転生した天狗とリリカルな物語   作:下駄河童

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第19話 対峙します

幻は医務室にいた月影たちと合流し、時の庭園に乗り込む為の準備を始めた。

それから20分後、一通りの準備を終えた幻たちが再びアースラのデッキに戻ると、そこには医務室にいたはずのリニスが立っていた。そして、アースラのモニターには時の庭園の映像が映し出されていた。どうやら、リニスが位置座標を教えたらしい。

 

「リニスさん、もう起きて大丈夫なんですか?」

「……プレシアが大変な時にただ寝ているなんてできません。」

 

リニスは幻の質問に平然と答えたが、彼女の足元はまだふらついていた。それを見た幻はリニスの腕を掴むと、彼女の目を見ながら口を開いた。

 

「気持ちは分かりますけど、無理しないで大人しくしてて下さい。」

「ですが」

「あなたが倒れたらプレシアだけでなくフェイトたちも動揺します。」

 

と言って、幻は平静を装うリニスを医務室に引っ張って行った。幻が医務室に入ると、今度はフェイトたちが起き上がろうとしていた。それを見た幻はため息交じりに言った。

 

「……何してる?」

「ええと、母さんが心配だから、その……」

「師匠が師匠なら、弟子も弟子か……仕方ない、3人とも少しいいですか?」

 

と呆れ顔の幻は3人に声をかけた。その声に反応した3人が幻を見たのを確認すると、幻はいつもよりも声を低くして呟いた。

 

「“眠れ”」

「「「!!……」」」

 

すると、その言葉を聞いた3人は無言になり、まるで操られているかのようにベットに入り、そのまま静かに寝息を立て始めた。“言霊の術”。霊力あるいは妖力を乗せた言葉で人を操る強力な術の1つである。もっとも半妖である幻は純粋な妖怪よりも妖力が少ないため、彼の術にそこまで強い拘束力はない。しかし、3人の人間(内2人は使い魔だが)を眠らせるくらいのことは容易にできた。

 

「(言霊の術か。前世であの人に教わった術を使う時がくるとはねぇ。)」

 

と自分に術を教えてくれた者のことを思い出していると、突然、艦内にアラートが響き渡った。それを聞いた幻は、3人が眠っているのをもう一度確認すると急いでデッキへと戻って行った。

 

デッキでは、アースラのスタッフが突然の緊急事態に対処していた。

「どうしたの?!」

「庭園内に魔力反応多数! 60、90・・・・・・まだ増えます。魔力はいずれもAクラスです。」

「な、何だと?!」

リンディに聞かれたエイミィが報告すると、それを聞いたクロノが驚愕した。庭園内を映したモニターには、鎧を纏った巨大な人型兵器が次々と召喚される様子が映されていた。

 

「大方、敵さんがこっちの迎撃用として用意したんだろうよ。」

「あっ、幻くん。リニスさんたちは? 大丈夫?」

 

幻が戻ってきたことに気付いたなのはが不安げな表情で聞いてきた。

 

「まぁ、大人しくしてもらっているよ。」

「そうなんだ。」

 

幻がそう告げると、なのはは少し安心したようだった。その横では、鎧姿の神城が自信満々で叫んでいた。

 

「とにかく現地に向おうぜ! そして、俺の力を見せつけてやるぜ!」

「君は作戦内容を理解しているのか?」

 

クロノが尋ねると、神城は胸を張って答えた。

 

「この俺が、フェイトを苦しめている吸血鬼を倒す!」

「……僕がいいと言うまで黙っててくれ。」

 

神城の予想通りの言葉に嘆息するクロノだった。

 

そして、全ての準備が完了した幻たちは、アースラの転送ポートから庭園内へと転移した。幻は到着すると、目の前にいる鎧兵たちに臆することなく叫んだ。

 

