仮面ライダー鎧武 Legacy −鎧武×μ's ic S.T.A.R.T!!− 作:ススム→
ある時、僕は人の一生を『100』という限られた数字の中で割り振ってみた。最初に言っておくが、これは僕自身の考えであって他の人も同じという訳ではない。そこは勘違いしないでほしい。あくまでこれは僕自身の『固定概念』だ。
まず学校を卒業して社会人となり、定年まで働く期間を『60』としよう。そして老後の期間を『15』、生まれてから親に育てられ、学校に入るまでの期間を『5』、最後に学校に通い、卒業して社会人となるまでの期間を『20』と割り振った。
この『20』という期間をさらに細かく割り振ってみた。
小学校が『10』、中学校を『5』、そしていま、僕が高校で生活している期間を『5』−−−これで僕の『100』という人生は完成した。もちろん、高校を卒業し、大学に進学を考えているから最初の『60』という数字は若干減るかもしれない。まあ、そんなことはどうでも良い。大事なのは、今、僕がこの『5』という時間を生きているということだ。
『100』ある間の『5』・・・・とても少なく、短い。おまけに、高校生活の三分の一が過ぎた。入学してからとても長く感じていた。だが、『100』という人生から見てみれば自分の『5』という人生の少しを過ごしたに過ぎない。そう考えてみれば今後の『60』という人生が恐ろしく長く感じ取られる。
興味本位で、僕は同じ質問を兄さんに聞いてみた。だが兄さんの答えは僕の考えとは違ったものだった。
『俺にとって、5はとても長く、60は非常に短い。いずれ、光実にもそれを実感する時が訪れるはずだ』−−−と、質問した瞬間に返答が返ってきた。まさに兄さんらしい答えだ。
『60』と『5』・・・僕はどちらの時間が大切か−−−と聞かれたら、僕は即答できないだろう。今の僕じゃまだその答えを導き出せていない。『5』という期間が過ぎた瞬間、今の、僕の生活は何もかも変わってしまうだろう。まさに、第2の人生のスタートという感じだ。なら、この『5』という期間は一体なんのために存在しているのだろうか?『60』という時間に進むための・・・準備期間なのだろうか?『60』という社会人生活を送るために必要な勉強をする為だけの期間なのだろうか?
−−−本当に、それだけなのだろうか?
・・・・
「なに?これ」
「見ればわかるでしょ。退部届よ」
いつもは活気溢れるアイドル研究部の部室が、今日は静まり返っていた。貴虎は職員会議の為、今、この部室にはいないのだが、他のμ'sのメンバーは全員揃っていた。
だが、ムードメーカーの穂乃果や凛ですら目の前の光景に驚き、硬直している。何故なら、座っていたにこの目の前に『退部届』と書かれた封筒を勢いよく真姫がそれを差し出したからだ。
真姫がこの部室に現れたのは前回のミーティングから3日後のことだった。あの後、メンバー全員で彼女を追ったのだが、真姫は聞く耳がないのか、全員の静止を振り切りスタスタと自分の教室へと帰って行ってしまった。それから同じクラスメイトの花陽と凛、そして光実が何度も説得したが、彼女の口からは『あなた達には関係ない』の一言しか返ってこない。その後、絵里と希の提案で少しそっとしておこう、と、全員でやや距離を置いていたのだが、約1名、苛立ちを抑えきれない人物がいた。にこだ。
にこはあれから常に不機嫌だった。真姫のいない練習中でも一言も喋らずずっと踊り続け、練習終わりもお疲れの一言を残しそそくさと先に帰ってしまう。希が授業中に気遣って冗談混じりで彼女にちょっかいをだしたのだが、やめてくれない?の一言が返ってくるのみだった。ちなみに、その後もちょっかいを出し続けて講師がそれを発見し、希は叱られたと後に紘汰は絵里から聞いた。
こんな日常が3日も続けば自然とメンバーの士気が低下するのも無理はないだろう。そんな時、真姫は突然部室に現れたのだ。穂乃果と凛は嬉しかったのか、自然と真姫の元へ駆け寄るが、当の本人はまるで目の前の二人が見えていないのか、スタスタとにこの元へと寄り、なにも言わず退部届を出したのだ。それを見た瞬間、メンバー全員は言葉を失ってしまった。
−−−彼女は、本気でμ'sを辞めるつもりなのだと察したからだ。
「本気?」
「ええ」
「ふざけんじゃないわよ」
「ふざける理由がどこにあるの?『矢澤先輩』」
「っ!!」
−−−まずい、いつもの彼女達の喧嘩ではない。
最初にそれを察したのは光実だった。
声のトーンでわかる。いつものおふざけとは全く違う。
「ま、真姫ちゃんまってよ!」
「っ!穂乃果さん?」
駄目だ、穂乃果さん。
今の二人に何かいえばそれは火に油を注ぐのと同じだ。
状況が悪化する前に止めなくては!
「待ってください、穂乃果さ−−−」
「にこちゃんも真姫ちゃんも一旦落ち着こうよっ!ねえ真姫ちゃん一体何があったの!?穂乃果達に相談してよっ!」
「穂乃果ちゃんの言う通りにゃ!真姫ちゃん、凛たち友達だよね?いきなりスクールアイドル辞めるなんて絶対おかしいよ!」
駄目だ凛!そんなこと今の真姫に言っても逆効果だ!
ど、どうしよう・・・こんな時に兄さんはいないし・・・
「だから・・・『高坂先輩』や『星空さん』には関係ないって何度も言っているでしょ」
「っ!?」
「に゛ゃっ!?」
あぁ・・・駄目だ・・・。
全てが、崩れていく・・・。
今まで当たり前だった日常が、僕の中で音を立てて崩れていく・・・。
自然と、身体中から血の気が引いていく−−−。
僕は、何も、できないのか?
「真姫、その他人行儀な喋り方、辞めませんか?」
「せやで真姫ちゃん。仮にも私達、仲間やん?」
「は?仲間?何言っているの?先輩方は私のことを仲間だと思っていたの?」
海未と希は言葉を失ってしまう。
目の前にいるのは、本当に真姫なのだろうか?
自分達が知っている真姫は何処に行ってしまったのだろう−−−。
自分達が今話している彼女はまるで赤の他人かのように見えた。
「・・・真姫」
「なんですか?葛葉先輩」
「だからそれ、やめろよ」
「先輩に敬語使って、なにが悪いんですか?」
「ッ!!!だからッ−−−」
「−−−いい加減にしなさいよッ!!真姫ちゃんッ!!」
紘太の堪忍袋が切れる前に、にこの大声が部室中に響き渡った。
「に、にこちゃん。落ち着こう?ね?」
「ことりちゃんの言う通りだよ。喧嘩しても、その、何も始まらないよ。ね、二人とも」
花陽とことりは必死に二人を落ち着かせようとするが、二人は完全に周りが見えていないのか、少しも彼女達の話を聞こうとはしていなかった。
「花陽とことりは黙ってて。ねぇ真姫ちゃん一体どうしちゃったの?この前までにこ達は一緒にスクールアイドルやってたじゃない!一体何が気に食わなかったのよ!?真姫ちゃんだって本当はスクールアイドル大好きなんでしょ!?だったら−−−」
「はぁ?私、別にスクールアイドルが好きだなんて一言も言ってないんですけど」
「え・・・?」
「この際だから皆に言っておくわ。私がμ'sにいたのはただの暇つぶし。私はあなた達とは違ってやることが沢山あるの。ただ、そんな日常に疲れて高坂先輩の誘いに乗っただけ。作曲を手伝ったのも私の気まぐれ。本当はなんとも思っていない。スクールアイドルなんて正直どうでも良い。−−−くだらない、ほんと、くだらな−−−」
その時、鈍い音が部室に響き渡る。
真姫が自分の右頬を両手で押さえ込む。
にこが真姫の右頬を引張叩いたからだ。
「な゛・・・・なにすんのよッ!!」
再び、部室に鈍い音が響き渡った。
今度は真姫がにこの右頬を引張叩いた。
その瞬間、完全に頭に来たのか、にこの瞳孔が開き、真姫に襲いかかろうとする−−−!!
「にこにー!!?」
「紘汰さん、二人を止めないと!!」
紘汰と光実は流石に見ていられなくなり、二人の静止に入る。後に他のメンバーも二人の間に入り、紘汰と穂乃果と海未とことりと希はにこ、光実と花陽と凛と絵里は真姫を差し押さえた。
「あんた、それ以上スクールアイドル馬鹿にするとッ!!絶対許さないわよッ!!?」
「にこちゃんに私の何がわかるっていうのよッ!!?赤の他人のくせにこれ以上私に干渉しないでッ!!」
「お、落ち着きなさい二人とも!少しは人の話を聞きなさい!」
「だ、ダメやえりち!にこっちも真姫ちゃんも我を忘れてる!」
その時、大きな音をたてて部室のドアが開かれた。突然のことで何事かと、その場にいた全員の動きが静止する。そこに立っていたのはジャージ姿の貴虎だった。
「に、兄さん・・・」
「…っ!!お前達一体何をしている!!少し目を離せばこのざまかッ!!お前達は俺がいないと何もできないのかッ!!」
目の前の光景に珍しく貴虎も頭に来たのか、普段のクールな彼の姿とは裏腹に熱血教師顔負けの形相でメンバー全員に喝を放った。その瞬間、全員の力が抜け、棒立ちとなるが、真姫は「すみませんでした」と一言残し、その場からスタスタと去っていった。この状況に貴虎も察したのか、一つため息をして椅子に座った。
「ふぅ~・・・全く、状況は芳しくないな。教師である私が干渉したところで、状況も悪化するだけだろうしな」
「貴虎先生、なんとかならないのかよ?」
「冷たい言い方だが、これはメンバー全員で解決したほうが良いだろうな。正直、私も西木野に一体何があったのか見当もつかん。困ったものだ・・・」
「穂乃果ちゃん・・・このまま、真姫ちゃん本当にやめちゃうのかなぁ・・・」
「ことりちゃん・・・」
「・・・そんなこと、絶対にさせないわよ」
全員が落胆する中、にこは力強い言葉でそれを否定する。
「にこ?」
海未は仁王立ちのにこへ振り返る。どこか、先程とは変わり、その瞳は自身満々だった。
「一体どうするというのですか?にこ」
「任せておきなさい海未。一応、にこはこれでもこの部の部長なのよ?真姫ちゃんに一体なにがあったのか、私にはわからないけど・・・私はこのまま真姫ちゃんを絶対に辞めさせるつもりは一切ないわ。絶対に、絶対に真姫ちゃんをμ'sに連れ戻すんだから!!」
「は、はぁ・・」
・・・
「まずは聞き込みよッ!」
「それで、何故私達二人きりなのですか?にこ」
「たまたま海未を見つけたからよ!」
「そ、そうですか・・・」
次の日の放課後、にこと海未は音ノ木坂学院の1年生の教室に向かって歩いていた。昨日のこともあってか、貴虎は今日の練習は急遽休みということでμ'sの各々のメンバーはそれぞれの時間を過ごしているのだが、ただ一人、海未は突如3年生の教室からやってきたにこに引き連れられ、こうして真姫のいる1年生の教室へと向かっているのだ。傍から見ればなんとも奇妙な組み合わせに見えてしまうのは、何故だろうか?
