転生した天狗とリリカルな物語   作:下駄河童

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第17話 海上決戦 始まります

「だから最後1個のジュエルシードを賭けて、始めよう? 最初で最後の本気の勝負!」

なのはが言うとフェイトが静かに頷いた。

2人は飛び上がり、上空で2人のデバイスがぶつかり合った。そして、互いに距離を取った後、2人は自分の周囲に魔力弾を出し、目の前の相手に向けて放った。

『Divine Shooter.』

『Photon Lancer.』

 

「シュート!」

「ファイア!」

桃色と金色の魔力弾がそれぞれの相手に向かっていった。なのはは空中で体をひねってフォトンランサーを回避し、フェイトはバリアを張って追ってくるディバインシューターの直撃を防いだ。

 

「シュート!!」

「!?」

 

しかし、フェイトがバリアを解除した隙を狙ってなのはは再び魔力弾を発射した。

 

『Scythe form.』

「はあぁぁあ!!」

 

フェイトはバルディッシュを変形させ、飛来してくる魔力弾を次々に切り裂いた。1つ切り損ねたが、フェイトは特に気にせずにそのまま急降下し、下にいたなのはに切りかかった。なのはは右手を前に突きだしてバリアを張った。

 

「くっ!」

『Round Shield.』

 

なのはが張ったバリアとバルディッシュの魔法刃がぶつかり、フェイトはバリアを突き破ろうと手元のバルディッシュに力を込めた。

一方、なのははバリアの魔力を維持しつつ、意識を集中させた。すると、先ほど放ってフェイトが切り損ねた1発の魔力弾がフェイトの方に戻ってきた。それに気付いたフェイトはとっさに体を回転させ、バルディッシュを真横に振るって魔力弾を切った。

 

「(しまった、どこに?!)」

 

しかし、視線を戻すとそこになのはの姿は無かった。

 

『Flash Move.』

「てえぇぇえい!!」

 

フェイトの視界から消えたなのはは既に上空に移動しており、そこから一気に急降下してフェイト目掛けてレイジングハートを振り下ろした。それに気付いたフェイトはバルディッシュでなのはの一撃を受け止めた。ちなみにそれを見ていた幻は「魔法の杖って打撃武器だっけ?」と呟いていた。

 

『Fire.』

 

なのはの一撃を防いだフェイトはなのはの真横から魔力弾を生成・発射し、それをかわすためにフェイトから離れたなのはにお返しとばかりに切りかかった。

 

『Scythe Slash.』

『Flier Fin.』

 

しかし、なのははその一撃をギリギリで回避し、フェイトから距離を取った。

――――――――――――――

 

一方、2人の激しい攻防戦を地上で見ていたユーノとアルフは始終ハラハラしっ放しだった。

 

「わぁ!? あ、危なかった。」

「な、なぁ、幻。あの子、前より腕が上がってないかい?」

「まぁ、アースラにいる間、時間を見つけては俺や執務官と模擬戦してましたし、加えて、そこのフェレットが色々と教えてましたから。……というか2人とも、まずは落ち着きなさい。」

幻たちの近くにやってきたアルフが尋ねてきたので幻が答えた。

「まぁ、今回はどっちが勝つかは予想できないな。『フェイトにも優秀な師匠がいますし。』」

「『ああ。でも、ジュエルシードはあたしたちが手に入れるよ。』」

「『分かりました。』」

そう念話しながら幻たちは視線を上に戻した。

―――――――――――――

「はぁ、はぁ。(この子、以前より魔力も技術も上がってる。最初に会った時はただ魔力が大きいだけの素人だったのに。少しでも気を抜くと確実に負ける。)」

 

呼吸を整えながらフェイトはそう思っていた。

「(でも、アリシアと母さん、2人の為にも負けるわけにはいかない!)」

 

フェイトは気持ちを切り替えると意識を集中させ、足元に巨大な魔方陣を展開した。

 

『Phalanx Shift.』

 

バルディッシュが言うと同時にフェイトの周囲にいくつものフォトンスフィアが生成されていき、それを見て身構えたなのははフェイトが予め仕掛けておいたバインドに手足を拘束された。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神よ、今導きのもと撃ちかかれ。」

 

なのはが拘束されたのを確認すると、フェイトは目を閉じて詠唱を開始した。そして、詠唱が進むにつれてフェイトの周りに展開されたスフィアを覆う雷が激しさを増していった。

