今回は、ようやくあの回です。では、本編どうぞ!
―――放課後―――
授業が終わり、幻は帰り道の途中で再び姿を現した朧(どうやら授業中は、ずっと教室の天井裏にいたらしい。)や人の姿に戻った月影、雪羅と共にたわいもない話をしながら帰路についていた。3人とは帰り道の途中で偶然会ったということになっている。
「幻くん、今日も退屈そうだったね。」
「……げん、ずっとあくび、我慢してた。」
「幻、主としてあれはどうかと……」
月影たちは幻の授業中の態度について言いたい放題であった。そんな3人に幻はため息交じりで口を開いた。
「……ほっとけ、だいたい人生で2回も小学校に通ってたら欠伸もしたくなるわ。」
と幻たちが話している時だった。
「『たすけて』」
突然、念話が聞こえてきた。それを聞いた幻たちは真面目な表情になった。
「……今のは?」
「念話ですね。あちらから聞こえました。」
「あそこって確か公園がある方角だよね。」
月影の言うとおりであるならば、念話が聞こえてきた方角には大きな池のある公園があったはずである。そこに何かがいると考えた幻は、3人の方を向いた。
「とりあえず、行ってみるか?」
3人「はい(うん)!」
3人は幻の言葉に頷くと、家とは真逆の方向にあるその公園に向かって歩き出した。
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幻たちが念話が聞こえたと思われる公園に到着すると、園内には数人の警察官がおり、何やら捜査をしていた。
「あのー、何かあったんですか?」
「ん? ああ、ここの遊具や小屋が壊されていたんだよ。悪戯にしては度を越えているから、通報を受けた私たちの方で調べていたんだよ。」
気になった月影が尋ねてみると警官の1人が答えてくれた。
警官の言葉を聞いた幻たちが周りを見渡すと壊されたボートや橋げたが見えた。
「『……幻、あの破壊跡は人間の仕業ですか?』」
雪羅が幻に念話で聞いてきた。さすがに普通の人間の前で、しかも外見が小学生の幻に小声で聞くわけにもいかないと思ったらしい。幻もなるべく表情を表に出さないようにして答えた。
「『いや、人がやったにしては壊され方が激しい。』」
「『あそこ、えぐれてる。』」
朧が指差した方を見ると、木や地面を大きな爪でえぐったような跡がいくつか残っていた。
「『妖怪の類かもしれないな。』」
その跡を見た幻は、雪羅たちにそう告げた。幻の推測を聞いた雪羅たちは、そうかもしれないと軽く頷いて見せた。
「とにかくここは危ないから、あまり近づいちゃだめだよ? ぼく、お姉さんたちの言うことをちゃんと聞くんだよ?」
「……ぼく?……!! ああ、はい。」
月影と話していた警官が傍にいた幻たちにも注意をしてきた。ちなみに幻は、警官の言った“ぼく”が自分のことだということに気付かず、少し遅れてから気がついたようだった。
「(ったく、誰がぼくだよ?! 子ども扱いするな。)」
「いえ、今の幻はどこからどう見ても子供です。」
「……雪羅、俺、顔に出てた?」
「それはもう。はっきりと。」
と幻と雪羅が話していると、
「『……たす……けて。』」
再び念話が聞こえてきた。
「……近いな。この辺りを探してみ「あれ? 幻くん? 朧ちゃん?」……え?」
と幻たちの後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ってみると、なのは、すずか、アリサがいた。家が逆方向の幻たちとは違い彼女たちはちゃんとした帰り道の途中のようだ。
「……何でいる?」
「帰り道だからよ。あんたこそ何でいるのよ?」
「……帰り道だから」
「あんたいつも、あたし達と帰り道逆方向じゃない。」
「……晩飯の買い出しのついでに散歩してた。」
「(幻くん、それは少し無理があるよ? お店も逆方向だし)」
幻の言い訳にこっそり突っ込む月影。
「そうなんだー。ところで幻くん、後ろにいるお姉さんは誰?」
「(……信じちゃったよ。)」
幻の適当な言い訳を信じた様子のなのはが幻の後ろにいた月影たちの存在に気付いて聞いてきた。小物形態で学校についてきている月影たちは、なのはたちのことを知っていたが、なのはたちからすれば月影、雪羅の2人とは初対面である。
「この2人は、家族だ。俺の親戚で朧の姉だ。『という設定で頼む。』」
「えっと、高町なのはです。幻くんとはクラスメイトです。」
「アリサ・バニングスです。なのは達と同じクラスメイトです。」
「はじめまして、月村すずかといいます。」
なのはたちが、自己紹介を言い終えると、今度は雪羅が丁寧に、月影が明るく自己紹介をした。
「ご丁寧にどうも。私は雪羅といいます。で、こちらは姉の」
「月影です。雪羅ちゃん、朧ちゃんのお姉さんで、幻くんのお姉さんでもあります。よろしく!」
「『……た……けて』」
と話していると、また念話が聞こえてきた。だが、最初の念話と比べるとだんだんと弱くなってきていた。