「そういえば紘汰の姿が見えなかったけど、どっか出かけたの?」
「紘汰は光実と貴虎先生に連れられてどこかへ行ってしまいました。行き先は私も知りませんが、夕方には帰ってくるみたいなので、それまで待っていようかと」
「はぁ?別に待つ必要無いじゃない。現に穂乃果とことりだって、先に帰ったじゃない」
「穂乃果は家の手伝い、ことりは今日も秋葉原に用事あるから帰っただけですよ」
「いやいや、そうじゃなくて。紘汰を待つ理由が海未にはないでしょ?」
「え、何故ですか?」
「はぁ・・・もう良いわよ」
にこは口を尖らせながらずんずんと音を立てて歩く。そんな姿を見て海未はいつのまにかいつもの彼女に戻ったのだなと少し安心した。どうやら彼女はなんとしてでも本気で真姫を連れ戻すつもりでいるのだろう。普段はきゃぴきゃぴしていて自分では絶対に人前でできないだろう芸当をいともたやすく簡単にやってしまうにこに驚く毎日なのだが、人一倍アイドルへの情熱と、意外にも誰よりも他人思いの彼女をどこか心の片隅で尊敬してしまう。
「ふふっ!にこは本当に真姫のことが大好きなのですね」
「ぶっ!!ぬ、ぬぁに言ってんのよッ!!部員の勝手な行動は部長である私が止めなきゃいけないのよ!!それに、『矢澤先輩』ってなによ!!普段はにこちゃんにこちゃん言っているくせに!!」
「え?それに対して怒っているのですか?むしろ目上の人に対する礼儀だと思うのですが」
「ま、まぁその、その通りでは、あるけど・・・」
「それでは、これから私もにこのことを『矢澤先輩』って呼びますね!」
「ちょ!べ、別に先輩とかいいわよ!!いつもどおりでいいの!!」
「それでは、矢澤と呼べば良いですか?」
「あんたもしかしてボケてんの!!?状況悪化する一方じゃない!!」
「なんです。一体どの呼び方が良いのかはっきりしてください。矢澤」
「私年上ェェェッ!!!!もうすでにただの生意気な後輩になっているんだけどォ!!」
二人が話している間に真姫のいる1年生のクラスに到着する。教室を覗くがすでに彼女は帰宅したのだろうか、彼女の姿が見えなかった。凛と花陽も既に下校したのだろうか辺りを見回しても姿が見えない。
「まぁ逆に都合が良いわね。これで遠慮なく真希ちゃんに何があったのか捜査できるわ」
「というか、凛と花陽も同じクラスなのだから既に色々な人に聞いて回っているのでは…」
二人がわざわざ1年生の教室に来たのは、真姫が何故、あのような状態になってしまったのか周りの生徒達に聞き込みする為だった。聞き込みする前に海未は結論を出してしまったのだが、にこはめげず、まず手始めに真姫の机のとなりの生徒に話を聞くことにした。
「あ、矢澤ここ先輩。こんにちわ」
「う゛ッ・・・『ここ』?ま、まあいいわ。ねぇあなた、真姫ちゃんに最近何かあったか知ってる?席がとなりだから様子がおかしいのわかるでしょ?」
「ううん、私は何も知りません。でも最近、西木野さん入学してきた時みたいに戻ちゃって・・・正直、声をかけにくいっていうか・・・」
「そう、わかったわ!ありがとうね!にこッ!」
「は、はぁ・・・」
にこは満面な笑みを生徒に向けるが、苦笑いされてしまう。海未はそっとにこの顔を覗くがやや眉を引き吊りながら負けじと別の生徒の元へと向かった。
「あ!ワーヤザ先輩だ!こんちわ!」
「わ、ワーヤザ・・・」
「あんたそれ言いにくくないの!!?てか人の名前勝手に変えないでよ!!矢澤よ!や・ざ・わ!!」
「あははッ!すんまっせん!それよりワーヤザ先輩!私に何の用っすか?」
「えっと、真希ちゃんのことだけど・・・」
「え、西木野さん?すんまっせんワーヤザ先輩!私、ちょっとあの子苦手で・・・」
「・・・そう。わかったわ!ありがとうにこッ!!」
「は、はは・・・」
にこは満面な笑みを生徒に向けるが、再び苦笑いされてしまう。海未はそっとにこの顔を覗くが、両眉を引き吊りながら、また別の生徒のもとへ向かう。
「わぁぁぁ・・・ざわざわちゃんだぁ・・・」
「ざ、ざわざわ!!?もしかしなくてもそれってにこのこと!!?」
「まるで『が○こちゃん』ですね」
「だれが恐竜の女の子よ!!そ、それよりあなた!私達、真希ちゃんのこと調べているんだけど、最近真希ちゃんに変わったことない?ほら、あの子。最近ちょっと変でしょ?」
「う~ん・・・私はぁ・・・あんまりあの子と話したことないしなぁ・・・ちょっと前にぃ、話しかけたらぁ、凄い形相でぇ、なぁに?ってぇ睨みつけられてぇ・・・ちょっと怖かったってゆうかぁ・・・」
「そう、わかったわ!ありがとうにこっ!」
「さむっ・・・あ・・・」
にこは満面な笑みを生徒に向けるが、先程の甘ったるい喋り方から一変し、ドスの聞いた声ではっきりと『寒い』と言われてしまった。海未は恐る恐るにこの顔を覗く−−−−−−
「う゛っ・・・・ひぐっ・・・・ぐすっ・・・」
「っ!!?もう大丈夫ですよ!が○こ!そろそろこの教室から引き上げましょう!」
「だ・・・誰がが○こよ゛ぉ゛・・・・わ゛だじばに゛ごよ゛ぉ゛・・・・」
・・・・
「ぐすっ・・・海未ぃ・・・もう一枚ティッシュ・・・」
「ほら、ちーん・・・」
「ちーん・・・ぐすっ・・・なによあいつら。なんで下級生にここまで馬鹿にされなきゃいけないのよぉ・・・大体なんでまともに私の名前言える子いないのよぉ・・・」
「普段の行いでしょうか?」
「にこが何したっていうのよッッッ!!!!」
結局、1年生の教室で聞き取り調査を行うも、たいした情報も得られず、ただただ、にこの心をえぐる結果で終わってしまった。2人は部室に移動し、心をえぐられたにこは大量の涙と鼻水を流しながら海未がにこを慰めていた。
「しかし、状況は最悪みたいですね」
「ぐすっ・・・何がよ?」
「が○こは気づきませんでしたか?あのクラスメイト達の真姫に対しての反応ですよ」
「にこよ。なに当たり前のように名前改変しているのよ」
「皆、真姫の変化に対しては察知しているのにもかかわらず、誰一人として心配そうにはしていませんでした。はっきり言って、友達としてではなく、まるで赤の他人みたいな扱いでした」
「・・・・あの馬鹿・・・。敵ばっかり増やしてどうするのよ」
「もともと、真姫は穂乃果みたいに自分から積極的にコミュニケーションするタイプではありません。真姫にはいつも凛や花陽がいたお陰で多少は明るくなったとは聞いていますが−−−−」
「その二人すら拒絶してしまったんじゃあ、文字通り、真姫ちゃんは『一人』やね。いつぞやの誰かさんみたいに」
海未とにこは自分達以外の声に驚き、顔をあげる。
いつの間にか、部室の入口に希が立っていた。
「あ、あんた!入ってくるならノックぐらいしなさいよ!」
「うち、いちおうこの部の部員なんやけど・・・。まあいいわ、そんなことより、海未ちゃん、が○こっち、真姫ちゃんに何があったか、一応、わかったよ」
「っ!それは本当ですか?希!」
「あの、ちょっと・・・なんで希もが○このくだり知っているのよ。なんで当たり前のようにが○こ呼びよ。あんた今までいなかったでしょ」
希は扉を閉め、椅子に座る。
海未はにこを落ち着かせながら同じく椅子に座った。希の表情や様子からして、どうやら事態はかなり深刻そうらしい。
「ほんとうはな、皆がいる時に話したかったんだけど、先に二人に言っておくわ。うちもたまたま生徒会の用事で職員室に行った時に知ったんやけど」
「教えなさい、希。真姫ちゃんに、一体なにがあったのか・・・」
「希、お願いします」
にこと希は息を呑む。
希はひと呼吸置いた後、ゆっくりと口を開いた−−−。
「真姫ちゃんな、ああなっちゃった理由・・・
真姫ちゃんのお父さんにほぼ強制的にスクールアイドルを辞めろと言われたことが発端だったんよ
しかも、それだけやない
このままだと真姫ちゃん−−−
UTX学院に転校してしまう」
・・・
−−−同時刻。
紘汰と光実は貴虎に連れられて東京都内にあるユグドラシルコーポレーションの本社ビルの一室へと移動していた。二人は貴虎から今日のことを事前に伝えられていたのだが、そこで一体何が行われるのか、ということは一切聞いていなかった。いや、実は貴虎本人も何も知らされていないのだ。貴虎は音ノ木坂学院の理事長であることりの母からA4サイズのプリント一枚を渡されたのみ、そこには『新製品のプレゼンテーションの案内について』と表題があり、住所と集合時間が書いているのみであった。貴虎は腑に落ちないのだが、ことりの母が「二人のこと、お願いしますね?」と笑顔で言われたものなので渋々そのプリントの日時どおりにこの本社ビルへ二人を連れて招待されたということだ。
3人はビルの入口で待っていた受付嬢に「15Fの小会議室Cでお待ちください」と言われ、指示通りにそこへ移動した。小会議室という名前通りにそこには机が並べられており、モニターがあるだけで他になにも無い。3人は取り敢えず机に座り待っていた。
「貴虎先生、もう10分経つけど、本当に誰か来るのか?」
「知らん。俺も詳しいことは聞かされてないんだ」
「それでも遅いですね・・・僕達は招待された側なのに。あと、僕達の戦極ドライバーをあの受付の人に渡しちゃったけど、ちゃんと返ってくるかな?」
「大丈夫だ光実。おそらく防犯上で一時的に預かっているだけだろう」
紘汰は待ちくたびれたのかスマートフォンを取り出しゲームアプリを起動する。
貴虎は腕を組み目をつぶり、光実は机にもたれかかり、窓から夕日を眺めていた−−−。
そして更に10分後、会議室のドアが大きな音を立てて開かれ、白衣を来た男がスタスタと会議室に入ってきた。男はとても重そうに両手に大きなケースを持っている。前髪が長く、銀色のメッシュが一つ入り、研究者という割には随分若く見える。紘汰と光実は一体誰だと言わんばかりに頭にクエスチョンマークを出すが、貴虎はこの男に見覚えがあった。
「−−−っ!戦極凌馬っ・・・代表取締役っ!?」
「え。代表取締役って・・・ユグドラシルの!?」
「なんだよミッチ。その、代表なんとかって。社長なのか?」
「え、えっと紘汰さん・・・要はとても偉い人です」
補足説明という訳ではないが、代表取締役とは株式会社を代表する権限(代表権)を有する取締役のことである。代表取締役は意思決定機関である株主総会や取締役会の決議に基づき、単独で会社を代表して契約などの行為を行うことができる。・・・ちなみに、代表取締役と社長は全く別物ということは教えておこう。
それは置いといて、まさかユグドラシルコーポレーションのトップの一人がまさか自分達の前に、直々に現れるとは思ってもおらず、珍しく貴虎は驚いてしまった。
「いや待たせて済まなかったね。ちょっと『調整』に時間がかかってしまったんだ。許してくれ。貴虎」
「っ。何故私の名を−−−」
「おっと。ああ、いや、君達のことは事前に調べさせてもらっただけだよ。呉島貴虎。いや、アーマードライダー斬月。そっちの二人は呉島光実、アーマードライダー龍玄。そして−−−」
戦極凌馬は紘汰の前に立ち、まじまじと彼の顔を凝視する。
「な、なんだよ」
「アーマードライダー鎧武。葛葉紘汰」
「あぁ、そうだけど・・・」
「・・・ふ~ん、まあ良い」
「?」
「それより、これでも私も多忙でね。正直時間が無いんだ。待たせて悪かったけど、早速君達に渡したいものがあるんだ。これを見てくれ」
戦極凌馬は両手のケースを3人が座るテーブルに置き、勢いよく蓋を開ける。
−−−−そこには、1つ目のケースには3人が普段から使用している戦極ドライバー、もう一つのケースには見慣れない赤が主体のベルトと自分達が見たことのないメロンの模様が施されたロックシードとオレンジの模様が施されたロックシードがある。
