ではでは、本編どうぞ!
今、彼らの前には豪邸が鎮座していた。
「……でか。」
「大きいです。」
「これ、家?」
「…………」←びっくりしすぎて言葉が出ない。
上から順に幻、雪羅、朧の言葉である。
「何よ? そこまで驚くこと?」
と隣にいたこの豪邸の主(の娘)であるアリサが庶民感覚ゼロに近い発言をした。
本日、なのは、すずか、そして、飛天一家の面々は、アリサの家に招待されていた。この家に何度も来たことのあるなのはや自身も豪邸に住んでいるというすずかは、まったく動じていないが前世でも今でも庶民サイズの家に住んでいる幻たちはその家の大きさにかなり驚いていた。
「ったく、いつまでびっくりしてるのよ?さっさと中に入るわよ。」
「あ、ああ。」
アリサに急かされて幻たちは、いまだに驚きを隠せないまま家の中に入っていった。
「ほーら、まずは私の部屋に行くわよ。」
「幻くん早く。」
「朧ちゃんも。」
幻たちは、アリサたちに背中を押されて彼女の部屋に連れて行かれた。
部屋に入った幻たちはまた驚いた。子供部屋にしては広過ぎるアリサの部屋には大小様々な大きさの犬が10匹ほどいた。それを見た幻はアリサの方を向き
「バニングス、お前……お嬢様だったんだな。」
「なっ?! あんた、失礼にもほどがあるわよ!!」
普段の言動からアリサのことをお嬢様だと思っていなかった幻が意外なものを見る目でアリサを見ながら呟いた。その呟きに怒ったアリサは幻に吠えていた。その様子を見ながら月影は笑い、雪羅は我関せずと犬たちと遊んでいた。
そして……
「わんわんっ!!」
「きゅーきゅー!!」
ユーノは大きな犬に追い掛け回されて、部屋中を鳴きながら走り回っていた。
「ユ、ユーノくん?!」
ユーノに気付いたなのはが慌ててユーノを抱き上げた。アリサは犬の方を大人しくさせていた。そんな様子を見ていた雪羅がユーノの方を向いて呟いた。
「……いたんですね、ユーノさん。」
「きゅっ、きゅー!『いたよ、ずっとなのはの肩に!』」
ユーノは鳴き声と念話で雪羅に抗議していた。
――――――――――――――――――――
コンコン。
「失礼いたします。お嬢様、昼食の準備が整いましたのでお庭の方へ。」
控えめなノックの音と共に初老の男性が部屋に入ってきて、アリサたちに昼食が用意できたことを告げた。彼は鮫島といい、バニングス家で執事兼運転手をしている男性である。
「分かったわ、ありがとう。さぁ、みんな庭まで移動するわよ。」
アリサは鮫島に礼を言い、幻たちを庭へ案内した。
案内された場所にはテーブルや椅子が置かれ、その上にはサンドイッチや紅茶のポットが置かれていた。
「なぁ、バニングス。昼食前に1つ聞いてもいいか?」
「何よ?」
「バニングスの家の土地ってどこからどこまで?」
今幻たちがいるこの建物は、小高い丘の上に建っており、その周囲は山や森に囲まれていた。来る時にその光景を見た幻は、どの辺りまでがバニングス家の土地なのか気になっていたので、アリサに聞いてみた。ちなみに、幻たちは家が建っている小高い丘がバニングス家の所有と思っていた。
「確か、この辺りの森や山は全部バニングス家の土地だったはずよ。」
「…………は?」
しかし、返ってきた予想以上の答えに幻たちは目が点になった。
「幻くん、私たちってすごいお嬢様と知り合えたんだね。」
「ああ、本当だな。こんなお嬢様、そうそう出会えるもんじゃない。」
「……もう突っ込まわないわよ、私。」
いちいち驚く幻たちに疲れたのか、アリサがため息混じりに呟いた。
「にゃはは、私も最初に来た時は驚いたんだよね。」
「そうだったよね。私はそんなに驚かなかったけど。」
「それはすずかちゃんも大きな家に住んでるからだよー」
先に席に着いたなのはとすずかは幻たちの様子を眺めながら昔の自分たちのことを思い出していた。
しばらくして全員が席に着いたのを確認して、幻たちはサンドイッチを食べ始めた。
――――そんな中、事件は唐突に起きた。
一番最初に気付いたのはユーノだった。
「(!? この魔力反応はジュエルシード?!)『なのは! 幻!』」
「『……これがジュエルシードの魔力反応か。近いな。てか、この家の範囲内じゃね?』」
「『ど、どうしよう? ユーノくん。ここだと2人を巻き込んじゃうよ!』」
よりにもよってジュエルシードはバニングス家の敷地内にあった。そしてここだとアリサとすずかを巻き込んでしまうと思ったなのはは少し動揺していた。
「『それについては大丈夫。僕が結界を張るから。』」
「『結界?』」
