仮面ライダー鎧武 Legacy −鎧武×μ's ic S.T.A.R.T!!− 作:ススム→
−−−スクールアイドル。
それは、学生によるアイドル活動。
ここは女子高校生達によって結成されたユニットが自主的にアイドル活動を行うことが活発になったとある世界。
自主的にといってもその規模はとても大きい。
今や、スクールアイドルは社会現象なのだ。
その勢いは停滞する事がなく、とある店舗にはプロマイド写真、グッズ、DVD、そしてしまいには熱烈なファンが生まれ公式アイドル顔負けの大規模な「ライブ」にまで発展する。
更に人気のグループは大手の雑誌やマスコミ、ラジオやネット配信、そしてテレビにも取り上げられる。
女の子なら誰もが夢見るアイドル…。
しかし、スクールアイドルは決して穏やかな道ではない。
無論、この世界には星の数程のスクールアイドル達が存在する。
スクールアイドルにも戦いは存在する。
ライブを開催するため、他のスクールアイドルよりも人気を得ようと、頂点を目指そうとする彼女達の戦い・・・
そう、スクールアイドルは遊びではない、これは紛れもなく彼女達の「戦」そのものだ。
今ここに、スクールアイドルの「頂点」を決める戦いが開催される。
星が光輝く夜空、その星空の下では一つの、スクールアイドルの最大の戦場があった。
沢山のネオンが光る大きなライブステージ
ここはスクールアイドルの頂点を決めるライブ
そのライブの名前は「Love Live」
ステージの周りには360°から湧き上がる無数の大歓声。
今、ステージの上に9人のスクールアイドルが立つ!
「行くよ…皆!」
そして、このスクールアイドルには少し変わったルールが存在する。
「俺も準備万端だ!穂乃果!!」
ステージには9人のスクールアイドル…そして、1人の男。
激化するスクールアイドルとて、時には穏便では済まない不祥事が起こることがある。
その沈静化を図るため、各スクールアイドルには彼女達を護衛する者がいる。
その夢見る彼女達の守護者の名を、通称「アーマードライダー」と呼ぶ!
『バナナアームズ!ナイト・オブ・スピアー!!』
「強い者だけがこの場に立てる…そして、ようやくお前と戦える!ここで決着をつけるぞ…葛葉ぁ!!」
ブラスによるファンファーレのような音楽が辺りに響き渡り、自分達の目の前にバナナの形をした鎧を身につけた西洋の騎士がそびえ立つ。
…そしてその騎士の後ろにはまた別の3人のスクールアイドル。このユニットこそ、無数のスクールアイドルの頂点に立つ、アイドルの中のアイドル!彼女達の名は「A−RISE」
そしてA-RISE専属のアーマードライダー!彼の名は「アーマードライダー・バロン」
「ついにここまで来たわね。高坂さん」
「ツバサさん…!」
ステージ上で二組のスクールアイドルユニットが対立する。
今ここに、頂点を決める一つの戦いの火蓋が落とされようとしていた!!
「俺は…俺は絶対このラブライブでμ'sのライブを成功させる!!例え相手があのA-RISEだとしても絶対成功させてやる!!…変身!!」
『カチドキ!!ロック・オン!』
もう一度説明しよう…ここは、スクールアイドル同士が頂点を掴む為日々戦い続ける世界!!
頂点を掴む為、日々戦い合うスクールアイドル達の−−−
戦「極」時代!!
『カチドキアームズ!いざ出陣!エイ・エイ・オォォォォ!!』
・・・
−−−今から10年前。
僕達の住む世界は深刻な食料危機に陥っていた。
食料自給率はわずか8%、少子高齢化が進み輸入に頼りきった日本経済の結末だった。
そんな時、一人のある科学者が僕達の住む世界とはまた違う世界を発見。
その世界は『ヘルヘイム』と名付けられた。
ヘルヘイムの世界に生き物と呼べる者は存在しない。あるのは土、水、大気、そしてどこまでも続いている森だけだ。
その森で実る果実こそ、この日本の深刻な食力危機の解決策となった。
ヘルヘイムの森で実る果実、若干特徴的な形をした実、通称ヘルヘイムの実はビタミンA,C、鉄、カルシウム等と豊富な栄養素を含み、辺り一面無限に増殖、簡単な農作業で短期間で再度収穫可能、もちろん人体にはなんの影響はない。さらにヘルヘイムの森から採取できる土は堆肥となり水は農薬替わり、どんな作物でもこの森にあるものを使えばとてつもない成長速度で実ってしまうのだ。グリーンアスパラガスで例えてみよう。グリーンアスパラガス、アスパラという農作物は収穫できるまで数年かかるものなのだが、この森の土、水を使用するだけでわずか2ヶ月で収穫が可能なほど成長してしまう。もちろん、この事実を日本政府は黙って見過ごすわけがない。日本の食料自給率はおよそ3年で85%と引き上がり輸入国家から輸出国家へと変わっていった。
また、このヘルヘイムの実には変わった特徴がある。『形質変化』だ。
ヘルヘイムには世界の技術を持ってもなお解析できない未知の部分が沢山ある。この実を特殊な加工をすることで果実を覆う皮が鋼鉄並みの強度を誇る物質へと変化することができるのだ。
食料危機にかかわらずこの形質変化を応用しビルを建設するための鉄骨の変わり等、食料分野以外でも活躍していくこととなった。
そんな中、若者達で流行ったのがこの形質変化を応用した遊びだ。
ヘルヘイムに大きく関与している大企業「ユグドラシル」から発売された『こどものおもちゃ』強化スーツ展開式ベルト型装着変身ツール、通称「戦極ドライバー」
この戦極ドライバーにヘルヘイムの実を加工したアイテム「ロックシード」を用いヘルヘイムの実をアーマーに変化、己の身にまとい一対一で戦うという・・・まぁいわゆる「たたかいごっこ」だ。
もちろん、安全面は保証済み。どうゆうわけかヘルヘイムの森で生成し加工されたものは体細胞に反発する仕組みになっている。人体に栄養素だけ取り込まれたあとは排泄されるようにヘルヘイムの実で加工された鋼鉄並みの強度を誇る皮でおもいきり相手を殴ってもまるで磁石が反発するかのように絶対に直撃しないのだ。つまり武器にすらならない。なるとすればヘルヘイムで生成されたもの同士だけというわけだ。
さて、そんな流行と同時に僕達の世界には大ブームになっているものがある。
それが、学生達によるアイドル活動、通称「スクールアイドル」
スクールアイドルというのは・・・
「ん、もうこんな時間か。紘太さん遅いなぁ。また寝坊かな?」
さて、歴史の復習の続きは学校に着いてからにしよう。
今はこのいつもの待ち合わせ場所で、僕の大事な先輩を待つことにした。
・・・
「こ……ここからは…俺達の……んあ?」
朝。
カーテンから漏れる太陽の光が顔に当たる。それと同時にめざまし時計のアラームが耳に入ってくる。
目を開けると天井が下で床が上で…いや、ただ単にベッドから落っこちているだけみたいだ。
覚醒仕切らない頭をポリポリとかきながらボサボサの寝癖をなびかせ彼はベッドから立ち上がった。
−紘汰~早くしないと遅刻しちゃうよ~!−
自分の部屋のドアの奥から声が聞こえた。
彼は気の抜けた返事を一つ返しのっそのっそとリビングへ歩き始める。
リビングにつくと彼、『葛葉紘汰』の姉がてきぱきと朝食の準備をしていた。紘汰は今だに覚醒しきらない頭のままテーブルの椅子に座り「いただきます…」と一言、手を叩いた。
「もう紘汰!その格好のまま学校に行くの!?」
「姉ちゃんおはよ…ふあぁぁ~」
「こら!食事中はあくびをしない!今日早番だから私もう行くね!食器はキッチンに置いといていいから!」
紘汰の姉、晶はエプロンを椅子に掛け、もともと着替えてあった仕事着で家から飛び出すようにスタスタと出て行く。
紘汰はもっさもっさとご飯を喉に通し、コップに入った水を一気飲み。
そして数秒間目を閉じ両手を大きく広げ…
−ぱぁんッ!−
「…よし!ごちそうさま!!」
おもいきり両手を叩く、部屋中に音が反響した。
それからの紘汰の行動はとにかく早い。
歯を磨きながら髪を整え、慣れた手つきで先程食べた食器を洗い、わずか一分で学校指定の制服を身にまとう。
先日の晩に揃えておいた教科書類が入ったスクールバックを持ち自分が住むマンションの一室から飛び出した。
「おっと…鍵忘れてた!」
…途中まで降りたマンションの階段を再びのぼることもしばしば。
紘汰は全速力で通学路を走り、いつも一緒に通う後輩との待ち合わせ場所を目指す。もともと運動神経は他の生徒より良い部類なのでこれぐらいで息切れはしない。
むしろ紘汰にとってはジョギングの部類にすら入らなかった。
今更ながら彼の名前は葛葉紘汰。
近年女子高から共学制となった国立音ノ木坂学院に通う高校2年生である。学力は中の下、得意な学科は体育。
どこにでもいそうな平凡な学生である。
「ふっふっ…おぉミッチ!悪いまた待たせちまった!」
「遅いですよ、紘汰さん」
待ち合わせていたのは紘汰の一つ下の後輩「呉島光実」。
光実はスマートフォンを弄りながらこちらへと向かってくる先輩に手を振った。
そのまま二人は合流し、目的地である学校へと歩いて行く。
「紘汰さん、10分遅刻ですよ?今日もまた寝坊ですか?」
「へへっ!いや最近なかなか起きれなくてさ!」
「最近っていうかもう毎日じゃないですか!まぁ紘汰さんらしいといえば紘汰さんらしいけど…」
そのまま二人の他愛も無い世間話が続いていく。
学校に近づくに連れて同じ制服を着た生徒が徐々に増えつつある。
二人の周りはいつの間にか今では緑一色だが春には桜並木に囲まれる通学路を歩き、少しずつだが学校が見え始めていた。
「まぁ別に学校に遅刻してる訳じゃないし大丈夫だろ!」
「僕は良いですけど、海未さんがなんて言うか…」
「大丈夫だって!海未だって毎回なんやかんやで許してくれてるし!大体海未はいっつもカッチコッチで大変なんだよな~。あ~しろ、こ~しろってお母さんかよ!ってさぁ~」
「ははっ!…っ!!?