「メロンとオレンジ・・・ロックシード?戦極代表取締役、これは?」
「次世代型ロックシードの一つ、『メロンエナジーロックシード』と『オレンジエナジーロックシード』の試作品と、そのエナジーロックシードに対応した次世代型戦極ドライバー。私達は『ゲネシスドライバー』と呼んでいる」
「何故僕達の戦極ドライバーが・・・」
「その点に関して説明させてもらうよ」
凌馬は会議室の照明を落とし、慣れた手つきでタブレットを起動して紘汰達3人の目の前にVR映像を流し始めた。そこには手元にあるメロンエナジーロックシードの設計図が映し出されている。
「君達、この前のDJサガラのスクールアイドルホットラインは見たよね?そこでこのロックシードが紹介されたと思うんだけど、正直、生産が追いついていない状態なんだ。そこで、βテストという形で一部のビートライダーズ達にこうしてエナジーロックシードを私自らこうして渡しているというわけさ。ただ、初期ロットの問題なのか、ましてや、ヘルヘイムの研究不足なのかわからないんだけどね、当初は戦極ドライバーで運用する目的だったのだが、どうもうまく起動できないんだよ。計画は大幅に変更、急遽、エナジーロックシードに対応することができる新型の戦極ドライバーの開発が余儀なくされたわけさ。それがこの、ゲネシスドライバーってわけ。ロックシードの互換性を無くすことは正直事業的には痛手なのだが、仕方がないね~」
「ちょっと待てよ!このドライバー一つしかないんだけど!俺達3人だぜ?」
「葛葉!言葉を慎め!」
「いやそれがね、そのゲネシスドライバーなんだけど、ものすごく開発コストがかかっていてね、正直それ一つ生産して販売することにコストが逆ざや状態なんだよ。おまけにそれも生産が全く追いついていないんだ。君達を呼び出したのが最後になっちゃって、在庫はそれ一つしか残ってないんだよ。あ、でも大丈夫。そのために君達の戦極ドライバーをちょっと改造させてもらったから」
凌馬は紘汰の戦極ドライバーを手に持ち、フェイスプレートを外した。そこに懐から何かのパーツを取り出し、フェイスプレートの変わりに装着させる。
「おっとこんなところに名前が書いたシールが・・・。随分可愛い字だね~。これ君が書いたのかい?」
「俺の友達が書いたんだ。俺の字はもっと汚いぜ?」
「そうなのかい?まあいいや。流石にゲネシスドライバー単体で販売となると供給が追いつかなくなってしまう。それを解消するために戦極ドライバーにこの『ゲネシスコア』を装着、ひと工夫することでエナジーロックシードの運用を可能にしたというわけさ。一言で言えばアップデートさせてもらったって訳。使い方はとっても簡単、君達の持つロックシードとエナジーロックシードを同時に装着、いつも通り変身するだけでエナジーロックシードの力を使用することができる」
「ん?どういうことだ?」
「つまり、通常のロックシードにエナジーロックシードの力を『ミックス』させるということだ。戦極ドライバーでもゲネシスドライバーと同等の力を得ることができる。このゲネシスコアも君達にプレゼントしよう。ただこのコアも生産がゲネシスドライバー程ではないが追いつかなくてね、一つしか渡せないんだ。君達二人で仲良く使ってくれ。説明は以上だよ」
「ゲネシスドライバーは私が預かろう。お前達はそのエナジーロックシードとゲネシスコアを持っておけ」
部屋が明るくなり、貴虎は二人に戦極ドライバーとエナジーロックシードを渡し、ゲネシスドライバーが入ったケースを閉じた。
「なんだよ!貴虎先生がその新しいベルト使うのか?」
「あのな葛葉。戦極ドライバーもそうなんだが、生徒が自由にベルトを持つためには理事会での承認が必要なんだ。理事長の決裁が貰えれば少し考えるから、もうしばらく待っていれくれ。ちなみにそのエナジーロックシードについては既に承認されている。当分はそのゲネシスコアに頼るしかないみたいだな」
「あ、あぁ…」
紘太は渋々ながらも納得した。同時に貴虎のスーツからバイブレーションの音が室内に響き渡る。
「申し訳ございません、少し席を−−−」
「うん、構わないよ」
貴虎は凌馬に軽く頭を下げ、会議室から出て廊下で通話し始めた。壁が薄いのか紘汰と光実の耳にわずかながら貴虎の会話が自然に聞こえてしまった。
−私だ・・・何?今から臨時で職員会議だと?・・・この前やったばかりでは・・・・・あぁ・・・・何っ!?・・・・それは本当か・・・・・わかった。すぐ戻る・・・先に始めていてくれ・・・−
「君たちの先生も多忙だね~。でも丁度良いや、私もそろそろ時間だしね。使い方はマニュアルを渡しておくから、帰ってから予習しておきなよ?」
「はい。・・・それより、どうしたんだろう兄さん・・・普段は電話であんな大声で驚かないのに」
「ミッチ、とりあえずこのコアとオレンジのエナジーロックシードは俺が持っとくわ。使うかまだわからないけど」
「そうですね。僕より紘汰さんが持っていたほうが良いかもしれませんね。僕はこのメロンのエナジーロックシードを使わせていただきます−−−っ?」
紘汰がオレンジエナジーロックシードを持った瞬間に凌馬はニヤリと笑った。まるで自分の思い通りに事が進んでいるかのように−−−。
光実はそれに気づき、凌馬を凝視する。
何故だろうか?
−−−この人は只者ではない気がする。
携帯で話が終わったのか、貴虎は再び会議室に入り、先程の会話の通り、臨時職員会議が入った為、3人はそのままユグドラシルを後にした−−−。
・・・
貴虎の車の中で、助手席に座った光実が運転をする貴虎に一つ、質問をした。
「兄さん、一体何があったの?」
「なんでもない、お前は気にするな」
−−−光実には全てお見通しだった。
貴虎は、自分に嘘を言う時には決まってこの言葉を使う。
なにか、重大な事を隠しているのだ。
貴虎は気が付いていないのだが、これから学校で職員会議が行われることに関係しているのは間違いない。
しかし、おそらく自分達にとってはさほど関係がないので、この件に関してはこれ以上模索するのはやめた。
その会話が続くかのように、今度は貴虎が光実に声を掛けた。
「光実」
「なに?兄さん」
「別に深い理由は無いが、これからはこれを持っておけ」
貴虎はスーツの中から何かを取り出し、光実に差し出した。
「・・・これって」
「おおミッチ!それ!」
後部座席から紘汰が顔を出し、光実は貴虎が差し出したそれを凝視する。
それは、斬月のフェイスプレートとメロンロックシードだった。
「どういうつもり?兄さん。僕は斬月には−−−」
「それでも、斬月の力は本来、お前のものだ。だが、誰も使えとは言っていない。いずれ、俺がお前に言わずとも、自分から鞘から剣を抜く時は来るだろう」
「それでもっ!」
「きっと、お前にも『守る』べき存在ができるだろう。そのために、この力は必要だ」
−−――守る。
何故だかその言葉が光実の心の中に突き刺さった。
光実はほぼ強制的に斬月の力を貴虎から受け取った。
やや腑に落ちないが、光実は斬月のフェイスプレートとメロンロックシードを学生服のポケットに大事にしまい、夕暮れ時で光が灯り始めたビルの風景を学校に到着するまでずっと見続けた。
−−――その後、学校の門の前に到着し、既に日が暮れ、生徒の下校時間が迫っていたので、貴虎はそのまま職員室へと向かい、光実はそのまま帰宅することとした。
校門から一つ、校舎の一室で蛍光灯が光っている教室が見える。紘汰はおそらく自分の帰りを待っているであろう幼馴染を迎えに校舎の中へと入り、自分の教室へと向かった。案の定、そこには机に座って自習をする海未の姿があった。
「あっ、紘汰・・・」
「海未!こんな遅くまで待ってなくても−−−」
「いつもの事ですよ。さて、帰りましょう」
「あぁ」
海未はそそくさと勉強道具と教科書をスクールバックに入れ、机を立つ。紘汰も自分の机にあるスクールバックを手に取り、二人同時に教室をあとにして玄関へと向かう。
紘汰は横に視線を向けると、胸元まであるストレートヘアで両側に垂らし、顔は小さな卵型で大きな瞳が眩しい程の光を放ち、小ぶりだがスッと通った鼻筋の下で、桜色の唇が華やかな彩りを添えた海未の顔がすぐ近くにあるものなので、いつから自分達はこんなに近くまで肩を並べて歩けるような仲になったのだろうかと頬をポリポリとかきながら疑問を持ちつつ、何気無い会話を始める。
「今日、貴虎先生の車でミッチと一緒にユグドラシル行ってさ~、そしたらお偉いさん直々に新しいロックシード貰ってよ!」
「へえ、それはよかったですね・・・」
「だろ?へへっ・・・ん?」
「どうしました?紘汰」
「あ、いや・・・なんでも・・・それより海未!帰りにミスドかモスでも寄って行かないか?俺もう腹ペコでさ!」
「ふふっ!駄目ですよ?もう遅いから帰らないと・・・」
「あ、あぁ・・・そうだな・・・・?」
―――二人は校舎を出る。街灯が灯り始め、辺り一面には自分たち二人しかいない。風で木々が揺れる音が聞こえてくる。紘汰と海未は絵里ほど暗闇が苦手というではないのだが、少々不気味に感じつつ、やや足早になった。
「こんな時間に帰ることになるなんて久しぶりだな。早く帰らないと姉ちゃんに怒られるな」
「今日のこと、晶さんには言ってなかったのですか?」
「突然の事だったからさ。まあLINEは入れといたから大丈夫だと思うけど」
それから何分か歩いたところで、二人は公園を横切ろうとしていた。
その時――――
コツ、コツ・・・と、公園から足音が聞こえてくる。
「ん?」
絋汰は足音が聞こえた方向へ振り向く。
人の姿は特に見えない。
まあ、深夜でもないので、きっと仕事終わりのサラリーマンだろう・・・と、気にしなかったのだが・・・
「・・・絋汰」
「どうした?海未」
海未が立ち止まる。
何事かと絋汰も立ち止まった。
「この足音・・・こちらに近づいてきませんか?」
「え?」
次第に、足音は大きくなる。
すると同時に、暗くてよくわからないが、やや無骨なシルエットが見えてきた――――。
「な、なんですか?あれ・・・」
「っ!」
危機感を感じた絋汰は咄嗟に戦極ドライバーとオレンジロックシードを取り出した。
ついにシルエットは自分たちのすぐ近くまで迫り、街灯の下で立ち止まった。
「なっ!」
「が・・・・・鎧武?です・・か?」
シルエットの正体に二人は驚愕した!
それは、二人が良く知る姿・・・
アーマードライダー
黒い、『鎧武』だった。
「っ!」
『オレンジ!ロックオン!』
絋汰は考えるよりも先に戦極ドライバーを腰にセットし、オレンジロックシードを開錠する!
「絋汰っ!」
「海未、俺の後ろへ下がっていろ!変身!!」
『オレンジアームズ!花道・オンステージ!』
絋汰は鎧武に変身する!
鎧武と黒い鎧武の周りにリングが形成され、ほぼ強制的にライダーバトルが開始された!
『バトルスタート!』
開始の合図とともに黒い鎧武は無言で無双セイバーを腰から引き抜く。なぜ、いきなりライダーバトルを自分たちに仕掛けてきたのか、いったいどこの誰なのか、二人にはさっぱり見当がつかないのだが、刃を向けてきた以上、自分たちに友好的ではない事はわかる。
黒い鎧武は無双セイバーで鎧武に一太刀入れようとするが、鎧武はそれを避ける。それに続き黒い鎧武は容赦なく鎧武に切り刻もうとする!
「お前はいったい誰だ!俺たちに何の用だ!」
「・・・・。」
黒い鎧武は無言のまま、容赦なく鎧武を襲う!