 

「バルエル・ザルエル・ブラウゼル。フォトンランサー・ファランクスシフト! 撃ち砕け、ファイアー!!」

 

フェイトが叫ぶと40近くあるスフィアから一斉に雷撃が発射され、拘束されている状態のなのはに襲いかかった。

 

「なのはー!!」

「フェイト!!」

 

ユーノとアルフが同時に叫んだ。ユーノは激しい攻撃を受けたなのはの身を案じ、アルフはこの技がフェイト自身の魔力をかなり消費すると知っているために彼女を心配していた。案の定、撃ち終わったフェイトは辛そうに肩で息をしていた。

そして、攻撃による煙が晴れるとそこには……

 

「痛った~。撃ち終わるとバインドも解けるみたいだね。」

『So it seems. Master.(そのようですね、マスター)』

 

多少のダメージを負ってはいるものの無事な様子のなのはがいた。

 

―――地上―――

 

「なのは!!」

「フェイトのアレをくらって何で立っていられるのさ?!」

「さすがは俺のなのはだぜ!」

 

ユーノ、アルフ、神城が口々に言った。

 

「……あの白いのは悪魔か?」

「幻くん、それってどういう」

「姉さま、何も言わないでください。」

 

そして、なのはの防御の固さにさすがの幻も唖然としていた。

 

―――時の庭園―――

 

「フェイトのファランクスを受けて無事?! リニス、どういうことか説明しなさい!!」

「落ち着いて下さい、プレシア。これは私の推測ですが、彼女はバリアジャケットに加えて何らかのフィールド系の防御魔法を咄嗟に展開したのではないかと。って、これくらいの推測はプレシアでもできるのでは?」

「どうして無事なのかしら? だって、フェイトのファランクスよ? 無事なわけが……ぶつぶつ……」

「……聞いてませんね。」

 

リニスはやれやれとため息を吐いた。

 

―――――――――――――

 

フェイトのファランクスを耐えたなのははレイジングハートを構えて叫んだ。

 

「今度はこっちの」

『Divine』

「番だよ!!」

『Buster.』

 

レイジングハートから桃色の砲撃がフェイトに向けて発射され、フェイトは周囲のスフィアを1つにまとめて飛ばしたが、なのはのディバインバスターにあっさりと飲み込まれてしまった。そのことに驚きつつもフェイトはバリアを展開した。

 

「(くっ?! でも、耐えなきゃ。あの子だって耐えたんだから!!)」

 

そして、ボロボロになりながらもフェイトはどうにかディバインバスターの直撃を防いだ。しかし、そんな状態のフェイトになのははさらに追い打ちをかけた。

 

上空に移動した彼女の前には巨大な魔方陣が展開され、周囲の魔力が次々に魔方陣の中心に集められていった。中心に集められた魔力球は確実にその大きさを増していき、レイジングハートがその技の名を叫んだ。

 

『Starlight Breaker!』

 

「みんなからもらったアドバイスとレイジングハートと一緒に考えた知恵と戦術、最後の切り札!!」

 

「しゅ、収束砲撃……はっ?!」

 

その光景に唖然としたフェイトの手足を桃色のバインドが拘束していた。そして、完全に動きを封じられたフェイトに向けてなのはは止めの一撃を放った。

 

「受けてみて! これが私の全力全開!! スターライト・ブレイカァァアア!!!」

 

巨大な魔方陣から放たれた必殺の収束砲撃がフェイトを飲み込んだ。

 

 

―――アースラ内―――

 

「な、なんつー馬鹿魔力!?」

「うわー、フェイトちゃん、生きてるかな?」

「(あんな強力な収束魔法を使えるなんてすごい子ね。)」

 

戦いの様子をモニターで見ていたクロノたちは、その威力に度肝を抜かれた。リンディも口には出さなかったがなのはの魔法の才能を高く評価していた。

 

―――――――――――――

 

なのははスターライト・ブレイカーの直撃を受けて気絶し、海に墜ちたフェイトを急いで救出して幻たちのいる所へと戻った。

 

「フェイトちゃん!!」

「フェイト!!」

 

なのはとアルフの必死の呼びかけが聞こえたのかフェイトは薄らと目を開けた。

 

「アルフ?……それに、あなたは……そっか、私負けたんだね……」

「うん。ごめんね、フェイトちゃん。」

 

