そう、隣で瑞希ちゃんが体を拭いている。
でも何のことはない。
今まで、互いの体を見つめあい、洗いあっていたのだ。
それに比べればタオルで隠れている分、気が楽だ。
僕はもともと着ていた服に着替え・・・あれ?どこだろう?
あるのは女の子用のパジャマが2着
そして、洗濯機が回る音・・・
うん。
まぁ、
そうだよね。
「あ、あきひさくん///」
「なんだい?みずきちゃん?」
「私のパジャマですけど・・あきひさくんがよければ使ってもいいですよ・・・」
「うん、まあサイズは大丈夫だし、使わせてもらうよ。」
パンツは自分のが乾かして置いてあったので、それをはいた。
さすがに瑞希ちゃんのパンツはつかえないよね・・・
僕は黄緑色の、瑞希ちゃんは桃色のパジャマに着替えてリビングに入った。
「おや、君が明久君かい?」
するとテーブルに座った大人の男の人に声をかけられた。
「あ、はい。・・えっと・・・」
「瑞希の父親の
※原作では名無しなので適当につけておきます。
「あ、和希さん、ありがとうございます・・・」
「あら、遅かったわね~、随分騒がしかったようだけど・・・ふふっ」
そういってお姉さんはキッチンから歩いてきて、僕たちをみて嬉しそうに笑っている。
「瑞希があんなに大きな声を出すとわねぇ~」
「ひゃぁ///お、お母さん・・・」
瑞希ちゃんが照れている。・・やっぱりかわいいなぁ・・・
「うふふ、かわいいのはわかるけど、あんまり見とれてばかりじゃ駄目よ?」
「うぇ!?なっなにを・・・」
「明久君もなかなかいい声出してたわよね~」
「あっあぅ///」
そうして僕らはまたゆでだこの様になってしまった・・・
「・・・瑞穂、とりあえず晩御飯にしないか?」
和希さんの方を見ると、少し顔が引きつっているように見える・・・
「そうね、お腹空いてるでしょうし、とりあえず2人はテーブルについてなさい。」
「そ、そうですねあきひさくん、座りましょうか。」
「う、うん。わかったよ・・・」
僕は瑞希ちゃんに手を引かれてダイニングテーブルに着いた。
僕の右側に瑞希ちゃんが座って、正面に和希さんが座っている。
見た感じ、ととても厳しそうな人だけど・・・
「あの、和希さん。」
「なんだい?明久君。」
「瑞穂さんは本当にお母さんなんですか?」
「・・・あぁ、正真正銘私の妻だ・・・」
なん・・・だって!?
「・・・あれでも今、30歳なんだ。」
そんなばかな・・・
「うふふ、成長障害を患っていてね、身長が伸びなかったのよ~」
「ああ、そうでしたか・・なんかごめんなさい。」
なるほど、やっと納得がいった。
どおりで子供に似つかわしくない物が付いているはずだ・・・
「いえいえ、この身体も結構便利なのよ?
買い物するといろいろおまけしてくれるし、電車やバスも半額で乗れるんだから♪」
なんて暢気な人なんだ――
「さあできたわ、召し上がれ~」
「えっもうできたんですか?」
「料理はもうできてたの、ケチャップをかけただけよ。」
そういって瑞穂さんは僕と瑞希ちゃんの前に1つずつ皿を置いた。
その皿にはオムライスが乗っていて―――
み ず き ♡
『わぁぁああああ――!!!
『ひゃぁああああ――!!!
隣では瑞希ちゃんも悲鳴を上げていた。
皿のオムライスを見ると―――
あ き ひ さ ♡
「「な、なな何書いてるんですか///!?」」
「うふふふふ♪」
これを書いた当の本人は無邪気な笑顔を浮かべている。
だ、だめだこの人・・・早く何とかしないと・・・
「み、瑞穂・・・」
「あ、ちょっと待っててくださいね~、いまあなたのも持ってくるわ。」
「違う、そうじゃないんだが・・・」
そういって瑞穂さんはキッチンへ戻っていった。
「・・・瑞穂さんて、な、何と言うか・・・すごい人だね・・・」
「・・・あ、あきひさくん・・ごめんなさい・・・」
「・・・すまない・・明久君・・・」
そういう和希さんの目は泳いでいた・・・
「おまたせ~あ、な、た♡」
「み、瑞穂・・・」
そういって和希さんの目の前に置かれたオムライスには・・・
L O V E ♡
読めないけど、意味は何となくわかる・・・
「もう新婚でもないんだが・・・」
「たまにはいいじゃない。うふふ♪」
そういう瑞穂さんのオムライスにも同じものが書かれていた。
「あら、スプーンを持ってくるのを忘れたわ、ごめんなさい。」
そういってまたキッチンへ・・・
あの人・・・自由すぎる・・・
「はいスプーンもってきたわ。」
「あ、ありがとうございます・・」
「それじゃあお腹もすいたし、早いところ食べちゃいましょうか。」
「あ、ああ。そうだな・・・じゃあ・・・」
「いただきま~す♪」
「「「いただきます・・・」」」
僕はスプーンを手に取り、ハートマークから食べていった・・・
なんでオムライスを食べるだけで、こんなにも恥ずかしい思いをするんだろう・・・
「ごちそうさまでした。」
「はい、おそまつさまです。」
「とってもおいしかったです。」
うん、本当においしいオムライスだった。
「そうね、とってもおいしそうに瑞希を食べていたわね♪」
「え!?い、いや///そういう意味じゃ///」
「ちょっと///!お、おかあさん///!」
くそ・・・せっかく頭から追い出したのに・・・
「ふふっ、瑞希もいつも以上によく食べていたし、そんなに明久君がおいしかった?」
「ふぇ!?ちち違います!!恥ずかしかったから手が進んだだけです///」
「それに、いつもだったら少し残すじゃない。」
「そ、それはあきひさくんを残すみたいで嫌だったからで・・・」
「だったら名前を消しちゃえば良かったのに・・・」
「ぅ、うぅ////」
それができればどんなによかったか・・・
「ふふふ、それなら今度からはどの料理にも名前を入れてみようかしら?」
「「それだけはやめて!!!」」
何を言い出すんだ!この人は・・・
瑞希ちゃんがこれから毎日僕の名前の入った料理を食べるだなんて・・・
そんなの・・・恥ずかしすぎるよ!!