頭に血が上った鎧武は攻撃をかわしつつ背後をとり、大橙丸で黒い鎧武の背面へ斬撃を放った!
しかし、黒い鎧武は一瞬よろめいたが、まるで何事もなかったかのように再び動き出す。
「なんだよお前!あぁ、もう!」
「絋汰っ、一度距離をとって体制を立て直したほうが・・・」
「くっ、わかった!」
鎧武はリングの端ギリギリまで後退し、無双セイバーと大橙丸を連結させナギナタモードにする。同時に黒い鎧武はベルトからロックシードを取り出した。
―この程度か・・・―
「っ!」
・・・女の声?
『ザクロ!』
「うっ、なんだあのロックシード・・・っ!!」
―――次の瞬間、
黒い鎧武は鎧武めがけてザクロロックシードを投げつけた!
まさかロックシードを直接投げつけてくるものなので、鎧武は一瞬たじろいでしまい、同時にザクロロックシードからピピピ・・・と、電子音が放たれる!
「まさかっ・・・絋汰、ガードしてください!」
「えっ・・・・っ!!」
海未の警告と同時にザクロロックシードは大爆発を引き起こした!
「絋汰っ!!」
海未が絋汰の名前を叫ぶ。リング上の爆炎が晴れると、そこには膝をつく鎧武の姿があった。海未の警告と同時に、咄嗟に防御姿勢をとったためか、ダメージは最小限で済み、致命傷は特になかった。
「絋汰・・・ふぅ・・・」
「あ、危ねぇ・・・くっ・・・あ、あれ?」
気が付くと、その場に自分たちを襲ってきた黒い鎧武の姿が見当たらなかった。
その場は、先程の戦闘が嘘かのように、ただ風の音が聞こえるのみで、鎧武は変身を解除し、多少身体に痺れが残ったのか、ぎこちない動きで海未の元へと寄った。
「一体誰だったのでしょうか。あのアーマードライダー・・・」
「わかんねぇ、・・・くっ、ちょっと体痺れるな・・・。でも、一瞬だけだったけど、たsか、女の声だった」
「女性・・・ですか?」
「ああ・・・たぶん、な」
二人は黒い鎧武にとまどいながらも、これ以上の戦闘は体力的に持たないので、人通りの多い道路を選びつつ何とか帰宅することとした―――。
・・・
―――次の日の朝。
紘汰と光実、穂乃果とことりと海未はいつもの通学路を歩き、学校へと向かっていた。
今日は曇りでやや肌寒く、この前までの暑さが嘘かのような気温である。
女子3人は普段は見慣れない、制服の上にカーディガンを着て寒い寒いと言いながら歩いていた。
「いや~寒いね、ことりちゃん。このままだと穂乃果、風邪ひいちゃうよぉ」
「ふふっ!それならこうやったら、寒くないよ~!それぇ~!!」
「ちょ、ちょっとことりちゃん!急に抱きつかないでよぉ~!!」
「海未さん、今日の放課後に古文で教えてもらいたいところがあるんですけど、時間あります?」
「えぇ光実。今日は特に予定がないので大丈夫です・・・」
「うう、寒っ。海未は寒くないのか?」
「え、えぇ。普段より厚着してますし、特に・・・」
「?・・・あぁ、そうか」
他の4人は普段通りなのだが、紘汰は海未の異変に気が付いていた。戦闘があったとはいえ、昨日の帰りからずっとこの調子なのだ。自分達から話しかければ答えは帰ってくるのだが、海未自身からしゃべろうともせず、ただずっと上の空なのだ。
「なあ海未」
「・・・はい?何です紘汰」
「お前、なんかあったのか?」
「っ!・・・。」
紘汰の質問と同時に、なにかが突き刺さったように海未は立ち止まってしまった。
それに気がついた4人も、足を止め、海未を凝視する。
「やっぱり。お前、昨日から変だぞ?なにかあったなら俺達に相談しろよ」
「なになに?どうしちゃったの海未ちゃん?」
「紘汰・・・穂乃果・・・」
「ことりさんは、何か聞いてます?」
「ううん、ことりはなにも?・・・えっと、とりあえず!お外は寒いから、教室に入ってお話しない?ほら!もう校門だし!海未ちゃんや穂乃果ちゃん達だってそっちのほうが良いよね?」
「ことり・・・そう、ですね・・・。あなた達にも、知っていたほうが・・・」
「海未、さん?・・・・っ?・・・」
4人はもうすでに校門前までたどり着いていたのだが、その校門前に外国の車だろうか、見慣れない高級車が駐車していた。車の前には誰かの帰りを待つかのように自分達よりやや年上の女性が立っている。スーツがよく似合い、長い髪を後ろへ一つに束ねキリッとした目つきの女性だ。女性と光実は視線が合い、光実は思わず目を逸らす。
「なんなのよあれ・・・あ、おはよう。あんたたちも今着いたの?」
「あっ、が○こ」
「え、何?海未、お前今なんて言った?」
たまたま通学途中のにこと鉢合わせし、6人は女性と車を気にしながらも校門へと入る。すると校舎側から一人の男性とその後ろに自分達がよく見慣れた女性生徒が目に入る。
「ん?あれって・・・真姫ちゃん!?ことりちゃん、あれって真姫ちゃんだよね!?」
「その横にいるのは・・・もしかして、真姫ちゃんのお父さん?」
「「っ!!」」
「ん?どうした、海未、にこにー」
次第に二人の姿が鮮明となる。
穂乃果の言う通り、真姫とその真姫の父親の二人だった。
真姫の父親はやせ型で、真姫の赤色の髪とは裏腹に真っ黒のナショナルヘアーの自毛でメガネがよく似合い、貴虎に負けない程スーツがよく似合う。
「・・・真姫ちゃん」
「おはようございます、矢澤先輩」
すれ違い様、最初に言葉を発したのはにこだった。
真姫は相変わらず他人行儀で、目線を誰とも合わせようとしない。
「ねえあんたっ!本当に――」
「すまない、私達は急いでいるんだ。君は真姫の友達か?」
「っ!」
低い声のトーンで真姫の父親がまるで娘に関わるなと言わんばかりに、にこへと問いかけた。あまりの威圧感でにこはたじろいでしまう。
「真姫、この子達は?」
「・・・ただの学校の知り合い。関係ないわ」
「そうか。なら良い。行くぞ」
「・・・はい」
そう言葉を残して、真姫と真姫の父親は5人の間に割って入って、先程校門前に駐車してあった車へと向かう。
―――しかし、それに続くかのように、今度は凛と花陽が息を切らしながら二人を追いかけてきた!!
「凛!花陽!!そんなに息を切らして一体―――」
「大変なの光実くんっ!!一体どうすればっ!!?」
「っ!ど、どうしたの花陽、落ち着いて!」
「はぁっはぁっ!!ゲホゲホっ・・・真姫ちゃぁぁぁぁんっ!!ほんとに学校辞めちゃうの!!?なんで凛達になにも言ってくれないのぉ!!?」
「えっ!凛ちゃん!!い、今なんて・・・」
「真姫ちゃんが・・・」
「学校を・・・」
辞める・・・?
「おい、なんだそれ・・・」
紘汰の血の気が引く。
今、凛はなんと言っただろう。
学校を辞める?
音ノ木坂を?
聞いていない。
自分はそんなこと、一切聞いていない!!
「っ!・・・」
「どうした真姫、行くぞ」
一瞬、真姫は凛の言葉でおもわず足を止めてしまったが、すぐに再び歩き始め、車の中へとはいる。父親に至ってはまるで何事もなかったかのように先程の女性に一言、声をかけた。
「相川、出せ」
「はい、旦那様」
先程の女性、相川と呼ばれた女性は運転席に座り、車のエンジンをかける。マフラーからは重低音が鳴り響き、車を動かし始めた。
「ど、どうしよう穂乃果ちゃん。一体何が起きているのかことりにはさっぱり・・・」
「落ち着いてことりちゃん。っ!に、にこちゃん!?」
穂乃果は突如、車に向かって走り出したにこの姿を見て声に出して驚いてしまった。にこはスクールバックを投げ捨て、全速力で車へと駆け寄る。しかし車はそんなにこをお構いなしに少しずつスピードを上げていった。
「ちょっとぉぉぉ!!真姫ちゃんあんたどういう神経しているのよぉぉぉぉ!!せめて一言ぐらい何か私達にっ!!はぁッ!!はぁッ!!言わなきゃいけない事あるでしょうがぁぁァァァァァ!!!!」
一瞬、窓越しに真姫は必死に走るにこを見て悲痛な表情を浮かべる・・・が、何事もなかったかのようににこから視線を外した。
「なにシカトしてるのよォォォォ!!!!言っておくけど!!ハ゛ァ゛ッ!!ハ゛ァ゛ッ!!私はまだッ!!あんたのこと!!諦めてないからねぇぇぇぇ!!!!」
次第に、車とにこの間に距離が生まれ始め、スピードを上げたのか大きな音を立てて一気に加速していく――。
「あッ−−−−−−」
走る事に集中しすぎたのか、にこは大きく転び、身体中ボロボロになりながら車が走っていった先を見る―――すでに車の姿は無かった。
「にこちゃん!!」
後を追ってきた凛と花陽と光実がにこの元へと駆け寄る。大量の汗が流れ落ち、髪はボサボサ、彼女のトレードマークの一つであるピンクのカーディガンはボロボロになってしまった。
「ハ゛ァ゛ッ!!!! ハ゛ァ゛ッ!!!! ハ゛ァ゛ッ!!!! ハ゛ァ゛ッ!!!!死゛ぬ゛ッ!!・・・・がはッげほッ・・・」
「にこちゃん、・・・相変わらずスタミナないにゃ」
「そんなこと言っている場合じゃないよ!凛ちゃん!それより・・・」
「これは、非常事態・・・だね」
−−――その頃、校庭では、状況の整理が追いつかない3人が一体何が起こっていたのか状況を整理していた。たが、ただひとり、まるで最初からこの事態を想定していたかのように、無言でずっと視線を下に逸らす人物がいた。紘汰はそれに感づき、重い口を開く。
「なあ、海未・・・お前・・・もしかして・・・」
「っ!!・・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・!」
海未の目から、大量の涙が流れ校庭のアスファルトを濡らす。
涙が堪えきれなくなり、その場にしゃがみこんでしまった。
「知っていたのか・・・?ずっと、一人で抱え込んでいたのか?」
「・・・ごめんなさい・・・本当は・・・」
「わかった、・・・もういい」
紘汰は泣き崩れる海未が落ち着くまで背中を何度も何度も背中をさすってあげた。
「紘汰・・・・ぐすっ・・・紘汰ぁ・・・」
「大丈夫だ、誰も海未を責めてないって。だからもう、泣くなよ?な?」
「うぅ・・・・無理、です・・・・」
「穂乃果ちゃん・・・どうしよう・・・」
「・・・。私達だけで考えたって、しょうがないよ・・・海未ちゃん?」
「は・・・・はい・・・?」
穂乃果は涙が止まらない海の目線まで腰を下ろして、優しく微笑みながら涙を人差し指で拭き取った。
「教えて欲しいんだ。穂乃果達みんなに、真姫ちゃんに一体なにがあったのか・・・・」
・・・
―――西木野総合病院。
街の中に建つ真姫の実家が経営する病院だ。
その病院の敷地内の離れに真姫の実家が存在する。離れと言っても、家は文字通り大豪邸で、病院の経営状況の良さを表しているかのようだ。
その家の2階の一室に真姫の自室が存在する。
平日の日中なのに学校に行っていない、正式には父親に無理矢理帰宅させられた真姫は部屋の机に座り、今まで自分が作曲した楽譜をまじまじと見つめていた。
「…はぁ」
今日何度目のため息なのだろうか。
そんな自分に嫌気がさし、今日はもうベットに横になってしまおうと思った時、ドアからノックが聞こえてくる。
「真姫、入るよ」
ノックの正体は父親だった。真姫は再度、ため息を吐き、“どうぞ”と弱々しい声で返答をする。
「今、UTX学園の理事長と転入手続きを進めているところだ。うまく行けばあさってには面接になると思うから、準備だけはしておきなさい」
「…はい」
「それと、前期の学力テストであれだけ順位が落ちてしまったんだ。今後、西木野総合病院の跡取りとして、今まで以上に勉学に励みなさい。以上だ」
「…はい」
真姫は自分の父親に視線も合わせず、ただ、はいと応えるのみだった。
「…なんだ、これは」
「えっ?」
目線を外していた為、全く気がつかなかったのだが、父親が真姫の机に置かれていた楽譜を見て反応した。思わず真姫は父親の顔を覗く。なにか汚物を見てしまった…という表現が一番的確だろうか?
