仮面ライダー鎧武 Legacy −鎧武×μ's ic S.T.A.R.T!!−   作:ススム→

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お待たせしました。ようやく2話が完成しました。相変わらずの文章力で誤字脱字などがあれば指摘願います。


第2話 パティシエ教師はオネェ?ミスターデンジャラス!

ライダーバトル−−−ビートライダーズが戦極ドライバーでアーマードライダーに変身し己が守護するスクールアイドルのライブの権利を賭けて競う戦いだ。もちろんバトルと言っても安全面は保証済み、怪我はしないように設計されているが傷を負う代わりにダメージレベルにより身に纏うスーツより体細胞に麻痺を起こす電波を発生させる。蓄積されればされるほど身体に痺れが生じてまともに立つことすら困難になる。長時間正座をしていれば足に血液がまわらなくなり痺れが生じるだろう、これと似たようなものだ。一見単純そうだがこのライダーバトルにもルールが存在する。

1.ライダーバトルを申し込まれた場合、戦闘不能等の理由がない場合は断ることができず、強制的に対戦となる。

2.1度のライダーバトルで参戦できるビートライダーズは2人までとする。タッグでのバトルが基本となる。

3.ライダーが使用できるロックシードは3つまでとする。尚、ライダーバトル中に何度でもロックシードを変えることができる。

4.スクールアイドルはライダーバトル中に降参する権利がある。尚、ライダーも同様である。

5.ライダーバトルに負けた場合、どのような理由でもステージでのライブの権利を勝者に譲らなければならない。

6.ライダーのダメージが蓄積され安全装置により変身が解除された場合、そのライダーは再びリングに立つことはできない。スクールアイドル側のライダーが全員戦闘不能となった場合はその時点で敗北となる−−−

 

 

 

・・・

 

−−−音ノ木坂学院の屋上、初夏の風の匂いが鼻に入り自然と身体が心地よくなる。晴天の下で二人の男子学生が戦極ドライバーを装着し手にロックシードを用意する。それを見守るかのように9人の女子生徒が体育座りで自分らの周りに飲み物を用意して観戦していた。

「それじゃあ模擬戦いきますよ、紘汰さん」

『ブドウ!』

「おう!どっからでもかかってこい!ミッチ!」

『マツボックリ!』

紘汰と光実はロックシードを開錠し頭上にクラックを出現させ己のアーマーを出現させる。

二人は戦極ドライバーにロックシードを装着させカッティングブレードを下ろした!

『ブドウアームズ!龍・砲!ハッハッハッ!!』

『マツボックリアームズ!一撃・インザシャドウ!!』

光実はアーマードライダー・龍玄ブドウアームズ、紘汰はアーマードライダー・鎧武マツボックリアームズに変身し自分達の周りにリングを出現させる。

「あのインヴィットとのライダーバトルから一週間、東京スカイツリーでのライブまであと1週間!いよいよ折り返し地点だねっ!ことりちゃん!」

「うんっ!まだところどころ未完成だけど、この調子なら上手くいきそうだね!穂乃果ちゃん!」

「それにしても暑いわね~、真姫ちゃん、日焼けクリーム持ってる?にこのぷりち~な肌が悲鳴をあげているから使わせてほしいにこっ!」

「もう、にこちゃんまた忘れたの?これ高かったんだからあんまり多く使わないでよ?」

「にこちゃんは“ぷりち~”っていうよりどちらかと言うと“う~すらかげ”だにゃ!」

「意味わかんないよ凛ちゃんっ!」

「もう真姫ちゃんってばそんなこと言って~!どうせふつ~のより何十円か高いだけ−−−」

「それ、ブランドの特注品で一本5千円よ?」

「返します」

「え゛ぇっ!!?」

 

彼女達が他愛も無い話をする中、リング内の二人は専用の武器を構え模擬戦を行う。龍玄はブドウ龍砲を乱発させながら鎧武へと間合いを縮めるが鎧武は影松を巧みに使い銃弾を弾き間合いをそれ以上縮めまいと後方へバックステップを決めながら反撃のチャンスを伺う。

「くっ、また腕を上げたな!ミッチ!」

「紘汰さんこそ、低ランクのマツボックリロックシードでそこまでの性能を引き出すなんてっ!僕には到底追いつけませんよっ!」

鎧武は龍玄の一瞬の隙を付き影松を巧みに操り彼の利き手である右手を狙おうとする・・・が、龍玄はそれを許すことなく左手で影松を振り払い鎧武の左足に数発銃弾を当てる!鎧武はふらついてしまうが右足で龍玄の懐に蹴りを入れお互いダメージを負いながらもほぼ互角の戦いを繰り広げていた。

 

紘汰と光実のおかげでライダーバトルは奇跡の大逆転勝利、穂乃果達μ'sはライブが成功、あっというまに1週間の時が流れていた。トップバッターということも幸いしてなのか今までほぼ無名状態だったμ'sの知名度はぐんと大きく知れ渡ることとなりネット上でもその名を見ることが増えた為なのか全員のモチベーションが以前よりも増して上がり練習に活気が増えていた。音ノ木坂学院の屋上は広いため入口付近で穂乃果達がダンスの練習、その練習スペースの奥で紘汰と光実は模擬戦を行うのが日常である。今は穂乃果達が休憩時間のためこうして二人の模擬戦を観戦していたのだ。

 

「二人とも、あんまり模擬戦に熱を入れないでな?ダメージレベルは最小に設定しているけどいざという時にうちらを守れないと意味ないからなぁ」

「大丈夫だ希っ!!ふッ!へぁッ!!もうやめるから!!」

 

おっとりしたペースで話す希とは正反対に目の前ではとても手に汗握る戦いが繰り広げられている。模擬戦開始10分、鎧武はスタミナがまだ余っているのか余裕の表情で戦いながら言葉を返す−−−しかし、対戦相手の龍玄はずっと動き続けているのかあからさまに呼吸が乱れ始め、戦闘開始時のような軽快な動きからぎこちない動きへと変わっていた。

 

「はぁッはぁッ・・・流石紘汰さんだ・・・こんなに動いているのに呼吸が乱れないなんてッ…」

 

その時、一瞬の隙が出来た龍玄にできる、鎧武はそれを見逃さない−−−。

影松のリーチを利用し龍玄の右手に構えていたブドウ龍砲目掛けて突きを入れる!

「あっ」

ブドウ龍砲が地面に落ちそれを拾おうとした瞬間、首元に風が横切る−−−。気がつくとそこには鎧武の構えている影松が目の前にあった。

龍玄は軽くため息を一つ、ブドウロックシードを戦極ドライバーから外し変身を解除した。

 

「また僕の負けですね。降参です」

「でも模擬戦の回数が増えるに連れて俺も結構追い詰められる回数が増えてきたし、ミッチはすげぇな」

 

鎧武も戦極ドライバーからマツボックリロックシードを外し変身を解除する。紘汰は目の前の後輩の成長が嬉しいのかわしゃわしゃと頭を撫でた。

 

「くすぐったいですよ紘汰さん!次こそは絶対僕が勝ちますからね?」

「大丈夫だミッチ!俺との模擬戦の他に高虎先生とも稽古しているんだろ?先生なんて俺の比じゃないって!そのうちミッチが俺を超える時が来るから俺も海未に稽古入れてもらおうかな~」

「お断りです!ライダーバトルの為に園田流を紘汰に伝授するわけにはいけません!あ、でも茶道とか舞踊等の稽古は−−−」

「いや、そっちいいわ・・・柄じゃないし」

「何故です!紘汰は少しそういう稽古を学ぶことも必要です!戦いばかり学んでいては将来が心配でしょう!」

「だぁからっ!俺は別に海未みたいな家柄の子じゃねぇしっ!!必要ないだろっ!!」

・・・と、紘汰と海未の痴話喧嘩が始まったと同時に汗だくの光実に花陽と絵里がタオルとスポーツドリンクを差し入れる。光実はありがとうと微笑みタオルで汗を吹きスポーツドリンクを一口飲んだ。

 

「光実は紘汰と違って型に沿った美しい戦い方だけどスタミナ不足が問題ね。今度私達と一緒にランニングしてみる?」

「そうですね。龍玄だと短期決戦にはあまり向いていませんし、今僕に足りてないものとしたらやっぱりスタミナかな」

「花陽もμ'sの中で踊っているときいつも最後まで体力持たないから、一緒にがんばろうね、光実くん」

「どっちが先に目標を達成できるか競争だね、花陽」

「さて皆!私達もそろそろ練習再開するわよ!もう穂乃果ったら・・・また横になって寝てる・・・」

 

絵里の掛け声と同時にμ'sは立ち上がり再び練習を再開しようとする。穂乃果は日向が気持ちよかったのかいつの間にか大の字で横になり昼寝をしていた。絵里は注意するがなかなか起きないものなので穂乃果の名前を連呼することりの独特な声がずっと屋上で響きわたっていた−−−。