「『まぁ、一言で言うとバリアだよ。そうだ! ユーノ、お前、森の方に走れ。んで、なのはがそれを追いかける。これで自然とこの場から離れられる。んで、結界張って、あとはいつも通りに封印っと。これでいいだろ?』」
幻が思いついた作戦を念話で伝えた。なのはとユーノは、軽く頷いて了解の意思を示した。
「『月影たちはここで待機しててくれ。万が一のことがあったらバニングスと月村を頼む。』」
「『分かりました。(分かった。)』」
「『え? でも幻くん武器はどうするの?』」
月影たちをここに残すということは幻には手持ちの武器がないのでは?と思ったなのはが幻に聞いてきた。
「『ん? ああ、大丈夫だ。俺1人でも妖力を使えば別に問題ない。』」
「『よ、妖力?』」
「『まぁ、お前らで言うとこの魔力だよ。それより、いくぞ!』」
「『うん。』きゅー、」
幻が言うと同時にユーノが森の向こうに走っていった。
「あっユーノくん」
「ユーノ、どうしたのかしら?」
「な、何か見つけたんじゃないかな?私ちょっと行ってくる。」
アリサの質問に緊張気味に答えてなのははユーノを追いかけて行った。
「ちょっと、待ちなさいよ。」
「バニングス、俺が行くよ。みんなはここでのんびりしててくれ。」
なのはを追いかけようとしたアリサを止めてから、幻はなのはたちを追って森の中に入っていった。
――――――――――――――――――――――
森に入って少しするとバニングス家を覆う形で結界が発生し、幻はそこからもう少し走った所でなのはたちに追いついた。
そして、なのはたちの目の前にはジュエルシードの力で狂暴化した暴走体が暴れて
「わんわんっ! くぅ~ん。」
……いなかった。
彼女たちの前には全長5、6mくらいの巨大な柴犬がいた。
「……バニングス家にはこんな超大型犬もいたのかー。流石、お嬢様はやることが派手だな。」
「うん。そうだね……って、あれは明らかにおかしいよね?!」
「あれは、あの仔の大きくなりたいって願いが正しく叶えられたんだよ、たぶん。」
幻の言葉にノリ突っ込みをしたなのはたちを見ながら、ユーノが自分の考えを言った。しかし、のんびりと話をしているわけにもいかないので、なのははレイジングハートを取り出し変身した。
―――その時突然、どこかから飛んできた雷撃が犬に命中した。
「?! これは、魔力攻撃?!」
「え?! い、一体どこから?」
驚いたなのはとユーノは辺りを見まわしていた。
「あれ? この雷撃って」
幻は見覚えのある魔法から突然の襲撃者の正体に気が付いた。
「あそこからだ!」
ユーノに言われて振り返ると、ここから少し離れた所にフェイトがいた。彼女はバルディッシュを構え、再び犬を攻撃をしてきた。
「バルディッシュ。フォトンランサー、連撃。」
『Yes,sir. Photon Lancer. Full auto fire.』
「させない!!」
『Protection.』
フェイトが放った雷撃をバリアジャケットを纏ったなのはとレイジングハートが防いだ。
「……魔導師?」
フェイトは自分以外にも魔導師がいたことに少し驚きながらも攻撃を再開した。なのははそれを懸命に防いでいたが、フォトンランサーの1発が犬の足に当たり犬はバランスを崩して転倒した。なのはがそれに気を取られた隙にフェイトはその場から跳び、なのはの近くに着地した。
2人は互いにデバイスを構えたまま何も言わなかった。
「あなたは、誰?どうしてこんなことを?」
先に口を開いたのはなのはだった。
「フェイト・テスタロッサ。私がこのロストロギア・ジュエルシードを集めている理由はあなたには関係ない。」
フェイトはなのはの質問に静かに答えた。
「(あの子、ジュエルシードの正体を知ってる? ということは、やっぱり僕と同じ世界から来た魔導師!)」
フェイトの言葉からユーノは彼女が自分と同じ世界出身だということに気付いた。
「とにかくそこのジュエルシードは私がもらう。邪魔しないで。」
「させないよ。これはユーノくんが集めてるものだもの!」
「じゃあ、2人で勝負して勝った方が持っていけば?」
互いに睨み合って1歩も譲らない状態の2人に、今まで戦闘&会話に参加してこなかった幻がなのはの後ろから声をかけた。
「げ、幻?! どうしてここに?」
「よっ。フェイト。」
驚くフェイトに幻は軽く返事を返した。
「あれ? 幻くん、あの子のこと知ってるの?」
「まぁ、少しだけな。で話を戻すけど、2人ともジュエルシードが欲しいんだろ? だったら模擬戦やって勝った方が、こいつを持っていけばいい。」
と言って幻は、手に持ったジュエルシードを2人に見せた。
……え?
