転生した天狗とリリカルな物語   作:下駄河童

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第20話 助けます

幻たちが二手に分かれて行動を開始した同じ頃、アースラの医務室で眠っていた(正確には眠らされた)フェイト、アルフ、リニスの3人はほぼ同時に目を覚ましていた。

 

「あれ? 私たちは一体?」

 

フェイトたちはベットから体を起こすと、寝起きの頭で意識をなくす直前のことを思い出そうとした。

 

「確か、母さんを助けるためにベットから起き上がったんだよね?」

 

とフェイトが隣にいるアルフに聞くとアルフが頷いた。

 

「ああ。けど起きると同時に幻がリニスと一緒に入ってきて……そこから先は覚えてないね。」

「……幻くんが何かしらの術をかけたのかもしれませんね。」

 

フェイト経由で幻の正体を聞いていたリニスが呟くと、フェイトたちも納得したようだった。そして、3人は医務室内にあった映像モニターに気が付いた。そこには、なのは、ユーノ、雪羅、朧のプレシア救出班が大勢の傀儡兵と戦っている映像が映されていた。それを見たフェイトは驚き、しばらく思案したのち何かを決意し、リニスの方を向いた。

 

「リニス。私、母さんや幻を助けたい。……それにあの子も。」

「……気持ちは分かりますが、私たちの魔力はまだ完全に回復してません。それにバルディッシュも。……敵の攻撃を受けた時にダメージを負ったのは、バルディッシュも同じです。」

 

首を横に振って、そう言ったリニスが待機状態のバルディッシュに触れると、ボロボロのバルディッシュが展開された。それを見たフェイトは一瞬言葉を詰まらせたが、それでもリニスを説得しようと言葉を続けた。

 

「……それでも、アリシアの為に必死に頑張ってきた母さん、私たちに協力してくれた幻、そして、何度も戦って、友達になりたいって言ってくれたあの子が戦っているのを、ここでただ眺めていることなんて私にはできない!! 私はこの戦いから逃げない!!」

 

フェイトが自身の思いを叫ぶと、その声に応える者がいた。

 

『Get set.』

 

ボロボロの機体を動かし、フェイトの思いに応えようとする愛機の一声を聞いたフェイトは涙を流した。

 

「!! バルディッシュ……そうだよね。お前もこのまま終わるなんて嫌だよね?」

『Yes,sir.』

 

その光景を見ていたリニスは、フェイトの目を見て尋ねた。

 

「……フェイト、絶対に無茶はしないと約束できますか?」

「うん。」

「分かりました。本当、そういうところはプレシアそっくりですね。アルフ、フェイトの補佐を頼みますよ?」

「ああ。」

 

リニスは2人が頷いたのを確認すると、フェイトの手を握った。すると、フェイトの体を淡い光が包み込んだ。

 

「少くないですが、私の魔力を分けてあげます。」

「リニス、ありがとう。」

「それから」

 

そう言うとリニスは片手に持ったバルディッシュにも魔力を流し込んだ。フェイトの時と同様に淡い光がバルディッシュを包んでいき、みるみるうちに傷が消えてボロボロだった機体が新品同様の輝きを放った。

 

『Recovery.』

「バルディッシュも頼みましたよ?」

『Yes,sir.』

 

バルディッシュはリニスによって完全修復され、本来の姿を取り戻した。同時に魔力を限界まで分け与えたたためかリニスは山猫の姿になってしまった。だが、そんなことは微塵も気にせず、リニスは2人を笑顔で送り出した。

 

「いってらっしゃい、フェイト、アルフ。絶対にプレシアを連れて帰ってきてください。」

「ありがとう、リニス。いってきます。……バルディッシュ!!」

『Yes,sir.』

 

フェイトはバリアジャケットを身に纏い、完全に回復したバルディッシュをその手に持ち、アルフと共に時の庭園へと転移した。

 

 

―――庭園内・プレシア救出班――――

 

幻たちと分かれたなのはたちは、プレシアを救出するべく時の庭園の地下を目指していた。しかし、そんな彼女たちを迎撃するべく、かなりの数の傀儡兵が武器を構えて襲いかかってきた。

 

「まったく切りがないですね。 “氷刃の舞”」

「数が、多い。」

 

凍りついて砕け散った傀儡兵を横目に見ながら、雪羅はあまりの数の多さにうんざりしていた。朧も手にした自身の得物である鎖鎌を振るって迫りくる兵を切り捨てながら、面倒くさそうに呟いた。

