転生した天狗とリリカルな物語   作:下駄河童

14 / 23
いつも読んでくれて、ありがとうございます!!
では、どうぞ。


第13話 母(善人)来ます

幻たちが温泉から帰ってきてから、数週間が経過していた。

あれからもなのは、フェイト、ついでに幻はジュエルシード探しを続けていた。

現在回収したジュエルシードの数は、なのはたちが5つ、フェイトたちが4つ、幻たちが4つとなり、ようやく半分を超えたところである。

 

そんなある日、今日も無事に学校の授業を終え、幻は屋上で羽を伸ばしていた。

 

「あー終わった、終わった。」

 

バサァ……

 

……本当に羽を伸ばしていた。

 

『幻くん、他の人に見られたら大変だよ?』

 

とアクセサリー形態の月影が翼を出した幻を注意していた。

 

「いやー、翼をしまったままだと結構しんどくてなー。それに今は放課後だ。ここの生徒は昼休みの時くらいしか屋上に来ないから大丈夫だろ。」

『いえ、そういうことではないのですが……』

 

と月影の注意を適当に聞き流す幻に呆れ気味の雪羅が溜息混じりに呟いた。

とそれまで冗談交じりに話していた幻が急に真面目な顔になった。

 

「それにさっきから俺たちを監視してる人がいるみたいだし、ちょうどいいかなって。でしょ?」

 

と言って幻は後ろを振り向いた。

 

「まさか気付かれていたとは。確かに不思議な方ですね。」

 

すると、屋上の入り口の陰から1匹の猫が現れた。

 

「げん、何? このしゃべる猫。」

 

と今まで姿を消していた朧も術を解いて姿を現した。

 

「さあな。まったく、しゃべるフェレットにしゃべる狼と続いて、今度はしゃべる猫かよ?」

『最近、流行ってるんですかね?』

『そのうちナナもしゃべったりして。』

「えーと、と、とりあえず争うつもりはありません。私は、私の主・プレシア・テスタロッサの命を受けて参りました。リニスと申します。」

 

幻たちの若干ずれたリアクションに戸惑いながらも、しゃべる猫・リニスが名乗った。

 

「って言われてもなー。ん? テスタロッサ? どっかで聞いたような?」

『幻くん、幻くん、フェイトちゃんだよ。』

『そういえば、確かに彼女はフェイト・テスタロッサと名乗っていましたね。』

「ってことは、フェイトの家族か?」

 

と幻が尋ねると、リニスは軽く頷いた。

 

「はい、私の主人・プレシアは、フェイトの母親です。」

「なるほど。で? 俺に何の用ですか?」

「はい。幻様には何度かフェイトを助けてもらったそうで。そのお礼をプレシアが言いたいそうです。学校も終わったようですので、特に予定がなければ一緒に来てもらいたいのですが。」

 

幻の質問にリニスは淡々と答えた。

 

「別にお礼を言われるほどのことはしてないんだけど。まぁ、せっかくの機会だし会ってみるか。あと、様はやめてください。」

「分かりました。じゃあ、幻くんで。それでは転移しますので、この魔方陣の中に。」

 

そう言うとリニスの足元に大きな魔方陣が現れた。幻は朧と2人で魔方陣の中に入り、テスタロッサ家があるという “時の庭園” へと転移した。

 

 

――――高次空間内・時の庭園――――

 

「これ、どうやって動いてるわけ?」

 

時の庭園に到着した幻は周囲を見渡しながら隣にいたリニスに聞いた。

 

「この“時の庭園”が次元の間を移動できるのは、動力源にロストロギアが使用されているからです。」

「ロストロギアって、確かジュエルシードと同じやつだっけ?」

「確かに名称は同じだけど、その能力は別物よ。」

 

人間の姿に戻った月影の質問に、後ろからやってきた女性が答えた。幻たちが振り返ると、そこには黒い髪をした女性が立っていた。

 

「あら、プレシア。お連れしました、飛天 幻くんです。」

「どうも、飛天 幻です。こっちは俺の家族です。」

 

幻と紹介された月影たちがぺこりと礼をすると、プレシアはふふっと微笑んだ。

 