自身の敗北を理解したフェイトが呟いた。そして、さすがにやり過ぎだと思ったのか、なのはは謝っていた。2人の会話が済んだところで、幻は軽く咳払いをしてから本題に入った。

 

「とりあえず、2人ともお疲れさん。フェイト、ジュエルシードはなのはに渡すから、その……すまないが、諦めてくれ。『というのは表向きで、しばらく待っていてくれ。一応、こういう時のための作戦もある。とにかく今は体を休めてくれ。』」

「うん……仕方ないよね。『負けちゃってごめんね。あと、ありがとう、幻。』」

「『気にするな。』」

 

と幻は念話で今後のことを伝えた。ちなみに幻たちの作戦とは、隙を見て本物と偽物をすり替えるという単純なもの。しかし、朧の忍びとしての能力を生かすことで、この作戦の成功率は格段に上がるのである。また、もしもの時に備えてジュエルシードの偽物は既に用意していた。

 

そして、一通り話がまとまるとクロノから通信が入った。

 

『なのは、ご苦労だった。そして、フェイトといったか。時空管理局執務官のクロノだ。君たちにも聞きたいことがある。アースラまで同行してもらえるかい?』

「そ、それは……」

 

フェイトが困惑していると幻が助け舟を出した。

 

「おい、クロノ。2人とも今はかなり疲れているんだ。事情聴取は後日でもいいんじゃないか?」

「そうだよ。ちゃんと体力を回復させなくちゃダメだよ? それとなのはちゃんも1度帰宅させた方がいいんじゃないかな?」

 

幻と月影が口々に言ったが、クロノはまだ納得できないようだった。

 

『しかし、彼女たちは指定ロストロギアの所持について』

「ほぅ? 管理局ってのはボロボロの子供を休ませもせずに連行して事情聴取をする、そういう組織なのか?」

『うっ。』

 

幻が軽い殺気を込めてクロノを睨んだ。クロノが黙ると、代わりにリンディが答えた。

 

『分かりました。では、2日後にアースラまで来てください。その間、臨時局員と民間協力者の一時帰宅を許可します。』

『か、母さん!? いいんですか!?』

 

リンディの提案にクロノが驚いた。

 

『大丈夫よ、それに休息は必要よ? フェイトさんは2日後の正午にここに来て下さい。ここからアースラに転送します。いいですね?』

「……分かりました。」

 

フェイトが頷くとリンディは満足そうに微笑んで、通信を切った。通信が切れると、幻が口を開いた。

 

「じゃあ、帰りますか。『フェイト、とにかく今日はプレシアさんの所に戻って休んでくれ。アリシア復活の儀式の準備もあるだろうし、ジュエルシードは手に入れ次第そっちに持っていく。』」

「『分かった。』」

「フェイトちゃん、またね。」

「うん、また。」

「じゃあな、フェイト。2日間の別れは辛いよ!!」

「え、そ、そう。(うう、やっぱり、この人苦手。)」

 

幻たちは互いに軽く挨拶をして解散し、それぞれの帰路についた。

こうして、なのはとフェイトの戦いはなのはの勝利と言う形で幕を閉じ、幻たちは次の作戦を実行するために動き始めた。

 

―――――だが、この時、物語は幻たちの予想を遥かに超える事態に発展しつつあった。

 

 

―――某所―――

 

1人の男が椅子に腰かけ、手にした水晶玉を見ながら呟いた。

 

「ようやく全ての結晶が人間共の手に集まったか。まったく、人間はいちいち行動が遅くて困る。だが、これでようやく私も動くことができる。」

 

青白い男は、貴族のような動作でテーブルに置いてあったワインに口をつけた。

 

「さて、この結晶があるのは……金属の船と古城のような浮遊物か。ふむ、どちらを先に墜とすとするかな。……やはり、こちらにからにするか。」

 

そう言うと男は再び手元の水晶玉を覗き込んだ。そこに映っていたのは……

 

 

続く




というわけで、タイトル通りの内容でした。

そして、5話ぶりに黒幕さんの登場です。
次回からこの人?が本格的に動き出して暴れてくれる……予定です。

補足は……今回は特にないです。

あと、フェイトがSLBをくらった時のプレシアさんの反応は皆さんの想像に任せます(笑)

では、また次回!!
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