 

・・・

 

空は一面にオレンジ色、どこからともなくカラスの鳴き声が聞こえてくる−−−。

練習を終えたμ'sは解散し、紘汰を含む2年生組はいつもの帰り道を歩いていた。右と左には緑色の桜の木、風が吹きざわざわと音を立てていた。

「今日も練習大変だったね~!でもやっと今日で間奏のステップが綺麗に踊れるようになっちゃったなぁ!」

「でも穂乃果ちゃん練習中に寝ちゃ、めっ!だよぉ?穂乃果ちゃん一度寝ちゃったら全然起きてくれないんだもん」

「紘汰、明日の家庭科はエプロン必須ですからね?絶対に忘れないように今日のうちに用意しておいてくださいね?」

「言われなくても大丈夫だって。絶対用意するから」

「そういう人に限って忘れるものなんです!明日、私も余分に一つ持ってきますけど極力は自分の力で解決してくださいね?」

「俺、エプロン忘れるの前提なのかよ」

「穂乃果ちゃんも明日エプロン忘れないように今日のうちに用意しておいてね?」

「むふふ~!大丈夫!!今日の朝、雪穂に“ねぇちゃん絶対忘れるからこれ、今日持ってきな~”って言われてもう机の中に用意してきたよっ!」

「さ、さすが雪穂ちゃん・・・」

 

 

そんな話の中、反対方向から見覚えのある姿が紘汰の目に映った。

シワの見当たらないビシッと決まったスーツ、鋭い眼光、ややパーマのかかった黒髪、穂乃果達の担任教師、呉島高虎だった。手にはカバン、進行方向は音ノ木坂だったのでおそらくどこからの出張帰りらしい。

「お前達、今帰りか?」

「高虎先生じゃねぇか!あ、そういえば帰りのホームルームにいなかったけど、どっか行っていたのか?」

「丁度、明日の家庭科の調理実習の打ち合わせに行っていたところだ。明日はシャルモン学園の家庭科の教師が音ノ木坂に来てもらうからな。それに、まだ仕事が残っている。今日も光実の相手はしてあげられそうにないな」

「ん?シャルモン・・・海実ちゃん、どっかで聞いてような気がしない?」

「穂乃果・・・丁度一週間前にインヴィットと戦ったばかりじゃないですか」

「高虎先生はまだ帰らないんですか?」

「あぁ、今日も帰りが遅くなりそうだな。・・・どうした?南」

「う~ん・・・光実くんが最近高虎先生の帰りが遅くて心配してましたよぉ?たまには早く帰ってあげてはどうですか?」

「そうだな・・・。南の言う通り、最近理事長からも同じことを言われたな。明日辺り、残業しないで光実の相手をしてやるのも悪くないな」

−−−実は高虎は光実の兄でもある。

歳を若くして教師になり頭脳、身体能力、ルックスとも全てが常人離れしており学校内外問わず非常に評判の良い教師として有名なのだ。特に女子生徒からの評判が高く、ラブレター等が絶えないという噂だ。無論、高虎はあくまで一教師なので全てバッサリと断っているらしい。

「帰りが遅いといえば・・・南。お前も最近帰りが遅いみたいじゃないか。どこか寄り道でもしているのか?理事長が心配されていたぞ」

「えっ!あ、えと、その!・・・えっとぉ!衣装の材料探しに出たら時間が忘れちゃって~!えへへ~・・・」

「まぁ、スクールアイドルも良いがあまり親に迷惑をかけるのは良くないぞ?お前達も用事が終わったのならすぐ帰宅するんだ」

「あぁ!わかってるって高虎先生!それより光実のことも忘れるなよ?」

「もちろんだ。たったひとりの大事な弟だからな」

 

そう言い残し高虎はコツコツと革靴の足音を鳴らしクールに去っていった。ことりは動揺しているのかひたすら瞼を閉じたり開いたりと挙動不審、穂乃果と海実は頭にクエスチョンマークを出している。

その時、紘汰の制服のポケットからスマートフォンのバイブレーションが唸る。何事かと紘汰はディスプレイを覗き込む。姉の晶からの着信だった。

 

「どうしたの?姉ちゃん」

『ごめん紘汰!今日仕事長引きそうだからちょっと遅くなりそう!』

「あぁいいよ!コンビニ弁当で済ませるから」

『ごめんね!あ、もう会議の時間!じゃあまた!』

紘汰は一つため息をしてスマートフォンをポケットにしまった。紘汰は幼い頃に両親が他界してしまったので今は姉と二人で暮らしている。晶がまだ働いていなかった頃は同じ都内の、今住んでいるマンションのすぐ近くの親戚の家に居候させていたのだが晶が就職と同時にいつまでも頼っている訳にはいかない・・・と、二人で親戚の家を出て生活しているのだ。

「流石に今からおばさんにご飯食べに行くなんて言えないしなぁ~、適当に弁当でも買って凌ぐか」

「晶さん、今日も遅いの?紘汰くん」

「まあいつものことだ穂乃果。本当はバイトしたいぐらいなんだけど姉ちゃんがビートライダーズに任命されたならそっち優先しなさいっていうし、てか姉ちゃんからバイト禁止されてるし・・・」

「それでは私の家に来てはどうですか?」

 

と、突然の海未の爆弾発言。

 

「え?」

「私の家ではもうすでに夕食の準備が終わっている頃ですし、よろしければ紘汰も一緒にどうですか?コンビニの弁当では身体に毒ですし。もちろん、遠慮はいりませんよ」

 

(さ、さっすが海未ちゃん・・・と、いうか・・・穂乃果達、高虎先生から早く帰りなさいってたった今言われたばかりじゃ・・・)

(たぶん、海未ちゃんは自分が言っている意味が解ってないとおもうんだけどなぁ~・・・ことり、海未ちゃんが悪いことしないって信じてる!)

 

唐突に私の家に遊びに来ませんか発言に紘汰は珍しくたじろいてしまう。紘汰とて青春真っ盛りの高校生。いくら昔からの幼馴染としても異性の家に遊びに、ましてや両親と食事を取るのは抵抗感が出てしまう。

「い、いや確かに昔はよくご飯食べさせてもらったけど突然お邪魔するのは悪いって!」

「別に遠慮なんていらないんですよ?・・・あ、もしかして私が紘汰の勉強を見ることに不満があるというのですか?」

「いや違うけど!と、いうか何勝手に勉強すること前提になっているんだよ!今の会話でよく勉強しましょうなんて発想でてきたな!!」

 

(海未ちゃん、まさかの食事後の二人の時間作り!!?ほ、本当に無関心なの!!?穂乃果でもそれぐらいわかるよ!!?)

(ふぇぇ~んっ!!海未ちゃん同い年の男の子とふたりっきりで過ごすことに何の抵抗もないのぉ~!!?)

海未は目を輝かせながら紘汰に詰め寄る−−−。

紘汰の額から一筋の汗、穂乃果とことりはお互い手を合わせ心拍数がより一層早くなる・・・

「あの−−−」

「それとも・・・もう、昔みたいに・・・私と一緒に夕食を食べるのが、嫌なのですか?」

 

海未が悲しそうに目頭に涙を浮かべ声を震わせる−−−。

 

紘汰、落ちる。

そして、大きなため息一つ。

 

「・・・わかった、じゃあお邪魔するわ」

 

(あぁぁぁぁぁぁっ!!)

(ぴぃぃぃぃぃぃっ!!)

 

穂乃果、ことり。目の前のボーイミーツガールな出来事に頬を赤らめ大歓喜。

 

「わかりましたっ!じゃあ行きましょう紘汰!そして、穂乃果!ことり!」

 

「「「えっ」」」

 

 

 

・・・

 

紘汰達は海未の自宅にお邪魔する。目の前には大きな門、玄関までよく手入れされた木々が目に移りガラガラと音を立てて玄関を開ける。海未が只今帰りました、と一言。そのまま海未に連れられ紘汰達は家の廊下をひたすら歩いていく。小さい頃から何回も遊びにきてはいるのだが毎回この家には驚かせられる。例えるなら戦国時代の名の知れた武士の家のような作りだ。部屋は麩で区切られており廊下からは綺麗な庭園が広がっている。この家だけでどれほどの敷地を持ち合わせているのだろうか?小さい頃よく迷ったものだ。二人でかくれんぼをしたら本当にお互い見つかられなかった程なのだから尚更なのだろう。“ここです”と家族が食事をしている部屋に辿り着く。机には茶碗が6つ、焼き魚やほうれん草のおひたし等、栄養バランスが考えられた和食中心の夕食が広がっている。海未と海未の父と母と祖母、そして紘汰と穂乃果、丁度だった。

