「クロノの奴、後でちゃんと出すって食材かよ。」
アースラから戻ってきた幻たちは、帰り際にクロノから貰った食料を家で調理していた。
クロノは帰り際に幻たち条件の物だと言って大きな箱をくれた。しかし、貰った箱には、肉や野菜などの食材と“時間がなかったので、これで許してくれ。 クロノ”と書かれたメモのみが入っていた。
「げん、お腹すいた。」
「くぅ~ん。」
朧とナナが空腹の限界を訴えていた。
「分かった、分かった。ちょっと待っててくれ。月影、こっちは肉焼けたぞ?」
「こっちもできたよ。」
全員が空腹だったので簡単なものを急いで作り、その後ようやく食事を開始した。
そして、ある程度食事が進んだところで雪羅が今後の方針について幻に聞いてきた。
「それで幻、今後はどうしますか?」
「まぁ、アリシアのことを考えると、管理局とは敵対することになるかな。」
「でも、ジュエルシードを集めるなら組織で動いてる管理局の方が有利だよね。」
「姉さまの言うことも一理あります。」
3人がうーんと唸っていると、朧が静かに言った。
「見つけるまでは、局に協力。見つけたら、フェイトに連絡。」
「なるほど、そういう方法もありますね。」
「……さすが、密偵。」
「えへん。」
幻が褒めると朧は嬉しそうにしていた。
その後も話し合いを続け、作戦がある程度まとまったところでお開きとなった。
「さて、じゃあ今日はもう寝よう。さすがに疲れた。それと明日はアースラに行く前にプレシアさんの所に行こうと思う。」
「理由は?」
「さっきの朧の案や管理局の動きなどを彼女たちにも話しておこうと思ってな。あと朝になったら、雪羅は学校にしばらく休むと、月影はリンディさんに明日の夕方頃にアースラに行くと伝えてくれ。」
「分かったよ。」
「無難に家庭の都合ってことにしておきます。」
「よろしく頼むわ。じゃあ、お休みー」
妖怪の血が入っている幻でもさすがに今日1日は疲れたらしい。幻はそう言うと欠伸をしながら寝室に入って行った。
「では、私たちも寝るとしましょう。」
雪羅が言うと2人と1匹も頷いてそれぞれが寝る準備を始めた。
―――――――――――――――――――――――
翌朝、幻たちは準備を済ませると、転移符で時の庭園へとやってきた。正面の入り口から中に入るとちょうどプレシアとリニスがお茶を飲んでいた。フェイトから転移符のことを聞いていたのか、2人はいきなり現れた幻たちに特に驚かなかった。
「プレシアさん、リニスさん、おはようございます。」
「おはようございます、みなさん。」
「あら、おはよう。管理局に捕まったって聞いたけど大丈夫?」
「いや、別に捕まってないんですけど。」
幻が言うとプレシアが申し訳なさそうに言った。
「昨日のことはフェイトから聞いたわ。またあなたに借りができたわね。」
「気にしないでください。それより、今後のことについて少し相談が……」
幻はそう言うと昨日のことや朧の案、管理局の動きなどをプレシアたちに報告した。
「なるほどね。恐らく管理局はその子たちを利用するつもりね。」
「え?どういうことですか?プレシアさん。」
月影が尋ねると、プレシアの代わりに幻が答えた。
「昨日、クロノはジュエルシードの回収は民間人が介入するレベルの話じゃないと言っただろ?それなのに、リンディさんは俺らで話し合ってもう一度話をしようと言った。」
「うん、確かに言ったよね。」
「これは面倒な問題だから一般人は関わるなって言ったのに、なぜまた話し合う必要があるんだ?」
「!! 確かにおかしいね。」
「恐らくなのはたちの方から協力させてほしいと言いやすいように誘導しているんだろう。」
「それになのはさんの性格からして、自分には協力できるだけの力があるから問題ない、と考えるでしょうから。」
幻と雪羅がそれぞれの推論を話すと月影も納得したようだった。
「それに管理局としても、優秀な魔導師は欲しいはずよ。自分の所の切り札を温存するためにもね。……まぁ、フェイトの方が優秀だけどね。」
とプレシアが娘の自慢をしつつ、補足をした。
「あれ? そういえば、フェイトちゃんは?」