「あら、礼儀正しいのね。私はプレシア・テスタロッサよ。それと以前は、娘を助けてくれてありがとう。」

「別に助けたってわけでもないんだが。」

 

幻は、頬をかきながら言った。

 

「……え? 幻?」

 

すると幻の後ろから聞き覚えのある声がした。幻が振り返るとフェイトとアルフが立っていた。丁度、地球から転移してきたようだった。

 

「よっ、久しぶりだなフェイト。ジュエルシード集めは順調か?」

「あ、うん。母さんただいま。ジュエルシード今日は1つ見つけたよ。これで5つ集まったよ。」

「本当?! よく頑張ったわね、フェイト。アルフもお疲れ様。」

「ただいま、プレシア、リニス。久しぶりだな、幻。」

 

どうやら2人は集めたジュエルシードを届けに来たようだった。

これでフェイト組の持つジュエルシードの数は5つとなった。

 

「ところで何で幻がいるの?」

「私が呼んだのよ。あなたがよく彼の話をするからどんな子なのか1度会っておきたくて。」

「か、母さん!? ち、違うよ? 幻、違うからね?」

 

プレシアがよくという所を強調して言うとフェイトは顔を赤くして必死に母の言葉を否定しようとしていた。

 

「プレシア、あまりフェイトをからかわないでください。」

「あ、ありがとう。ところでリニス、何で猫の姿なの?」

「あぁ、そういえばそうですね。戻りますね。」

 

とリニスはそう言うと、猫から人の姿になった。幻たちは特に何も言わなかったが、それを不思議に思ったプレシアは幻に尋ねた。

 

「驚かないのね。」

「まぁ、月影たちやアルフさんで慣れましたから。」

 

と話していると、雪羅がプレシアに声をかけた。

 

「ところで、プレシアさん。1つ聞きたいことがあるのですが。」

「……私がジュエルシードを集めている理由かしら?」

 

雪羅が尋ねると、質問内容を予想していたプレシアがそれに答えた。しかし、隣で聞いていた幻が雪羅を止めた。

 

「待て、雪羅。フェイトが前に理由は言えないって」

「ですからフェイトさんではなく、プレシアさんに尋ねました。」

「雪羅ちゃん、それ屁理屈。」

 

「貴方たちになら話してもいいわ。」

「母さん!?」

 

さらりとOKを出したプレシアにフェイトが驚いた。

 

「いいのよ、フェイト。それにいずれは局に話すであろう内容ですし……私がジュエルシードを集めているのは、私のもう一人の娘であるアリシアを蘇らせるためよ。」

 

ジュエルシードを集めている理由をプレシアが語った。

 

「……詳しく聞かせてくれ。」

「少し長くなるわよ?」

 

幻たちにそう前置きしてプレシアは、ジュエルシードを集めている最大の理由となる自身の過去のことについて話し始めた。

 

かつて自分にはアリシアという娘がいたこと。

職場での新型の魔力駆動炉の暴走事故にアリシアが巻き込まれたこと。

肉体だけが残ったアリシアを蘇らせようと寝る間を惜しんで研究に没頭して、アリシアのクローンとしてフェイトを生み出したこと。

しかし、フェイトは容姿以外は全く違っていたこと。

やがてジュエルシードの情報にに辿り着き、事故で散らばったというジュエルシードを集め始めたこと。

それらのことをプレシアはゆっくりと語った。

 

「ジュエルシードには相手の望みを叶える力があるので、それを使えば、もしかしたら……」

 

途中、プレシアの傍にいたリニスが彼女の話を補足していた。

 

「私は最低の母親よ。最初はアリシアのことを思うばかりにフェイトに辛く当たったりもしたわ。あの時、リニスとアルフが力ずくで止めてくれなかったらと思うとゾッとするわ。」

「……母さん。」

 

自嘲気味に言うプレシアを、フェイトは心配そうに見つめた。

 

「だが、今は違うんだろ?」

「ええ、フェイトは私の娘よ。そしてアリシアも必ず蘇らせるわ。」

「仮にアリシアが蘇ったとして、ちゃんと2人を平等に愛せると約束できるか?」

「もちろんよ。」

 