ことりは残念ながら“ちょっとバ・・・じゃなくて用事があって~っ!”ということで帰り際に別れ、穂乃果と紘汰が夕食を頂く形となってしまった。

「私は着替えてきますので、穂乃果と紘汰は先に席に着いていてください。父と母も準備が出来次第同席するみたいなので・・・」

と、言い残し海未は自分の部屋に行ってしまった。

 

「紘汰くん、なんだかどっと疲れたね・・・」

「あぁ・・・時折、海未が恐ろしく思えるときがあるんだ・・・」

 

よくよく考えればあんな純粋無垢な少女が、夜二人で一緒に過ごすなんてこと自分から言うはずがないと二人は馬鹿な考えをしたことを深く後悔してしまった。

穂乃果と紘汰はスクールバックを置き更に紘汰は愛用の戦極ドライバーとマツボックリロックシードと秋葉原駅であの不思議な女性から受け取ったオレンジロックシードを自分の座っている座布団の隣に置く。

「そういえば紘汰くんさぁ、そのオレンジのロックシードどこで手に入れたの?結構ボロボロだけど道に落っこちてたの?」

「いや、それが秋葉原駅で変わった姉ちゃんに貰っちゃったんだよなぁ~」

「えぇぇッ!!?ロックシード貰っちゃったのぉ!!?ロックシードなんてただでさえ何ヶ月分のお小遣いでようやく買えるものなのに!!」

「だからさぁ、今度会ったらちゃんと返そうと思ってよ。それにあの姉さんの大事なものって言ってたし尚更だな」

「大事なものを紘汰くんに渡しちゃうなんてもしかして意外にもドジっ子さんなのかな?そのお姉さん」

「穂乃果が言うなよ。でもやっぱ、返した方が良いよな」

そんな会話の中、着替えを終えた海未がお待たせしました、と一言。紘汰の隣に座る。普段の彼女の乱れ一つない制服姿とは対照的に意外にも上下ともピンクと白を主体としたパステルカラーでマシュマロみたいでモコモコとしたジェラートピケ姿だった。普段からライブ衣装は膝ギリギリと要望がうるさい彼女なのだが素足をここまで出して置いて何の抵抗も無いのだろうか?まぁ年頃の女の子が着てなんの問題もない格好なのだろうが。

「何です?」

「いや、意外にも海未ってそういう格好もするんだなって驚いてた」

「紘汰くん知らなかったの?穂乃果の家でお泊りするときは海未ちゃんよくこういう格好するんだよ!」

「いや、普通泊まらないからわかんねぇよ」

 

・・・

 

夕食を頂いた後、紘汰達は海未の部屋に移動し嫌々ながらも3人で勉強をしていた。海未の部屋はおよそ8畳程度で机、本棚、観葉植物等と必要最低限なものしか置かれていない。そこに彼女の趣味なのだろうか小さな可愛らしいぬいぐるみがところどころに置かれて目の保養になる。普段から布団を敷いて寝ているのだと思う人達も多いのだが以外にも彼女は和室ではやや浮いてしまうがシングルベッドで寝ているのだ。おそらく仲が良い自分達しか知らないだろう。ベッドの横にある棚には幼少期から現在に至るまでの彼女が写っている写真が飾られている。そのすぐとなりには穂乃果とことりが写っていた。最近の写真もあるみたいでμ'sの全員と紘汰と光実の集合写真が飾られている。

 

「う゛~・・・海未ちゃん疲れた」

「あともう1ページで今日の勉強した範囲はおしまいです。頑張ってください」

「ことりがいたらな~、今日用事あるって言ってたけど何やってるんだ?ここんところずっとだよな?」

「もう紘汰くんっ!女の子のプライベートを探っちゃ嫌われちゃうよ!」

「悪い悪い!・・・・ふぅ、こんなものか」

「紘汰、お疲れ様でした!穂乃果、紘汰はもう復習終わってしまいましたよ?」

「え゛ぇぇぇっ!早いよ紘汰くん!」

 

紘汰は座布団から立ち軽く背筋を伸ばす。先程から気になっていたのか紘汰は棚から写真が飾られているアルバムをを何気無い気持ちで手に取り見開いた。

壁に掛けているコルクボード上の写真の他にアルバムには多彩な写真がずらり−−−。

成長するのは早いものでつい最近まであんなに小さかった自分達がもう高校2年生、高校生活も折り返し地点にたどり着くまでもう少しだ。

「紘汰!な、なに勝手に見ているのですか!」

「うわっ」

何か見られたら恥ずかしい写真があったのだろうか、海未は顔を真っ赤にしながら紘汰から無理矢理アルバムを奪い、紘汰は残念そうにため息を吐いた。

だが次は穂乃果がアルバムに興味深々になり満面の笑みで海未に何度も見せてとお願いを始めてしまう。

 

「ま、まあ穂乃果なら」

「え、いいの!?やったやった!紘汰くんはお預けね~」

 

紘汰は渋々再び座布団に座り特にやることがなかったので机にあったルービックキューブを弄り始めた。ちなみに女子二人はアルバムに夢中である。会話から察するにアルバムの写真はどうやら穂乃果とことりと友達になった頃の時期のものらしい。無論、この時にはすでに紘汰と海未は出会っている。

「海未ちゃんちっちゃ~い!ことりちゃん可愛いっ!!」

「あんまりジロジロ見ないでください・・・恥ずかしいです」

海未は終始顔を赤らめ穂乃果は見る写真ごとに可愛いだのちっちゃいだのテンションが上がりっぱなしだった。

 

「おい、もう満足か?俺見れないんだからもうやめてくれよ。気になるだろ?」

「う~ん、こんなに穂乃果達写ってるのに紘汰くん見当たらないな~。あれ、この写真っ・・・」

「っ!!ほ、穂乃果!!それだけはいけませんっ!!」

「あ~思い出した!ちっちゃい頃ことりちゃん入れて3人でプールで水遊びしてたっけ!こうやって穂乃果達すっぽ−−−」

「う゛ぁ゛ぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「海未、とりあえず落ち着け」

 

 

・・・

 

「暗いですから気を付けて帰ってくださいね?紘汰、穂乃果を頼みましたよ?」

「あぁ!そのための俺達、ビートライダーズだ!」

「じゃあね!海未ちゃん!また明日学校でね!」

時刻は既に8時半、太陽は完全に沈み空には無数の星が輝いていた。紘汰は流石に無理だが海未は穂乃果に泊まっていかないかと誘ったが流石に穂乃果も申し訳無いと感じたのか誘いを断り、代わりに紘汰に自分の家まで送ってもらうということになった。紘汰はいつでも変身できるように戦極ドライバーを腰に装着した。

「じゃあな、海未。また明日」

「明日も遅刻しないよう、5分前行動を心がけてくださいね?紘汰」

 

園田家の家の門の前で海未と別れ、紘汰は穂乃果の実家で和菓子屋でもある「穂むら」に向かっていた。穂乃果の家と紘汰のマンションは正反対の場所にあるのだが流石に夜遅く一人で帰らせるわけにはいけないと紘汰は自ら提案をしたのだ。

 

「ごめんね、紘汰くん。家反対方向なのに」

「気にするな。帰りはジョギングして帰るからきっとすぐ着くぜ?」

「紘汰くんって穂乃果に負けないぐらいプラス思考だね!まぁおっちょこちょいなのは穂乃果の圧勝だけどねっ!」

「それ、自分で自分を傷つけてないか?穂乃果」

 

夜も遅い為か昼では若者や学生で溢れかえる通学路も今では酔いつぶれたサラリーマンや道路にはタクシーが縦横無尽に走っている。

 

「ねえねえ紘汰くんっ。μ'sができてしばらく経つけど、もう慣れた?」

「何言ってるんだ。穂乃果がスクールアイドルやろうって言い出した時からずっと一緒にいただろ」

「そうだけどさ~。でも紘汰くんがμ'sのビートライダーズになったのってミッチくんより後だったでしょ?本当はただ手伝ってくれるだけで穂乃果嬉しかったんだけど・・・ビートライダーズなんて責任重大な大役までやってもらって、なんか申し訳無い気持ちもあるんだ」

「まああの時はしょうがなかったしな。それにビートライダーズになって後悔したことなんてねぇよ。むしろ心のどこかで満足しているんだ。俺にも穂乃果や海未の力になれるってことがな」

「えへへっありがと!・・・今思えば私達ってずっと昔から変わらないよね~」

「そうだな。大体穂乃果が唐突に大胆な計画を企画して、海未とことりがそれに巻き込まれて・・・」

「そして紘汰くんが悪乗りしちゃって状況がもっと悪化しちゃうんだよねっ!」

 