「(……それにしてもしつこいな、オイ。)」
「!? すずかちゃん、アリサちゃん、やっぱり何か聞こえるよ。ちょっと、ゴメン!」
と言うとなのはは森の方へ走って行ってしまった。だが、幻はアリサたちとなのはの後を追いながらあることを考えていた。
「(……まさか、高町には今のが聞こえていたのか?)」
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幻たちが追いつくと、なのはが1匹のフェレットを抱き抱えてオロオロしていた。
「なのはちゃん、その子は?」
「怪我してるみたいなの! どうしよう?!」
「とりあえず、落ち着いてください。まずは動物病院に連れて行きましょう。」
雪羅が混乱状態のなのは達に冷静に指示を出していた。
その後、すずかの案内で近所の動物病院に行き、助けたフェレットを診てもらった。幸いフェレットは軽傷で一晩休めば大丈夫とのことなので先生にフェレットを任せ、幻たちは解散した。
そして、なのはたちを途中まで見送った後、幻たちも帰路に就いた。
「じゃあ、幻くん帰ろっか?」
「そうだな。ところで雪羅、高町だが・・」
「ええ、例の念話が聞こえていたみたいでしたね。」
「ええぇ?! そ、そうなの?」
「つきかげ、鈍い。私でも気付いた。」
「はぅ。」
どうやら月影以外は、なのはが念話を聞けることに気付いていたようだった。そして、1人だけ気づいていなかった月影は、朧の一言でかなり落ち込んでしまったようで道の隅で地面に「の」の字を書きながら泣いていた。そして、朧はフォローのつもりなのか無言で月影を撫でていた。
「しくしく……」
「つきかげ、どんまい。」
……18歳の巫女が道の隅で地面に「の」の字を書きながら泣いていて、7歳の幼女に慰められている。なんともシュールな光景である。
「(……弱まっていた念話が聞こえた場所のすぐ傍に手負いのフェレットか。まさか)」
そんな中、幻は念話の相手があのフェレットではないかと1人で考えていた。
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そして、その日の夜にまた念話が聞こえてきた。
「(……だから、しつこい。)」
「『この声が聞こえる人にお願いします。力を貸して下さい。』」
「しょうがない。答えてやるか。『あーあー、聞こえるか? お前は、今、何処にいる?』」
幻が念話で返答した。
「『!! はい、聞こえます! えっと、分かりません。何処かの檻の中みたいで……うわぁ?!』」
突然念話相手が、驚いた声を上げた。
「『?! どうした? 敵襲か?』」
「『は、はい! お……い、力……貸……』」
そこで、念話は途切れてしまった。どうやら何者かに襲われたみたいだった。檻の中ということは、やはり念話の相手は夕方に助けたフェレットで間違いないようだ。
「くそっ、切れちまった。こりゃ、久々に戦闘になるかな。」
と幻が言うと同時に部屋の戸が開き、月影たち3人が部屋に入ってきた。3人とも途切れる直前の念話が聞こえていたようで、すでに臨戦態勢だった。
「よし、月影、雪羅、頼む。」
「「はい!(うん!)」」
幻の声に応えると月影と雪羅は目を閉じ呼吸を整えた。すると2人の体が輝き、光が収まるとそれぞれ1本の刀になった。幻は、2本の刀を腰に差してから、家の外に出た。
「朧、準備はいいか?」
隣にいる朧の方を見ると彼女は、コクンと軽くうなずいた。それを見た幻は、よしと呟き呼吸を整えた。そして、幻は背中から黒い翼を出し、少し身を屈めて朧を背負った。
そして思いっきり地面を蹴り、夜の空へと飛び立った。
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今、海鳴市の上空を1人の少年が飛んでいた。
「しかし、翼を出して飛ぶのも久しぶりだな。」
背中から生えている漆黒の翼を羽ばたかせながら幻が呟いた。
『はい。私たちも刀に戻るのは久しぶりです。』
『こちらに来てから、普通に生活してたもんねー。』
と話している時だった。突然妙な空間が発生し、町から人が消えていった。
「……これは、結界?」
幻の背中にいた朧が、ぽつりと言った。
『うん。けっこう広範囲だよ、幻くん。』
「分かってる。発生地点は……やっぱりあの動物病院の辺りか。……ん?」
と幻がそこに行こうとすると、いきなり桃色の光が辺りを包んだ。そして、
「レイジングハート、セーット・アーップ!!」
光が収まると、そこには白い服を着て杖を持ったなのはが宙に浮いていた。
「……高町?」
『なのはちゃん?』
「ふぇ!?」
幻と月影の声になのはが振り返った。
こうして半妖の少年と白い魔導師がそれぞれの本来の姿で出会った。
続く
という訳で長くなりましたけど、フェレットくんの登場回&変身回です。やっと出てきました。
はたしてフェレットくんの運命やいかに!
では、また次回!