幻が尋ねるとプレシアが即答した。

 

「そういうことなら、こいつを渡そう。」

 

そう言うと幻は、制服のポケットから4つのジュエルシードを出し、プレシアに渡した。

 

「これは、ジュエルシード?! どうして貴方が?」

「友人に頼まれて探してたやつだ。娘の為に使ってくれ。ただし、もし約束を違えれば、今度は俺があなたを全力で止める。」

「……ありがとう。」

 

「待ってください。」

 

とそれまで黙って話を聞いていた雪羅が待ったをかけた。

 

「プレシアさん、あなたの事情とジュエルシードを集めてる理由は分かりました。けど1つだけ気になることがあります。」

「なにかしら。」

 

プレシアが尋ねると、雪羅は疑問に思っているを話した。

 

「ジュエルシードは、それを発見した幻の友人が探している物です。そして、彼曰くジュエルシードの回収・管理は、本来であれば時空……なんとか局が行うそうです。事情があるとはいえ、プレシアさんが局の許可なくジュエルシードを使うことは何らかの罪になるのではないですか?」

 

雪羅が言い終えるとプレシアは口を開いた。

 

「……確かにあなたの言う通りよ。私は管理局に許可をもらってないし、それに彼らは許可なんてくれないわ。」

「では、あなたは愛する娘を犯罪に巻き込んでることになりますが?」

「違うよ!!」

 

雪羅の言葉をフェイトが大声で否定した。

 

「ジュエルシード集めは、私が母さんにお願いして、私自身の意思でやってるの。むしろ母さんは私を関わらせないようにしてた。でもアリシア、姉さんを蘇らせようと1人で頑張ってる母さんをただ見ているだけなんて嫌なの!」

「……フェイト」

 

涙ながらに自身の思いを語るフェイトをプレシアが優しく抱き留めた。その光景を見た雪羅は2人に頭を下げた。

 

「嫌な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。ですが、これで皆さんの覚悟を知ることができました。我々も協力したいと思いますが、幻、どうでしょう?」

「俺は、手持ちのジュエルシードを渡した時から協力するつもりだったよ。」

 

幻がそう言うと月影、朧の2人も頷いて協力に賛成した。

テスタロッサ家の面々は幻たちに感謝の気持ちでいっぱいになり、涙を浮かべていた。

 

「さて、話もまとまったところで状況を整理するか。現在ジュエルシードの数は、フェイトが9個、なのはが5個。残りの7個は……とりあえず地球に戻って探すか。あっ、プレシアさん。これ、家の住所です。何かあったら、ここに来てください。」

 

幻はそう言うと1枚のメモ用紙をプレシアに手渡した。幻がメモを渡し終えると、涙を拭いながらフェイトが口を開いた。

 

「幻、私も戻って一緒に探すよ。」

「あたしも行くよ、フェイト。」

「よろしく頼むわね。フェイト、アルフ。そしてありがとう、幻、皆さん。」

 

プレシアの感謝の言葉を聞きながら幻は転移符を使って海鳴へと転移した。

 

―――――――――――――

 

時の庭園を後にした幻たちは、月影の転移符で海鳴市に転移した。

 

「ほい、到着っと。ん? どうかしたか?」

「……あんた、今何したんだい?」

 

アルフが不思議そうに聞いてきた。

 

「何って、この符で転移をしただけだが?」

「ちなみに、それ私のお手製。しかも、何度でも使える!」

「この紙切れで、呪文もなしにかい?」

「か、紙切れ?!」

 

手作りの護符を紙切れ扱いされた月影は涙目になっていた。

ちなみに先程、幻がとった行動は、転移符を出す→一言「海鳴へ」→転移→到着 である。

 

「えっ? 呪文っているの?」

 

落ち込む月影をスルーして幻が話を続けた。

 

「「……信じられない」」

 

フェイトとアルフは、唖然としていた。彼女たちにとって他次元への転移とは、呪文と移動先の座標を唱える(もしくは心で思う)という少し時間のかかるものが普通であり、紙切れ1枚で瞬時に飛ぶというのは信じられないことだった。