今回のスクールアイドルだってそうだった。

春−−−丁度、新入生の入学式が終えた時にことりの母、理事長から伝えられた音ノ木坂の廃校宣言。自分達が卒業するまで学校は存続するが今年入ってきた新入生は一体どうなるのか・・・。それに、音ノ木坂はこれといって特徴が無いのが特徴なのだが、自分達の祖父、祖母の代から続いてきた伝統のある学校なのだ。そんな廃校を阻止するため穂乃果はなんとか次の年までに入学希望の学生を呼ぼうと考え、出した提案が近年、爆発的にブームのスクールアイドルであった。最初は誰もが反対、当時はまだ仲間ではなかった生徒会長、絢瀬絵里からも断固反対・・・絶望的だった。しかし、穂乃果は諦めなかった。歌、ダンスすらまともにしたことのない少女達の0からのスタート、最初のライブこそ観客は1人も居ないという最悪の状況だったが穂乃果、いや、海未とことりは諦めることなく、スクールアイドル活動を続けてきた。結果、今は仲間が沢山増え、まだまだ駆け出しだが名前も少しずつ広まってきた。

 

「ようやくここまで来たって感じだな」

「ううん、まだまだだよっ!」

「え?」

「まだ、廃校が無くなったって訳じゃないから、穂乃果達はまだ頑張らないとだよっ!だから絶対、来週のミニライブは成功させようね!私達μ'sだけのライブ!」

「あぁ!俺も応援する!ここまで付き合ってきたんだ、最後までやり遂げようぜ!」

 

そんな話の中、いつの間にか紘汰は穂乃果の実家にすぐ目の前にまでたどり着いていた。穂乃果は“ここまででいいよっ!男の子とふたりっきりで帰ってきたってお父さん知ったら怒られちゃうからっ!”・・・と、言い残し、大きく手を振りながら自分の家の中へと入っていった。そして玄関を開けるとき、穂乃果は紘汰に向かって大きな声で−−−

「また明日ねっ!」

隣近所に響き渡り、何事かと周りから玄関が開く音が聞こえてくる。

“なんだなんだ!?”

“この声、穂乃果ちゃんかい?”

「声でかいっての!!じゃあな!」

紘汰も手をふり、そそくさと穂むらから立ち去っていった・・・。

 

 

 

・・・

 

 

 

「海未」

「・・・。」

「悪い、今回ばかりは一生のお願い」

「一昨日も聞きました」

「頼む。高虎先生に怒られる」

「良い薬です」

「本ッッッ当に頼むっ!!エプロン貸してくれ!!」

 

−−−次の日、時刻は昼食時間。次の授業まで残り15分。紘汰は教室に響き渡る大声で海未に深く、それは深く頭を下げていた。周りの生徒は何事かと紘汰に視線が飛ぶ。その視線が背中に突き刺さり変な汗が次から次へと流れ続ける。

 

「ありゃりゃ~、紘汰くん、次の授業で使うエプロン忘れてきちゃったんだ」

「本当に、海未ちゃんの言う通りになっちゃったね。えへへ・・・。海未ちゃ~ん、紘汰くんかわいそうだよ?エプロン貸してあげたらどうかなぁ?」

 

海未の予想が的中、紘汰は見事にエプロンを忘れてきてしまったのであった。その時、教室のドアが開く。そこに立っていたのは高虎だった。

 

「南はいるか?・・・ん、どうした」

「げっ!高虎先生」

「葛葉、もしかしてお前・・・今日の調理実習で使うエプロンを−−−」

「そ、そんな訳ねえだろ!!ほ、ほらこのとおり!!」

「えっ?ちょ、ちょっと紘汰!」

 

紘汰は強引に海未からエプロンを奪い高虎に見せる・・・のだが、教室内の生徒はそのエプロンを見た瞬間、唖然としてしまうのであった。珍しく、高虎も同様だった。

 

「・・・葛葉。お前はずいぶんと可愛らしいエプロンを使うのだな」

「え?」

 

紘汰は自分で広げたエプロンを見る・・・それは、とても可愛らしい、デフォルメされた小動物のプリントが描かれた水色のエプロンだった。

 

「あ・・・ああ・・・・」

「はぁ~・・・紘汰・・・後戻りはできませんよ?」

 

 

その後、なんとかその場しのぎで高虎からの雷は回避できたが教室中の生徒からいらぬ誤解を受けた紘汰は自分の机に座りひたすらうなだれている。ことりは次の調理実習で必要なプリントのコピーを頼まれ、教室から出ていってしまった。

「まったく・・・仕方ないですね。私は予備でもってきたエプロンを使うとしましょう。紘汰はそのエプロンを使ってください」

「って!その予備のエプロン無地の水色じゃねぇか!そっち使わせろよ!」

「仕方ないでしょう!自分でそのエプロン使うと全員に言ってしまったのですから!交換してしまっては忘れてきたことを全員に公表するようなものですよ?」

今日何度目なのかと紘汰と海未が喧嘩をしている頃、穂乃果は同級生がスマートフォンでなにか面白そうな番組を見ていたものなので興味深々になり、一緒に画面を見せてもらっていた。

「なになに!?あ、これって最近人気上昇中の番組じゃない!?」

「あ~穂乃果も知ってる?丁度今、先週のアキバでのライブ特集やっているよ!」

「うそうそっ!?私達でるかな~!」

 

『よう皆っ!今日も最近話題のスクールアイドルを特集するこの番組“スクールアイドルホットライン”の時間が来ちまったぜ!!パーソナリティはもちろん、この俺!DJサガラがお送りするぜ!!今日の特集は・・・これだっ!』

「え・・・これって・・・」

「っ!!あ、あぁぁぁ!!うそうそ!!?えぇぇぇぇぇぇぇッ!!?海未ちゃん!!紘汰くん!!」

突如、穂乃果が大声上げて二人の名を呼ぶ。ふたりは何事かと穂乃果の同級生が見ていたスマートフォンの画面を覗き込んだ。するとそこには−−−

『最近、突如スクールアイドル界に現れた期待の新星!国立音ノ木坂学院のスクールアイドル!μ's!!そしてそのスクールアイドルを守る二人のアーマードライダー!龍玄、そして鎧武だ!!』

画面上に多彩なスポットライトが当たるステージで踊る見覚えのある顔・・・・というか、自分の顔。

只今、全国ネットで自分達が特集されているという衝撃から3人は口をあんぐりと開けて言葉が発せない状態に陥っていた。

『さすがスクールアイドル激戦区でもある東京!!次から次へと新星が舞い降りる!!まったくこの街は俺達をどこまで期待させてくれるのか休む暇も与えてくれないぜ!!このスクールアイドルは自分達の学校の廃校危機を救う為結成されたというなんとも壮大なストーリーが隠されているみたいぜ?それとみんな現地で観戦したかい!?あのランキングでは常に上位入りしているインヴィットのアーマードライダー二人を倒したあの男!アーマードライダー鎧武だ!!こいつの出現には俺も度肝を抜かされちまった!これまであんな熱い戦い見たことなかったぜ!後輩ライダーが絶体絶命の危機に陥った時に颯爽登場!!わずか数分で形勢逆点!!こいつにゃ近隣のアーマードライダー達も黙って見過ごす訳にゃいかなんじゃないのかい!?』

 

「わ・・・わわ・・・私が・・・番組でこんなに大きく・・・ははっ・・・こんな・・・顔ばかり撮されて・・・・っ!!」

「う、海未ちゃん落ち着いて!!穂乃果だって正直驚いてるんだから!!」

「おいおいおいおいおい!!俺ってそんな感じで周りから見られてたのか!?これ完全に喧嘩売ってるじゃねえか!!」

「紘汰くんも落ち着いて!このサガラって人が大げさに言っているだけだよっ!!ふぇぇ~ん!ことりちゃ~んっ!!」

 

スマートフォンの画面上の男、DJサガラはμ'sの話題を終えた後画面上に『重大発表』と表示された。突然のことで穂乃果は驚いてしまうが、何より一年生の教室がある方向から学院中に響き渡る声が聞こえてきたものなので画面よりそちらに驚いてしまった。

「わわっ!この声・・・も、もしかして花陽ちゃん?それより重大発表ってなんだろ?」

「はは・・・は・・・」

「いつまで放心状態なんだ、海未。それより重大発表って−−−」

 

『話題も終えたところでここからは大人気のロックシードシリーズを発売するユグドラシルコーポレーションより2点ほど重大発表をしたいところなんだ・・・がッ!!残念ながら発表は次回の放送まで待っていてくれ!!ちなみにこの発表は今後のスクールアイドルとビートライダーズの活動にか~な~り影響するからよッ!!絶対見逃すんじゃねぇぞ?それじゃあまた!see you again!!』

 

「はぁぁ!!?勿体ぶらないで今発表しろよ!!」

「紘汰くん、画面につば飛んでるよ」

「なんだろ~重大発表って。海未ちゃんも気になるよね?」

「もう・・・お嫁に行けません・・・ううぅ・・・」

 

・・・

 