…あ、あの…紘汰さん?」
その時、光実の背筋に何かを感じた…。
それは、殺意に似た「何か」…だ。
しかし紘汰は光実の忠告も聞かず口を休めることなく次々と言葉を発していく。
「今日もまたどうせ言われるぜ?廊下を走ってはいけません!とかお菓子の持ち込みは校則違反です!とか!!ほんっと、年相応じゃないっていうかなんていうかな~例えが思いつかない!」
「こ、紘汰さん、そのぐらいに…」
「おせっかい?いやちょっと違うな…。口うるさい?でも海未は別に悪い奴じゃないしな~…。そうだ!年増だ年増!海未って年増なんだよな~!なぁミッチ!」
「紘汰さん!年増の意味絶対間違ってます!というか本当の意味解ってませんよね!?それより紘汰さんそろそろほどほどに…」
「だれが…『年増』ですって?」
「だから海未が年増って……ん?」
紘汰の耳には自分の隣にいる光実からの返事だと思っていた。
しかし、彼の予想は大きく外れることとなる。
なぜなら、普段一緒に通学しているもう一人の待ち合わせの人物がいるのだが、彼女との合流地点はまだ先の筈。
なのに、自分の真後ろから聞こえてくるものなのだから一気に冷や汗が額から流れ始める。
しかも、最悪のタイミングで…
「う、海…未?」
「海未さん…おはよう、ございます…」
紘汰と光実が後ろに振り返ると、同じ高校の制服を着た長い黒髪の美少女…もとい、紘汰と同い年の筈なのにまるで劇画タッチのような顔付きで鋭い眼光、鈍いオーラのようなものを背中から放出している…鬼。
・・・
「あ、やっときたよ!穂乃果ちゃん!」
「ほんと!?もうおっそ~い!穂乃果待ちくたびれちゃったよ!」
桜並木が終わり学校の校庭へと続く長い階段の下で紘汰と同じクラスの友人である「南ことり」と「高坂穂乃果」が3人を待っていた。
ことりは特徴的な髪を風になびかせ、穂乃果は待ちくたびれたのかやや曇った表情をしていたが紘汰達3人の姿が彼女の大きな目に映った瞬間、自然と満面な笑みが広がった。
「おぉ~っい!!紘汰く~ん!ミッチく~ん!海未ちゃぁ~ん!!」
「ほ、穂乃果ちゃん!皆みてるよぉ~…」
「もうはやくおいで…ん?あれ?」
「どうしたの穂乃果ちゃん?」
「紘汰くん、なんであんなにボロボロなの?転んだのかな?」
「う、海未ちゃん…」
2人は先程とは打って変わり一気に顔を青ざめた。
紘汰達がこちらへ近づいてくるにつれてなんとなく意味を察したのだ。
穂乃果の目に映ったのはボロボロの姿の紘太。制服のあちこちにドロがついており顔にはうっすらとまるでビンタをされたかのような赤い痕がある。
そしてそれに反比例するかのような海未の満面な笑み。
光実は半泣き状態だった。
そして3人が穂乃果達の元に合流した時、海未は満面な笑みで二人に挨拶をした。
「穂乃果!ことり!おはようございます!!」
「海未ちゃんおっはよ~!」
「お、おはよう海未ちゃん!今日なにか良いことでもあったの?」
「えぇことり!それはそれは『とても良いこと』がありました!」
「そ、そうなんだ~!えへへ~…へへ…」
・・・
「やっと着きましたね!あいかわらず長い道のりでした」
「もう3人とも!今度からもっと早く来てね?いっつも穂乃果とことりちゃんずっと待ってるんだから!」
「ふふっ!でも私は嫌いじゃないよ?穂乃果ちゃんといつもあそこで待つの!いっぱいお話できるし!」
「はぁ~早く授業おわんねぇかな~」
「紘汰さん、授業より先に保健室に行ったほうが…鼻血でてますよ」
5人は長い長い階段を上る。そしてようやく自分達が通う「音ノ木坂学院」に到着した。
沢山の生徒の挨拶が飛び回り、紘汰達5人はその中を歩いていく。
すると次第に沢山の視線が感じるようになるのだ。
−あ、みてみて!μ'sの穂乃果さんだ!−
−ことりさんや海未さんも一緒だ!!−
「相変わらず有名人だな~穂乃果達は」
「へへへ~!そんなつもりはあんまりないんだけどな~!!」
「も、もうあまり茶化さないでください!」
「なんだ海未、もしかして照れてるのか?」
「っ!!それ以上言うと怒りますよ!!?」
そう、何を隠そう彼女達3人は最近話題沸騰中の社会現象になりつつあるスクールアイドルである。そして彼女達はこの音ノ木坂学院の9人で編成されたスクールアイドル『μ's』のうちの3人なのだ。
ただ、それだけだはない。
「ふふっ!紘汰くんとミッチくんも!だよ?」
「ことりさん、僕達はあくまでサポートまでですから…主役はことりさん達ですよ」
紘汰と光実。
実は二人にもμ'sにとって大事な役割を果たしているのであった−−−。
「μ's、ミュージック、スタート!…てな!」
「紘汰くん。それ、穂乃果の真似~?」
「なんとなく…な!へへっ」
・・・
仮面ライダー鎧武 × ラブライブ!
クロスオーバー作品
仮面ライダー鎧武 IF
−鎧武×μ's ic S.T.A.R.T!!−
・・・
「さて、午前中の授業はここまでだ」
−起立!ありがとうございました!−
−ありがとうございました~−
現代社会を担当する講師、呉島高虎の一礼を持って午前中の講義が終了する。
教室中の生徒は昼食の準備をするため、各々の生徒は机を並べ替えたり教室を出て購買で軽食を買いに教室から出ていく。
「今日も講義大変だったね、海未ちゃん」
「そうですね、ことり。さて、私達もお昼の準備を……て、穂乃果?紘汰?」
「あ~…疲れた~お腹すいた~」
「穂乃果は…エネルギー切れです…がくっ」
「穂乃果ちゃん!紘汰くん!う~ん、二人には今日の授業難しかったかな~?」
「「難しすぎます…うぅ…」」
海未とことりの目に映るのは講義で力尽きたのか机に倒れている穂乃果と紘汰の二人であった。同じタイミングでしかも同じセリフを発するものなのだから海未は深いため息を一つ。
「もう!毎日毎日だらしがないです!もっとシャキッとされてはどうですか?」
「だって海未ちゃん~、高虎先生の授業難しいんだもん!」
「授業の半分以上わかんねぇよ!海未やことりはいいよな~、俺達と違って頭いいんだから」
「そんなことないよ~?ことりは家に帰ったらその日の授業を復習しているだけだよ!」
「二人ともことりを見習いなさい!あなた達はただ単に先生達の話を聞き流しているだけで帰ってから勉強していないじゃないですか!」
「だってだって海未ちゃん!いっつもダンスの練習で疲れて勉強までやる気がおきないんだもん!」
「文武両道です!!」
「うっ!は、は~い…」
穂乃果と紘汰は渋々顔を曇らせスクールバックから昼食を取り出す。紘汰は姉の晶のお手製の弁当だが穂乃果はランチパックを3袋取り出す。
4人は各々の昼食を持ち学校の中庭にある一本の木の元へと移動する。
廊下には様々な学生達によって活気に満ち溢れる。
すると、紘汰達4人の歩く先に一際目立つ二人の女性がこちらへと歩いてくる。
「お、絵里と希じゃねぇか!」
「おぉ~いっ!!えりちゃ~ん!!のぞみちゃ~ん!!はははっ!」
「わ!びっくりしたぁ…ほ、穂乃果ちゃん皆こっち見てるよぉ!」
「はぁ…、あまり目立つ行動は控えてくださいとあれほど言っているのに…仮にも私達は色々な意味で有名人になってしまったのですから…」
「穂乃果!そんな大声出さなくてもちゃんと見えてたわよ!他の生徒たちがびっくりしているじゃない」
「まぁまぁえりち、穂乃果ちゃんも別に悪気があったわけやないんやし」
その一際目立つ金髪のポニーテールでこの音ノ木坂学院の生徒会長である美少女、『絢瀬絵里』が冷や汗を流し、腰まで伸びるポニーテールが特徴でやや関西弁混じりな話し方をする女の子『東條希』が絵里を落ち着かせる。
「絵里ちゃん達もこれからお昼ごはんなの?」
「いいえ、私達はいつも生徒会の仕事を済ませてから昼食をとっているの」
「じゃないと放課後の練習になかなか顔を出せへんからね、今のうちにあらかた終われせておくんよ」
「う~ん、生徒会って私達が思っているより大変なんだね~」
「なんか、私達は何もできないで申し訳ない気持ちでいっぱいです…」
「ふふっ!海未が謝ったり気にしたりすることなんて何もないのよ?私達は自ら望んでスクールアイドルやっているんだから」
「別にうちらはスクールアイドルやって後悔したことなんて一度もないし、むしろ今の生活に満足してるわ!」
「絵里…希…」
「そ・れ・に!いざとなったら私達の『護衛役』である紘汰に生徒会の仕事任せても良いんだけどな~?」
「はぁぁ!?冗談きついぜ絵里!身体動かすのは得意だけどそっちのほうは論外だって!」
「冗談よ!さて、さっさと終わらせてお昼済ませましょ。希」
「せやね、えりち」
4人は絵里と希と別れを告げ、各々の目的地へと歩いていく。
その時、絵里は何かを思い出したかのように再び4人を呼び止めた。
「どうしたの?絵里ちゃん」
「穂乃果!言い忘れていたけど今日部室で大事なこと皆に伝えなきゃいけないから皆を集めておいて欲しいの」
「大事なことってなんだ?絵里」
「ふふっ!それはあとでのお楽しみ!」
穂乃果と紘汰の頭上にハテナマークが上がり、そんな二人を絵里と希はくすりと微笑んだ。
・・・
「う~ん!今日もパンが美味い!」
「穂乃果、食べ過ぎると太りますよ」
「そういえば海未、お前ちょっと太ったか?頬の辺りがふっくらとしたような…」
「うぇああ゛!?さ、最低です!!破廉恥です!!」
「いでっ!!?ぶっ…何も、ぶたなくてもいいだろ!?」
中庭に立つ一本の木の元で4人は何気無い会話を送りながら昼食を済ませた。
そして紘汰のデリカシーの無い発言のお陰で彼の頬には本日二つ目の赤いあざが残る。
「もぉ~紘汰くん!少しは発言に気をつけなよ!女の子は男の子と違って太るという言葉に敏感な生き物なんだよ?」
「じゃあ穂乃果も見てみろよ!海未の顔、昔より微妙にふっくらしてないか?」
「そんなことっ…ん?あれれ?…言われてみれば、確かに…海未ちゃんちょっと太った!!?」
「あ、あなたたちは最低です!!ふ、太ってなんて…あ、あうぅ…ひぐっ…ごどり゛ぃ~」
「もぉ~穂乃果ちゃん!紘汰くん!海未ちゃんいじめちゃ、めっ!だよ?」
「「す、すみません…」」
流石の海未も自覚したのか普段では見せない半泣き状態でことりに抱きつく。ことりはそんな海未をよしよしと頭を撫でてあげた。
その時、校舎から微かにピアノの音が聞こえてくる。
「うう……う…このピアノ…」
「真姫ちゃんだ!あ、そうだ。さっき絵里ちゃんに言われたとおり放課後で部室に集まってって伝えないと!」
「まぁ伝えなくても皆ちゃんと集まるから大丈夫だと思うけど、やっぱり今のうちに伝えた方が良いかな~?」
「そしたら俺、真姫のところに一走りして伝えてくる!穂乃果たちはミッチにメールで伝えといてくれ!たぶん花陽と凛もミッチと一緒にいると思うから!」
