「到着だ。まずは事情を聴きたいので、僕についてきてくれ。」
「あっ、はい。『ユーノくん、ここどこ?』」
「『えっと、多分、管理局の保有する次元航行船の中かな。』」
次元航行船。
この世界にいくつもある次元世界の間を自由に行き来できる船である。
とクロノの後ろを歩いていた幻たちにユーノが説明してくれていた。あの後、幻は家で留守番をしていた愛犬・ナナを頭に載せ、ついでにいつもの着物に着替えて、クロノたちの下に戻ってきた。そして、転移魔法でこの船にやってきた。ちなみに、先ほど逃走するフェイトを狙ったクロノをなのはが妨害したことについては特別に不問とされた。また、なのはがクロノを妨害する前に降ってきた大量の石つぶてについては原因不明だった。
「『けど、あの石の雨はなんだったんだろう? 幻くん、分かる?』」
「『分からん。(まぁ、“天狗礫”っていう現象で、俺の力の1つなんだけどね。)』」
……犯人は身近にいた。
「あぁ、そうだ。バリアジャケットとデバイスは解除してくれて構わないよ。」
「あっ、はい。分かりました。」
と前を歩いていたクロノが振り返って言うとなのはが頷いて、レイジングハートを待機状態に戻した。月影と雪羅も人の姿に戻った。それを見たクロノは驚いていたようだったが、特に何も言ってこなかった。
「君もだ。それが本当の姿じゃないだろ?」
「あっ、そうでした。ずっとこの姿だったんで忘れてました。」
クロノがユーノに言うと床を歩いていたユーノは頷いて足元に魔法陣を展開し、
「なのはや幻にこの姿を見せるのは久しぶりだよね?」
人間の姿になった。
「……ふえぇぇええ?!」
「ああ、やっぱり人間にもなれるんだ。」
なのはは人間になったユーノを見て奇声をあげ、アルフやリニスを見ていた幻たちはやっぱりかと納得していた。一方、人間の姿になったユーノは2人、特になのはのリアクションに驚いていた。
「え? なのは?」
「ユ、ユーノくんって、ユーノくんって、ふええぇぇえ!?」
「落ち着け、なのは。フェイトのところにも人と獣の姿になれる人がいただろ?彼女と一緒だ。」
「って僕は使い魔じゃないよ!!……ってアレ?僕が助けられた時ってこの姿じゃ?」
「違うよ!ユーノくんは最初からフェレットだったよ。」
なのはが慌ててそう言うと、ユーノはしばらく目をつぶって助けられた時のことを思い出そうとした。
ポク、ポク、ポク……チーン
「ああ!!そうだった!ご、ごめん、この姿見せるのは初めてだった。」
「そうだよね?あぁ、びっくりした。」
思い出したユーノが慌ててなのはに謝っていた。その様子を見ていたクロノが呆れた顔をしながら言ってきた。
「君たちの間で何があったのかは知らないが、艦長を待たせているので急いでくれないか?」
「あ、はい。」
「すみません。」
急かすクロノになのはとユーノが謝った。一方、クロノはユーノを見ても落ち着いている様子の幻を見て、少し不思議に思って聞いてきた。
「そういえば、君は驚かないんだな。」
「まぁ、ある程度予想してたし。慣れてるからな。」
そう言って幻は横を歩く剣精姉妹を見た。
「ええ、私や姉さまは武器に変化しますから。」
「私たちのことは特殊な“でばいす”ってことで。」
月影と雪羅の補足説明を聞いてクロノは納得したようだった。
「なるほど。……もしかして、君の頭の上にいる犬や、この子も?」
そう言ってクロノはナナと相変わらず無表情の朧を交互に見た。クロノに聞かれると朧は少しムッとした表情になった。
「私、人間。」
「ナナも普通の犬だよ。ね?」
「あん!」
月影の言葉にナナも「そうだ」と言いたげに吠えた。
そんな会話をしながら、幻たちはクロノの後に続いて艦内を歩いて行った。
艦内をしばらく歩くと、目的の場所に着いたようだった。その部屋の自動ドアが開くとクロノが中に入り、幻たちもその後に続いた。
「失礼します。艦長、連れてきました。」
中に入ると、先ほど映像で見た女性が座っていた。そして、部屋の中には盆栽や茶道具、なぜか獅子脅しが置いてあった。
「(何だろう?この部屋。)」
「(何か日本の文化を勘違いしてる外人さんみたいなの。)」
「(……“黒い牙”の仲間にもこんな人いたなー)」
ユーノ、なのは、幻はそれぞれそんなことを考えていた。
「お疲れ様。まぁ、皆さん、楽にして下さい。それと、初めまして、リンディ・ハラオウンです。この船・アースラの艦長でもあります。よろしくね。」
翠色の髪の女性・リンディが名乗ると幻たちも自己紹介を始めた。
「えっと、高町なのはです。」
「ユーノ・スクライアです。」
「飛天 幻だ。」
「幻くんの家族の1人、月影です。よろしく!」