真姫の父親は机から譜面を手に取り、先ほどの落ち着いた声のトーンとは裏腹に罵声を真姫に放った!
「真姫、何故こんなものをまだ持っている!こんなことをしている暇があれば勉強をしろとこの前も言った筈だ!!」
「ち、違うの!それは…」
「なにが違うんだ!全く…少し目を離せばこの様だ!!お前はずっと私に隠してスクールアイドルだの作曲だの訳のわからん遊びに走って大事な勉強時間を削って、一体何を考えているんだ!!悪いがお前が学校で行っていた行動は全て看護師達から全て教えてもらったよ!あんな破廉恥な格好をして頭の出来が悪い底辺どもを喜ばせる遊びが、お前の将来に一体何の役に立つと思うんだ!!そんなこともわからないのか!!」
「ご、ごめんなさい…もう、しませんから、だから、その楽譜を−−−」
その時、真姫の父親は楽譜を綺麗に引き裂いた。
突然の事で真姫は言葉を失ってしまう。
「−−−もうしないのなら、“こんなもの”必要ないだろう」
「ぱ・・・パパ・・・」
「すまない、私も感情的になりすぎた。少し休んだなら、転入手続きの書類を一緒にかこう。落ち着いたら後で私に声をかけなさい」
そう言い残して、真姫の父親は部屋を後にした。
床に無残に散らかった楽譜を真姫は丁寧に拾っていく。同時に目の前が歪む。
−−−いや、違う。
目から涙が溢れてくる。
次第に止まらなくなり、床にポツポツと涙が落ちていく。
「違うもん…スクールアイドルは…遊びじゃ…ないもん…っ!」
本当は声を上げて泣きたかった。
だが、真姫は必死で涙をこらえる。
−−−そうだ、辛いことがあれば、いつもこうやって昔から何度も何度も涙をこらえてきたではないか。
止まれ…止まれ…止まれ…
そう、自分の心の中に言い聞かせる。
「…っ…もう、泣かない…もう、大丈夫」
ティッシュで涙を拭い、引き裂かれた楽譜はパズルのように一つ一つ繋げ、丁寧にテープを貼る。もう見つからないように机の奥深くにしまう。
「これでもう、大丈夫よね…ん?」
別の部屋から、ピアノの音が聞こえてくる。
心地より音色…と、言えば嘘になるが、必死に鍵盤に手を伸ばし、テンポキープが精一杯だが一つの曲を誕生させようと頑張っている弾き方だ。
真姫は部屋を出て、ピアノの音が聞こえる部屋へと辿り着く。邪魔をしないようにドアを開ける。
大きなグランドピアノが小さく見えるほど広い一室にこの家の使用人が小学校高学年程度の女の子にピアノを教えていた。
たどたどしい弾き方なのだが、妙に心地よく、真姫は演奏が終わるまで壁に寄り添い、聞き続ける。
「私も、昔はこうやって何度も同じフレーズを暗譜するまで練習していたわね・・・」
昔の記憶が脳裏に過ぎった頃、丁度演奏が終わる。真姫は拍手をする。それと同時に少女は真姫に気がついたのか、パタパタとスリッパを鳴らして真姫の元へと駆け寄ってきた。
「こんにちは、梨子ちゃん。今日も練習頑張ったわね」
「こんにちは!真姫お姉ちゃん!あれ?真姫お姉ちゃんは今日は学校行ってないの?」
「え゛ぇっ?あ、あぁ…そ、そうね。あれ…そういう梨子ちゃんも今日は学校−−−」
「梨子ちゃんの小学校は今日、開校記念日で一日休みなのですよ。真姫お嬢様」
そう補足説明を付け答えたのはこの家の使用人のひとり、相川涼だった。相川涼は使用人の中でもリーダー格の存在で、オフの日以外は基本的に真姫の父親の傍にいるのだ。今日の学校から家まで運転してくれたのも相川だった。
「ごめんね、相川さん。今日休みなのに仕事みたいなことさせちゃって」
「良いのですよ、真姫お嬢様。旦那様にはいつも助けられてもらっていますし、休みの日といえど、こうしてこの家のピアノを借りて近所の子達のピアノレッスンをすることぐらいしか暇を潰す手段がないのですから。さて、梨子ちゃん。今日のレッスンはここまでですよ?帰りは気を付けてお帰りくださいね?」
「うん!相川さん今日もありがとう!それと、真姫お姉ちゃん?」
「どうしたの?梨子ちゃん」
「真姫お姉ちゃんって今大人気のスクールアイドルなんだよね!?今度、私にもスクールアイドル教えてほしいんだ!」
「えっ…」
「私の学校でもスクールアイドル大人気なの!だから、今度−−−」
「ごめんね?梨子ちゃん。実は真姫お姉さんはスクールアイドルを“卒業”してしまったの。残念だけど真姫お姉さんはもう、人前では歌うことができないの」
相川は梨子を落ち着かせるように優しい言葉でなだめ始めた。次第に梨子の顔から笑顔が消えていく。
−−−それに比例するかのように、真姫の心の中に罪悪感が増えていく。
自分は、こんな幼い少女の笑顔まで失わせてしまうのか・・・。
そんな気持ちでいっぱいだった。
「スクールアイドルのことは綺麗さっぱり忘れましょう。梨子ちゃんが思い出したら、真姫お姉さんがもっと悲しんでしまいますよ?そうです。忘れなさい。スクールアイドルは、今のあなたには必要ありません・・・・・さあ、今日はもうおかえりなさい?梨子ちゃん」
「うん、相川さん、真姫お姉ちゃん、さようなら」
梨子は部屋を出ていき、相川と真姫は二人きりになった。
梨子のことが心配になった真姫はその後を追おうとする。
だが、それより先に相川の口が開いた。
「大変だったでしょう、真姫お嬢様」
「…えっ?」
「高校に入れば、中学校の時と違い、様々な誘惑がお嬢様に迷いが生まれるでしょう。今回のケースもその一つです」
「…相川さん?」
相川はピアノの椅子に座る。鍵盤の蓋を閉じ、指紋一つ残さないようにクロスでピアノを拭き始めた。
「私も、昔は子供でした。誰だってそうです。誰もが、子供という時間を過ごしてきたのです。ですが、人はいつかは大人にならなくてはいけません。大人になるという意味は、お嬢様はお分かりですか?」
「…ごめんなさい、よく、わからないわ」
「簡単ですよ?現実を受け止めれば良いのです」
「げ・・・現実?」
「そうです。子供の時はさまざまな将来の夢を考えるものです。しかし、所詮、それは夢。夢は現実ではございません。旦那様は、それを真姫お嬢様に伝えたかったのです」
「そ、そうなのかしら・・・」
「そうですよ。なら問いますが・・・真姫お嬢様、今後、スクールアイドルを続けていくとします。お嬢様は高校を卒業して、アイドルになられるのですか?」
「・・・・・・・そ、それとこれは」
「そこですよ、真姫お嬢様。今、何故“違う”もしくは“そうだ”と即答されなかったのですか?それは、お嬢様自身が一番良くわかっておられる筈です。答えはすでに、出ているのではないでしょうか?“続けていても将来には意味がない”と。だから答えが曖昧になるのです」
「そ、そんな…」
「ですが、まだ大丈夫です。まだ間に合います」
ピアノを拭き終えた相川は真姫に寄り添い、優しく抱きしめる。
突然の事で真姫は言葉を失う。
−−−だが、妙に心地よい。
何の抵抗感も無くなってしまう。
「今から昔のように、誘惑を捨てて、将来を見据えて進む時間がたっぷりあります。まだ高校1年目の1学期が過ぎようとしているだけです。今から巻き返せば良いのです。ね?真姫お嬢様−−−−−
夢は捨てて
現実を見てください
今より
“将来”ですよ?
・・・
「ごめん、うちがもっと早くにみんなに伝えておけば良かったんや・・・まさかこんなことになるとはなぁ・・・」
「希が謝る事なんてないのよ?別に隠していた訳じゃないんだし。ただ、色々とタイミングが悪かったのよ」
放課後、真姫を除いたメンバー全員で緊急ミーティングが行われ、事情は全て海未、にこ、そして希から全メンバーに伝えられた。
「全て、東條の言う通りだ。昨日の臨時の職員会議もその内容だ。事の発端は丁度、東條が職員室に来ていた時に起きた。西木野の父親が教頭に在籍証明書や成績証明書、転学照会書の発行を無理矢理求めてきてな、それができなければ理事長と直接、話がしたいと言ってきたんだ。無論、こんな時期に転出手続きは基本できないのだ、が…。西木野の父親の顔はとても広くてな、あのUTX学園から直々に招待が来ているらしい」
「それで、臨時の職員会議だったって訳なんですね・・・。でも、貴虎先生!お母さんはなにも・・・」
「言わないだろうな。ましてや、仲間がそんな状態に陥っているんだ。…俺も迂闊だった。西木野の変化に一切気がつかなかったとは、教師として情けない・・・」
「先生も悪くありません。私だって気付きもしませんでした。それより、一番の原因っていうのは、希の言った通り、お父さんがスクールアイドル活動が気に食わなかったってことよね?」
「うん。そもそも、真姫ちゃんはもともとUTX学園に入学する予定だったけど、本人の希望でお母さんも通っていたこの音ノ木坂に入学したかった、っていうのも聞いたんや。ただ、その入学時の条件で、変な遊びをせず、成績は常に上位、落とすことは絶対に許さないっていう条件だったんやて。だから真姫ちゃんもお父さんには自分がスクールアイドルっていうのは伏せていたんや。けど、ここ最近、うちらは色々な意味で有名になり過ぎた。その結果−−−」
「お父さんにバレたってことよね・・・ったく、あの馬鹿。なんでそうなる前に私達に相談しなかったのよ!!」
にこはおもいきり机をバンっと、叩く。
貴虎は注意をしようとしたが、にこの気持ちに共感したのか、あえてなにも口に出さなかった。この中で、一番彼女の力に慣れないと感じていたのは貴虎だ。教師である以上、学校側の信用問題も絡んでいるので、これ以上なにも手が出せない状況でいたからだ。
「僕達も、真姫の変化に気が付きませんでした」
「光実くんだけじゃないよ?私もだよぉ…」
花陽が必死に涙を堪えようとしていた。が、堪えきれないのか2、3滴流れてしまった。
光実はビートライダーズ、ましてや、同級生なのに友人の変化に気が付けず、ましてやこんな状況になるまで何もできなかった自分に非常に腹が立っていた。
―――友達一人救えなくて、何がビートライダーズだ。
ビートライダーズなのに、友人を泣かせてしまうなんて・・・
「ねえみんな…」
その時、今まで無言だった穂乃果が口を開いた。
海未とことり、凛と花陽は心配そうに穂乃果を見つめる。
「真姫ちゃんは、どう思っているのかな?」
−−――そうだ。
自分たちは、父親や周りの情報ばかりに気を取られていた。
本人は一体どのような気持ちなのだろうか?
一言も、本音を聞いていない。
ここにいるメンバー誰もが、その心の叫びを聞いていない。
彼女の、ほんとうのきもちは−−−−?