「わかった!紘汰くん頼んだよ!」
「おう!任せとけ!」
紘汰は弁当箱を穂乃果に任せ、駆け足で校舎の中に入り音楽室へと向かう。階段を何回も登ったが流石は体育会系というべきか、紘汰は疲労が全くと言って良いほど感じていなかった。
音楽室に近くになるにつれてピアノの音色が鮮明になっていく。
この音色が耳には心地よい。
次第に歌っているのだろうか、綺麗な歌声がピアノの音色と共に耳に伝わっていく。
紘汰は音楽室の前に立ち、演奏の邪魔をしないようにゆっくりとドアを開けた。
しかしその瞬間、こちらが音楽室に入ったことに気付いたのか歌声とピアノの音色が途切れてしまった。
「あ、悪い。邪魔しちまったか?」
「…別に。ただ私の生歌を一般生徒に聞かせたくなかっただけよ」
「とか言って!真姫ちゃんただ気恥ずかしくなって慌てて演奏やめただけじゃない」
「えぇ!?ちょ、ちょっとにこちゃん!!」
紘汰の目に映ったのはそっぽを向いて髪を弄り足を組みながら頬を赤らめる一つ年下の後輩『西木野真姫』と、そんな彼女をあざ笑うかのようにからかう一つ年上の先輩とは思えないほど小柄で小悪魔なツインテールが似合う少女『矢澤にこ』の二人だった。
「と、突然なんなのよ紘汰。というか入るならノックぐらいしなさいよ」
「もぉ~!真姫ちゃん照れてる~!頬赤らめて可愛い~!」
「にこちゃんうっさい!…で、何?」
「あぁ、今日の放課後。屋上に行かないで最初に部室で待っていて欲しいんだ。何か絵里が大事な話をするらしい」
「大事な話?まぁ、言われなくてもちゃんと部室に顔出すわよ」
「あ~、休み時間に絵里が言ってたことね。わかったわ!にこっ!」
「よかった。にこにーは最初から知っていたんだな…ん?」
紘汰は疑問を持つ。
にこがこの事を最初から知っていたのであれば、自然と真姫の耳に入っていたはず。
なのに、真姫は自分から伝えるまでこの事は知らなかったらしい。
おそらく、真姫自身もこの事を察しているだろう。
真姫が次の行動に移すまで、そう時間は必要無かった。
「…ちょ、にこちゃん。もしかしてそれ、知っていたの?」
「あ。……あぁ~そういえば~?この事真姫ちゃんにも話しといてって絵里が言ってたような~?ごっめぇ~ん!にこぉ~物覚え悪いから忘れてたぁ~!許してにこっ?」
「ちょっ!意味わかんない!!なんでそんな大事なこと教えてくれなかったの!?」
「もぉ~だからこうやって誤ってるんじゃん~!あんまり怒ると肌にシワが増えるわよ~?」
「ふんっ!にこちゃんより2つも若いから全然問題ないし!にこちゃんのほうがおばさんだし!!」
「ななななっ…お、おば…なんですってぇ~!!?ちょっと真姫ちゃん!!それどういう意味よ!!?」
「なに?開き直る気?大体にこちゃんはいっつもいっつも~!」
「あ、やばい…」
また二人の痴話喧嘩が始まったな、と紘汰はため息を吐いた。
何故か接点のあまり無い二人なのだがこんなことはしょっちゅうなのだ。
全く仲が良いのか悪いのか…いつも一緒にいるくせに。
「背のちっちゃいアイドルでも需要はあるのよ!!いつまでも永遠の18才でいられるのよ!!真姫ちゃんは不憫よね~!まだ高1なのにそんな大人びたプロポーションで!その調子だと老けるのも時間の問題ね!」
「え゛ぇぇっ!?さ、さっきから黙っていれば~!大体にこちゃんのあの営業スマイルきもちわるいのよ!それにあのキャラも昭和のアイドル意識しすぎ!さ、流石私より2年も先に生まれただけあるわね!」
「なぁぁぁ!!!!しょ、昭和…!!ま、真姫ちゃぁぁぁぁん!!!!」
「な、なによ!返す言葉見つからないからって大きな声出さないでよ!うるさい!」
「…ははっ…にこにー完全に素の状態になってるな…ていうか、俺がここにいること、あの二人自覚してないだろ…」
・・・
−−−放課後、慣れない講義で完全に疲れきった紘汰は我が高の活動拠点となる部室へとのっそのっそと向かっていた。
「あ~、疲れた。みんなもう集まってるかな?穂乃果達は用事あるから先行っていいよって言ってたけど」
紘汰の目の前には「アイドル研究部」と書かれた張り紙が貼られたドア。紘汰は何気無い気持ちでドアノブを握りドアを開ける−−−すると
「へ~んしんにゃ~!」
『ロックオン!!』
「へっ!?」
部室内でほら貝が響く。まるで戦国武将が戦に出陣するかのように。
ただ、紘汰の目の前には戦国武将と例えるにはあまりにかけ離れている少女だった。やや茶色のショートヘアの少女が色々とポーズを変えてにゃ~にゃ~猫のようにはしゃいでいたのだ。彼女の名前は星空凛。ちなみに彼女の腰に巻かれているベルトは・・・
「てぇっ!それ俺の戦極ドライバーじゃねえかぁぁぁ!!」
「に゛ゃっ!い、痛いにゃ~・・・かよち~ん・・・」
「かよち~ん・・・、じゃないよ凛ちゃん~っ!ご、ごめんなさい紘汰くんっ!」
紘汰の鋭い空手チョップが凛の頭部に振り下ろされ予想以上に痛かったのか頭を両手で覆い目頭に涙を浮かべていた。また、その隣には凛の幼馴染である小泉花陽が必死に紘汰に頭を下げていた。必死すぎる彼女を見て流石に紘太は「ぜ、全然良いって!」と逆に紘汰が頭を下げることとなった。ちなみに彼女のあだ名のかよちんとは花陽・・・花よ・・・かよ、と花という漢字を音読みで読んで完成された副産物なのであろう。
「まあそんなことどうでもいいか」
「え、なにが?」
「あ、あぁこっちの話だ花陽。そんなことより凛!なんで凛が俺の戦極ドライバー持っているんだよ!」
「持っているっていうか!最初からここに置いてあったにゃ~!」
「へっあ、あれ?」
「あの、紘汰くん。もしかして昨日の練習の後忘れていったんじゃ・・・」
「っ!!お、おい花陽!凛!こ、このことは海未や絵里には内緒な!な!!」
必死に紘汰が二人に頭を下げていると、その時−−−
「まったく、だらしないわね。そんなことで本当に私達μ'sのビートライダーズが務まるの?」
「・・・紘汰さん。戦極ドライバーを持ち帰るのを忘れるなんて・・・」
「げっ!!ま、真姫!!ミッチ!!」
ふと、紘汰が振り向くとそこにはいつの間にか真姫と光実が立っていた。
真姫はため息を吐きながら椅子に座り彼女の自慢の美脚を組む。
「いい?紘汰。あなたはこの音ノ木坂のスクールアイドルである私達μ'sの学校側から正式に任命されたボディガード、『ビートライダーズ』の一人なのよ?私達にもしもの事があった時、ベルトがなかったら誰が私達を守るのよ?いくらなんでもミッチだけじゃ私達9人の全員の面倒みることなんてできないのよ?」
「大丈夫だ真姫!この力無くても絶対に真姫のこと守ってやる!」
「え゛ぇっ?い、いやそういうことじゃなくて」
「今、真姫ちゃん絶対照れたにゃ~」
「めずらしいね、凛ちゃん」
「そこ二人!うるさい!!・・・おほん、とにかく!明日だって私達ライブ控えているんだからね?いざとなった時戦力ならないと困るんだから。最近、非公認なのにライブ中にほら、・・・他のスクールアイドルの『介入』が増えているんだから」
その真姫の『介入』という言葉に光実は少々顔を曇らせた。
紘汰と光実はことりの母親でもある我が校の理事長に正式に任命されたビートライダーズと呼ばれるスクールアイドルの護衛なる存在である。スクールアイドルが爆発的に人気になるに連れてやや警察ごとになる事件が若干多くなってきたのだ。スクールアイドルといっても元はただの青春真っ最中の女子高生。なので、各学校側がこうしてスクールアイドルの護衛に最も適任と認識した男子学生をこうして張り付きで一緒に行動させているという訳だ。と、いっても現実はマネージャーのようにスクールアイドルのスケジュール管理や機材運搬など雑用がほとんどである。
ただ、最近変わった事案がよく多発しているのだ。それが、先程真姫が説明した『介入』だ。他校のスクールアイドルの野外ライブ中にまた他校のビートライダーズとスクールアイドルが介入し、お互いのライブの権利をかけてビートライダーズ同士が戦極ドライバーを使い戦わせるというものなのだ。これを、「ライダーバトル」と世間は呼ぶ。言葉だけだとやや聞きが悪いが意外にもこれが第三者からしてみれば白熱するものなので、企業側はライダーバトルを表向きは非公認としている、が、ライダーバトルが開催されるたびに商業利益が右肩上がりになるものなので禁止もしていない。おまけにライダーバトルに勝利したスクールアイドル側の人気が上がるという効果も持ち合わせているので最近の主流の一つとなっているのだ。
「ライダーバトルか。勝てばもっとμ'sの人気が広まるかもしれない。正直、俺は負ける気はしねぇけど、俺達は・・・」
「私達は、自分達から他校へライダーバトルをしかけない。そう皆できめたよね?」
「お、穂乃果」
話に夢中だったのかいつの間にか穂乃果、ことり、海未の2年生組も部室に来ていたのだ。
「あぁ、わかっているさ。俺達はあくまで廃校危機の為、また、大好きなスクールアイドル活動をするためにライブをするんだ。ライダーバトルなんて二の次だ!」
「うん!だからもし何かが迫った時、穂乃果達のことちゃんと守ってね?紘汰くん!」
「あぁ!任せろ穂乃果!」
「やっぱり、私達μ'sのリーダーは穂乃果ちゃんだね?海未ちゃん!」
「そうですね、ことり。まぁ穂乃果も紘汰も、やや危機管理能力にはかけているんですけどね。でも何故か頼りにしてしまうんですよ。二人のこと」
その時、またまた部室の扉が開いた。絵里、希、にこの3年生組だ。
「ごめんなさい、待たせたわね」
「皆、待った~?」
「うぅん!私達はちょっと前にきたばかりだから大丈夫だよ?希ちゃん」
「ところで絵里ちゃん!重大な話って何?」
「そうだったわね、凛。取り敢えず皆!席に着いて」
ここでようやく、我が音ノ木坂学院のスクールアイドル、9人の女神μ'sとその護衛役であるビートライダーズの2人が揃ったのだ。
絵里はホワイトボードの前に立ち、他の10人は席についた。
「実は今日の朝、理事長から呼び出されたのだけど、また私達にライブを開いて欲しいと生徒会宛にお願いを受けたの」
「なぁんだ、絵里ちゃん!ライブなら明日、秋葉原の駅前でやる予定じゃない!穂乃果まだ忘れてないよ!」
「ち、違うのよ穂乃果。それとはまた別のライブ!ちなみにそのライブは丁度2週間後だからちょっと忙しいわね」
「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇ!!?うそうそ!?私達宛にライブのお願い!?」
「ちょっとまってください絵里さん!2週間後ですか?随分急な話だな。あと、そのライブって一体どこで・・・」