 

「だけならいいんだけど……このぉ!」

 

なのはも魔力弾を飛ばして、飛行型の傀儡兵を次々に撃破していった。

そんな中、チェーンバインドで複数の兵の動きを止めていたユーノは少し焦っていた。

 

「まずい、何とかしないと! このままじゃ魔力が……」

 

そんな焦りが影響したのか、兵の1体が強引に拘束を解いてしまった。その兵は巨大な戦斧を手になのはに切りかかった。

 

「しまった!! なのは!!」

「っ!?」

 

ユーノが叫んだが、その兵の存在に気付いていなかったなのはは反応が遅れた。そんな彼女に容赦なく兵は斧を振り下ろし、なのはは反射的に目を閉じた。

 

『Thunder Rage.』

 

だが、その時、辺りに轟音が響き渡り、振り下ろされた斧がなのはに当たることはなかった。そして、なのはが目を開けると、轟雷が斧ごと兵を貫いていた。驚いたなのはたちが見上げると、そこには魔方陣を展開したフェイトがバルディッシュを構えていた。

 

『Get set.』

「“サンダーレイジ!!”」

 

フェイトが叫ぶと、再度放たれた轟雷がその場にいた兵たちを全て打ち砕いた。そして、兵を倒したフェイトはなのはの隣に舞い降りた。

 

「フェイトちゃん。」

 

なのはが嬉しそうにフェイトの名前を呼んだ。しかし、一緒に転移してきたアルフが叫んだ。

 

「フェイト、まだだ!!」

 

アルフが叫んだ直後に壁を突き破って、今までの兵の数倍はあるであろう巨大な傀儡兵が姿を現した。その兵は盾と斧を持ち、巨大な砲門を装備していた。

 

「かなりの大型だ。防御が固い。」

「うん。」

 

フェイトの言葉になのはたちが頷くと、巨大兵は背中に装備した砲門に魔力を溜め始めた。

 

「でも、私たちでなら倒せる。私も一緒に戦う。」

「うん、うん! うん!」

 

なのはは共闘を申し込むフェイトの提案を嬉しそうに受け入れた。同時に魔力を溜め終えた巨大兵は、彼女たち目掛けて次々に魔力弾を発射した。

 

「散開して下さい!!」

 

雪羅の指示になのはたちは従い、巨大兵の乱射を回避しつつ反撃を始めた。なのははディバインシューターを放って盾を、フェイトはアークセイバーで兵が持つ斧をそれぞれ攻撃していた。

やがて、2人によってそれぞれの部位が破壊され、動きを止めた兵の隙をついて朧とユーノ、アルフが鎖分銅とチェーンバインドで兵を拘束し、雪羅が刀から発した冷気で兵の手足を凍りつかせた。

 

「2人とも今です!!」

 

雪羅が叫ぶと、なのはとフェイトはそれぞれのデバイスを構えた。

 

「行くよ、バルディッシュ!」

『Get set.』

 

「こっちもだよ、レイジングハート!」

『Stand by ready.』

 

2人は魔方陣を展開し、2色の砲撃魔法を放った。

 

「“サンダァァースマッシャーー!!”」

「“ディバイィィンバスターー!!”」

 

2つの砲撃と巨大兵が苦し紛れに発射した魔力弾がぶつかり合う。

 

「「せえぇぇっっの!!」」

 

しかし、掛け声と共に最大出力で放った砲撃が兵の砲撃と固い装甲を撃ち破り、巨大兵は爆散した。

 

「やったね、フェイトちゃん!」

「うん。」

「……気持ちは分かりますが、今はプレシアさんの救出を急ぎませんか?」

 

強敵を撃破した2人は嬉しそうにしていたが、雪羅に言われて慌てて本来の目的を思い出すと、フェイトたちの案内でプレシアが囚われているであろう地下へと急いだ。

 

――――――――――――――

 

同じ頃、幻、月影、クロノ、神城の4人は男がいる庭園・最上階を目指して、迫ってくる敵を次々に倒しながら順調に歩を進めていた。

 

「“風刃・螺旋”」

「“豪炎符”」

 

幻が放った螺旋状の鎌鼬がドリルのように兵の装甲を貫通し、月影が手にした護符から発生した炎が周囲の敵を焼き尽くした。

 

「“ブレイズキャノン!!”」

「“タイラント・ルーンブレイドォォオ!!”」

 