「・・・瑞穂、ご飯も食べて落ち着いたところだし、そろそろ話をしようと思うんだが・・・」
「え?えぇそうね。こんな日にあんな場所にいたんですもの。一人の子の親としては見過ごせないわ。そのことについて聞かせてもらえないかしら?。」
「あ、あきひさくん。私も知りたいです!」
「うん、わかってるよ。ちゃんと話すさ。」
そして僕は話した。
日常的に暴力を振るわれていたこと、
それに怯えながら家事を強要させられていたこと、
そしてそれが普通の事だと思っていたこと。
それを瑞希ちゃん達にすべて話した。
さすがに今日のことはいつにも増して激しい暴力ということにしたけど・・・
それ以外は正直に話した。
「そんな親がいるとわな・・・」
「そうね、子供に手を上げるなんて・・許せないわ・・・」
「あきひさくんの体の怪我は、そういう理由だったんですね・・・」
「うん、そうだよ・・」
「あら、怪我してるの?まあ当然よね・・ちょっと待ってなさい、薬箱に塗り薬があったと思うの。」
そういって瑞穂さんは席を立った。
「明久君、良ければしばらく家に泊まっていかないか?今の話を聞いて、家に送り返すような事は出来ない。」
「え?ほ、本当にいいんですか?」
「ああ、一家の主として、君を歓迎するよ。」
「ありがとうございます!僕、なんてお礼をしたらいいか・・・」
「お礼なんて要らないよ、人として当然のことだ。」
「え、でも・・・そうだ、家事の手伝いくらいはさせてください!」
「いや、きみは何もしなくてかまわない。」
「でも、それだと僕の気が済まないんです・・」
「わかった・・だが無理はするなよ、君はお客さんなんだからね。」
「はい!」
「よろしくお願いします、あきひさくん!」
「みずきちゃん・・・うん、よろしく!」
「うふふ、まとまったようね。」
「あ、瑞穂さん。」
「薬があったわ、悪いけど上を脱いで貰えないかしら?」
「・・はい、ありがとうございます。」
そういって僕はパジャマを脱ぎながら瑞穂さんの前に行き、背中を見せた。
「・・思ったより酷いわね・・・跡が残らなければいいけど・・・」
あの暢気な瑞穂さんがここまで言うんだから相当なのだろう。
「はい終わり、服着てもいいわよ。」
「あ、ありがとうございます。」
薬を塗ってもらい、お礼を言いながらパジャマを着た。
「うふふ、それじゃあ夜も遅いし、そろそろ寝た方がいいわね。」
「は、はい、そうですね。」
「予備の布団がないから瑞希と一緒に寝て貰っていいかしら?」
「はい大丈夫・・・え?」
「お、おかあさん!ま、またそんなこと言って///」
「ぼ、僕ならさっきの毛布被ってここで寝るから大丈夫です///!」
「あんな怪我を見た後でそんな事させる訳にはいかないわ。」
「だ、だったら私がここで・・」
「瑞希はもっと駄目よ、風邪でもひいたらどうするの?」
「あ、あぅ///で、でも・・・」
「一緒にお風呂に入ったんだから、もう恥ずかしいことなんてないでしょう?」
「だから恥ずかしいんです!!」
「それとも、明久君をここで寝かせるつもりなの?」
「あっそう、ですけど・・・」
「み、みずきちゃん!ぼ僕なら大丈夫だから!!」
「わかりました!あきひさくん、一緒に寝てほしいです!」
「ま、また・・みずきちゃん、無理しなくていいんだよ!? 」
「無理?な、何のことですか?わ私にはわかりません。」
「え?で、でも今恥ずかしいって・・・」
「私はあきひさくんとい一緒に寝たいんです!」
「え?えぇ!?」
「わ、私はトイレに行ってから部屋に行くので、ああきひさくんは先に行っててください!」
「え、み、みずきちゃん!?」
「ふふふ、さぁ明久君、瑞希の部屋はこっちよ。」
「え?み瑞穂さん!?わわっ!」
僕は瑞穂さんに背中を押されてリビングを出た・・・
瑞穂さんがいる限り、二人に平穏は訪れません。