「それがね、光実。場所はあの・・・東京スカイツリーの真下よ」
−東京スカイツリーっ!!?−
全員が一斉に声を上げ、驚きを隠せなかった。今まで商店街や秋葉原等で活動を行ってきたが東京スカイツリー等という秋葉原以上に国際的で色々な人が集う場所で行うのは初めてだったのだ。
「は、ははは・・・あ、秋葉原ですら色々な人に見られるという恐怖でようやくOKを出したというのに・・・あ、あんな場所でわ、私達が・・・あ、ああっ!!」
「お、おい海未落ち着け!!顔が酷いことなってるぞ!というかそれ本当か?絵里!」
「ええ。依頼してきたのがそのスカイツリーの関係者でね、丁度ビアガーデンを開くから最近有名になっている私達にビアガーデンを盛り上げるためミニライブを開催してほしいって依頼なの」
「凛たち、本当に有名になったんだね!凄いにゃ~!」
「やったね凛ちゃん!あそこには観光客や海外から見に来る人達いっぱいいるからもっともっと有名になれるかもね!」
「でも、それだけじゃないわよ?わかっているでしょ。私達が有名になれば有名になるほどライダーバトルに巻き込まれる可能性が増えるのよ?しっかりと考えなさい!」
「とかいってにこっち。一番嬉しそうにしているのにこっちやない」
「へっ!え、ま、まぁ!このにこちゃんの可愛さがようやく世間に広まった点が一番の収穫よね~!」
「でも、にこの言う通りよ。もちろん、私が独断で決められることじゃないからちゃんと皆の意見も聞きたいの。皆、どう?」
一同が一斉に考え始める。しかし返答は早かった。最初に口を動かしたのは真姫だった。
「私はライブを開くことに賛成ね。いずれ考えなくてはいけない問題だったし、ちょうど良いんじゃない?私達の実力を他のスクールアイドルに見せつけてやりましょう」
「う~ん、ことりはちょっと考えるかな?確かに晴れ舞台だけど私達、まだまだスクールアイドルに慣れたてで勝手がイマイチわからないから・・・。あ、でも衣装は明日で着るのと他に同時進行で作っているのがあるから全然大丈夫だよ~!すっごく可愛いの!」
「ことりさん、話が脱線していますよ。でも、僕はことりさんの意見に賛成です。何より僕達には色々経験不足です。ライダーバトルだってまともにしたこともありませんですしね。もう少し地道に活動して経験を付けてからのほうが・・・」
「そうね。穂乃果はどう思う?」
絵里の言葉と同時に皆の視線が穂乃果に集まる。
しかし当の本人は何故か自信満々の表情だった。
「やろう!東京スカイツリーでのライブ!」
「穂乃果・・・」
「たしかにことりちゃんやミッチくんの意見もそのとおりだと思うけど、穂乃果やりたいんだ!そして皆に見て欲しいの!スクールアイドルの素晴らしいってこと、あとすっごく楽しいってこと!それにもしライダーバトルになることがあっても、紘汰くんとミッチくんが絶対守ってくれるよ!ね?ね!」
「おう!俺とミッチに任せろ!絶対成功させようぜ!ことりはどうだ?」
「ふふっ!なんか穂乃果ちゃんの言葉聞いて安心しちゃった!ことりは大丈夫です!」
「あいかわらず、穂乃果さんは穂乃果さんですね。わかりました!時には思い切った行動も必要かもしれないですね」
その時、花陽は心配そうに光実の袖を引いて耳元に小声で問いかける。
何事かと光実は花陽の話に耳を傾けた。
「あの~、光実くん。ほんとうに大丈夫?無理なら断っても大丈夫なんだよ?」
「大丈夫だよ、花陽。花陽のことは僕が絶対に守る。そのために僕はこの力を持っているんだ。だから安心して」
「っ!・・・うんっ!」
「青春ね」
「青春にゃ~!」
「あ、あれ?デジャブ!?」
真姫と凛は同じタイミングで手元のお茶をぐいっと飲みそれを机に置く。
絵里が一つ咳払いをして最終的な決断を全員に解いた。
「それじゃ、東京スカイツリーでのミニライブの件。出演する方向で皆良いわね?・・・海未?」
「はっ!な、なんですか絵里?」
「一応、他の皆は開催することで一致したけど、海未は大丈夫?」
「え、えぇ・・・私も・・その・・・」
「大丈夫だって海未!何事も最初は緊張するもんだ!俺もいるからさ!」
「紘汰は踊ったり歌わないでしょう!それに・・・何回かライブを行ってきましたけど・・やはり緊張します」
「緊張するのは当たり前。海未だって踊ったり歌ったりするの好きだろ?それにまだ時間はあるんだ。精一杯練習して胸張って歌って踊ろうぜ!」
「はい・・・わかりました。ちゃんと紘汰も練習付き合ってくださいね?絵里、是非とも参加する方向で進めてください!」
「わかったわ。それじゃあ正式にミニライブを開催するという方向性で話を進めていくわ!とりあえず運営局に電話してくるから皆は先に練習していてくれる?」
「うちとえりちもすぐ戻ってくるから待ってなくもええよ?それに、秋葉原のライブも明日あるんやからね!」
そう言い残し絵里と希は部室を後にした。全員が着替え始めるので男子である紘汰と光実も部室をあとにし、練習場所である屋上へと向かった。
・・・
「1、2、1、2。ことり!少しそこの動きが早いです!凛!もっと周りをみてください!」
「はいっ!」
「にゃ!」
−−−屋上。9人は練習着に着替え次の日のライブに備え振り付けの猛練習を行っていた。海未が前に立ちテンポよく手拍子を叩き全員の動きに不備がないか再確認を行っている。紘汰と光実は赤が主体の学校指定のジャージに着替えて9人の為にスポーツドリンクやお茶を紙コップに注いでいた。
「ほんと、俺達ってマネージャーみたいだな、ミッチ」
「なんか真逆ですけどね、僕達」
「しっかし、今日も良い天気だな~。もう少しで夏だな」
「そうですね。穂乃果さん達がμ'sを立ち上げてはや3ヶ月、花陽と凛と真姫が入ってにこさん、最後に絵里さんと希さんが入ってようやくここまできたって感じですかね」
「最初はどうなることかと思ったけど、少しずつライブを開いて地道に努力してきたおかげでもしかしたら廃校危機は無くなるかもしれないし、順調だな!」
「欲を言えばここらでどんと大きなイベントに出演して名前をもっと広げることができれば解決なんですけどね」
そんな時、休憩になったのかへとへとになった穂乃果と凛がすぐさまこちらへと近寄ってきた。
「うへ~、今日もハードだよぉ~」
「疲れたにゃ~・・・ミッチ、飲み物ちょうだい~」
「お疲れ様、凛」
「どうだ?絵里。明日のライブには間に合いそうか?」
「そうね。ところどころボロがあるけど大丈夫よ」
「明日歌うのってたしか、9人が最初にライブした時のだったよな?」
「えぇ、そうよ」
皆が談笑をしているところ、真姫は一人でスマートフォンを弄っていた。それを見たにこはそっと彼女がバレないように後ろに近づき、スマートフォンの画面を覗き込む。するとそこに映っていたのは−−−
「ライダーバトル?」
「え゛ぇっ!ちょっとにこちゃん!勝手にみないで!」
「勝手に見たのは悪かったわよ。けどなんであんたがそんな動画見てるのよ?」
「別にライダーバトルには興味ないわ。けど最近、頻繁に他のスクールアイドルのライブ中にライダーバトルを仕掛けることでこの人達有名なのよ。明日、大丈夫かしら」
「たしか、インヴィットっていうスクールアイドルだったわね」
「そしてそのインヴィットのビートライダーズの一人が策士、城乃内秀保さんですっ!」
「「っ!!?は、花陽!!?」」
にこと真姫は息ピッタリ、同時に驚いた。何故なら自分達のすぐ真後ろにスクールアイドルの事になると性格が一変して変わることで有名な花陽が普段からは想像できないような野獣の眼光で迫っていたからだ。
「『インヴィット』は私立シャルモン学園で活動するスクールアイドルグループです!3人編成で数年前からメンバーが変わり続けながらも常にランキングでは上位に君臨し続けています!特に最近有名なのがビートライダーズの城乃内さんがインヴィットのマネジメントを完璧にこなし、いざとなればアーマードライダー・グリドンに変身し鎮静を図る、さらにさらについこの前の出来事で・・・」
「あ~はいはい。わかったから落ち着いて、花陽」
「えぇっ!ここからが良いところなのに真姫ちゃんっ!」
「とりあえず、その城乃内ってやつに注意なのは間違いないわね。明日の秋葉原のライブ、絶対に成功させてみせるんだから!」
・・・
練習が終了後、明日のライブに備えて全員身体を休めるように解散することとした。紘汰は穂乃果、ことり、海未の3人と一緒に帰路を共にしていた。ちなみに光実は花陽と真姫と凛、一年生組は勉強会を開くらしい。まぁ凛はただの付き添いなのだろうが。
「いや~ついに明日はライブだねっ!皆頑張ろうねっ!穂乃果頑張っちゃうよっ!」
「うんっ!明日は絶対成功させようね!穂乃果ちゃんっ!」
「海未は今日帰ったらなにするんだ?」
「今日は帰ってから今日学んだことを復習して明日に備えて寝ます」
「ほんと海未は真面目だな~。夜遊びとかしたことないだろ?」
「夜遊び?夜遊びとはもしかして枕投げとか女子トークとかそのような類のものですか?それであれば穂乃果とことりと沢山夜遊びしていますよ!」
「いや違うけどさっ、ま、まぁいいや。おっと、俺こっちだから、また明日な!」
「明日朝10時現地集合ですよ?忘れないでくださいね」
「わかった!じゃあな、皆!」
「また明日ね~!紘汰くんっ!」
「明日は土曜日だから間違って学校に登校しないでね~!」
紘汰は大きく手を振って走って帰っていった。それを見た海未は自然と笑顔になっていた。
紘汰と海未はお互い物心が着く前、穂乃果とことりと知り合う前からの幼馴染である。
もともと家が近かったため、暇さえ合えばしょっちゅう二人でおままごと等して遊んでいたのだ。血は繋がっていなくてもそれを超えた友情の絆で二人は繋がっているのだ。
年月が経つに連れて紘汰はたくましく、海未は日本舞踊の家柄の名も恥ない程の美しい女性へと成長していったが関係は崩れることなく、小、中、高と親友である穂乃果とことりと一緒に過ごしてきたのであった。
と、海未の頭の中で良い感じで今までの回想をしていたのだが、
−−−後ろから嫌なオーラが漂ってきたので結果的にまた自然と顔を曇らせていくこととなった。
「あの・・・何か」
「海未ちゃんってさ~、紘汰くんとほんっと仲良いよねぇ~」
「まさかまさかまさかだけどぉ~、海未ちゃぁ~ん!幼馴染の二人は既にもしかして・・・」
「それはありえません、紘汰なんてお断りです。私が尊敬している殿方は上杉謙信だけです」
「う、上杉・・・て、誰だっけことりちゃん?日本の総理大臣?」
「さすが海未ちゃん・・・ぶれないね」
・・・