「同じく雪羅です。」
「朧。」
「あんあん(ナナです。訳:幻)」
自己紹介が一通り済んだところでクロノが幻たちにお茶と羊羹を出してきた。
「どうぞ。」
「なぁ“黒いの”、ここに来る条件の1つ・夕食の提供を羊羹で済ませる気じゃないよな?」
「心配するな。後でちゃんと出す。あと、“黒いの”じゃなくてクロノだ。」
「なら、いい。」
「それでは、まずは、なぜあなた方がジュエルシードを集めていたのかを聞かせてもらいますね?」
幻とクロノの会話が一段落したところでリンディが軽く咳払いをして話題を切り替えた。そして、ユーノがジュエルシードの発見から現在に至るまでの経緯を説明し始めた。
―――――――――――――――――――――――――――
「なるほど、それでジュエルシードを。……立派だわ。」
「だが、同時に無謀でもある。あれは、持ち主の願いをある程度叶える力を持つが、扱い方を間違えると次元災害を引き起こす危険な物なんだ。」
「あ、あの。次元災害って何ですか?」
なのはが恐るおそる尋ねると、リンディが答えた。
「簡単に言えば、世界を破壊する災害ね。あなたたちが集めているジュエルシードはいくつか集めて、特定の方法で起動させると空間内に次元震、最悪の場合は次元断層を引き起こす可能性もあるわ。」
「聞いたことがあります。旧暦の462年に次元断層が起こったって。」
ユーノが言うと、クロノとリンディが渋い顔をした。
「あれはひどい災害だった。」
「ええ、隣接していた世界がいくつも崩壊した歴史に残る悲劇。……あの悲劇を繰り返してはいけないわ。」
そう言いながら、リンディは手元の抹茶に角砂糖とミルクを入れて飲んだ。
「……あのリンディさん、真面目な話の最中に聞くのもどうかと思うんですが、それおいしんですか?」
「あら、おいしいわよ?」
「……そうですか。すいません、続けてください。」
と幻が言うとリンディは話を戻した。
「とにかく、あのジュエルシードは危険な物なので、今後のジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持つことにします。」
「「え?」」
リンディの言葉になのはとユーノが驚いていた。
「これは民間人である君たちが介入できるレベルの話ではない。」
「で、でも!」
「まぁ、いきなり言われても気持ちの整理がつかないでしょうから、今夜一晩、みなさんで考えて明日もう一度話をしましょう?」
「「分かりました。」」
「(……もう一度話を、か。)」
とリンディの言葉になのはとユーノが頷いた。しかし、幻はリンディの言葉に違和感を覚えていた。
と、ここでいきなりオペレーターから通信が入った。
「失礼しまーす。艦長、クロノ君、例のもう1人の魔導師の子に来てもらったよ。」
「分かった。ありがとう、エイミィ。」
「いえいえ、でもこの子かなり面倒くさいから、気を付けてね。あっ、それと艦長少し来てもらっていいですか?」
「分かったわ。なのはさん、幻さん、話の途中でごめんなさい。ちょっと席を外しますね。クロノ、後はお願い。」
そう言ってリンディは部屋から出て行き、エイミィと呼ばれた女性は通信を切った。
「実は、君たち以外にもジュエルシードを集めようとしていた魔導師がいてね。事情を聴くために来てもらったんだよ。探すのに少し時間がかかったけどね。」
「集めようとしていた?」
クロノの言い方に違和感を覚えた幻が聞き返した。
「ああ、その魔導師はジュエルシードの暴走体と戦って勝ったんだが、例の黒衣の魔導師が来ると手に入れたジュエルシードを彼女に渡して、去って行ったんだ。」
「……まさか、その魔導師って」
幻が言いかけると同時に部屋の扉が開いた。
「やぁ、なのは!ようやく会えたね。」
「やっぱりか。」
「か、神城くん!? 何でここにいるの?あと、何で鎧?」
入ってきたのは、真紅の鎧を着た神城だった。
「それは、俺が最強の魔導師だからさ。そして、俺は管理局を信用していない。だからこそ、もしものために武装を解除しないのさ!」
神城の言動にため息を吐きながら、クロノは幻の方を見た。
「……どうやら、知り合いのようだな。」
「いや、赤の他人だ。着ている鎧だけに。」
「はぁ、うまいこと言ったつもりですか?」
幻はクロノから目線を逸らして頬をかきながら呟くと、雪羅もため息を吐いて呆れ顔で言った。
と幻がクロノや雪羅と話をしていると、幻の存在に気付いた神城が幻たちの方を向いた。
「あ?何でお前がいるんだ?」
「クロノに連れてこられたから。」
幻が答えると神城はしばらく幻を見ていたが、突然、笑い出した。
