薄暗い部屋の中、ベットライトに照らされたその顔は、僕の大好きな瑞希ちゃんの顔。
最初はまだ夢を見ているのだと思った。
もしかしたら昨日のすべても夢なんじゃないかとも思った。
それくらいに心地よい目覚めだった。
こんな幸せな朝は初めてだ・・・
瑞希ちゃんはまだ静かに寝息をしていた。
暖かな光に照らされたその寝顔はいつにも増して可愛らしかった。
僕は瑞希ちゃんの頭に左手を伸ばし、静かになでた。
その色素の薄い髪はふわふわとしていて、とても手触りがよかった。
撫でていると自然と心が安らぎ、ずっと撫でていたいとさえ思った。
僕はそんな瑞希ちゃんを静かに、優しく抱きしめた。
君が一緒に居てくれるだけで、昨日までの悲しい思いも忘れられる・・・
こうしているだけで、これまでの辛い思いも乗り越えられる・・・
「一緒に居てくれて、ありがとう・・・みずきちゃん・・」
寝ていて聞こえるはずのない彼女に、そう呟いた。
瑞希ちゃんがいれば、僕は何でもできそうな気がする・・・
僕は瑞希ちゃんに助けられた。命も、心も。
だから今度は僕の番だ。
何があっても、瑞希ちゃんを助ける―――
とりあえず、朝ごはんを作らなくちゃ・・・
僕は瑞希ちゃんを起こさないようにそっと離れ、ベットから降りた。
カーテンの間から見えた空は、まだ薄暗かった。
瑞希Side
カーテンの間から差し込む朝の陽ざし、
いつもと変わらない、いつも通りの朝。
そんないつも通りの朝に、私はなぜか違和感を覚えた。
「あ、あれ?あきひさ・・くん・・?」
昨日一緒に寝たはずの彼は、辺りを見回しても見当たらなかった。
あれは夢だったの?
それともまだ夢を見ているの?
ためしにほっぺをつまんでみた。
「いたたたた・・・」
ちゃんと痛い、どうやら夢ではないらしい。
じゃあ明久君は?やっぱり昨日の事は夢だったの?
「・・・とりあえず、下に降りてみようかな・・・」
そう呟きつつ、私はベットから降りた――
「あら瑞希、おはよう。早いわね。」
階段を下りてリビングに出ると、お母さんがテーブルに座っていた。
「お、おはよう、おかあさん・・・」
なんでお母さんが座っているの?
「あ、起きたんだね。おはよう、みずきちゃん。」
その声はキッチンの方から聞こえた。
「え?あきひさくん?」
「朝ごはんはもうすぐできるから、先に顔でも洗ってきた方がいいよ。」
「え、あ、う、うん・・・」
そう言われた私は、トイレを済ませてから洗面所に行き、顔を洗った。
そしてリビングに戻ると、明久君がテーブルに朝ごはんを並べていた。
お母さんの姿はない、お父さんを起こしにでも行ったのかな?
「あきひさくん・・」
「ん?なにかな?みずきちゃん。」
「それ、あきひさくんが作ったんですか?」
「そうだよ、口に合えばいいな♪」
そう言って明久君は笑ってくれた。
「料理するの、嫌だったんじゃないんですか?」
「別に料理が嫌いなわけじゃないよ。嫌なのは、痛いことをされることだし、それに――
「それに・・?」
「・・・みずきちゃんに食べてもらえるだけで、ぼくはとっても嬉しいよ。」
「ふぇ?そ、そんな///」
明久君は何を言ってるの?
私のためだなんて、そそそんな事・・・
「わ、私もあきひさくんの料理が食べれて・・嬉しいです///」
「ありがとう、みずきちゃん。そう言ってもらえると作ったかいがあるよ。」
「そ、そんな・・・」
「あらぁ、朝から見せつけてくれるじゃないの。」
「え!いや・・そういう意味じゃ!」
「いいのよ~もっといちゃいちゃしてても♪」
「おかあさん!違うの!そういうのじゃないの!」
「大丈夫よ、ちゃんとわかっているわ、瑞希のお母さんだもの。」
「違うの!ぜんぜん大丈夫じゃない!」
「朝から何を騒いでいるんだ、お前たちは・・・」
「あ//お父さん、えと、ごめんなさい・・・」
「あはは・・和希さん、おはようございます。」
「ああおはよう、明久君。悪いね、朝ごはんを作ってもらうなんて。」
「いえ、僕が勝手にやったことですから。それとも迷惑でした?」
「お客さんに作ってもらうのは心苦しいが、悪い気はしないよ。」
「そう言ってもらえると、嬉しいです。」
「じゃあ、その明久君の料理を食べてみましょうか。」
「そうですね///、とってもおいしそうです。」
「はい!どうぞ召し上がってください。」
「と、とってもおいしいです・・・」
「ああ、下手をすると瑞穂の作るご飯よりもおいしいな・・・」
「それは聞き捨てならないわね。でも、本当においしいわ・・・」
「本当ですか?おいしいなんて初めて言われましたよ!」
「うふふ、じゃあ私たちが明久君の初めてなのね、嬉しいわ。」
「はい、僕も嬉しいです!」
「そこは笑うような所では無いと思うんだが・・・」
明久君の料理は本当においしかった。
サバの味噌煮にだし巻き卵、金平ゴボウに野菜の浅漬け。
そしてお味噌汁。
これ全部1から1人で作ったなんてとても信じられない。
私と同い年でここまでの料理ができるなんて・・・
昨日の話を思い出しても、どんな思いをしてきたか想像できなかった。
「明久君、この後私は主人と出かけちゃうんだけど、瑞希と一緒にお留守番をお願いしてもいいかしら?」
「え?はい、大丈夫です。」
「え!?私たちを置いてくの?」
「えぇ、今明久君を連れて歩くのは少し危ないし、かといって一人で家に置いて置くわけにもいかないの。夕方ぐらいには帰ると思うけど、瑞希にはそれまで明久君を見ててあげてほしいの。」
「わ、わかりました・・・」
「お昼はレトルトかカップ麺ででも済ませて貰おうかと思ったけど、この様子じゃ任せて平気みたいね。」
「はい!とってもおいしいのを作ってあげます!」
「うふふ、じゃあ瑞希もたっぷり甘えてなさい。」
「ふぇ///!?な、なにを・・・」
「あはは・・ところで、帰りが遅くなるなら家の掃除でもやっておきましょうか?」
「別に大丈夫――と言いたいけど、やらなくてもいいといってもやりそうね、お願いしちゃおうかしら。」
「はい、任せてください!」
「頼もしいわね、じゃあ瑞希は家の事をいろいろ教えてあげてね。」
「は、はい!がんばります!」
そう意気込みつつ、明久君の作ってくれた料理に箸を伸ばした。
小1で敬語を使っていることに、違和感を感じずにはいられない。
どうなんだろう?