−−−翌日、青空の下の秋葉原駅前でスタッフ一同が着々とライブの準備を行っていた。今回のライブはμ'sの他にも近隣の学校のスクールアイドル達と一緒にライブを行うイベントでもある。毎年行われている有名なイベントでもあるので今回初参戦するμ'sにとって、今後の活動すら左右されるほどの重要なイベントでもあるのだ。
ステージ裏のテント内で既に9人は衣装に着替え最後の打ち合わせを行っていた。運が良いのか悪いのか、μ'sは今回のイベントのトップバッターだった。
「さて皆、準備は良い?」
「本番まであと10分切ってるけど、焦らんようにな」
「さっすが三年生!全然緊張してないんだねっ!」
「にこちゃんとは大違いにゃ~!」
「ちょっとあんた馬鹿にしてるの!?このにこにーが緊張するわけなんてないじゃない!にこっ!」
「にこちゃん足震えているのバレバレよ」
「うるさい真姫ちゃんっ!」
「どうしたの?花陽」
「ううん、ちょっとだけ、その、緊張しちゃって・・・」
「大丈夫。今日まで沢山練習してきたからきっと成功するよ。失敗を想像しちゃだめだ、成功する自分を想像するんだ」
「・・・うん!ありがとう、光実くんっ!」
「海未ちゃ~ん?大丈夫~?」
「はっ!へ、ど、なんですかことりっ!?」
「おい海未、まさかまだ緊張してんのか?」
各々が様々な思いの中、やや一人群を抜いて動揺を隠しきれていない少女がいた。パイプ椅子に座っているが足が震えておりやたらと水を何度も飲んでいる。
「もうここまできたらぶっつけ本番だ!当たって砕けろ!」
「ぶっつけじゃありません!ちゃんと練習してきました!」
「じゃ、じゃあ大丈夫なんじゃあ・・・」
「とにかく!海未なら大丈夫だ!ちゃんとステージ脇から見ているから!」
「ほ、・・・本当です、か?」
・・・と、よほど緊張しているのか普段では想像がつかないほど弱々しい返答が帰ってきたのでさすがの紘汰もやや対応に困ってしまった。
彼女はやればできる子のなのだがおそらくμ'sの中で一番自信を持つのが苦手な子なのだ。
「なんなら、俺が踊ってやるか?これでもダンスは得意なほうなんだぜ?」
「あれ?紘汰くんってダンスできたっけ?」
「だ、駄目です!ここは私達のステージなんです!紘汰は私達のサポートをしていれば良いんです!も、もちろん大切な仲間としてですが!」
「なら胸張って行ってこいよ。失敗したら次は成功させれば良い。成功したら精一杯喜べば良い!海未ならきっとできる!」
「っ!こ、紘汰・・・」
その時、ステージから司会進行の開会宣言がテントの中へと聞こえてきた。イベントが始まったのだ。
−μ's の皆さん!スタンバイお願いします!−
係員がテントに入ってきてスタンバイの合図が降りる。−−−いよいよだ。
「皆、ここまで精一杯練習してきたんだから、絶対成功させて、最高のライブにしようっ!」
「穂乃果、円陣組もうぜ!」
「あ、それいいね!」
紘汰の案で皆がお互いの肩に手を添え綺麗な円陣を組む。
ここからが、11人の晴れ舞台の始まりだ。
色々な思いを乗せ、羽ばたく準備が出来た−−−。
「皆、いくよ!」
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11!
μ's!
ミュージック、スタート!!
−−−9人がステージの上に立つ。
それと同時に不安そうに影で見守る二人。
観客席からは大きな声援。
そして一瞬の静寂−−−。
今、μ'sのライブが始まる−−−!!
『ちょっと待ちなさい!!』
「え?」
「っ!紘汰さん!もしかして!!」
それは、突然の出来事だった。
ライブが始まる直前、舞台の反対側からの大声によって止められてしまったのだ。
何事かと紘汰と光実はステージ上に立つ。
そこには−−−。
「せっかくで悪いけど、このステージは私達インヴィットのステージにさせていただく!」
「μ'sの皆さんはお引き取り願います」
「どうしてもどかないと言うなら・・・城乃内くん?」
「そういうわけだμ'sの皆さん。もちろん、この状況わかっているよね?あれ、もしかして初めてなのかな?」
「な、なんだあいつ!」
「気を付けてください紘汰さん!あの人たちはスクールアイドル『インヴィット』です!」
μ'sの目の前に現れたのは、私立シャルモン学園のスクールアイドル『インヴィット』だった。インヴィットのリーダー、男勝りな口調で海実と同じぐらいの黒髪の女性「志賀仁美」
前髪パッツンでまるで人形のような女性「黒羽咲良」
金髪サイドテールのやや強気な口調のつり目の女性「鳥居歩美」
そして彼女達のビートライダーズであるメガネが特徴的な「城乃内秀保」の4人だった。
「えぇっ!ちょっとちょっと!まだ私達のライブ終わってないよ!順番は守らないと穂乃果怒っちゃうよ!?」
「穂乃果ちゃん~っ!これってそういう状況じゃないよ~っ!」
「エリチ、これって・・・」
「宣戦布告、ね。・・・まさかこのタイミングでライダーバトルを申し出るなんて」
「ちょっとあなたたち!今は私達のライブなの!はやく出てってちょうだい!」
「真姫ちゃん!なに相手に喧嘩売るようなこと言ってるの!」
「ふ~ん、なるほど。確か君、西木野真姫だったっけ?その発言は僕達の挑戦に答えるという意味で良いんだね?」
「え゛ぇっ、わ、私は別に!」
「残念だけど、君達が僕達に立ち向かうという発言によってこれでライダーバトルが可能ということになったわけだ」
「っ!!ちょ、ちょっと待って!」
「待たないよ。さあ、君達のビートライダーズは一体どこだい?」
「俺達はここだっ!!」
大きな掛け声と共に紘汰と光実は城乃内の元へとやってくる。城乃内はにやりと笑い懐から戦極ドライバーとドングリロックシードを取り出す。
それをみた観客はライダーバトルが始まるのかとライブ前とはまた違った声援がステージへと送られていた。
スタッフ達はやや不安気だったが、この街では「よくあること」なので彼女達に全てを任せることにした。
「・・・紘汰ぁ・・・」
「っ、どうした、真姫」
紘汰の後ろから弱々しい真姫の声が聞こえたので振り向くと目頭に涙を浮かべ唇を噛み締め今にも泣き出しそうな真姫の姿があった。おそらく彼女の失言でこのような状況になってしまったと自分で後悔をしていたのだろう。
「・・・っ!大丈夫だ!気にすんな!!海未!」
「あ、はい!なんですか?」
「真姫を頼む。あと、絶対に俺達は勝つから安心しろ!ライブは絶対に開いてやる!」
「・・・わかりました。絶対に勝ってくださいね?」
お互い微笑んだ後、再び紘汰は城乃内を睨み返す。
せっかくここまで頑張ってきたのに、全てを壊した彼女達にあまり良い思いはしない。
ライダーバトル・・・たしかに巷では人気だがやっぱりやられたら全然楽しくない!
こんなやり方、絶対間違ってる!!
「たしか、君達はライダーバトルが初めてだったんじゃないかな?まともに戦えるのかな?一応ライダーバトルにもちゃんとルールがあってね?一回のライダーバトルで戦えるライダーは2人までなんだ」
「それぐらい知っている。それより、僕達のステージをめちゃくちゃにして、わかっているね?」
「スクールアイドル、インヴィットっ!!絶対に許さねえ!!いくぜミッチ!!」
「はい、紘汰さん!!」
紘汰と光実は同時に腰に戦極ドライバーを装着する!
言葉使いから二人は相当頭に来ているようだ。
ライダーバトルというのは今回が初めてだ。
μ's、インヴィット、裏方で待機している他のスクールアイドル達、スタッフ一同、そして今回のライブに駆けつけた観客たち−−−。
会場中が静まり帰り、誰もが息を飲んだ。
(大丈夫。僕ならできる。僕の力ならみんなを守れるっ!!いける!!)
「へんし−−−」
「・・・あれ?」
光実の動きが途中で止まる。理由は紘汰があまりにも不自然だったからだ。
服をまさぐり何かを探しているみたいだ。
−−−なにか様子がおかしい。
「紘汰さん?なにしてるんです!はやくマツボックリロックシードを!」
「いやっそのそれが・・・あれ、あれ!あれぇぇぇぇっ!!?」
「・・・・紘汰、くん?」
「紘汰・・・・はっ!!まさか、あなた!!?」
μ's、インヴィット、裏方で待機している他のスクールアイドル達、スタッフ一同、そして今回のライブに駆けつけた観客たち、会場中が、また別の意味で息を呑む−−−。
「・・・ごめん、皆。ロックシード、部室に忘れてきた」
「紘汰ぁぁァァァァァァァァァッッ!!!!」
−−−え゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!?−−−
会場中が一斉に大声で驚く!!
瞬間、海未が鬼のような形相で一気に紘汰へと問い詰める!
城乃内のメガネがずれ落ち、インヴィットの3人の目が点となった。
「あなたは一体何をやっているんです!!普段から何度も何度も何度もベルトとロックシードは常に持ち歩けと言っているのに!!なんでこんな大事な時に忘れてくるのですか!!最低です!!あなたは本当に愚かです!!」
「わ、悪い!!本当に今回ばかりは本っ当に悪かった!!」
「いいえ!!今度という今度は絶対に許しません!!絶対にです!!絶対に絶対に絶対に絶対に絶ぇぇぇぇッ対に許しませんッ!!」
「落ち着いてっ!落ち着いてよ海未ちゃ~んっ!!ど~ど~ど~・・・」
「穂乃果ちゃんっ!それ馬さんにするのだよぉ~っ!」
「こ、紘汰ッ!」
「な、なんだ絵里!!」
「とりあえず今すぐ取りに帰りなさい!!あぁもう!いろんな意味でめちゃくちゃよぉ~・・・」
「まぁまぁ絵里ちゃん!お陰でみんなの緊張もだいぶほぐれたみたいだし!結果オーライだよね?」
「穂乃果ぁ、あなたまで・・・」
「とりあえず、こっちには光実くんいるし、結局一対一でのライダーバトルってことでええんか?インヴィットのリーダーさん」
「ま、まあルールは最高2人までの参戦だ。別にこちらは変わらない。・・・と、いうか状況は何一つ変わってないんだがな・・・こんな緊張感のない戦いは始めてだ」
「とりあえず俺!学校戻ってロックシードとってくるわ!!それまでミッチ!頼んだ!」
「は、はぁ・・・」
「穂乃果!あと頼んだぞ!!」
「うん!任せて紘汰くん!」
「一体何を任されたの?穂乃果ちゃ~ん・・・」
「どう?ちょっとは落ち着いた?真希ちゃん」
「うん、ありがとうにこちゃん…ぐすッ…ほんっと紘汰・・・意味わかんないっ・・・」
紘汰は大急ぎで会場を後にし駅の中へと入って行く。
城乃内は一つ咳払いをし、再びその場に残されたビートライダーズである光実へと問いかけた。
「いいのかい?戦力が減ってしまったよ。それともあの男は戦力になるのか?」
「勘違いしないでくれないかな。城乃内さん」
光実が再びロックシードを構える!