「ちょっと待って! 何で幻がそれを持ってるの?」
慌てたユーノが幻に聞いてきた。
「いや、なのはとフェイトがドンパチやってる間に俺が封印してきた。犬はさっきの攻撃で気絶してたから、その間にどうにかできないかなと思ってさ。それで、ためしに静まれって念じながら妖力の塊をぶつけてみたら封印できた。これ証拠。」
と言って幻は自分の頭を指さした。
「あんあんっ」
そこには先ほどの茶色い柴犬が本来の姿で幻の頭に載って、元気に吠えていた。
「か、かわいい。」
フェイトが顔を少し赤らめながら呟いた。
「じゃあ、模擬戦開始。ほら、早く始めないとまたこいつに渡すぞ?」
と言って幻は頭上の仔犬を指さした。
なのはとフェイトは若干戸惑いながらも互いにデバイスを構え、模擬戦を開始した。その様子を見ながらユーノが幻に聞いてきた。
「幻、なんでこんなことを?」
「ん? ああ、なのはに実戦経験を積ませようと思ってな。」
「けど、もしジュエルシードがあのフェイトって子に渡ったらどうするんだよ?」
「大丈夫だろ。フェイトはこいつを悪用しない。あいつはそこまで悪人じゃないよ。」
幻が真面目な表情でそう告げると、ユーノは不思議に思って聞いてきた。
「なんでそう言い切れるんだい?」
「フェイトと最初に会った時、あいつはジュエルシードの暴走体と戦っていたんだよ。その時、まぁ、いろいろあって、俺も戦闘に参加するって言ったんだ。そうしたらあいつは、あなたを巻き込むわけにはいかないって言おうとしたんだ。人の心配ができる優しい子がこれを悪用するとは思えない。」
幻はそう言いながら手に持ったジュエルシードを見た。そしてユーノの方を向き
「それから、多分この勝負はフェイトが勝つだろうしな。」
「?! どうしてそう言えるんだい?」
「あのなぁ、ついこの前魔導師になったばかりのなのはが、それなりに訓練積んでるっぽいフェイトに適うはずないだろ。」
先日フェイトと共闘した幻は、その動きから彼女がそれなりに訓練を積んでいる魔導師ではないかと考えていた。
そして、模擬戦開始から約15分後にフェイトがなのはにバルディッシュを突き付け、幻の予想通りフェイトが勝利した。幻から約束通りにジュエルシードを貰ったフェイトは、肩で息をしていたなのはをチラリと見て、そのまま何も言わずに去って行った。
「ごめん、ユーノくん。」
ジュエルシードを手に入れられなかったなのはがユーノに謝った。
「私、もっと強くなる。だからユーノくん、私にもっと魔法のことを教えて!」
そして、真剣な表情でユーノの目を見ながらなのはは強くなることを決心した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ちなみに
「遅い!!今まで何やってたのよ!?心配したじゃない!」
ジュエルシードを手に入れて戻って行ったフェイトを見送り、アリサたちの所に戻ってきた幻たちをかんかんに怒ったアリサが待っていた。
「えーっと、木に登って降りられなくなったユーノを助けてたら、ついでにこいつも助ける羽目になって……な?」
「あんっ!」
幻の苦しい言い訳に答えたのは、頭に乗った仔犬だけだった。
続く
というわけで、大きなものがたくさん出てきた回でした。
ちなみに何でアニメみたくすずかの家ではないのかというと、作者が犬好きだからです。
猫も好きですが、どちらかというと犬が好きですね。
補足:バニングス家の土地云々は、私の解釈です。あと、豆柴はアリサが捨てられていたのを拾ったという設定で。(アリサの家に日本の犬はいないような気がしたので。)
あと、今まで投稿した話に修正を加えたりしたのでよろしくお願いします。
では、また次回!!