「フェイトはアルフと共に地球で残りのジュエルシードを探しています。」
月影が尋ねると、リニスが答えた。どうやら、フェイトとアルフは幻たちと入れ違いで地球に行ったようだった。
「大丈夫か? 今度は管理局も探してるんだぞ?」
「大丈夫です。フェイトとアルフには、高性能な結界魔法を教えたので、そう簡単には補足されません。」
とリニスが自信満々に答えた。
「ふふ、リニスは2人の魔法の師匠なのよ。」
とプレシアが幻たちに教えてくれた。そして、プレシアは真剣な表情で幻たちを見た。
「それで、これからあなたたちは、管理局の船に行くのよね?」
「はい。」
「だったら情報伝達は可能な限りでいいから、その代りフェイトが無茶をしたら止めてほしいの。……あの子は無茶をすることがあるから。」
「分かりました。」
幻はそう言うと懐から転移符を取り出し、月影たちと共にアースラへと転移した。その光景を見ながらプレシアがポツリと漏らした。
「……話には聞いていたけど、本当に不思議ね。紙1枚で転移できるなんて。」
「本当ですね、プレシア。」
――――――――――――――――――――――――
「ほい、到着。」
「な?! 君たちは一体どこから現れたんだ?!」
「……逆にお前らは何も知らないのね。」
アースラ内に突然現れた幻たちにクロノをはじめとしたアースラクルーたちが全員驚いていた。その様子を眺めながら、幻はため息交じりに呟いた。
その後、アースラ内の会議室に案内された幻たちはそこでなのは、ユーノ、神城と合流した。さらに他の乗組員たちも集まったのを確認するとリンディが話し始めた。
「只今の時刻を持って、我々の任務はロストロギア・ジュエルシードの探索及び回収に変更となりました。なお、今回の任務は特例としてジュエルシードの発見者であるユーノ・スクライアさんと彼の協力者である高町なのはさん、神城 勇気さん、飛天 幻さん、月影さん、雪羅さん、朧さん。以上の方々に臨時の局員として本艦に乗ってもらいます。」
とリンディが言い終えると幻が手を挙げた。
「ちょっと待った。俺らが臨時の局員になるなんて初耳だし、なる気もないのですが。」
「なんだと!? 貴様、協力するから、ここに来たんじゃないのか?!」
幻が言うと隣にいた神城が怒鳴ってきた。
「協力はする。だが、たとえ臨時でも局員になる気がないだけだ。俺はあくまでも民間協力者だ。……というか、お前も昨日は局を信用してないとか言ってたじゃん。」
「気が変わっただけだ。俺のなのはが協力するんだから、当然俺も協力する。」
たった1晩で自分の意見をあっさりと変えていた神城にその場にいた全員が呆れていた。
「『……あれ? 何か今日、あの子大人しいね。いつもなら「このストーカーが!!」みたいなこと言って幻くんにからんでくるのに。』」
「『どうやら、昨日幻に負けたことが応えているようだ。昨夜から驚くぐらいに大人しい。』」
月影が不思議に思っているとクロノが答えた。どうやら力で黙らされたのは神城の方だったようだ。
「馬鹿は放っておいて、どうですか?リンディさん?」
神城の言葉に呆れながら幻は話を続けた。リンディは少し考え、答えを出した。
「……分かりました。幻さんたちには民間協力者ということで手伝ってもらいましょう。」
「ありがとうございます。」
「艦長!? いいんですか?」
「まぁ、無事にジュエルシードが回収できれば問題ないわよ。」
と幻の申し出をあっさり受け入れるリンディであった。
―――――――――――――――――――――――
そして、幻たちがアースラに移ってから数日が経過した。あれからジュエルシードは管理局側も、テスタロッサ側も発見・回収できていなかった。
「『残りのジュエルシードはどこなのかしらね?』」
「分かりません。残り7個、局も探してるみたいですけど。」
飛天家用にアースラ内に設けられた部屋で幻はプレシアと通信モニター(最近使い方を教えてもらった)で話をしていた。
ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!