「ありがとう、穂乃果」
「にこ…ちゃん?」
「あの馬鹿が自分の口からほんとうの気持ちを言うわけないじゃない!そのために、先輩である私達が手を引っ張って上げないと!!
ごめん!わたしちょっと、真姫ちゃんのところ行ってくる!!」
そう言い残し、にこは部室から出て行った…。
突然のことでメンバー全員が無言となる。
しばし、時間が流れ、口を開いたのは紘汰だった。
「え?ちょっとまて、にこにーなんて言って出て行った?ことり、覚えているか?」
「たしか、『ちょっと真姫ちゃんのところ行ってくるね!』って・・・」
「にこちゃん、意外と行動がアクティブにゃ」
「凛ちゃん・・・?」
「かよちん、ミッチ、凛達って真姫ちゃんの『友達』だよね?」
「も、もちろんだよっ!」
「僕もそのつもりだ」
「だったら・・・・先輩より友達の凛達が先に行かないとダメなパターンなやつにゃ!!かよちん、ミッチ!凛達も早く行こう!!」
「え、ちょ、えぇぇぇぇぇぇっ!!?い、いやその通りだけどっ!!」
「待つんだ凛!今、考えも無しで行っても・・・」
「もう二人とも!いつまでシリアスぶってるの!?凛達はこんなのぜ~ん、ぜんっ!似合わないにゃ!ほら行っくにゃ~っ!!」
凛は花陽と光実の手を無理矢理引き、にこに続いて部室をあとにする。
「ふふっ!凛ちゃんの言う通りやね!」
「希・・・」
「うちらまで落ち込んでたって、真姫ちゃんは喜ばへんよ?考えるよりも行動!うちらってそういう仲やん?」
「っ!・・・そうね!後輩が頑張っているのに、先輩がこんなんじゃ格好がつかないわよね?私達も行かないとっ!」
絵里と希も凛達に続き、部室をあとにする。
残ったのは、貴虎と2年生メンバーのみだった。
「ふぅ…全く、お前達が羨ましく思えてくる」
「貴虎先生、止めたってダメだぜ?」
「わかっている・・・これも、俺の大事な生徒のためだ」
珍しく、貴虎は満面な笑みを浮かべ、自分の教え子の顔をまじまじと見つめた。
先程の暗い顔が嘘かのように、4人は希望で満ちあふれた表情をしていた。
「南」
「はいっ!」
「園田」
「はい!」
「高坂」
「はいッ!!」
「そして…葛葉」
「おうッ!!」
「俺の大事な…大切な生徒を救ってくれ。頼んだぞ!」
4人は同時に頷き、部室をあとにする。
最後に部室に残ったのは、貴虎のみだった。
「全く、大人が生徒に何もしてやれないとはな・・・子供たちが羨ましく思える。
光実・・・お前はまだ、将来のことを考えなくても良い。
今を楽しめばそれで良いんだ。
今しか出来ないこともある
お前は、今を自由に生きろ。
そして、守るべき存在は、必ず自分の手で守るんだ」
−−−−メンバー全員は無我夢中で走る。
目的地はもちろん、真姫の家だ。
家に直接行ってどうするか?
素直に真姫に会えるだろうか?
ましてや、父親に邪魔されないだろうか?
策は何一つ考えていない。
先頭を走るのはにこ。
次に凛と花陽と光実
続くのは絵里と希
最後に穂乃果、ことり、海未、そして紘汰だ。
一体どれだけ走っただろうか?
全員息が上がっても、誰も止まろうとしない。
時間を忘れ、ただただ走る。
気がつけばそこは真姫の家の前だった。
にこは深呼吸し、インターホンを鳴らそうとする−−−。
−あなた!一体どういうつもりなの!?−
「「「「「「「「「「っ!?!?!?」」」」」」」」」」
10人の身体中の血の気が引いた。
突然、家の中から大きな声が聞こえてきたものなので、突然家に来たことに怒らたと思ったからだ。しかし、実際にはこちらには気が付いておらず、誰かと誰かが口論を行っている様子だった。
丁度、玄関のすぐ横に大きな窓がある、バレないように10人はこっそりと窓を覗く。するとそこはリビングのようで、二人の大人が言い争っていた。
「あれって、真姫ちゃんのお母さん?」
「もう一人はお父さんかにゃ?」
『私の留守中に真姫ちゃんをUTXに転入?真姫ちゃんの気持ちも知らないで!あなたが今、何をやっているのか自覚はあるの!?』
『私は成績を落とさないと条件をつけた筈だ、だがあの様はなんだ!スクールアイドルだの、あんな危険な遊びにうつつを抜かすなど、絶対に許さん!』
『あなた勘違いしているわ!真姫ちゃんはね、別に戦いが好きでスクールアイドルをやっているわけではないのよ!?あれは真姫ちゃんが心から自分の気持ちでやりたいって思ったことなの!あなたはそんな真姫ちゃんの気持ちすら奪ってしまうの!?』
『べ、別にそのようなつもりは一切無い!!大体ああいう格好を真姫がすること事態が気に食わん!!へ、へんな男が真姫に寄り添ったらどう責任とるんだ!私の大事な一人娘なんだぞ!!』
『だったら何故それを真姫ちゃんに−−−』
「なんだ・・・そういうことね」
「にこ?」
にこは察した。
親も子も似たもの同士だったのだ。
どちらも、素直に本音が言えないのだ。
だったら、自分が取るべき行動はただ一つ−−−−。
「すぅ~~・・・・はぁ~・・・・
真゛姫゛ちゃぁぁぁぁァァァァァァァァァァァんッッッ!!!!!!」
その小さな身体から、どうやったらここまでの大声が出せるのだろうか?
その場にいた全員、ましてや、家の中にいる両親ですら、鼓膜の振動に耐えられなくなり耳を塞いでしまった。
「え゛ぇッ!?」
ベットに横になっていた真姫の耳に響いた、仲間の声。
真姫は何事かと部屋を飛び出し、下の階に降り、玄関を開ける−−−−。
「にこ・・・ちゃん・・・?」
「やっと、顔を出したわね。真姫ちゃん」
「にこちゃんだけじゃないよ?私達全員いるよっ!」
「穂乃果…?みんな…」
辺りを見渡す。
全員、息が切れてボロボロだった。
何故?
あれだけ酷いことを言ったのに、何故みんな笑顔でここにいるの?
「意味わかんないっ・・・こんなとこまで来て一体何を考えて・・・」
「当たり前よっ!私は部長として真姫ちゃんを連れ戻しにきたの!」
「だから退部届け−−−」
「あんなの捨てたわよ?」
「え゛ぇっ!!?ちょっとにこちゃん何考えて−−−」
「あんたが勝手に行動したから、にこも勝手に行動したわ」
「そんな子供見たいな理由−−−」
「子供だからよ!文句ある!?」
「っ!!」
「にこも!そして真姫ちゃんも!まだ子供よ!!今、大人になる理由って一体何!!?私達はまだ学生なんだから、まだ子供でいいじゃない!!ほんとうの気持ちをはっきり言えばいいじゃない!!」
「でもっ!!・・・私達、いつまでもスクールアイドルなんて…できないのよ?いつかは、みんな将来のために自分の道を歩き始めるんだから・・・これからやるべきことを成し遂げるために今は我慢しなくちゃいけないの!!」
「なに訳わかんないこと言っているのよ!!にこは、いや、ここにいる皆は今を駆け抜けているのよ!今しかない、この残された学生生活を精一杯過ごしているのよ!!将来とかやるべきこととかもちろん大事だけど!だからって、今を投げ捨てるなんておかしいじゃない!!」
「…っ!!」
「ねぇ真姫ちゃん・・・お願い」
にこは真姫を抱きしめる。
自分の身体より大きい彼女を、にこは必死に抱きしめた。
「な、なんだ!?だ、誰だお前達!」
「凛ちゃんと花陽ちゃんに光実くんっ・・・それに皆もっ!」
家の中からにこの大声を聞きつけた真姫の両親が玄関へとやってくる。だが、ほかのメンバーと同じく、二人の本音のぶつかり合いを見て、言葉を失ってしまった。
「本当の気持ちを教えて」
「っ!」
「真姫ちゃんは、どうしたいの?」
私は医者にならなくてはいけない。
別に嫌じゃない。
本当になりたい。
けど−−−
今、わたしは・・・・
私は・・・
私は−−−−っ!!
「また、みんなと・・・歌いたい・・・踊りたい・・・・曲を作りたい・・・・・・・ぐすっ・・・・・・みんなと一緒にいたいっ・・・・一緒にいたいよぉっ!!」
どうしよう、もう、止まらない。
今まで我慢していた全てが、溢れ出てしまう。
みんな目の前にいるのに−−−
パパとママもいるのに−−−
こんな姿・・・見せたくないよ・・・!
「にこちゃん・・・にこちゃん・・・っ・・・っ!!」
「もう、泣き虫ね。真姫ちゃん・・・よし、よし・・・」
大声で泣いたのはいつ以来だろうか。
きっと、今、鏡で見たらすごく酷い顔をしていると思う。
涙なのか、鼻水なのか、もうわからない。
わたしは、みんなと一緒にいたい。
高校に入って、始めてできた“友達”なんだから。
「ぐすっ・・・ひぐっ・・・・パパ・・・もう、成績落とさないから・・・・ちゃんと言うこと聞くから・・・お願い・・・・ぐすっ・・・・みんなと一緒にいさせて・・・・みんなと一緒に・・・・スクールアイドル・・・・したいよ・・・」
真姫はにこから離れ、面と向かって父親に本当の気持ちを伝える。どんなに涙が流れようが、鼻水が垂れようが、一切目を逸らさなかった。
「ま・・・・真姫・・・・・」
「あなた?」
「わかっている・・・・私はただ・・・・お前に危険な思いをさせたくなくて・・・」
「大丈夫だぜ?おじさん!」
「真姫ちゃんの周りには、凛達がいつもそばにいるにゃ!」
「真姫ちゃんは一人じゃありませんっ!」
紘汰と凛と花陽が後押しをするかのように胸を張って答えた。それに続くように光実が前に出る。
「真姫は僕達の仲間です。真姫を傷つけることは絶対にしません。だって、真姫は、いや、みんなは、僕の大切な“守るべき存在”ですから」
「君は・・・」
「僕の名前は『呉島光実』。真姫の、いえ、μ'sのビートライダーズです!!皆にどのようなことがあっても、僕が皆のことを守ります!!」
そうか。
これが僕の“ほんとうのきもち”か。
兄さん、見つけたよ。
守るという意味をね。
守るってことは、その人だけを守るという意味ではないんだね。
守るっていうのは、それを取り囲む全ての人を守るっていう意味なんだね。
僕達は、その大きな輪を壊してはいけない。
その大きな輪を守ることが、僕の役目なんだ。
「さすが光実くんやね。結局、うちらはなにもできなかったけどなぁ」
「それでも、みんなよくやってくれたわ」
「μ'sもこれで元通りだね!穂乃果ちゃん!」
「うん!うんうん!」
「光実も成長しましたね。紘汰」
「あぁ、だから何度も言っているだろ?ミッチが俺を追い越す日がそのうち来るってさ!」
「とりあえず、今回の件はひとまずこれで一見落着ですね?」
「あぁ!そうだな−−−っ!!?」
ふと、紘汰の耳に聞き覚えのある電子音が聞こえる。
それは、つい最近聞いたものだ。
たしか、昨夜の帰り道で−−−
「まさかっ!!」
「どうしたんです紘汰?きゃっ!」
紘汰は海未を突き飛ばし、戦極ドライバーを腰にセットし、鎧武へと変身する!
『オレンジアームズ!花道・オンステージ!』
「皆、しゃがめっ!!」
海未は頭上を見上げると、無数のザクロロックシードがμ'sメンバー目掛けて降り注がれていた!紘汰はいち早くそれを察知し、無双セイバーのガンモードでなんとかザクロロックシードを打ち落とす。しかし、残り一個が運悪く尻餅を着いていた海未のすぐ真上に落ちてしまった!