「紘汰さんは僕の何倍も強い人だ。でも紘汰さんが帰ってくるその前に・・」
『ブドウ!!』
「僕が終わらせる!変身!!」
瞬間、光実の頭上に大きなチャックが出現しそれが開かれる。
中はヘルヘイムの森と繋がっており、通称クラックと呼ばれる。そのクラックからロックシードから生成された葡萄の形をしたヘルヘイムの実がゆっくりと頭上へ降りてくる!
光実は両腕で大きく弧を描いた後右腕を前に突き出しロックシードをドライバーに装着―――
『ロックオン!』
電子音声と共に会場中にドライバーから発せられる二胡による変身待機音が響き最後に光実はロックシードを切るようにドライバーのカッティングブレードを下ろす!!
『ブドウアームズ!龍・砲!ハッハッハッ!!』
頭上のヘルヘイムの実が一気に光実の頭に落ち、その瞬間光実の身体へ果汁が飛び散り緑色のスーツを形成、果実が少しずつ展開し「アーマー」へと変形した。
「光実くん・・・がんばって」
「・・・?かよちん、なんか言ったかにゃ?」
「僕が、皆を守ります!!」
光実はアーマードライダー・龍玄に変身し、右手に専用武器であるブドウ龍砲を構える。しかし城乃内は予想通りとでも言いたそうにメガネをクイッと上げた。
「データ通り、ランクAのブドウロックシードを持つアーマードライダー・龍玄か。ということはもう一人がランクCのマツボックリロックシードを持つライダーか。君を叩けばあとは大したことなさそうだね。さて、今度はこちらの番だ」
『ドングリ!!』
城乃内が右手にロックシードを持ち同時に再びクラックが出現し今度は中からドングリの形を催したヘルヘイムの実が頭上に出現、先程と同じように戦極ドライバーにロックシードを装着しカッティングブレードを振り下ろす!
『ドングリアームズ!ネバーギ~ブア~ップ!!』
城乃内はアーマードライダー・グリドンへと変身、専用武器のドンカチを構える!
「さて、初心者の君にライダーバトルというものを教えてあげよう!」
「皆!下がってください!」
光実の掛け声とともに全員舞台後ろへと避難、戦極ドライバーから形成されたリングが二人のアーマードライダーの周りに形成された。いよいよライダーバトルの勃発だ!
『バトル・スタート!!』
「いくぞドングリ!!はぁッ!!」
「グリドンだってのッ!!…なッ!!?」
龍玄はブドウ龍砲を乱発させ一気にグリドンとの間合いを詰める!!まさかいきなり突撃してくるとは考えていなかったのかグリドンはやや焦り気味に攻撃を避けていた。
「あ、あれ?おかしいなッ!こいつ!戦い慣れしてる!!」
「悪かったね!これでも一応普段から兄さんの稽古受けているからねッ!はッ!!」
まるでカンフーのような龍玄の乱舞がグリドンへと直撃する、最初の威勢は一体なんだったのかと会場中思わせるほど龍玄が勝っていたのだ。
−いいぞアーマードライダー・龍玄!!−
−まさか初戦から完全勝利か?−
−おいおいグリドン!いつもの威勢は一体どうした!?−
「う゛~、絵里ちゃん、なんかさっきより盛り上がってない~?」
「仕方ないわよ穂乃果。こういうライブでのバトル目当てで来ている人達もいるってことよ」
「う~ん、おかしいなぁ・・・」
「どうしたの?かよちん」
「えっとね・・・最近知ったんだけど、インヴィットにはビートライダーズが二人になったって聞いたんだ」
「えぇ~?でもあそこにはあの城乃内って人しか戦ってないにゃ!」
「うん、だから私も最初から気になってたんだ。『もう一人』は一体何してるんだろうって」
戦闘開始からおよそ5分、戦況は穂乃果達μ'sが圧倒的に有利だった。グリドンは予想外の出来事だったのか、または完全に初心者でもある相手のビートライダーズを舐めていたのか、それともロックシードのランクの差なのか、龍玄に致命傷どころか傷一つつけられないまま追い詰められていたのだ。
「城之内くん何やってるの!はやく決めなさい!」
「わ、わかっている!!あ、あぁもう!どういうことだ?遠距離型はこんな接近戦には向いていないはずなのに!!」
「向いていないからこそ、その弱点を補うため今日まで鍛えてきたんだ。残念ながら君は僕達を完全に舐めていたみただね。はっ!!」
龍玄の回し蹴りが華麗にグリドンに決まりそれに追い打ちをかけるようにブドウ龍砲を4、5発放つ!
大きな爆音を立ててグリドンはネットへと吹き飛ばされ同時に観客側から大きな歓声が起きた。
「…だからあれほど相手を舐めるなといったのに、・・・初瀬くん?」
「仕方ねぇなぁ・・・」
志賀仁美は顔を曇らせステージ下の男性に一言声をかける。黒髪のオールバックがよく似合うその人物は軽く舌打ちをして懐から戦極ドライバーを取り出したのだ。
ステージ上のリング内でグリドンはほぼ沈黙、龍玄は勝利を確信したのか恐る恐るぐったりと尻餅を着いて座っているグリドンへ一歩ずつ近づいた。
「終わりだね、城乃内。これ以上抵抗するというのなら」
『ブドウスカッシュ!』
「容赦は、しない」
龍玄は戦極ドライバーのカッティングブレードを一回振り下ろしブドウ龍砲をグリドンに向ける。
戦況は完全に劣勢なグリドンなのだが、少し様子がおかしかった。
肩をしゃくりあげて不気味な笑い声が次第に聞こえてくる−−−。
「クックック・・・」
「っ!な、なにがおかしいんだ!」
「やっぱり、素人だね、君・・・いつも、『一対一の正攻法』の戦いばかり鍛えていたんじゃない?」
「えっ・・・」
−光実くんっ!あぶない!!−
ふと、龍玄の後ろから花陽の大きな声が聞こえた。
その時、一瞬視界が暗くなる−−−目の前に黒い何かが現れたからだ。
龍玄はとっさに構えるが時既に遅く、胸元に大きな衝撃を受けグリドンの元から大きく吹き飛ばれてしまった。
「な゛っ…っ!!」
地面に叩きつけられ、一瞬意識を失いかけるが頭を振り回しなんとか正気を保つ。
恐る恐る前を見る・・・そこには−−−
「全く、遅いよ初瀬ちゃん」
「ったく、こんな小僧相手になにやっているんだ、城乃内」
「も、もう一人・・・?」
龍玄の目の前にまるでグリドンを守るかのように黒いスーツ、そしてマツボックリのようなアーマーを身にまとったライダーが立っていた。
相手側のアーマードライダーがもう一人存在したのだ。
インヴィット側のもう一人のアーマードライダー・黒影である。
「ずるだよ!!今まで隠しておくなんてずるいにゃ!」
「せやけど、一回のライダーバトルで戦えるのは2人まで、一応オッケーなんよ。ずるじゃないにしてもこのタイミングで出てくるなんていくらんでも卑怯や」
「大丈夫かな光実くん、さっきの攻撃は直撃だったみたいだけど」
「穂乃果ちゃん・・・・。頑張って、光実くん・・・っ!」
黒影は専用武器の影松を振り回し、矛先を龍玄へと向ける。
龍玄はダメージがまだ残っているのか胸元を抑えながら反対の手でブドウ龍砲を構えなんとかその場に立った。
1対2、形勢が逆転、こちらが不利になった瞬間であった。
「さて、さっきまでの威勢は俺にも見せてくれるんだよな?龍玄」
「初瀬ちゃん、あんまいじめちゃだめだよ?相手は初心者なんだから」
「さっきまで一方的に押されていた奴がなにいってんだか。まぁいい、行くぞ城乃内」
「くっ…で、でも、ここで負けられない…っ!!」
・・・
「あぁもうっ!!電車まだかっ!!?」
光実が戦闘中の真っ只中、紘汰は駅のホーム内で足止めをくらっていた。
乗降口でずっと足踏みをしているのだが良くも悪くも電車は時間通りにしか来ないのでしょうがないのだが・・・ちなみに次の電車がくるのは10分後である。走って学校に行った方が早かったのではないかと紘汰は少し後悔してしまった。
「くそっ!!せめてなんでも良いからロックシードさえあればなぁ!!今回ばかりは本当に悪いことしちまったなぁ・・・真姫の言う通りだ」
一番大事な時に自分は何もできなくて何がビートライダーズだ、と紘汰の中で色々な考えがとぐろまいていた。この日がいつか来ることは既に予想できていたというのに結局自分は何一つできていない。他のメンバーに偉そうにしていたくせに自分が情けなくてしょうがない。いつの間にか手を握り締め過ぎて軽く血がポツリと地面に落ちる。
「俺が・・・皆を守るって決めたのに…っ!!」
皆頑張ってるのに・・・
力になれない・・・
きっと皆呆れてる・・・
情けない・・・
自分一人だけ前に進めていない・・・
合わせる顔がない・・・・
俺には、ビートライダーズとしての資格が・・・
「どうしたの?君。さっきから浮かない顔しちゃってさ」
「えっ」
−−−その時、いつからそこにいたのだろうか、紘汰のすぐ後ろに帽子をかぶり胸元まで伸びた髪、おそよ20代前半ぐらいの女性がじっと紘汰を見つめ立っていた。
まるで自分の時間が止まったように周りの音が一切入らなくり静寂になる。周りの人達が視界に入らなくなる。
彼女の曇り一つない綺麗な瞳に吸い込まれるように紘汰の焦りが一瞬で消えた。
彼女の手には大きなケース、なにか機材でも入っているのだろうか?