すると突然船内にけたたましいアラート音が響いた。
「『エマージェンシー! 捜査区域にて大型の魔力反応を感知。繰り返す、捜査区域にて……』」
その音が聞こえた直後に艦内に通信が入った。さらに通信越しにリニスの声も聞こえてきた。
「『大変です、プレシア! フェイトが発見したジュエルシード6個を一度に強制発動させました。』」
「『あの子、正気?! 魔力値の限界を超えているわ。そんなことしたら、フェイトが!!』」
リニスの報告を聞いたプレシアが叫んだ。一方でリニスの報告を聞いた幻は
「プレシアさん、とにかく落ち着いて下さい。リニスさん今フェイトがいる場所を教えて下さい。俺が行って、フェイトを支援します。」
「『はい、お願いします。場所は海鳴市近海の海上です。』」
「分かりました。月影、雪羅は俺と来てくれ、朧はここで昨日話した妨害作戦を決行してくれ。あとナナも大人しくしていてくれ。」
「うん、了解。」
「あんっ」
「『幻、フェイトをお願い。』」
「分かりました。転移!!」
プレシアの言葉に頷いた幻は刀に戻った2人を腰に差すと、転移符で現場へと向かった。
――――――――――――――――――
幻はフェイトたちが張った結界内に転移すると周囲の光景を見て驚いた。
「……何だこれ。」
『海が荒れるっていうレベルの話じゃないよね。竜巻みたいなのできてるし。』
『えぇ、恐らくジュエルシードの影響かと。』
幻たちは荒れ狂う海の様子に唖然としていたが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、背中の翼を動かして上昇し、上からフェイトたちの姿を探した。
「いた!『フェイト、アルフ。俺が行くまで何もするな!』」
2人を見つけた幻は、念話で停止を呼び掛けた。
「『幻?! どうしてここに?』」
「『プレシアさんに頼まれたんだよ。』」
幻が訳を説明すると、フェイトは納得したようだった。
そして、幻はフェイトの近くで停止すると、まずはフェイトの頭に軽くチョップをした。フェイトは少し涙目になって幻の方を見た。
「幻、痛いよ。」
「まったく、無茶しすぎだ。まぁ説教は後でするとして、今は局が来る前にさっさとアレを封印するか。2人とも手を貸してくれ。」
「いいのかい? アンタがあたしたちに協力してるところを局の連中は見てるよ?」
とアルフが言うと、幻はニヤリとしながら言った。
「今、朧がアースラ内に特殊な結界を張ってるからしばらくは大丈夫だ。もし結界が破られたり、何かが起きれば、俺のところに朧から連絡が来るからな。」
幻はそう言うと腰の2刀を素早く抜刀し、構えた。
「さてと、アルフは援護、フェイトは俺が指示するまで魔力を温存しててくれ。それじゃあ始めるぞ!」
「うん!」
「わかった!」
2人が頷くと幻は、荒れ狂う海に向かって飛び出した。
――――アースラ内――――
「エイミィ、まだ映像と転移ゲートは直らないのか?」
「うん、現地のサーチャーは無事なんだけど……どういう訳かアースラ内のシステムが作動しないみたい。」
苛立つクロノにエイミィが手元の操作パネルをいじりながら答えた。
アースラは幻が転移した少し後に突然、艦内のシステムがダウンし、映像と転移システムが使えない状態になっていた。その原因は、朧の忍術と月影の符の力で張った特殊な結界だった。
「朧ちゃん、幻くんが使ってる転移符はないの?」
となのはが隣でナナを抱き抱えて立っていた朧に聞いてきた。しかし、朧は静かに首を横に振りながら答えた。
「転移符、持っているの、げんだけ。」
「でも、私もフェイトちゃんを助けに行かないと! ユーノくん、魔法でなんとかできない?」
「ごめん、さっきから試しているけど、何故か転移魔法が使えないんだよ。」
申し訳なさそうに謝るユーノとさらに慌てるなのはを見ながら朧は言った。
「大丈夫、げんを信じる。」
アースラと魔法が使えない今、なのはたちは朧の言葉を信じる他なかった。
続く
少し遅くなりましたが、ジュエルシード6個回収話・前編でした。
以下補足です。
妨害結界は、AMF(分からない方はStrikerS参照)みたいなものと思って下さい。ちなみに魔法ではないため管理局に気付かれません。……多分。
では、また次回!!