 

――――――――――――――――――――

 

「あれ? フェイトちゃん? 幻くん?」

 

フェイトたちと話していると不意に聞き覚えのある声が聞こえた。振り返ると、そこにはなのはがいた。

 

「……なのはか。」

「幻くん、どうしてフェイトちゃんと一緒にいるの?」

「えーと、実はな」

 

と幻が言いかけたところで、突然目の前に魔法陣が現れ、1人の少年が転移してきた。

 

「取り込み中に失礼する。時空管理局執務官・クロノ・ハラオウンだ。君たちに聞きたいことがある。同行してくれるかい?」

 

黒い防護服を着て、杖を持った少年・クロノが幻たちに告げた。

 

「えっと、じ、時空管理局って?」

 

クロノが言った組織の名前がピンとこなかったなのはが肩にいるユーノに聞いた。

 

「時空管理局というのは簡単に言えば、次元世界を管理する組織。地球でいうところの警察と裁判所が合わさった組織……でいいかな。」

 

と地球の知識を少し勉強したユーノが簡単に説明していた。

 

「管理局か!? まずい、フェイト、逃げるよ!」

「うん。」

「逃がさない!」

 

その間にアルフとフェイトが逃亡しようとし、それに気づいたクロノが魔法で拘束しようと2人に杖を向けた。

 

「うわっ!? なんだ!?」

 

しかし、その時、突然クロノとフェイトの間に大量の石つぶてが降ってきた。突然の怪奇現象に驚いたクロノは2人に狙いをつけることができなかった。

 

「くっ、この!!」

「だめ!!」

 

それでも、魔法を放とうとするクロノの前に今度はなのはが手を広げて立ちふさがった。

 

「『フェイト、アルフ、今のうちに行け。』」

「『分かった。行こう、フェイト!』」

「『うん。幻、今日はありがとう。』」

 

幻に礼を言いながら、フェイトとアルフは去って行った。

 

 

―――――――――――――――――

 

その様子を映像で見ている者たちがいた。

 

「逃走した2人の追跡は?」

「多重転移で逃走しているため、追い切れません。」

「そう。あと、さっきの現象は?」

「分かりません。」

 

オペレーターの1人がそう言うと、翠の髪の女性は静かに頷いて椅子に腰かけ、幻たちがいる現場の映像を見た。

 

「まぁ、この子たちから色々と聞けるでしょう。」

 

そう言うと手元の機械を操作した。

 

――――――――――――――――――

 

『クロノ、お疲れ様。』

 

幻たちの前にスクリーンのようなものが現れ、そこに映っていた翠の髪の女性がクロノを労った。

 

「すみません、艦長。片方には逃げられました。」

『まぁ、大丈夫よ。とりあえず、当初の予定通りにそこの子たちをアースラまで連れて来てくれるかしら?』

「分かりました。」

 

クロノがそう言うと、スクリーンは消え、クロノも転移用の魔方陣を展開させた。なのはとユーノはクロノの指示に特に抵抗せずに従っていた。

 

「なぁ、俺らに拒否権はないの?」

「ここは大人しくついて行って、向こうの情報を得るのも手かと。」

「なるほどな。」

「なんだかスパイみたいだね。」

「わたし、本当のスパイ。」

 

一方、幻たちは顔を近づけて小声で相談をしていた。

 

「早く来てくれないか?」

「分かった。ただし、2つ条件がある。」

「何だ?」

 

クロノが聞くと、幻は真面目な表情になり、条件を言った。

 

「家の愛犬を連れてくる時間と夕食の提供を頼む。腹が減った。」

 

その少しずれた内容になのはやクロノは、ズッコケそうになった。

 

 

 

続く




というわけで、プレシア(善)、リニス、ついでに管理局メンバーが登場しました。
テスタロッサ家についてはプレシア善人、リニス生存で進めていきます。

以下、補足です。

ジュエルシードには、今後の物語の都合上、願いを叶える力が原作よりも強いということにしてあります。ご理解していただけると助かります。(ジュエルシード≒四魂のかけら ※犬夜叉参照)




では、また次回!! 次回はリンディ茶が出ますよ(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。