「うう・・・う・・・」

「もう海未ちゃんッ!いつまで泣いてるの?」

「ことりがいないときにそんなことあったんだ~、タイミング悪かったなぁ」

「ひとみが録画してたみたいだから後で見せてもらえよ。はぁ・・それより海未は再起可能なのか?」

 

休み時間が終わり4人は調理実習室に移動していた。これから調理実習が始まるというのに海未は先程の衝撃な出来事を現実に受け入れられず顔を伏せてずっと泣いていた。穂乃果は何度も励ますのだがなかなか立ち直ってくれる気配はない。ことりは3人と合流してからずっとこのような状態なので紘汰が事の発端から説明していた。

 

「ほら、もう授業始まるぜ?いい加減機嫌直せよ海未」

「あ゛な゛た゛は゛い゛い゛て゛す゛ッ!!どうせ羞恥心のかけらもない男性な゛の゛て゛す゛か゛ら゛ッッッ!!!!」

「だぁ!!びっくりした!!鼻水ぐらい拭けよッ!!というか羞恥心のかけらもないってどういう意味だ!!」

「はぁ~い、海未ちゃん!ことりのハンカチ使って!ち~ん・・・」

「ち~ん・・・。うぅ・・・今の映像が動画サイトに上がって私の姿を見て色々な人がああだこうだと何度も何度も口論を繰り返し私達を指を刺したか笑うのです!!そんな日常を紘汰はこれから送れるのですか!!?」

「考えすぎだっての!!たかだかちょっと注目浴びたぐらいでそこまでいくかって!!」

「海未ちゃん落ち着いて~!ッ!あ、みんなみんな!先生来たみたい!」

 

と、穂乃果の一声と同時に教室のドアが開き、この学院に見慣れない教師がコツコツと足音を立てて教壇目掛けて歩いてくる。その教師の姿を見た生徒たちが口を大きくあんぐりと開け、唖然とし声が出せなくなってしまった。

その教師の容姿があまりにも衝撃過ぎたからだ。

一言で例えるのであれば、『オネエ』

ちなみに女性ではなく、男性。

たくましく鍛えられた体格とスキンヘッドという出で立ちながらもバサバサのつけまつ毛を付け、教師にしては派手な服装。

教壇に着くなり、甲高い声を上げて自己紹介を始めた。

 

「はじめまして!ワテクシの名は『凰蓮・ピエール・アルフォンゾ』!今日はこの音ノ木坂学院の調理実習の特別講師としてあなた達の担任でもある呉島高虎先生に呼ばれここにきました!以後、お見知りおきをッ!」

 

「はわわ・・あの人・・・」

「マジかよ・・・高虎先生ぇ・・・」

 

かなり衝撃を受ける穂乃果と紘汰とは裏腹に、ことりは大きく目を輝かせていた。

「え、マジ?ことりってあういう奴が好みなのか?」

「もぉ違うよ紘汰くん!凰蓮先生ってシャルモン学園に赴任する前はフランスの超一流の洋菓子店の店長だった有名な人なんだよぉ!あのクープ・デュ・モンド(※製菓技術国際大会)で優勝する腕前なんだから!あぁ・・・凰蓮先生にチーズケーキ作ってほしいなぁ・・・」

「え、そんなすげえ人なのか?あのオカマ先生」

「さすが音ノ木坂学院理事長の娘である南さん!すべてこの子の言う通りよダサ男」

「うわッ!びっくりした、いつの間に後ろに?ていうか誰がダサ男だッ!!」

 

気がつけば紘汰とことりの背後に凰蓮が仁王立ちで立っていた。そのまま穂乃果達四人が座っている調理器具一式が揃ったテーブルを周りながら自信の生い立ちを語り始める。

「ワテクシはパティシエ修行のために15年前におフランスに渡って10年間修行した上にフランス国籍まで取得しその国籍を取得するためにフランス軍に従軍して特殊部隊に所属して中東やアフリカの紛争地帯を転戦していたのよ!もちろん、これでも格闘技には自信があってね?そこらへんの男ども程度なら軽く一発でKOすることぐらい簡単だから男子生徒の諸君は文句あるなら覚悟しなさい!ま、ワテクシも流石に老いには勝てないから帰国後は教員免許取って洋菓子作りに興味ある子供たちの指導に熱を入れ始めたってワケ!」

「ふわあぁぁ~ん!凰蓮先生!今度もしよかったらことりにチーズケーキの作り方教えてくださぁい!」

「もちろんよッ!あなたのような美しい女性の為ならワテクシのもてる全ての技術を教えて差し上げるわ!ダサ男、あんたには絶対教えてあげな~い」

「こっちから願い下げだ!!あとダサ男止めろ!!」

 

と、少し凰蓮はしゃべりすぎたのかこほん、と一つ咳払いをし教壇に戻っていった。

「なんだか色々と凄い先生だね、海未ちゃん」

「是非、私にも洋菓子の作り方を教えてもらいたいものです」

「あれれッ!海未ちゃんいつ復活したの!?」

ことりと同様に目を輝かせている海未と同時に凰蓮は教科書を開き今日の指導範囲であるホットケーキの作り方が載っているページを開いて生徒達を見渡した。そしてある一点に対し、険しい眼差しになる。その先は紘汰達だった。

 

 

 

 

あの子達ね・・・。

ワテクシの可愛い子達をコテンパンにしたのは。

 

 

 

 

「−−―ッ!」

「どうしたのですか?紘汰」

「い、いや・・・なんか凰蓮先生にすげぇ睨まれたような」

「紘汰が失礼な発言をしたから怒っているのでないのですか?」

「それだけだと、いいんだけどな」

 

 

凰蓮はすぐに笑顔になり、いよいよ授業が始まる。

「さぁて!今日ワテクシが皆さんに教えるのはホットケーキです!ホットケーキは一見簡単に作れるものと思いますが実は最も奥の深い洋菓子の一つだと言えます!特にふわふわで肉厚にするなんて至難の業!今日はひとりでも多くその業にたどり着いてくれるようにワテクシも精一杯指導して差し上げますわ!」

凰蓮は説明を終えた後、ホワイトボードに今回調理するホットケーキの材料と分量を事細かに書き始めた。その内容が−−−

卵2個、砂糖60g、はちみつ20g、溶かしバター20g、牛乳130ml、薄力粉200g、ベーキングパウダー小さじ2、バター・メープルシロップ・サラダ油がそれぞれ適量、という内容だ。

材料に続いて凰蓮はホットケーキの手順を続いて書き始めていく。その指導の下、他の生徒のグループが指示通りに下準備を初めて行く。

 

「調理実習なら穂乃果に任せて!家は和菓子屋さんだけど洋菓子も少しならかじったことあるし!」

「流石穂乃果だな。ことりと海未は料理得意なのか?」

ちなみに我らが紘汰の料理の腕前は壊滅的である。

「私は穂乃果ほどではないですが人並みには一応・・・」

「ことりはちょっと苦手かなぁ、憧れはするんだけど」

 

「と、いうことで凰蓮先生の作り方見ながら穂乃果が皆に教えていくね!」

穂乃果はいつも以上にはりきりながら3人に説明しつつてきぱきと手を動かしていく。まず最初に穂乃果はボウルと卵を手にとった。

「ボウルに卵を溶いて砂糖とはちみつを加えて泡立て器でよ~くかき混ぜます!」

「おぉ、流石穂乃果。手際いいな」

穂乃果は説明通り、余計な動き一切なく卵を溶きながら砂糖とはちみつを加えシャカシャカと空気を入れるようにかき混ぜる。その動きに一通りの説明を終えた凰蓮の目に止まり穂乃果達のテーブルに近寄ってきた。

「流石和菓子屋の娘さんね!手際がとっても良いわ!ワテクシの説明はもう必要ないかしら?」

「えへへ~!そんなことないですよ!溶かしバターを入れるのはしっとり感を出すためですよね?はちみつは甘味より香りの役目、バニラエッセンスをあえて加えないのはそのためですよね?」

「ブラ~ボッ!!そのとおりよッ!さて、次はどうするんだったかしら?高坂さん」

「はい!続いて、薄力粉とベーキングパウダーを万能こし器でふるいながら加えます!」

プロ顔負けの手際の良さで穂乃果はあっという間に下地を完成させてしまった。この動きに3人は口をポカンと開け、気付いた時には自分達は何もしていないという事実に気がついてしまう。

「さて、材料はもう半分あるから、南さんと園田さん、ダサ男も挑戦してみなさい!」

 

紘汰は相変わらずダサ男呼ばわりだが、穂乃果の手際の良さを見て熱が入ったのか俄然とやる気まんまんだった。まず最初に海未がボールに手を出す。

「まず私がやります!手順その一!えっと・・・」

「うんうん!頑張って海未ちゃん!ファイトだよっ!」

「砂糖とはちみつをボールに入れてよくかき混ぜます!」

と、いきなり卵そっちのけで砂糖とはちみつを混ぜ始める!!衝撃の出来事に凰蓮と穂乃果は大声を出して叫んでしまった!