「あっははは、魔力の欠片もないお前が連れてこられた?馬鹿も休み休み言え! そうか!さては、お前なのはに無理やりついてきたんだな?! このストーカーめ!」
どうやら、今の短時間で幻の魔力量を調べていたようだった。
「神城くん、幻くんは魔力ないけど不思議な力を使えるんだよ!」
なのはが言うと神城は、なぜかショックを受けたような表情をした。
「なのは、君はなんて優しいんだ。こんなストーカーを庇うなんて!やっぱり君は……」
と相変わらず自分に都合のいいように物事を考える神城を女性陣は、冷ややかな目で見ていた。
このままだといつもと同じ展開になりそうだったので、幻はもう帰ろうかと考えていた。
しかし、勝手に語っていた神城がいきなりにクロノの方を向いて言った。
「おい、そこのお前、この中に訓練場みたいなのはないか?」
「? あるけどどうするんだ?」
クロノが尋ねると、神城は幻の方を見て、にやりと笑いながら静かに言った。
「あいつを俺の力で黙らせる。」
――――アースラ内訓練場―――――
訓練場には、黒い着物を着て月影、雪羅を抜刀した状態の幻と、真紅の鎧を着て大剣型のデバイス・リガルブレイドを上段に構えた神城が睨み合っていた。というより神城が幻を一方的に睨んでいた。
「いいのか?幻。先ほど計測した彼の魔力量はSS、対して君は魔力が皆無じゃないか。」
外部からモニターで中の様子を見ていたクロノが幻に聞いてきた。それに対して、幻は問題ないとだけ告げた。
「お前みたいな雑魚は、この船にはいらない!」
「いいから、早くその剣を構えな。」
「ふん。速攻で消してやるよ。」
そう言うと神城は自身の剣を構えて、突進してきた。転生者の神城は神に魔力・身体能力の強化を願っていた。そのため、その動きは人間の域を少し超え、大剣であるリガルブレイドも片手で容易に振り回していた。そして、幻との距離を一気に詰めると、手にした大剣を振り下ろした。
「そんな刀、へし折ってやる!!」
「分かりやすい動きだな。」
幻は少々呆れながら呟くと、幻は体をひねって大剣の一撃をかわした。かわされて空を切った大剣は床にめり込んだ。
「逃げんじゃあねぇ!!」
神城は素早く大剣を持ち上げると、横に振った。
幻はその一撃を雪羅で受け止め、間を置かずに月影で神城の胴を切った。そして月影の能力が発動し、真紅の鎧の胴の部分が消滅した。そのことに驚いた神城は幻から距離を取った。
「「何が起こった?!」」
そして、月影の能力を知らない神城と外からモニターで戦闘を見ていたクロノが同時に叫んだ。ちなみにクロノには月影の能力をある程度知っているなのはとユーノが説明していた。
「まだ、やるか?」
「くそ、ふざけるなよ!?お前は俺を怒らせただけだ!」
神城は魔力で鎧を再生させると、剣を幻に向けて叫んだ。
「出でよ、我が軍勢!“王の軍勢”!!」
すると神城の周囲に以前見たことのある銀の鎧を着た騎士が召喚された。今回は室内戦のためか、召喚された騎士の数は前回の時より少なかった。
「何あれ?!」
今度はなのはが驚いていた。そして、今度はクロノが、あれは召喚魔法だ……多分、と少し自信なさげに説明していた。
「やれぇ!!」
神城が号令をかけると槍や剣を構えた騎士が幻の方に向かってきた。
「月影、雪羅、一気に決めるぞ。正直、面倒だ。」
『分かった!』
『あの愚か者相手に手加減は無用です、幻。』
幻は2本の刀を構えて、向かってくる騎士を迎え撃った。そして、幻は両手の刀で騎士を片っ端から切り捨てていった。ある騎士は闇に呑まれて消滅し、またある騎士は全身を氷漬けにされていた。さらに神城が追加で召喚してくる騎士も次々に倒しながら、幻は神城との距離を徐々に詰めていった。
そして、一定の距離になったところで跳躍して神城の目の前で着地し、両手の刀を神城に突き付けた。
「勝負ありだ。」
「ウソだ!こんなこと、あ、有り得ない!」
神城が敗北を否定し、周囲の者が唖然とする中、戦闘は幻の勝利で幕を閉じたのだった。
その後、幻たちはクロノに送ってもらい、それぞれ帰路についた。ちなみに神城は事情聴取を受けるために、アースラに残っていた。
「(あいつがジュエルシードを集める理由なんて、なのはとフェイトの好感度を上げるため以外ないだろうな。)」
幻のこの予想は見事に的中していた。
続く
という事で今回は、説明+戦闘の話でした。
リンディ茶か、試してみようかな?……あっ、牛乳ないや。
以下補足です。
リガルブレイドは、両刃の大剣で、結構重いです。あとストレージデバイスです。
あと、神城 勇気の神へのお願いは
・レアスキル:王の軍勢(チート仕様)
・魔力・身体能力の強化
・容姿
の3つです。まぁ、普通です。
では、また次回!!