よいしょと一声かけながらそのケースを下ろし、『まぁとりあえず座ろうよ』とホームにあるベンチに腰をかけた。
「あ、あぁ」
紘汰も挙動不審ながらも彼女の隣へと座る。
「で、どうしたの君。なんならお姉さんに言ってごらん。相談に乗るよ!」
「あ、いやまぁ。そんな・・・見ず知らずの人に・・・」
「もう紘汰くんらしくないなぁ~そんな気遣いいらないのに!」
「え、なんで俺の名前っ」
「ほら、その戦極ドライバーに名前シール貼ってるじゃない」
「あ」
紘汰は一瞬顔を赤らめ懐から飛び出していた戦極ドライバーを慌てて隠す。海未が無くさないように、と無理矢理貼られたシールである。シールには女の子らしい文字で『葛葉紘汰』と書かれていた。
「あ、もしかしてもしかして~、字体から察するに紘汰くんのガールフレンドが書いてくれたとか?」
「ち、違うって!海未とはそういう関係じゃないって!」
「ふぅ~ん。まぁ、きっとそういうことなんだね!まぁいいや!ちょっとはお姉さんとの警戒心ほぐれた?」
「あ、あぁ、そうだな」
−−−不思議な感じだ。
たった今、出会ったばかりなのに、この人をどこかで見たことがある・・・紘汰はそんな気がして仕方がなかった。
「姉さんもこれからどっか出かけるのか?」
「そうだね~。出かける、と言うよりは帰ってきた・・・というか、里帰りっていうか・・・へへっ!なんかお姉さんもよくわかんないっ!」
女性は舌を出して軽く微笑む。そしてまたどこか遠くの空を見つめる。その瞳はどこか寂しそうにも思える。
「姉さん、どうしたんだ?」
「っ!ううん、なんでもないよっ!ただちょっと懐かしいこと思い出しちゃって。そういえば紘汰くん、さっきまでなにか辛そうな表情していたけどさ、なにかあったの?もしよかったらお姉さんに話してほしいな。大丈夫、これでも結構人生経験積んでいるんだよ?」
「ま、まぁ話すぐらいならいっか・・・」
紘汰もまた、空を見上げる。
雲一つない晴天が広がっている−−−。
この青空を見上げていると先程までの怒り、焦り、そして罪悪感が次第に薄れていく。
何故だろうか?
この空を見ていると先程までの自分の色々な感情がちっぽけな気がしてしょうがない。
「俺、皆に迷惑かけたんだ」
「ふぅ~ん、どんな迷惑かけたの?」
「大事なもの、部室に忘れてきた」
「ふふっ!私も昔、よく大事なもの家に忘れたことあったな~」
「きっと皆、怒っている。いや、呆れている」
「ほんとうにそうかな?紘汰くんの友達ってそんな簡単に縁が切れる存在なのかな?」
「・・・いや、たぶん許してくれる」
「皆なら許すよ。きっとね」
「だよな?」
「だよね!」
なぜか、本当に自分があそこまで焦っていたのかわからなくなってきた。
とてつもなくちっぽけなことで悩んでいたのではないだろうか?
「大丈夫、紘汰くんの努力はきっと周りの皆に伝わってるよ」
「姉さん・・・」
「私も紘汰くんの力になれるとしたら・・・ねぇ紘汰くん。これ、使えるかな?もしかして今の君にはこれが必要なんじゃないかな?」
女性は懐からオレンジの形を催したロックシードを取り出す。
そのロックシードは随分使い古されたものなのかところどころ塗装が剥がれボロボロの状態だった。
「これ・・・っ!ロックシード!!」
「これね、私の大事なお守りなんだ。だけど、私はこれを使うことできないし、もっと必要としている人がいるんじゃないかってずっと肌身離さず持ち歩いているんだ。紘汰くん、よかったらこれ使ってよ!」
「使えるもなにも!そんな大事なもの受け取れねぇよ!!」
「うぅん、いつでも手放す心の準備はできていたから大丈夫。それにね、君にならこれを託しても良いって出会った瞬間思ったんだ!」
「いやいや!だからって!」
「いいの!私が決めたんだから!だからはいっ!これ使って!」
紘汰はほぼ強制的にオレンジロックシードを受け取る。流石に出会ったばかりの人にこんな高級な物受け取って申し訳ない気持ちでいっぱいだったが何故か彼女の顔には曇り一つない満面な笑顔だった。
「ほら、もう行かないと!きっとみんな紘汰くんを待っているよ!必要としているよ!」
「姉さん・・・」
「君はまだ、こんなところで立ち止まっていちゃ駄目。前に進んで!ほらっ!」
背中に衝撃が走る。彼女に背中を押されて自然とベンチから立ってしまった。
それと同時に紘汰の身体が一瞬ふわっと空に羽ばたいた感じがした−−−。
まるで、羽ばたくための翼を与えられたかのように・・・
「このロックシード・・・あの、姉さ−−−」
ベンチに振り返ると、既に女性は座っていなかった。
それどころか、急に自分の耳に人の声やら機械の音、電車のアナウンスが入ってくるものなので思わず辺りを見渡してしまう。
−−−いつもの秋葉原駅だ。
手にはさっきの女性からもらったロックシード。
−こんなところで立ち止まっていちゃ駄目。前に進んで!ほらっ!−
あの言葉が、頭のなかにずっと残る。
紘汰はロックシードを握る。
そして走る。
出口へ向かって、ステージに向かって、仲間達のもとへ!!
ここで、立ち止まってはいれない!!
進むんだ、前へ!!
・・・
「ぐあぁっ!!」
「光実くんっ!」
「ミッチ!」
いったい何度地面に叩きつけられたのだろうか−−−大きな音を立てて龍玄は倒れてしまった。思わず花陽と真姫は声を上げてしまう。
グリドンと黒影の息ピッタリのコンビネーションによる攻撃が龍玄を苦しめる。
龍玄のアーマーにところどころに痛々しい傷が増えていく、振りやまらない攻撃に息が次第に上がっていく−−−限界が近かった。
「はぁ…!はぁ…!かはっ…げほっ…ま、まだ」
「なんだ、まだ戦うっていうのかい?やめときなよ、君一人の力じゃ僕達には絶対勝てないよ」
「おいμ's!ライダーバトルのルールぐらいお前達も知っているよな?ビートライダーズじゃなくてもスクールアイドル側が降参の意思を見せればすぐにでもこの地獄から解放してよる!その変わり、このステージは俺達インヴィットのものだがなっ!!」
黒影の言葉を聞いて穂乃果達は黙ってしまう。
絵里はボロボロの龍玄を見つめる−−−彼はまだ戦うつもりだろうが見るからに限界を既に超えていた。彼には悪いがここから形勢逆転など99%ありえない。たとえ1%の希望である紘汰がここに辿り着いたとしても正直相手のチームの実力差は一目瞭然だ。
これ以上光実に辛い思いをさせたくない・・・一度目を閉じ、唇を震えさせながらゆっくりと前に出る。
「っ!エリチ!?」
「まさかあんたっ!!」
希とにこが絵里を止めようとする−−−が
「ごめ・・・ごめんなさい・・・っ!!」
目頭に涙を溜め込んだ絵里は大きな声を上げてリングの前に立つ。同時にインヴィットのリーダーである志賀仁美はにやりと口元を緩め勝利を確信した。
「絢瀬絵里、賢い判断だ」
「・・・。」
「絵里っ」
後ろから海未が心配そうに絵里を見つめている−−−。
それに応えるかのように絵里は一言だけ、彼女に伝えた。
「責任は全て私が取るわ」
そして、再び前へ向き、志賀仁美に対し、口を開いた。
「・・・します」
「聞こえない、もっと大きな声で!」
会場に再び静寂が訪れる。
この会場にいるスタッフ、そして他のスクールアイドル達の視線が絵里へと注がれた。
「だ、ダメですっ…まだ僕は……ぐっ」
「こいつ、まだ戦うつもりなのか?」
「落ち着いて初瀬ちゃん。たとえ降伏しなくても最後の一撃で変身を解除させて戦闘不能に持ち込めば僕達の勝利さ。どのみち、彼女達に道は一つしか残ってないんだよ」
心拍数が早くなる。
この一言で全てが終わってしまう。
今までの辛い練習も、今日の為に頑張ってきた想い出も、全て無に帰ってしまう。
「私達・・・私達μ'sは・・・こうさ――」
「降参しませんっ!!!!」
大きな声がびりびりと絵里の背中に響く。
今日で一番、大きな声だった。
マイクも使っていないというのに、大勢の観客全員にはっきりと聞こえていた。
その声は聞き覚えがある。
今までその声にどれだけ助けられたのだろうか。
根拠は一切ない。
だが何故か説得力はある。
絵里が振り返ると穂乃果が仁王立ち、さらには自信満々の笑みで立っていた。
「私達はまだ負けていませんっ!!まだ、戦い続けます!!」
「待ちなさい穂乃果!光実はもうボロボロなのよ!なのに、・・・なのに!これ以上光実に戦えなんて言えないわよ!!99%私達に勝目なんてないのよっ!!」
「大丈夫っ!まだ紘汰くんがいるよ!たとえ99%勝目が無くても、私はその残り1%に賭けるよっ!!だからインヴィットのリーダーさん!私達は降参しませんっ!!」
「穂乃果!!」
「安心して、絵里ちゃん」
穂乃果はゆっくりと震える絵里を抱き寄せる。
そして優しく頭を撫でてあげた。
「約束したから・・・紘汰くんとね。紘汰くんは私達を絶対に守るって約束してくれた。その代わり私は任されたんだ。このステージを絶対成功させるってね。諦めるの、まだ早いよ」
「ほの・・・か・・・」
「私達のステージはまだ終わってない・・・ううん、終わらせない!!だって私達の夢はまだ始まったばかりなんだからっ!!」
志賀仁美は次第に苛立ちが抑えられず拳を握り締める。
根拠の無いその自信に腹が立って仕方なったのだ。
「城之内くん!初瀬くん!さっさと決めて!!そして現実を見せてやれ!!」
「仁美・・・落ち着―――」
「落ち着いていられるわけないっ!!私は嫌いなんだよ・・・夢とか希望とか甘い考えを持っている奴が!!世の中結局実力なんだよ!!こうでもしないと私達は一生誰にも振り向いてくれないスクールアイドルのままなんだよっ!!」
我を忘れた志賀仁美に他の二人が抑えようとするが聞く耳も持たなかった。
グリドンと黒影はやれやれとお互い見つめ戦極ドライバーのカッティングブレードを下ろす。
『ドングリスカッシュ!』
『マツボックリスカッシュ!』
「初瀬ちゃん、僕らがリーダーのお怒りだ。さっさと決めるよ」
「あぁ。正直俺も退屈してきたところだ。相手には悪いがここでステージを降りてもらうぜ」
龍玄は立とうとするが既に膝すら上げられない状態である。そんな龍玄に無慈悲にもグリドンと黒影が迫る。
花陽が何度も光実の名前を叫ぶ−−−
ことりが涙を流しながら口元に手を添える−−−
真姫と凛は何も出来ず棒立ちになる−−−
希とにこは光実のもとへと走り始める−−−
絵里は目を大きく見開く−−−
穂乃果は真剣な眼差しで目の前の光景をじっと見つめる−−−
海未は両手を握り締め口を開いた−−−
「−−−紘汰・・・っ!!!!」
「ちょっとぉぉ待ったァァァァァァっ!!」
「うそっ!!?」
「ぐあっ!!」
海未はハっと顔を上げリングを見た。
そこにはアクロバティックに宙返りし大きな音を立てて着地する影が目に映った。
「・・・ふぅ。もうっ!遅すぎるよ!紘汰くんっ!!」
「悪い穂乃果、待たせちまった!」
紘汰だ。
紘汰が龍玄の前に着地しグリドンと黒影の間に割って入っていたのだ!