「だァァァっ!!ち、違うよ海未ちゃん!!最初に卵!!卵を解くのォォ!!もしかして海未ちゃんさっきの放送のショックまだ抜け切れてないんじゃない!!?」

「だ、大丈夫よ園田さん!!まだこの程度なら間に合うわ!っ!!?南さん!?」

「手順その二!卵と薄力粉を万能こし器に入れて泡立て器で空気を入れるように混ぜ合わせます!」

続いてことりがどこをどう聞き間違えたのかこし器に直接卵と薄力粉を入れてとてつもない音を立てながら泡立て器で混ぜ合わせていく!こし器の細かい穴から解いた卵と薄力粉が混ざり合った液体がぼたぼたと砂糖とはちみつの入ったボウルに落ちていく・・・。

「えぇぇぇっ!!?ことりちゃん!なんでこし器に卵いれちゃったのォォ!!?」

「ふぇぇ!?もしかしてことりまちがえちゃった!?」

「お、落ち着きなさい南さん!大丈夫、まだ予備の卵も薄力粉もあるから」

「その三!」

「ダサ男!!?」

まるでとどめを刺すように海未とことりが作った下地のようなものめがけて紘汰がどこから持ってきたのか『小麦粉』と書かれた大きな袋を構え、そして−−−

「ボウルにベーキングパウダーをブチ込むっ!!ウラッシャァァァァァッ!!!!」

「紘汰くん!それ小麦粉ォォォ!!きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「嫌ァァァァァァッ!!ワテクシの授業がぁぁァァァァァッ!!!!」

 

紘汰が力強くボウルに小麦粉を投入する。袋まるごと一つ投入したものなので穂乃果達のテーブル一面中真っ白になってしまった・・・。

 

・・・

 

放課後、若干小麦粉が頬についたまま穂乃果達2年生組4人は夕焼けが昇る帰路をとぼとぼと歩いていた。あのあと、4人と凰蓮は散乱した小麦粉と海未とことりが作った下地のようなものの片付けをしたあと穂乃果が大急ぎで目標であるホットケーキを作りなんとか課題のクリアに成功した。凰蓮は終始笑顔だったがその笑顔の裏が恐ろしくてたまらなかった。

 

「今日はなんだか疲れちゃったね。海未ちゃん・・・」

「ことり、私は当分料理の修行を始めようかと思います。まさか、私があそこまで料理が下手だったとは・・うぅ・・」

「いやいや、きっとみんな今日は不調だったんだよ!また次頑張ろうよ!」

「穂乃果、俺は絶好調だぞ?」

「紘汰くんはちょっと黙っててよッ!」

 

最後に4人は同時に大きなため息を出し、再び無言の帰路を歩いて行く−−−どこからともなくカラスの鳴き声が聞こえてくる。ちなみに今日は身体を休ませる為、練習は休みであり、珍しく早い時間で学校を後にしていた。

 

「ま、まぁ!今日はゆっくり身体を休ませてまた明日が練習がんばりましょう!ミニライブまで残り一週間切っていますから穂乃果もことりも早く寝てくださいね?」

「ことりちゃん、衣装の準備はできてるの?」

「うん!みんなのサイズもピッタリだし、ばっちりだよ穂乃果ちゃん!」

「いよいよ来週か・・・」

 

紘汰は懐にある戦極ドライバーを握り締める。

東京スカイツリーの下でのミニライブ。今日の昼のスクールアイドルホットラインでのμ'sの特集。ライダーバトルの可能性が更に大きくなった。

表舞台に立つのは彼女達だがそれを守るのは自分の仕事だ。

 

自分が彼女達を守るんだ。

 

そして、なんとしてでも音ノ木坂の廃校を阻止するんだ。

 

こんなところで、立ち止まってられない!

 

 

 

「絶対成功させようぜ、ライブ!」

 

「今度もね!絶対だよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その前に、この前のツケを返してもらおうじゃねぇか」

 

 

 

「ッ!!」

 

 

 

 

ふと、目の前に柄の悪そうな男が自分達が歩く帰路を阻んでいた。

紘汰には見覚えがないが穂乃果達3人はよく覚えていた。

 

 

インヴィットのアーマードライダーの一人、初瀬だ。

 

 

 

「あなたはっ!」

「あいつ誰だ、穂乃果。知り合いか?」

「紘汰は変身後しか見ていませんでしたね。一週間前に戦ったアーマードライダー・黒影です」

「で、でもっ!仁美さんたちは?」

ことりの一言で紘汰は気がついた。初瀬という男以外に肝心なスクールアイドル達がいない。本当に初瀬一人だけだったのだ。初瀬は左手に戦極ドライバー、右手にロックシード−−−。

本人に聞かずとも状況は察知した。自分達にライダーバトルを仕掛ける気だ。

 

「お前、どういうつもりだ?ライブもなにも関係ないのに、ライダーバトルなんて意味がないだろ!」

「意味がない?ふざけるな!!あの時俺はお前に負けたが今度はそういうわけにはいかねぇ!このままじゃ俺のプライドに傷がついたままなんだよ!おまけに今日の昼の放送のおかげでインヴィットの評判はボロボロだ!!葛葉、俺と戦え!!」

初瀬は怒鳴り散らしながら戦極ドライバーを腰に装着しロックシードを構え、開錠する!

『イチゴ!』

開錠とともに初瀬の頭上にクラックが出現しイチゴの形をした鎧が宙に浮かぶ!

 

「あの時とロックシードが違う?それより本気でライダーバトルする気なんですか!?いくらなんでも理不尽です!」

「紘汰くん、どうするの?戦っちゃうの?」

「ことり・・・悪い」

 

紘汰は懐から戦極ドライバーとマツボックリロックシードを取り出し、初瀬と同じく腰に装着しロックシードを開錠する。

『マツボックリ!』

「穂乃果、いいよな?」

「本当は戦って欲しくない・・・欲しくないよ!でも、紘汰くんがそうしたいなら、穂乃果はもう何も言わない」

「穂乃果!」

「海未ちゃん、ここは紘汰くんに任せよう。ごめんね」

 

紘汰の頭上にもマツボックリの形をした鎧が出現する。

焦る海未とは対称に穂乃果はこの場を全て紘汰に託した。真剣な眼差しで二人を見つめる−−−。自分達はこの二人の間に介入してはいけない。これは男と男の勝負なのだ。

 

 

「お前がそれで気が済むっていうなら俺が相手になってやる!変身!!」

『『ロックオン!』』

二人の戦極ドライバーにロックシードが装着され、同時にカッティングブレードを振り降ろされた!

『イチゴアームズ!シュシュッとスパーク!』

『マツボックリアームズ!一撃!イン・ザ・シャドウ!』

初瀬はアーマードライダー・黒影イチゴアームズ、紘汰はアーマードライダー・鎧武マツボックリアームズに変身し二人の周りにリングが形勢された!

 

『バトル・スタート!』

 

電子音と同時に二人は専用の武器を持ち互い目掛けて突っ込む!

二人の武器と武器がぶつかり火花が飛び散るリングとは対照的に、ことりはなにかが腑に落ちないのか、頭を掲げていた。

 

「どうしたの?ことりちゃん」

「ねぇ穂乃果ちゃん。なんかおかしいと思わない?なんで初瀬さんは私達がライブを開いていない、ましてやこんな中途半端な時間を狙って待ち伏せしてたのかって思って」

「言われてみればそうですね。相手にとってこの状況は何の特にもなりません」

「それは!男と男の真剣勝負−−−」

「それはことりも思ったよ!でも、本当にそれだけ?あの人からはね?とにかく紘汰くんに復讐したいって感情だけが垣間見えてるんだ」

「何か・・・初瀬さんには他に策があるということですか?ことり」

 

黒影は今回、ランクAのロックシードであるイチゴアームズを使用している。専用武器であるイチゴクナイを両手に構え鎧武目掛けて無数のクナイを放つ!鎧武は影松を巧みに振り回しイチゴクナイを全て打ち落とすがなかなか相手との距離が縮まらない。これではキリがない−−−。

 

「流石ランキング上位に君臨するアーマードライダーだなっ!この前とは全然動きも力も違う!!」

「ふんっ!!だったらお前も本気も見せてみろ!鎧武ぅ!!」

『イチゴスカッシュ!』

 

黒影はカッティングブレードを一回下ろし鎧武目掛けて両手のイチゴクナイを放つ!

鎧武は先程と同様に影松で撃ち落とそうとする・・・が

 

「そのクナイは爆発するぜ?終わりだ鎧武!」

「なにっ!?ッッッ!!」

 

その瞬間!リング内で大爆発が起こる!!

思わず3人は声を上げてしまう!