「海未ちゃぁぁんっ!!」
ことりの叫びも虚しく、海未は恐怖心により指一つ動かなかった。
「間に合わないっ!!だったら!!」
鎧武は最後の力を振り絞って、海未を抱きしめる!
瞬間、大爆発が起こり、誰もが言葉を失ってしまった。
「紘汰っ!!」
「海未っ!!」
にこと真姫が爆炎のあとに駆け寄った。
煙が晴れると、制服が軽く焦げた程度で全くの無傷の海未の姿と、海未を身体全身で守ったためか、満身創痍の鎧武の姿があった。鎧武はよっぽどのダメージを受けたのか、なかなか身体を起こせずにいた。
「こ、紘汰っ!私をかばって・・・そんな・・・」
「へへっ・・ヘルヘイムでできた通しだから、痺れだけで大丈夫だ。・・・悪い、制服、少し汚れちまったな・・・」
「そんなことどうでも良いです!はやく横になって−−−」
「そうも言ってられないみたいだな・・・くっ・・・」
鎧武はザクロロックシードが降り注がれた矢先を見る。
西木野家の屋根の上に女性の姿が見えた。
「たしか、今日校門にいた・・・誰なの?あの人」
「あ、相川さん・・・一体何を?」
「真姫ちゃん、知り合いなの?」
「うちの使用人の一人よ・・・だけど」
真姫それに真姫の両親は慣れ親しんだ使用人の変化に愕然とする。
普段は温厚で、近くの子供たちにピアノを教える優しい人物のはずが、冷酷な眼差しで自分達を見下している。
「相川、一体なんのつもりだ!はやくそこから降りてきなさい!」
「わかりました、旦那様」
「っ!」
次の瞬間、相川は数十メートル以上はある高さから飛び降りつつ綺麗に着地し、懐から戦極ドライバーとザクロロックシードを取り出す。それを見た紘汰は、まるで全てが繋がったかのように、目を見開く。
「・・・そうか、昨日のアーマードライダーは、あんただったのか」
「・・・全く、旦那様のご要望通りに真姫お嬢様からスクールアイドルを辞めさせるお手伝いをしたというのに、全て水の泡です。・・・真姫お嬢様」
「っ!」
「惑わされてはいけませんよ、真姫お嬢様。私は大人だからこれからあなたに起こることは全て知っています。その者達の口車に乗せられてはいけません。その者たちの戯言は、所詮、社会に出ても何の意味もありません」
「や、やめて・・・」
「世の中は実力です。少しでも他者より優れなければ、お嬢様は社会という大きな壁に押しつぶされてしまいます。今ならまだ間に合います。さあ、ご決断を・・・」
相川が真姫を説得させようとするが、すでに真姫の答えは一つだった。
真姫の瞳には、μ'sのメンバー達の姿があった。
「ごめんなさい、相川さん。私はここにいる、仲間と共に歩いていくわ」
「真姫ちゃん・・・」
「大丈夫よ、にこちゃん。私の答えはもう変わらない」
「相川、私も少し感情的になっていた。もう良いんだ」
「相川さん、何故あのようなことを?あなたがそんなことする人では−−−」
真姫の両親は相川に問いかけた。
だが、相川は身体中の力が抜けたように空を見て、しゃくり笑いをし始める。
「な、なんだよあいつ・・・」
「紘汰さん、あの人と戦ったことがあるんですか?」
「気をつけろミッチ。・・・強いぞ」
相川のしゃくり笑いは次第に大笑いへ変化し、その場にいた全員は言葉を失ってしまう。
「ひっひひっ・・・あ~はっ!はっ!はっ!・・・・あ~おっかしい~・・・・うぜえな・・・お前等・・・・癖え・・・・本当に癖え・・・見ててイライラする・・・・吐き気がする!」
「そうか・・・あなたのさっきの喋り方、マインドコントロールの一種の手法ですね?あなたは一体何者ですか?」
「呉島光実・・・とか言ったな、坊主。私の名は『相川涼』。またの名を・・・」
『ザクロ!』
「アーマードライダー・セイヴァー・・・変身」
『ロックオン!』
「っ!!?来るぞ!ミッチ!!」
「皆さん、下がってください!!」
光実は全員に後方へ下がるように指示をする。
相川は完全に頭に血が登ったのか、目を充血させがむしゃらにザクロロックシードを戦極ドライバーをセットする!だが、それだけではない−−−
「てめえらの実力じゃ私に一歩足りとも及ばねえよ!!」
『ブラッドオレンジ!』
「なにっ!?もう一つ!!?」
気がつけば、相川の戦極ドライバーには何故かゲネシスコアが装着されていた!
『ロックオン!』
ブラッドオレンジロックシードをゲネシスコアに装着し、カッティングブレードを下ろす!
『ブラッドザクロアームズ!狂い咲き・サクリファイス!ブラッドオレンジアームズ!邪の道・オンステージ!』
「現実をみせてやる・・・さあ、来い!」
相川はアーマードライダー・セイヴァーへと変身する!
左右非対称の赤のアーマーデザインで、西洋の騎士の鎧をモチーフとしており、左肩は鎧武と同じオレンジロックシードのアーマーである。右手には鎧武と同じ大橙丸、左手には弓型の武器、セイヴァーアローを装備する。
セイヴァーの持つザクロロックシードが正規品では無いためか、ライダーバトルとして認識されておらず、いつもは出現するリングが現れず、そのまま強制的にバトルが開始される!
「一つ聞かせろ、鎧武!」
「っ!な、なんだ!」
「ザクロロックシードの爆発で生身の人間に傷一つ負わねぇってお前わかってんだろ?何故守る必要があった!」
「そんなの、守って当たり前だろうが!!関係ねぇ!」
「はっ!理由になってねぇ・・・超うぜぇぇぇっ!!」
「い゛っ!?!?」
セイヴァーが大橙丸とセイヴァーアローを鎧武目掛けて振りかざす!だが、間合いは空いており、攻撃は当たらない。だが突如、鎧武から無数の火花が飛び散り、鎧武は膝を着いてしまう!
今、一体何が起こったのだろうか?
鎧武本人すら理由がわからなかった。
「紘汰さんっ!!」
「な、何しやがった・・・あいつ・・・っ!」
セイヴァーの周りの芝生が無残に切り刻まれていた。
再び、セイヴァーは鎧武目掛けてセイヴァーアロを振りかざした!!
「まさかっ・・・!紘汰!!避けてください!!」
「避けるって海未、あいつは・・・な゛っ!!?」
再び、鎧武から無数の火花が飛び散り、吹き飛ばされてしまった!
だがそれだけでは終わらない。
セイヴァーは一瞬で鎧武の背後へ移動し、大橙丸を振りかざした!!
「がっ!!」
直撃を受けてしまった鎧武はすでにボロボロになり、衝撃で大橙丸と無双セイバーを手から落としてしまった!
鎧武はなんとかその場に立つのだが、武器が何もない状態で攻撃手段が肉弾戦しか残っていないという最悪の状況下に陥り、無慈悲にもセイヴァーは高笑いながら鎧武へと距離を詰め始める。
「くそっ・・・駄目だ・・・昨日と、さっきのダメージが・・・まだ・・・」
「大変にゃっ・・・紘汰くんが押されてる!」
「きっと、さっき海未を守った時のダメージがまだ残っているのね。認めたくないけど、ロックシードを二つ使用しているセイヴァーは鎧武のスペックを上回っているわ」
「セイヴァーの攻撃、あれは“衝撃波”のようですね・・・しかし、今の紘汰じゃ、あの衝撃波を回避したとしても、ロックシード二つを使用したセイヴァーには歯が立ちません・・・私が、あの時避けていれば・・・」
「大丈夫です。海未さん」
「え?」
光実は戦極ドライバーを腰に装着する。
だが、いつもの彼とは何かが違う。
何か、迷いを乗り越えたかのような、鋭い目つきで鎧武とセイヴァーの間に入ろうとしていた!
「真姫だって乗り越えたんだ。僕がこのままでどうするんだ」
「ミッチ・・・」
「真姫。僕は君を、いや、皆を守るといった・・・だから・・・・だから!
みんなを守る為、僕は剣を抜きます!」
「ミッチくん!穂乃果達は、ミッチくんのこと、ずっと見ているよ!」
光実は戦極ドライバーに『斬月』のフェイスプレートを装着し、メロンロックシードを開錠した!
『メロン!』
「はい、穂乃果さん。・・・・・見ていてください、僕の変身!」
『ロックオン!』
メロンロックシードをベルトに装着し、ほら貝を鳴り響かせる!
光実は鎧武を守るかのように前に立ち、カッティングブレードを下ろした!
『メロンアームズ!天・下・御免!!』
光実はアーマードライダー・斬月に変身し、無双セイバーを引き抜いた−−−。
仮面越しだが、光実の目にはすでに迷いは無かった。
「ミッチ・・・っ!!」
「ふんっ!何人来ようが無意味だ!」
「相川さん。確かにあなたの言う通りだ」
「っ!?な、なんだ突然!」
「学生でいられる時間はとても短い。それでも、僕達は今、この瞬間を生きているんだ!!それを邪魔することは、僕が絶対に許さない!!」
「っ!!何も知らない子供が頭に乗るなァァァァァァァッ!!」
セイヴァーが斬月目掛けて衝撃波を放つ!!
だが斬月は一歩も動じず、アームズウエポンであるメロンディフェンダーでそれをガードした!
「ミッチ!」
「大丈夫ですか?紘汰さん」
「あぁ!・・・ミッチが守ってくれたお陰だ!」
鎧武は武器は無いが斬月のとなりに立ち、拳を構える!
「紘汰さん!」
「あぁ、行くぜミッチ!こっからは俺達のステージだ!」
「ッ!!?」
二人は同時にセイヴァーに向かって走り始める。
セイヴァーはセイヴァーアローで矢を放つが、斬月はメロンディフェンダーで全てガードし、鎧武は斬月の肩に飛び乗り、宙で一回転してキックを放った!
「セイハァァァッ!!」
「ぐッ!」
「もう一撃ッ!!」
「きゃあッ!!」
鎧武のキックがセイヴァーに直撃し、それに続き斬月の無双セイバーによる一太刀がセイヴァーを襲う!だが二人の攻撃は止まることが無かった!
「紘汰さん!これを使ってください!」
「任せとけミッチ!」
斬月から無双セイバーを受け取った鎧武はひるんだセイヴァーを切り刻む!無数の火花が飛び散り、それに連携して今度は斬月がセイヴァーに回し蹴りを放つ!
「グアァッ!!」
セイヴァーは声を上げて吹き飛ばされ、再び斬月の手元に無双セイバーが戻り、無双セイバーにメロンロックシードを装着する!
『一・十・百!メロンチャージ!』
「ハァッ!!」
緑色のオーラの斬撃が吹き飛ばされているセイヴァー目掛けて放たれ、直撃と同時に大爆発を起こした!
鎧武と斬月は構えを解き、セイヴァーを倒したと確かな手応えを感じた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・やったか?」
「みたい・・・ですかね?紘汰さん」
少しずつ煙が晴れ、次第にシルエットが明確になる。
だが、その場には−−−−
「え・・・嘘だろ?」
「馬鹿なっ一体どこに!?」
シルエットの招待はただの瓦礫だった。
煙が晴れると、そこにはセイヴァーの姿が見当たらない!
二人は辺りを見渡すのだが、どこにもその姿が無いのだ!
「紘汰!ミッチ!」
「あんたたち!上よ上!!」
遠くから真姫とにこのアドバイスが二人の耳に入るのだが、その時にはすでに遅かった。
『ザクロチャージ!』
「ハハハハハっ!!どこを見ているっ!!」
上を見上げると、宙を舞うセイヴァーの姿があった!セイヴァーはセイヴァーアローにザクロロックシードを装着し、必殺技を放とうとしていたのだが、その矛先は鎧武と斬月ではかった。
「う、うそ!もしかして穂乃果たち狙ってるの!?」
「そ、そんなぁ!ことりたち狙ってどうするの!?」
「やめて相川さん!あなたはそんな人じゃないはずよ!」
「真姫ちゃん・・・」
「お願い!もとの相川さんに戻ってぇ!!」
真姫の叫びはすでに相川には届いていない。
それより、このままでは穂乃果たちに直撃してしまう−−−!