クロノの放つ直射砲撃が兵を粉砕し、神城が振り下ろした大剣から発生した衝撃波が周囲の敵を切り裂いた。

と、戦闘力に特化したこのチームは、敵の反撃を許さず、ほぼ一方的に敵を殲滅していった。

 

「ははは、何だこの程度か!?」

「敵の動きが単調だからね。……油断しないでくれよ?」

 

敵の残骸を見て高らかに笑う神城の後ろでクロノが油断大敵と釘を刺した。その横で幻は眉間にしわを寄せていた。

 

「『幻くん、難しい顔してどうしたの?』」

「『いや、あの男は戦力を整えるのに15個のジュエルシードを使ったと言っていただろう? ジュエルシードを15個も使ったのなら、もう少し強いのが出てきてもいいはずなんだがな。……何か嫌な予感がする。』」

 

男が持つ切り札の存在を知らない幻の予想は残念ながら当たることとなる。

 

―――――――――――――――――

 

「フェイトさん、ここにプレシアさんが?」

「はい、恐らくは。」

 

と尋ねてきた雪羅に答えながらフェイトたちは地下牢の入り口まで到達した。周囲を防衛していた傀儡兵は既に倒しており、雪羅の指示で忍びである朧と鋭い嗅覚をもつアルフが先行していた。残りの救出班は新たな敵の出現を警戒しつつ、慎重にかつ迅速に進んでいた。

 

「『プレシア、いた。』」

 

やがて先行していた朧から連絡が入り、なのはたちは急いでその場所へと向かった。連絡のあった場所に着くとアルフに抱えられたプレシアの姿があった。

 

「母さん!!」

「……フェイト? よかった……無事だったのね。」

 

フェイトの呼びかけにプレシアは嬉しそうに応えたが、かなり弱っているようだった。

 

「プレシアさん、無事で良かったです。急いでアースラへ転送します。」

 

雪羅がそう告げるとプレシアは頷いたが、周囲を見渡して何かに気付き、傍にいたフェイトに尋ねた。

 

「フェイト……幻は?」

「今、上で戦ってる。あの男を倒すために。」

「!! 何ですって?! 雪羅さん、急いで彼に連絡を! 痛っ!?」

「無理しないで下さい。……一体どうしたんですか?」

 

突然大声を出したプレシアに驚いた雪羅が聞き返すと、プレシアは彼女たちに言い聞かせるように口を開いた。

 

「落ち着いて聞いて。あの男は私から奪った15個のジュエルシードを使って、強力な部下を生み出したの。」

「それがあの傀儡兵ですか?」

「違うわ。あれは元々この庭園内に封印されていた物よ。あの男は……ジュエルシードの力を使って復活させたのよ……アリシアを!!」

「!!」

 

予想外の事実にフェイト、アルフ、雪羅は目を見開いた。さらにプレシアは言葉を続けた。

 

「しかも、アリシアは以前の記憶を操作され、あの男の部下だと思い込まされているわ。さらに魔力も異常な量よ。」

「で、でも、母さん。それじゃあ、アリシアの体が持たないよ?」

「……ジュエルシードを6個使って、アリシアを異常な魔力にも耐えられるようにしたそうよ。……嬉しそうに喋っていたわ。」

「そんな……ひどい……」

 

衝撃の事実にフェイトはショックを受けた。その時、巨大な揺れが彼女たちを襲った。

 

「じ、地震?!」

「な、何だ?! この魔力反応は? 今までこんなのなかったぞ?!」

 

突然感じた強大な魔力反応に驚くユーノにプレシアが告げた。

 

「恐らくアリシアよ。」

「なっ!?」

 

上から感じる異常な気配に雪羅も言葉を失っていたが、はっとして通信モニターを開いた。

 

「幻、とにかく聞いて下さい! 敵はアリシアさんを復活させたそうです。加えて、今の彼女にはジュエルシードの力で異常な魔力が」

『なるほど、どおりで強いわけだ。そうか、この子がアリシアか。』

 

雪羅が言い終える前に幻が口を開いた。

 

「幻、まさか。」

『ああ。今、目の前にいるんだよ。そのアリシア・テスタロッサがな。』

 

 

続く




ということで、戦いまくりの回でした。アニメ12話に相当する話です。
お待たせしました!

以下補足です。
アリシアに使ったジュエルシードの分配数は、次回、敵さんに語らせるつもりです。

では、また次回!!
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