爆炎が晴れると最初に姿を現したのは黒影だった。しかし−−−

 

「ッ!が、鎧武はどこだ!!?」

「紘汰くん!?」

 

なんと、爆炎が晴れるとリング内にいたはずの鎧武の姿が消えていた!黒影は必死に探す!右、左、後ろ・・・しかし姿は見当たらない!

 

「残りは・・・ま、まさか!」

「上だぁぁァァッ!!」

『マツボックリスパーキング!!』

 

鎧武は戦極ドライバーのカッティングブレードを3回振り下ろし黒影目掛けてライダーキックを放つ!黒影が気がついた時には既に遅く、鎧武の勢いはもう止まらない!

「いけぇぇ!紘汰くん!!」

「セイハァァァァァァァッ!!」

 

同時に、リング内で再び爆発が起こる!今度こそ、鎧武の勝利を3人が確信した!

爆炎はすぐに晴れ鎧武は綺麗に着地し、黒影は止めには至らなかったがリングに手をかけぐったりとしていた。ランクAのロックシードの性能のお陰なのか変身解除までには至らなかった。

 

「はぁッはぁッ・・・どうだ!初瀬!」

「ぐぅ・・・馬鹿な、ランクは俺のほうが高いはずなのにッ!!くそぉッ!!」

 

鎧武は影松を構える、同時に黒影はボロボロだが再び両手にイチゴクナイを構え鎧武に立ち向かおうとしていた−−−だが、その時!

 

 

 

 

「復讐ごっこはもう気が済んだかしら?」

「ッ!!」

「えっ、この声?」

 

 

 

「よくもこの前はワテクシの可愛い可愛い教え子を可愛がってくれたわね・・・μ's」

「「「っ!!?」」」

 

穂乃果達3人はすぐ後ろから聞こえた声に振り返る!そこには・・・

「お、凰蓮・・・先生!?」

授業の時とはまた違う雰囲気、パティシエとしての凰蓮ではなく、まさに軍人としての凰蓮が仁王立ちで立っていた。あまりの威圧に3人は2、3歩後ずさってしまう。

「μ's・・・高坂さん、ワテクシ達に喧嘩を売った意味、わかっているわよね?」

「喧嘩売ったって!先に仕掛けてきたのは−−−」

「黙らっしゃい!この卑怯者!なんだかよくわからないけど卑怯な手段を使ってまで注目を浴びたいの!!?初めての戦いでワテクシが鍛え上げた二人をたったひとり、あのダサ男が勝てるわけないじゃない!!」

「そんな理不尽なっ!!・・・っ」

「なにか・・・文句でもあるのかしら・・・?」

珍しく感情的になった海未が凰蓮に抵抗しようとしたが凰蓮の鋭い眼光が身体の自由を奪う。この先生は見た目はアレだが海未にはわかっていた。この人は様々な戦場を歩いてきた人特有の覇気を持っている。

 

駄目だ・・・・この人には勝てない。

 

紘汰!この人と戦っては駄目!!

 

「ライダーバトルで参戦できるのは2人まで、タッグが基本。あなた達も知っているわよね?」

「っ!!戦極ドライバー!?」

 

凰蓮は戦極ドライバーを取り出し腰に装着する。そして、右手にはロックシード−−−

「せ、先生が直接ライダーバトル!!?そんな!」

「ルールには規制がないはずよ?高坂さん」

『ドリアン!ロックオン!』

凰蓮はロックシードを開錠し、同時に頭上にクラックが出現する、戦極ドライバーにロックシードを装着し両腕をゆっくり上にあげていき上でクロス、右腕を左側に構えたあと右上に伸ばしながら左腕でカッティングブレードを叩きおろす!

「変身!」

「きゃあっ!!」

「穂乃果!海未!ことり!・・・っ!!」

 

その瞬間、鎧武の頭上になにかが通りすぎる。後ろを振り返ると黒影の横に見たことのないアーマードライダーが立っていた!

 

全身緑色で古代ギリシアのスパルタンの鎧をモチーフとし、左目に傷、モヒカンヘアーを思わせるトサカ、全身に鋭利な刺がありかなり派手な姿である−−−

『ドリアンアームズ!ミスター!デーンジャラース!!』

「さあ始めますわよ!破壊と暴力のパジェントを!!」

 

凰蓮はアーマードライダー・ブラーボに変身した!

ブラーボは両手に鋸状の二刀流の剣「ドリノコ」を装備、−−−第二ラウンド幕開けの瞬間だった。

「くそっ!まさか先生が参戦かよ!!」

おまけに2対1である。今から光実を呼んでも間に合うわけがない。ライダーバトル二戦目にして絶体絶命だった。

 

「凰蓮先生・・・」

「あなたは少し休んでなさい。このダサ男の実力はわからないけどワテクシ一人で十分、よっ!!」

「っ!!?」

まるで風が吹いたような感じだった。あと少し反応が遅ければ致命傷だったかもしれない。

「ぐっ・・・」

「あら、意外とやるじゃない!ダサ男!」

ブラーボのドリノコと鎧武の影松がぶつかりあう!少しでも力を抜くと押しつぶされてしまう!

「や、やば!ぐ、くそ!!」

「あらっ!!」

鎧武はなんとかドリノコをなぎ払い、ブラーボの懐に入る!!ブラーボの両手が宙に浮き腹部ががら空き、一撃を入れるチャンスが到来した!長期戦では確実にこちらが振りになってしまう、その前に終わらせなかれば!!

「甘い!」

「えっ」

鎧武が反応する前にブラーボの右足が鎧武の戦極ドライバー目掛けてキックを放ち、鎧武はリングまで吹き飛ばされる!肋骨まで響いたのか激しい痛みが紘汰を襲う!

「あ゛っがはっ」

「紘汰!!」

海未の声が紘汰の耳に入るが反応するまでの余裕が一切ない。

ブラーボは容赦なく鎧武の胸ぐらをつかみ柔道の背負い投げを放つ!!地面がひび割れ、衝撃がどれほどのものかを物語っていた。

「う゛・・・げほっ」

「あなたの力はこの程度ではないはずよ。まだ隠しているんでしょ?ワテクシの生徒を倒した力、見せてみなさい!」

ブラーボは鎧武の戦極ドライバーからマツボックリロックシードを無理矢理引き剥がし片手で粉砕してしまった。同時に鎧武の身にまとっていたアーマーが消滅する。

「お!・・・お前ぇッ!!」

「あら、教師に向かってその口の聞き方はなんなのかしら?さあ、はやくあなたの本当の力を見せなさい!!」

 

鎧武は力を振り絞り、距離をとりつつ懐からもう一つのロックシード・・・オレンジロックシードを取り出す!

 

「紘汰!もうこれ以上は!!」

「止めるな海未!!俺はこんなことで立ち止まってられねぇ!!」

 

そうだ・・・俺は誓ったんだ。

あの時、あの場所で。

 

 

 

ここで立ち止まってはいられない。

前に進むんだ!!

 

 

 

 

この力は、そのための力なのだから!!

姉さん−−−。当分の間、この力を使わせてもらうぜ!!

 

 

『オレンジ!ロックオン!』

 

「紘汰くん・・・だよね?まるで別人みたい・・・」

「ことりちゃん。紘汰くんはきっと私達の為に戦ってるんだよ。だから、私達もその期待に応えなきゃ・・・」

 

 

「応えるって一体・・・」

「穂乃果・・・?」

 

 

 

 

 

 

私達は仲間。

 

 

 

 

 

ともに歩み、ともに戦い、

 

 

 

ともに笑い合う仲間・・・・!

 

 

 

 

 

「私達も、一緒に戦うよ!」

 

 

 

 

 

だって可能性感じたんだ、そうだ・・・ススメ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!この歌詞・・・!海未ちゃん!」

「ことり!」

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔したくない 目の前に僕らの道がある−−−−−−!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」

『オレンジアームズ!花道・オンステージ!!』

 

穂乃果達の声が聞こえる、応援が聞こえる!

その歌が、俺の力になる!!

 

「ここからは俺達のステージだ!!」

 

鎧武はオレンジアームズにアームズチェンジし、右手に大橙丸、左手に無双セイバーを構えた!

「そう!その姿よ!さぁ!ワテクシと戦いなさい!!」

「行くぜ!!」

 

再びブラーボのドリノコと鎧武の大橙丸がぶつかり合う!オレンジロックシードの力なのか、それとも穂乃果達の応援のお陰なのか、先程と打って変わり鎧武の力が格段と上がっていた!

「な、なに!?この子!!さっきとはなにもかもが違う!!」

「言った筈だ!こっからは俺達のステージだって!!はぁぁッ!!」

鎧武は大橙丸、無双セイバーを交互にブラーボに放つがブラーボも負けじとドリノコで応戦する!しかし鎧武の大橙丸がブラーボの右肩に直撃する!