「プレシアさん、来ましたよ。 “結晶” を持ってきたんで……まぁ、とりあえず世界壊すのやめてもらえませんかねぇ?」

「……幻、セリフ考えてませんでしたね?」

「……気にするな。」

 

雪羅の言葉に幻が目線を逸らしながら答えると、周りにいた突入メンバー(神城以外)が苦笑していた。

その直後、幻たちの前にモニターが現れ、そこにはプレシアが映っていた。

 

「よく来たわね。持ってきた結晶は、そこにいる傀儡兵に渡してくれるかしら? 大丈夫よ、世界は壊さないわ。目的があるもの。』

「分かりました。」

 

幻は頷くと、近づいてきた傀儡兵にジュエルシード(偽)を渡した。それらを受け取った傀儡兵は向きを変え、庭園の奥へと歩いて行った。しばらくすると、兵からジュエルシードを受け取ったプレシアが嬉しそうに言った。

 

『確かに受け取ったわ。それじゃあ、あなたたちには』

「死んでもらう……ですか?」

『あら、予想済みってわけ?』

 

プレシアがそう言うと、幻は不敵に微笑みながら言った。

 

「ええ。小物の考えそうなことです。」

 

幻は小物という部分を強調しながら言った。それを聞いたプレシアは、幻を睨みつけた。

 

『この私が小物ですって?』

「はい。それと小物のプレシアさんが結晶を集めている理由は何ですか?」

『世界よ。この世界の支配。それが目的よ。』

「なっ?!」

「そんな!!」

 

プレシアの言葉になのはやクロノ、映像で見ていたアースラメンバーが絶句していた。だが、幻は表情を変えずにあることを尋ねた。

 

「アリシアはいいんですか?」

 

幻が聞くとプレシアはしばらく黙っていたが、やがて幻を睨んだまま口を開いた。

 

『……アリシア?』

 

しかし、プレシアは明らかな疑問の表情を浮かべていた。その表情を見た幻は少し嬉しそうに言った。

 

「化けの皮が剝がれましたね、プレシアさん。いや、吸血鬼さんの方がいいかな? 他人に化けるんなら、その人になりきるのは変化の基本ですよ? アリシアはあなたの娘でしょ? あと、あの青い宝石の名はジュエルシードです。」

「…………失敗したな。」

 

幻が言うと、プレシアが諦めたように笑った。すると、プレシアの体が黒い霧のようなものに包まれ、それが晴れるとそこには青白い肌で赤い瞳の男が映っていた。男は正体がばれたことを特に気にした様子もなく、平然としていた。

 

『……いつから気付いていた?』

「いつからも何も最初からだ。お前、真面目に化ける気ないだろ?」

 

幻が聞くと男は笑みを浮かべながら口を開いた。

 

『ああ。残りの結晶いや、ジュエルシードといったか、それさえ入手できれば問題ない。何せ、ここの魔女から奪った15個は既に戦力を整えるために使ってしまったからね。』

「じゃあ、今お前が持っているのは、さっきの6個だけか。」

『そうなるね。だが、6個もあれば問題ない。』

 

男が言い終えると、幻が口を開く前に神城が叫んだ。

 

「お前の目的なんかこの俺が潰してやるよ! そんな所で見てないで俺と闘え!」

『随分と威勢がいいね。だが、私が闘うのは君たちがここまで来たときだけだよ。』

 

男はそう言い終えると、手を広げて叫んだ。

 

『さて、話は終わりだ。君たちが最上階まで来るのを楽しみにしているよ。……私の計画を邪魔する者は消す必要があるのでね。まぁ、ここまで来れればの話だがね。』

「最後に1つ、プレシアさんは?」

『地下だよ。だが、彼女にはまだ利用価値があるのでね。できれば遠慮願いたいね。』

 

男がそう告げると映像通信が切れ、それと同時に傀儡兵が手にした武器を構えた。なのはたちもそれぞれの杖や武器を構え、戦闘態勢を取った。

 