「そんなこと、させない!」
「ミッチ!ぐぅっ・・・」
斬月と鎧武は穂乃果たちを守るため、走り始める!・・・のだが、鎧武は今までダメージが蓄積していたのか、膝を着いてしまう。
斬月は鎧武に気づかず、なんとか穂乃果たちの目の前に立ち、メロンディフェンダーを構えるのだが、いくら強固なメロンディフェンダーとはいえ、ザクロロックシードのフルパワーに耐えられるかはわからなかった。
それでも、皆を守ると約束した−−−。
「みんな、僕の後ろに!!」
「ふふっ・・・あははははっ!!まったくこれだから子供は!あいかわらず学習していないな!私はこれを待っていたんだ!守っても無駄だ!後ろは無害とはいえ、お前には耐え切れないだろう!!ありったけのパワーを喰らうがいい!!ハァっ!!」
次の瞬間、セイヴァーから無数の銃撃が放たれる!!全て、斬月への直撃コースだった!
鎧武も助太刀しようとするが、走っても間に合わない!
「だ、駄目だ!今から走っても間に合わねえ!!くそっ!!・・・・っ!」
その時、鎧武は懐からとあるものを取り出す。
−−−−−−昨日、ユグドラシルから受け取った『ゲネシスコア』だ。
「イチかバチかだっ!ミッチぃ!!これ使えぇぇっ!!」
鎧武は斬月に向かってゲネシスコアを投げる!
それに気がついた斬月はほぼ同時にメロンエナジーロックシードを起動させた!
「っ!」
『メロンエナジー!』
「これで終わりだァァァッァっ!!」
「っ!ミッチ!」
斬月のメロンディフェンダーに銃弾が直撃し、爆発が起きる!
セイヴァーは華麗に着地し、鎧武は丸腰で棒立ち状態だった。
「わかったか・・・所詮、子供は子供なんだよ・・・」
「・・・。いや、まだみたいだぜ?」
『ミックス!』
「何っ!?」
煙が晴れる−−−−。
すると、そこにいたμ'sのメンバーと真姫の両親を守るかのように電磁バリアが張られていた。
「ほ、穂乃果たち・・・なんともない?」
「っ!光実くん!?そ、その姿・・・」
斬月はメロンディフェンダーの構えを解く。
すると、斬月の戦極ドライバーにはゲネシスコアとメロンエナジーロックシードが装着されていた!
「言ったはずです。僕は皆を守る・・・とね」
『メロンアームズ!天・下・御免!!・・・ジンバァァァメロンッ!!』
電磁バリアが解かれ、斬月の強化変身が完了する!
今ここに、アーマードライダー・斬月、ジンバーメロンアームズが誕生した!!
「馬鹿なっ!あの直撃を全てガードしただとっ!私は認めない!!絶対に認めない!!」
セイヴァーは大橙丸で衝撃波を斬月に向けて放つ!
しかし斬月は右手を前に掲げるだけだった。
その瞬間、電磁バリアが発生し、衝撃波は斬月に直撃することなく、全てあさっての方向へ反れていく!
「なにッ!?ふざけるなッ・・・お前達子供に、なんで私がッ!」
「あなたも、きっと辛い時を歩いてきたのでしょう?」
「ッ!」
斬月はセイヴァーに向かって一歩、また一歩と歩き出す。
それに怯えるかのようにセイヴァーは後ずさりする。
「僕には、あなたに何があったのかはわかりません。でも、あなたの思いは伝わってきます」
「・・・だったら何だ!同情でもしてくれるのかッ!?私は子供のころから友達もいなかった!勉強ができなかった!ずっといじめられていた!!そんな学生生活がだいっきらいだった!!なのにお前達は一体何だ!!!!この先友達とは離れ離れになるんだぞ!!?お前達は最終的に一人ぼっちになるんだぞ!!」
「相川さん!それでも、私達は手を取り合って歩いていくわ!」
「真姫ちゃんの言う通りよ!いずれ、私たちはそれぞれの道を歩く時が来たとしても、心はずっと繋がっている!!」
「ッ!!?」
「それでも邪魔をするあなたを、僕は許さない!僕達の邪魔をしないでくれ!!」
『メロンスパーキング!ジンバーメロンスパーキングッ!!』
「いけ!ミッチ!!」
斬月はカッティングブレードを3回振り下ろし、大きくジャンプし、セイヴァーに向かってライダーキックを放った!
戦う意思を無くしたセイヴァーは棒立ちとなり、斬月のキックが直撃し、再度、爆発を引き起こした−−−−。
・・・
−−−ユグドラシル・コーポレーションの最上階の一室。
凌馬は相変わらずパソコンのキーボードを鳴らしつつコーヒーを一口呑む。
「相川涼・・・とか言ったな。つい先日、退職届を出したみたいだぜ?」
「ん?やあ、サガラ。部屋に入ってくるならノックぐらいしてほしいものだな」
凌馬は突然、目の前にDJサガラが現れたのにもかかわらず、眉一つ動かさないで黙々と手を動かしていた。
「彼女は優秀なうちの社員だったよ。潜入捜査で西木野家に潜り込んでもらっていたおかげで良いデータが沢山収集できた。けど残念だね。彼女もこのプロジェクトのチームの一員だったというのに。せっかくゲネシスコアと試作段階のロックシードもプレゼントもしてあげたのにね~」
「言っちゃぁ悪いが、俺は彼女のやり方はあんまり好きじゃねえなぁ?まあ、出る杭は打たれるっ!っていう世の中には彼女みたいに隠密に、じわじわと人の気持ちを動かす才能は今回の計画に持って来い!なんだが・・・いや~俺ぁやっぱ苦手だ!」
「でも彼女は最後の最後で良いデータを持ち帰ってくれたよ」
「ん?どういうことだい?」
「ヘルヘイムとヘルヘイムは惹かれあう・・・アダムがいるところに必ずイブが・・・・いや、まだこの件は良い。情報不足だ。それより、次の手を打たないとね」
「ほう・・・そりゃ、楽しみだ。まあ、せいぜい頑張りな・・・」
DJサガラはそう言い残し部屋を後にする。
凌馬は再度、コーヒーを一口のみ、手を動かし続けた−−−。
・・・
「そのっ・・・なんていうか・・・ただいま」
「もう何頬赤らめてるの?ほんっと真姫ちゃんって素直じゃないんだから~!」
「うっさいにこちゃん!!」
数日後、部室には長らくμ'sに顔を出さなかった真姫の姿があった。
真姫は少々罪悪感を感じつつも、普段通りのメンバーの対応に安心したのか、いつもの自分の生活に戻るのはそう時間は必要なかった。
「葛葉。それと光実。いや、皆。今回ばかりは私からも礼を言う。西木野の転校の取り止めはお前達のお陰だ。ありがとう」
貴虎は軽く頭を下げた。貴虎自身も、真姫がμ'sに戻ってきたことが嬉しかったのだ。
「それじゃあ貴虎先生!この前の補習プリントの免除を−−−」
「それとこれとは別だ葛葉。調子に乗るな」
「じょ、冗談だっての貴虎先生・・・」
その後、真姫と真姫の父親は少しずつだが日常で話す機会が増えたという。関係も修復されているようだ。だが、使用人である相川は辞職届を出し、西木野家を後にしていったという。その件に関しては真姫も残念だったみたいだが、いずれまた会えると信じているそうだ。それに、真姫自身にも変化が見られた−−−。
「ね、ねえミッチ」
「何?真姫」
「その・・・私が休んでいた時のノート、見させて欲しいんだけど・・・良い?」
「もちろんだよ。そう思ってしっかりとまとめておいたよ」
真姫が他人の力を借りることが多くなった。
少しずつだが、本人も変わろうとしているのだろう。
「さて、真姫も戻ってきたことだし、また9人での練習が再開するわね!」
「そうだね絵里ちゃん!でもその前に・・・花陽ちゃん!今日いよいよ『ラブライブ』の本選に向けての詳細なルールが発表されたんだよね!?」
「はい!ユグドラシルのホームページに事細かに説明が書いていたので、私なりにわかりやすくプリントにまとめて見ました!皆、見てください!」
「どれどれ~?・・・ふ~ん・・・」
紘汰は花陽からプリントを受け取り、ラブライブの開催告知要領が箇条書きに書かれていた。
①本大会は東京で行われる「LoveLive!東日本ブロック大会」と「LoveLive!西日本ブロック大会」の2大会が開催され、最終的にそれぞれの大会の優勝チーム同士が競い合い、最終的に日本一のスクールアイドルが決定される。
②各ブロック大会の予選は特に行われず、ユグドラシルコーポレーションが運営するスクールアイドルランキング上位8チームが自動的にエントリーされる。地区別の集計となるので、合計して16チームのみという狭き門である。集計期間の最終日は11月末とする。
③今大会でのみライダーバトルは公認とし、スクールアイドルのパフォーマンス前にバトルを申し出ることが可能。無論、バトルは拒否することができず、負けたチームは二度と今大会中でステージに立つことができない。
④ライダーバトルに関しては通常のルール通りのバトルとする。不正は許されない。
⑤今大会の開催日時は次年度の1月を予定している。正式な日程公表は今冬に告知する。
「なるほど!・・・さっぱりわかんねぇ」
「うえぇぇっ!!?酷いよ紘汰くんっ!」
「わ、わからないのですか!?ここまで簡単に書かれているのに・・・はぁ・・・」
「うちらは東日本ブロック大会の枠に当てはまるから・・・結局、A-RISEとは戦うことになるみたいやね」
「それにランキングで11月31日までに8位の中に入らなきゃ、凛達予選落ちにゃ!」
「凛、11月は30日までだよ・・・」
「ん?そうだったかにゃ?ミッチ」
「それまでに、穂乃果もツバサさんに言われた答えを見つけないとね・・・私達に足りないもの・・・まだ穂乃果にはわからないけど、必ず答えを見つけて見せるよっ!」
長かった6月が終わろうとして、いよいよカレンダーは7月に入ろうとしていた。
それを見た貴虎は無意識にため息が出てしまう。
「どうしたんだ?貴虎先生。もうちょっとで夏休みだろ!」
「馬鹿、その前に文化祭だ。μ'sの練習も文化祭に向けて煮詰めていかなくてはな。まあその前に文化祭に向けての職員会議か・・・」
「あぁ、それで職員会議ばっかりだったのか・・・先生も大変だな」
「大変なんだが、それより・・・もな・・・」
貴虎はことりをじっと見つめる。
穂乃果と海未と楽しそうに話をすることりの姿を見て、貴虎の口から再度、ため息が出る。
「ことりちゃん!文化祭で着る衣装どこまで出来ているの?穂乃果も手伝おうか!?」
「ごめんなさい穂乃果ちゃん!今日もちょっと用事があって~?えへへ~!」
「大丈夫ですか?ことり。最近用事ばかりではありませんか」
「衣装はちゃ~んと予定通りに作っているから大丈夫だよ!海未ちゃん!」
「葛葉、このあと空いているか?」
「ああ、大丈夫だけど・・・でも、なんだよ先生」
「私と付き合え」
「あぁ・・・・はっ?」
一難去って、また一難。
教師として、顧問として、貴虎の悩みは尽きることがない。
そしてここにも一つ、悩みの種があったのだ。
空はオレンジ色に染まり、また今日も終わりへと近づいていた−−−−。
「にこちゃん?」
「どうしたの?真姫ちゃん」
「その・・・・今更だけど、・・・・ありがとう」
「っ!・・・後輩の面倒を見るのは、先輩の役目!にこっ!」
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