「ま、まさか!・・・ふふッ初めてよ。ワテクシに傷をつけたのは!!」

続いてブラーボの一太刀が鎧武の左足に直撃し一瞬ぐらついたがすぐに体勢を立て直す!

「全然効かねぇッ!!痛くねぇ!!」

既に穂乃果達には2人の戦いが目に負えなくなっていた!2人の身体には次第に痛々しい傷が増ええていく、だが穂乃果達3人は歌うのを止めない−−−3人は信じているからだ、鎧武の勝利を!

 

「絶対負けねぇ!!こんなところで立ち止まってらんねぇぇ!!」

大橙丸と無双セイバー、そして二つのドリノコがぶつかり合い、火花を散らす!しかし鎧武は左手の無双セイバーを離しすぐさまカッティングブレードを1回振り降ろす!

『オレンジスカッシュ!』

「なんですって!!?」

まさか自分から武器を捨てるとはブラーボも予測していなかったらしく、一瞬ひるんでしまった。鎧武はその一瞬の隙を見逃さず右足にオレンジ色のエネルギーを溜め必殺技である無頼キックを放つ!だがまたしても直撃とまでいかず左腹部をかすめる程度でだった。それでも多少は効果があったのだろうかブラーボは右手で左腹部を抑えながら鎧武との距離をとった。

 

「なかなかやるじゃない・・・坊や」

「はぁ・・・はぁ・・・へへっ、ダメ男からはこれで卒業か?−−−ッ!!」

 

その時!ブラーボの後方からイチゴクナイが2、3発鎧武目掛けて放たれ、鎧武は反応出来ず全て直撃してしまい、膝を着いてしまった。

穂乃果達は一瞬顔を曇らせたが歌うのをやめなかった。

 

「悪いな先生。最初にも言ったが鎧武を倒すのはこの俺だ」

「余計な真似をッ!まあ良いわ!教え子にはもっと活躍してもらわないとね!」

 

「くそッ!やっぱり2対1ってのはやっぱり不利だ・・・けど、俺は負けられねぇ!負けたくねぇ!!」

 

鎧武は無双セイバーと大橙丸を連結させナギナタモードにして構える!黒影とブラーボ・・・どちらも強敵だ。でもやるしかないのだ。

 

「行くぜ!初瀬!凰蓮先生!!」

 

 

 

 

 

「いや、待て」

「へっ?」

 

 

 

 

再び、何者かの声により戦闘が中止される。

しかし、鎧武にはよく聞き覚えのある声だった。

それは、穂乃果達3人も同じだった。

 

 

「っ!」

「まさかっ・・・」

「っ!!」

「高虎先生ぇ!」

 

 

 

 

穂乃果達3人の後ろには、

 

 

シワの見当たらないビシッと決まったスーツ、鋭い眼光、ややパーマのかかった黒髪−−−

 

呉島高虎だった。

 

高虎は鬼のような形相で黒影とブラーボを睨みつける。

「高虎先生!」

「よく頑張ったな南。園田、高坂・・・そして、葛葉」

 

 

「なにっ」

「まさかっ!!麗しきメロンの−−−、っ!おほん、高虎先生!」

 

 

 

「高虎先生っ!」

 

 

 

「全く、久しぶりに残業をしないで真っ直ぐ帰ろうと思えばこの有様か。私立シャルモン学園の生徒と先生・・・か。凰蓮先生、いくら自分の教え子の為とはいえ、ちょっかい程度だったら私も目を瞑っていたが、不条理なライダーバトルを仕掛けるとまでいくと話は別だ。この子達は私の大切な教え子達だ。それでも私の大切な教え子を傷つけるというのであれば−−−」

高虎はカバンから戦極ドライバーとロックシードを取り出し、腹部に装着、右手にロックシードを構える!

「容赦はしない−−−変身」

『メロン!』

右手のロックシードを開錠し上空に高く投げ、落ちてきたロックシードをキャッチしすぐさまドライバーに装着、ほら貝が鳴り響きカッティングブレードをおろす!

『メロンアームズ!天・下・御免!!』

クラックからメロン型のアーマーが高虎の頭上に出現しそのまま頭からかぶさり展開、右手には無双セイバー、左手には専用盾であるメロンディフェンダーが装備−−−アーマードライダー斬月への変身が完了した!斬月はそのままリングのなかに入り鎧武の横に立ち並ぶ。

 

「へへっ!まさか高虎先生と一緒に戦う日がくるなんてな!」

「今日は早く帰って光実の相手をしてやらないといけないんだ。さっさと片付ける・・・いくぞ葛葉」

「あぁ!遅れるなよ高虎先生!!」

 

鎧武と斬月、黒影とブラーボ・・・第3ラウンドへ突入する!

しかし勝負はすでに見えていた。なぜならば−−−

 

「だ、ダメよ!!高虎先生!!」

「っ!お、おい先生!」

「あ、あなたに刃を向けるなんて!ワテクシには到底できないわぁぁ!!」

「はあ゛ぁッ!!?」

 

斬月はブラーボに一瞬で間合いを詰めメロンディフェンダーでそのまま勢いを殺すことなく突進、完全に無防備になったブラーボに直撃した。

「おしまいだ」

『メロンチャージ!』

「ああッ!!」

斬月の無双セイバーによる一太刀がブラーボを貫き、凰蓮の変身が解除される!

「う、麗しき・・・メロンの・・・あぁ・・・・」

凰蓮は白目を向いてうつ伏せに倒れてしまった。

 

 

「く、くそッ!!こ、こんな奴らにィィィィィ!!」

『イチゴスパーキング!』

「今度は俺の番だぁぁぁッ!!」

『一・十・百・千・万!オレンジチャージ!』

 

黒影はカッティングブレードを3回おろすが時すでに遅く、既に鎧武の必殺技である薙刀無双スライサーが黒影に放たれ、反撃の隙も与えず黒影に直撃した!!

 

「あ・・・・・あぁ・・・・・ちくしょぉ・・・・・」

 

初瀬もまた、力尽きて倒れてしまった。

 

『you win!!』

電子音とともにリングが解除された。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・へへっ・・・やったぜ、穂乃果」

「おつかれさま、紘汰くん!」

 

 

 

 

 

・・・

 

 

「ということが昨日あったんだ!絵里ちゃん!」

「そう、それは大変だったわね。穂乃果」

 

シャルモン学園との激戦から次の日。学院の屋上で9人はライブに向けてのダンスの練習をしていた。今は休憩の時間、昨日あった出来事を穂乃果は1年生組と3年生組に説明していた。

 

「当分は初瀬くんや凰蓮先生もおとなしくなってくれると嬉しいんやけどなぁ」

「すいません、大変なときに。僕がいなくて・・・」

「いやいやしょうがないって!ミッチが落ち込むことなんてなにもないんだぜ?」

 

「ま、私達も有名な存在になっちゃったみたいだし、こんなこと日常茶飯事だと思わないといけないんじゃない?」

「それも大事だけど!重大発表も絶対忘れないようにしないと!!HDD録画にパソコン、あと部室とあと凛ちゃんもちゃんと録画の用意しといてね!?」

「もう!昨日からかよちんその話ばっかで飽きたにゃ!」

 

 

 

11人が談笑していると、ドアからスラリとした男性、いや、呉島高虎が現れた。普段のスーツとは打って変わり白いTシャツとジャージという非常にラフな格好だった。

「お前達、練習はちゃんとしているか?」

「あ、高虎先生!今日は練習付き合ってくれるんですか!?」

「たまにはな。南ばかり負担はかけられないからな」

「兄さん、仕事は?」

「まぁ、なんだ。明日がある」

 

 

 

「珍しいわね。高虎先生が仕事を残してまで屋上にくるなんて」

「まあ、なんて言ったって、高虎先生はアイドル研究部の『顧問』でもあるからなぁ。さて、穂乃果ちゃん?」

 

 

「うん!希ちゃん!練習の続きしよう!!あと数日でミニライブ!今日もファイトだよ!!」

「ふぅ・・・」

 

 

 

 

 

紘汰は練習を再開する皆とは別に仰向けになって寝っ転がっていた。

昨日の戦闘の件もあったので絵里から特別にと今日も休みをもらっていたのだ。

しかし、紘汰は家に変えることなくいつもの練習場所である屋上にきて日向ぼっこをしていた。自分の居場所は、今はここなのだから。

 

 

 

−−−風が気持ちいい。このまま寝てしまいそうだ。

 

「もう、紘汰ったら。まるで穂乃果みたいですよ?」

「いいだろ?たまにはさ」

 

 

 

 

紘汰は目を瞑る。

その姿に海未はくすりと笑ってしまった。

 

 

 

 

 

「これからも、俺達のステージだ・・・!」

 

 

 

 

−−−続く。

 




次の話ではいよいよあの方たちが登場します。ご期待ください。
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