるのも当たり前。

 

ずっとそう信じていた。

 

とても大変で、とても辛かったけど、痛いのが嫌だったから何も言わずに家事をこなしていた。

 

そんな日常生活の中で僕は簡単な常用漢字の読み書きや四則計算なんかを自然と覚えていた。

 

じゃないと買い物もできないし、家計簿もつけられないからだ。

 

覚えるのは大変だったけど、ただ殴られたくない一心で頑張った。

 

 

 

でもそんな辛い毎日でも楽しいことはあった。

 

 

 

僕が唯一家の外に出られる買い物の時間

 

スーパーに向かう道中にある公園

 

その公園のとあるベンチ

 

そこにはいつも1人の女の子が座っていた。

 

僕はなぜかその子を見ているだけで笑顔になれた。

 

道を歩きながらその子を眺める事が僕の小さな幸せだった―――

 

 

 

 

 

そんな毎日を送りながら月日は流れ・・・

 

僕は小学校に入学した。

 

同じクラスには、あの女の子がいた。

 

僕はその子に話しかけたいと思った。

 

だけど、いざ話しかけようとしても、恥ずかしくて近くに行くことができなかった。

 

それでもあの子を見ていられるだけでとても幸せだった。

 

 

 

 

1か月が過ぎたころ、僕は人に囲まれるようになった。

 

僕はテストで高得点をとり、運動でも活躍していからだ。

 

僕の日常に比べれば、どれも簡単だった。

 

先生やクラスメイトはそれを褒めてくれた。

 

僕はそれが嬉しくて、いつも笑っていたけれど、

 

でも、あの子は・・・話しかけてはくれなかった。

 

あの子は・・・ぼくに興味がないのかな?

 

そう思うと僕は寂しかった――

 

沢山の友達に囲まれていても、沢山笑っても、この寂しさは消えなかった。

 

 

 

7月に入り、体育で水泳の授業が始まった。

 

水着になれば、今まで服で隠していたあざが皆に見られてしまう。

 

だから僕は仮病を装い、体育を見学することにした。

 

親の許可さえあれば水泳は簡単に見学できた。

 

幸いお母さんにも少し殴られるくらいで許可を貰えた。

 

 

 

そして最初の水泳の授業。

 

特に怪しまれることもなく休むことができた。

 

今はプールサイドのベンチに座っている。

 

隣には一人の女の子が座っている。

 

その子は、僕がいつも見ていた女の子。

 

そんな彼女と2人きりでお話をすることができた。

 

 

ただ一緒にお話しをしているだけなのに、

 

それだけの事なのに、僕はとても嬉しかった。

 

初めて話すとは思えないほどに話は弾んだ。

 

彼女が笑う姿を見ているだけで、とても幸せな気持ちになった。

 

こんなに幸せな気持ちになれるなら、もっと早く勇気を出して話しかければよかった…

 

そんなことを思っていると、もう先生が終了のあいさつをして皆が更衣室に着替えに向かっていた。

 

僕は彼女と一緒に道具を片づけ、教室に戻った。

 

その道中も、教室に戻ってからもお話をした。

 

だけど着替え終わった皆が戻ってきて、僕の周りに集まりだした。

 

皆プールの後でテンションが上がっていて、僕はそれに答えていた。

 

 

気が付くと彼女は自分の席に戻っていた。

 

 

彼女は僕と話したくないのかな・・・

 

あんなに笑ってくれたのに・・・

 

やっぱり、僕の事なんて、なんとも思ってないんだろうか・・・

 

 

彼女を見ているだけであんなに幸せだったのに―――

 

今はただ・・悲しい気持ちになるだけだった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日―――

 

僕はいつも通り家事をしていた。

 

でもいつも通りにはできなかった。

 

昨日の事が・・・あの子の事が気になってしまい、手が動かないのだ。

 

手が止まるたびに叱られ、殴られた。

 

それでも、あの子の事が頭から離れなかった。

 

 

しまいには服をアイロンで焦がしてしまい、普段は殴られない顔までも殴られた。

 

 

だから僕は家から逃げ出した。

 

靴も履かずに、雨の中を駆け出した。

 

辺りは薄暗く、電灯が付き始めていた。

 

 

 

必死に走った僕はいつの間にか公園の、いつもあの子が座っていたベンチの前にいた。

 

そしてそのベンチに倒れこんだ。

 

「みずきちゃん・・・たすけて・・・」

 

薄れゆく意識の中、ぼくはそう呟いた―――――

 




「あきひさくん、その怪我・・・・」

僕は慌てて体を隠した。

だけどもう手遅れだろう。

気が付いた時にはもう裸だったのだ。

もう見られていたはずだ。

「嫌だよね・・こんな体・・・気持ち悪いよね・・・」

こんなのを見られたんだ、絶対に嫌われる・・・

もう・・お終いだ・・・

「・・・そんなこと・・ありません!」

「え?」

「そんなことで、あきひさくんを嫌いになったりはしません!」

いま・・なんて?

「だから・・教えてくれませんか?・・何でそんなに傷だらけなのか・・・」

「みずき・・ちゃん・・・」

嫌じゃないの?

こんな僕を・・・嫌いにならないの?

「私・・・あきひさくんの力になりたいんです・・・」


なんて・・・なんて優しんだろう・・・

彼女の優しさに・・僕は涙を流さずにはいられなかった。
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