奇跡的にヘルヘイムの物質の特性上、体細胞には反発する仕組みなのでドンカチと影松は紘汰の身体からはじかれその衝撃で二人は吹き飛ばされてしまっていた。
「紘汰っ!もう、本当にあなたって人は・・・っ!」
海未は今、自分がどのような顔をしているのだろうか−−−そう頭の片隅に思ったのだがどうでもよくなっていた。きっと今、自分は微笑んでいるのだろう。
目の前にいる幼馴染が、約束を守って自分達を助けにきてくれたのだから。
「こ、紘汰・・・さん・・・」
「ミッチ、悪かった。もう大丈夫だ、あとは俺に任せておけ」
紘汰はボロボロの龍玄を起き上がらせてリングの外へと出してあげた。その瞬間、変身が解除されまた倒れそうになったが穂乃果と絵里が光実の身体を支える。
光実の身体に傷は一つもないが身体中に強烈な痺れが発生し立つことさえ困難な状態だった。
「ありがとう、ミッチくん。ミッチくんのお陰で穂乃果達はこうしてまだ立つことができているよ」
「光実・・・」
「絵里さん・・・安心してください。僕達の希望は・・・紘汰さんは・・・まだ残っています!」
「おいおい。せっかく苦労させず終わらせてやるつもりでいたのに、また振り出しに戻すつもりかい?・・・イテテ」
「まぁ雑魚がいくら増えたところでなにも変わらねぇ。さっさとかかってこい」
「ドングリ・・・と、俺と同じマツボックリか。だけど・・ミッチがここまで耐えてくれたんだ。絶対に負けねぇ!!」
起き上がったグリドンと黒影は紘汰目掛けて武器を構える。それに応えるかのように紘汰は懐から戦極ドライバーと先程の女性から受け取ったオレンジロックシードを取り出した。
「なにあのロックシード。始めてみるわ。紘汰ってあんなロックシード持ってた?凛」
「オレンジ・・・かにゃ?真姫ちゃん」
戦極ドライバーを腹部に装着し右手にオレンジロックシードを構える!
「穂乃果・・・ミッチ・・・本当にありがとう・・・・そして悪かった・・・俺にまだ、ビートライダーズとしての資格があるのなら!!
−−−変身っ!!」
『オレンジ!』
紘汰の頭上にクラックが出現しオレンジを催したアーマーが宙に現れる。
身体を左右に大きく振った後右腕を上にあげドライバーに装着−−−
『ロックオン!』
ほら貝が会場中に大きく響き紘汰は戦極ドライバーのカッティングブレードを下ろす!
『オレンジアームズ!花道・オンステージ!!』
直後、オレンジを催したアーマーが紘汰の頭上に降り果汁が飛び散るように紘太の身体に青色のスーツを生成、アーマーが変形し変身が完了−−−
アーマードライダー・鎧武
爆誕の瞬間であった!
「ここからは、俺のステージだ!!」
会場中から大きな歓声が上がる!!グリドンと黒影はあまりの出来事に後ずさりしてしまった。鎧武の左手に専用武器である大橙丸が装備され息をする暇もなく二人へと一気に距離を詰める!!戦いは既に始まったのだ!!
「え、ちょっとま−−−」
「セイハァァァッ!!」
大きなオレンジ色のオーラを大橙丸に纏わせてグリドンを一刀両断する!
あまりの衝撃にグリドンは耐え切れずリング外まで吹き飛ばされ大きな砂煙を上げた!
「城乃内くん!!」
志賀仁美はグリドンの元に駆け寄る・・・が、砂煙が晴れるとそこには既に変身が解除され白目を向いて倒れている城乃内の姿だった。
「ば、馬鹿な・・・ランクCとはいえ戦闘経験が十分な城乃内くんをたった一撃で・・だと?」
「や、野郎ぉぉッ!!」
休む暇なく今度は黒影が鎧武に先制攻撃を仕掛ける!影松を振り回し無防備な鎧武に一撃を入れようとするが−−−
「ふんッ!!はッ!!」
「な、なにいッ!!?グアァァッ!!」
鎧武はまるで後ろに目があるかのように左手の大橙丸で影松を防ぎ戦極ドライバーに装着されていた無双セイバーを右手で抜刀し振り返りざまに黒影に一太刀入れる!!
「すげぇ・・・今日初めて使ったのにめちゃくちゃ身体にしっくりくる・・・いける・・・このオレンジアームズなら・・・いける!!」
自分の失敗ならあとから取り返せば良い。
次につなげれば良い!!
いつでも自分を応援してくれる仲間たちが傍に居てくれるのだから!!
「これで決めるッ!!」
鎧武は無双セイバーと大橙丸を合体させ薙刀モードにし、戦極ドライバーからオレンジロックシードを外し無双セイバーに装着させる!
『ロックオン!一・十・百・千・万!』
「や、やめろ・・・待て!!」
「は、初瀬くんッ!!」
「ふッはぁッ!!」
鎧武は黒影目掛けて剣を振り衝撃波を放つ!その衝撃波は黒影に直撃しオレンジを催したオーラに包まれ指一本すら動かなくなってしまった!
「身体がッ動かねぇ!ッ!!?」
『オレンジ・チャージ!』
鎧武は黒影との距離を一気に縮める!!
「セイハァァァァァァァァッ!!!!」
剣が黒影に振りかざされる−−−−オレンジを催したオーラは同時に大爆発・・・
ライダーバトルが終了した合図でもあった−−−。
・・・
ステージ上で踊る少女たち。
何色もののネオンライトがステージ上を照らし観客側からは息のあった応援が響いてくる。
所々の動きは若干バラバラ、左右の動きがたまに合っていない、音程がややずれて不協和音になる・・・しかし、少女達に対し共通して言えることは、皆、笑顔だった。
そして踊りきった後、観客側から再び大きな歓声が鳴り響く。
μ'sのステージは成功した。無事、大きな第一歩を踏みしめたのだ。
真姫とにこは感動のあまり目頭に涙を浮かべお互い抱きしめ合い、希とことりはお互い手を繋ぎ一緒に飛び跳ね、凛と花陽は感動のあまり泣いてしまった。
「はぁっはぁっ・・・やったね、絵里ちゃん!ライブ、ちょっと失敗しちゃったけど、最後までやり遂げたね!」
「えぇ・・・ありがとう、穂乃果。本当にっ…ありがとうっ!!」
海未は一番最初にステージ脇へと移動し、普段では絶対にしないであろうピースを満面の笑みのおまけ付きでそこで見守っていた紘汰に向ける。
「やればできるじゃねぇか。海未!」
「えぇ!全部、紘汰と光実のお陰です!約束を守ってくれてありがとうございます!」
「いいえ、僕はなにもできませんでしたよ!ところで海未さん、そこはラブアローシュートではないんですか?」
「え゛ぇあ゛ぁっ!!し、しませんっ!!というか光実!何故それを知っているんですかっ!!」
と、二人が談笑している中、紘汰はテントを抜け今回のイベント会場の入口付近まで移動する。
そこには、力が抜けたようにベンチに座っていた志賀仁美の姿があった。
紘汰はなにも言わず隣に座り、学校からの差し入れで受け取った缶コーヒーを何も言わず差し出した。
「葛葉・・・とか言ったな・・・」
「あぁ、そうだけど?」
「教えてくれないか?」
「なにを?」
「あのスクールアイドル・・・μ's・・・全てのスキルにおいてはっきり言えば私達より完全に格下だ」
「おぉ、ほんとにはっきり言ったな」
「なのに・・・なんで」
「ん?」
紘汰はずっと下を向いていた志賀仁美の顔を除く。
すると2、3滴。地面に雫が落ちた。
「なんでμ'sは、私達よりあんなに楽しそうに踊って歌っているんだ・・・っ!」
その質問に紘汰は全く考えず、悩まず即答した。
その答えに志賀仁美は思わず紘汰に振り向いてしまった−−−。
「決まってんだろ!スクールアイドルが大好きだからだ!」
最後に紘汰はニカッと笑いじゃあなと言い残して今頃ボロボロでへばっているμ's達がいるテントへと戻っていった。
その時には既に、志賀仁美の心の中の闇は綺麗さっぱり晴れていた。
「スクールアイドルが・・・大好き・・・。ぷっ・・・あははっ!そういえば、私にもそんな時あったな・・・・また一から、頑張ってみるか・・・スクールアイドル!」
紘汰がテントに戻っている途中、その姿をじっとみつめている男性がいた。
全身真っ白でところどころワンポイントが入った清楚な制服、その真っ白な制服とは裏腹に非常に目つきが悪い。
−ねぇねぇあの人の制服、もしかしてUTXの?−
−おいおいUTXって言ったらA-RISEがいるあのUTXか!?−
男はふんっと鼻を鳴らして紘汰とは真逆な方向へと歩き始める。そして低い声で呟く−−−−
「夢…くだらない。この世で上に立つのはどの時代でも強者だ。弱者が強者に勝つことなど絶対にありえない。お前の考えは変わることはないのか?・・・葛葉」
男は不機嫌そうに会場を後にした・・・。
・・・
テントに入るとそこには予想通り、ぐったりとしていたμ'sが弱々しい声で“お疲れ~”と声を掛けてきた。そんな姿に紘汰は思わずくすりと笑ってしまう。
「むむっ!紘汰くん今ちょっと笑ったでしょ!?」
「悪ぃ悪ぃ穂乃果、ちょっとおっかしくてさ。お疲れって本当は俺が皆に言うべき言葉なんじゃねぇか?」
「紘汰も光実も私達μ'sの仲間です。言って当然でしょう?」
「そんな疲れきって青ざめた顔で言っても説得力ないですよ?海未さん」
「でも、私も海未ちゃんと考えは同じだよっ!光実くんっ!」
「大丈夫だよ、花陽。僕も皆と気持ちは一緒だよ」
「青春ね」
「青春にゃ~」
「青春やね!」
「青春にこっ!」
「何それっ!?もしかして最近それ流行っているのぉっ!!?」
「絵里ちゃぁ~ん、ファスナー壊れちゃった見たいで衣装脱げないよぉ~!たすけて~!!」
「花陽みたいなこといわないでよことり。それにまだ紘汰と光実がいるでしょ?」
「そうだったぁ~!ふえぇ~ん!!」
俺は、今日も母校である音ノ木坂学院の廃校の危機を守る為、スクールアイドルとなったこの9人と一緒に戦っている。そして成長していく。
俺達はまだまだ、スクールアイドルとして、ビートライダーズとして未熟だ。
だけどお互いの欠点を皆で補っていくことで俺達は少しずつ前へと進む。
だから頑張れるんだ!
俺は一人じゃない!
「紘汰くんっ!」
「おう、どうした穂乃果!」
「次のライブ!また頑張ろうねっ!ファイトだよ!」
「おう!ファイトだな!」
俺達のステージは、まだ始まったばかりだ!!
叶え、俺達の夢!
叶え、皆の夢!
鎧武!μ's ic S.T.A.R.T!!
・・・Next 『2』
前書きに書かせていただきましたがこのサイトの機能を把握しきれていないので今後多々修正が入ります。ご了承願います。第2話は6割近く完成していますが仕事が忙しくてなかなか執筆できない状態です。次の話の投稿までもうしばらくお待ちください。