「月影、雪羅、今回は敵の数が多いから別々でやろう。朧も15個のジュエルシードを盗む必要がなくなったから、敵の殲滅に力を注いでくれ。」

「りょーかい! 援護は任せて!」

「分かりました。」

「うん。」

 

幻が簡単に指示すると、3人は頷き、月影は護符、雪羅は自身の分身である “雪羅” 朧は鎖鎌をそれぞれ取り出した。そして、幻は刀の代わりに1本の真っ黒な扇子を懐から取り出して、それを勢いよく広げた。そんな中、不安そうな表情をしたなのはがクロノに尋ねてきた。

 

「クロノくん、この鎧って……」

「近くにいる者を攻撃するただの機械だよ。手加減は無用だよ。」

「そっか。なら、安心だ。」

 

クロノの言葉を聞いて安心したなのはは、レイジングハートを敵に向けた。しかし、それをクロノが右手で制した。

 

「みんな、この程度の相手に無駄弾は必要はない。魔力を温存しておいてくれ。」

 

クロノはそう言うと自身のデバイス・S2Uを敵に向けて、振り上げた。

 

「はあっ!!」

『Stinger Snipe.』

 

クロノが杖を振り下ろすと、杖から放たれた魔力弾が螺旋を描きながら迫ってくる敵を次々に打ち砕いていった。しかし、最後に残った大型の傀儡兵が手にしていた戦斧を盾にして魔力弾を防いだ。なのはやユーノが驚く中、クロノは魔力弾を防いだ大型の傀儡兵に飛び乗って杖を突けた。

 

『Break Impulse.』

 

すると、激しい爆発が起こり、閃光が敵を包み込んだ。光が収まると、クロノが唖然とするなのはたちの方を向いていた。

 

「ボーっとしてないで行くよ。」

 

と言うクロノの後に続いて幻たちは庭園内に入って行った。しばらく行くと、広い場所に出た。そこには入り口にいた倍の数の傀儡兵が待機しており、傀儡兵たちの後ろには上下階へと続いている階段が見えた。それを見たクロノが幻たちに言った。

 

「ここから二手に分かれる。なのはとユーノはプレシア・テスタロッサの救助を、幻たちと僕、神城はあの男の下に行く。」

「分かった。じゃあ、今度は俺の番かな。」

 

クロノの案に頷いた幻が手にした扇子を仰ぎながら前に出た。

 

「全員、ちょっと下がってくれ。……さてと」

 

と呟いて、幻は扇子を仰いでいた手を止めた。すると、彼を中心にして風が吹き始め、彼が舞のように扇子を動かすとその動きに合わせて、いくつもの竜巻を形成し始めた。一方、傀儡兵たちは自分たちの方に出てきた幻の存在に気付いて、彼に向かって突進してきた。

 

「……“風刃・蛇行”」

 

幻が扇子を一閃すると、複数の竜巻が蛇のようにくねりながら彼に迫ってくる傀儡兵の体を次々に貫いていった。そして、場にいた兵を全て倒したのを確認した幻が扇子を閉じると、竜巻も霧散した。幻は振り返り、後ろにある階段を親指で指した。

 

「じゃあ、行こうか? あと、思ったより敵の数が多いから雪羅と朧はなのはたちの方に付いてくれ。」

「分かりました。それと救出が終わり次第、そちらに合流します。」

「援護、する。」

「幻くん、月影さん、クロノくん、気を付けてね。……神城くんも。」

「ああ、君たちもな。」

「この俺が負けるはずないぜ!!」

「……あの自信は一体どこから出るんだろうね?」

「僕に聞かないで下さい、月影さん。」

 

幻たちは互いを元気づけながら、制圧班と救出班に分かれ、それぞれの役割を果たすために先へと進んでいった。

 

 

 

続く




お待たせしました。19話です。

いよいよ4月です。また、忙しい時期が来ましたねー


補足は特にないです。
では、また次回!!
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