では、本編どうぞ!!
フェレットを助け、暴走体を倒し、ジュエルシードを封印した幻たちは夜の町を歩いていた。
「えーと、雪羅さんたちってレイジングハートと同じデバイスだったんですか?」
「いえ違います。“でばいす”ではなく剣精です。」
「えっと? 違うんですか?」
「はい。そもそも、剣精とは……」
と、雪羅となのはが話して合っている。
現在、夜遅くに家を飛び出てきたなのはを家に送りながら、幻たちはお互いのことについて話し合っていた。
幻は、自分が天狗の半妖であることを話し、それ以外のことについては適当に誤魔化した。
さすがに前世の記憶を持った転生者なんて言っても信じてもらえないと思ったからである。
幻の正体を知ったなのはは驚いたが、既に羽が生えているのを見た後だったため、そこまで驚きはしなかった。
そして、しゃべるフェレットくんは、本名をユーノ・スクライアといい、なんでも他の世界からさっきの戦闘時になのはが封印したジュエルシードを集めるために別世界である地球に来たらしい。
「という訳なんだ。」
と現在、幻の肩に乗っているしゃべるフェレットくんことユーノは、ジュエルシードがなぜ地球にあるのかを説明していた。
「なるほど、過去に滅んだ異世界の古代遺産・ロストロギアね。で、それの1つであるジュエルシードを古代遺跡で発見したユーノの一族は、そのなんとか局に管理してもらおうと回収を依頼したわけね。」
「うん。時空管理局ね。でも、輸送の途中で船が事故に遭ったみたいで。それで、21個のジュエルシードがこの地球に……」
そう言うとユーノは申し訳なさそうに俯いた。
「そんなに落ち込むな。あっ、そうだ。高町、お前の家ってどの辺りだ?」
とユーノを慰めつつ、話題を変えるために家の詳しい位置を聞こうと思った幻は、なのはの方を見た。
「ふにゃ~」
すると、雪羅と話していたなのはが、頭から煙を出しながら目を回していた。
「……でありますので……」
しかも話すことに集中している雪羅は、なのはの状態に気付いておらず、まだ話を続けていた。
「って雪羅、ストップ! 高町がめちゃくちゃ混乱してる!」
「わぁ?! 雪羅ちゃん、ストップ、ストップ!」
夢中になって剣精のなんたるかを説明していた雪羅を幻と月影が慌てて止めた。
「ふぇ~、雪羅さんたちって複雑だよ~」
「……なのは、生きてる?」
未だに混乱しているなのはを朧が心配そうに見ていた。
「雪羅、お前何を言えばこうなるんだよ? そもそも剣精の説明なんてせいぜい文章3行分くらいだろ? そして俺は本当に頭から煙を出す人間なんて初めて見たぞ?! あっ、そうだ。高町、お前の家はどこだ?」
すみませんと謝る雪羅に説教をしながら、幻は同じ質問をもう一度なのはにした。
「ふぇ? うんとね~、この角を~右に曲がった先だよ~。」
朧に心配されながらなのはは質問に答えた。混乱はまだ続いているようで若干語尾が伸びていた。
その後、しばらく歩いているうちになのはは元の状態に戻っていた。正気に戻ったところで、ふと何かを思い出したなのはは幻の方を向いた。
「そうだ! 幻くん、私、なのはだよ?」
「いや、高町の名前は知ってるが?」
「だから、なのはって呼んで?」
「確かに、なのはちゃんは幻くんを名前で呼んでるのに、幻くんは高町って苗字で呼んでるよね。」
「幻、なのはさんを名前で呼んであげてはどうですか?」
姉妹にそう言われ、幻はなのはの案を受け入れた。
「分かったよ、なのは。」
「うん!」
幻がなのはと呼ぶと、彼女は嬉しそうに頷いた。
その後、幻たちはなのはの家に無事到着し、なのはは玄関先で待っていた兄と姉に説教され、その後にユーノのことを魔法関係のことを省いて説明していた。それから幻たちと高町家の人々はお互いに自己紹介をしていた。しかし、そんな中、なのはの兄、恭也さんは幻たちの方をじっと見ていた。
「(……何か警戒されてるな。まさか、妖気に気付いた?……そんなわけないか。)」
「(多分、兄としての警戒心じゃないかな。)」
視線に気づいた幻と月影は内心で別々のことを考えていた。
その後、幻たちは高町家を後にして帰路についた。
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翌日、幻が学校に登校すると、また隣のクラスの銀髪くんこと神城勇気が教室内にいた。神城は、なのはたちの所で喋っているようだが、3人はものすごく嫌な顔をしていた。
「ところで、なのは、フェレットは元気かい?」
「何で、神城くんが知ってるの?」
「あんた、私達の話を盗み聞きしてたわけ?」
「え? いやだなー、僕はそんなことしなくても君達のことは何でも知ってるのさ!」
3人「(きもっ!)」
「『何なんだあいつは? 面白いくらいに嫌がられてるぞ?』」
「『あれは、女性に嫌われるタイプですね。』」
と幻は雪羅と念話をしながら教室に入った。
ちなみに本日朧は、どうしても見たいTV番組があるとかで家でお留守番中である。
「(朧もこっちに来てから普通の女の子に近づいてきたなー)」
と思いながら幻は自分の席に座り、先生が来るまで睡眠を取ろうとしていた。すると、幻が来たことに気付いたなのはたち3人がダッシュで幻の席に来た。
「おはよう! 幻くん。」
「来るのが遅いわよ、幻!」
「まぁまぁアリサちゃん、おはよう、幻くん。」
「お、おう、おはよう……つか、あいつはいいのか?」
3人「え? 誰のこと?」
幻が神城の方を指さすと、まるで始めから誰もいなかったかのような反応をする3人。
「……そんなリアクションすると、いくら銀髪くんでも怒るぞ?」
「おい!」
「ほら、怒った。やっぱり無視は」
よくない、と幻が言おうとすると神城がその言葉を遮った。
「おい! お前、何なのはたちと馴れ馴れしく話してんだよ?!」
「……あれ? 何か怒りの矛先が俺に向いてない?」
「そうだよ、お前だよ!」
「(やっぱり、俺かよ。)何だよ? いきなり。」
「だから、何なのはたちと馴れ馴れしく話してんだよ?」
「いや、3人の方からこっちに来たし」
「うるさい! それはきっと、お前はなのはたちを脅して言うことを聞かせているからだ!」
「……」
月・雪「『……』」
クラス「…………」
神城の予想外の発言に幻たちを含めたクラス中の人間が黙った。
「(……えっと、何言ってんの? こいつ。)」
「ほら、見ろ! 沈黙は肯定なり! だ!」
「あんた、馬鹿ぁ?! こいつが、そんなことするわけないじゃない!」
「そうだよ! むしろ神城くんがいやなのよ!」
「早く帰ってよ!」
と勝手なことばかり言う神城になのはたちが一斉に文句を言い出した。それにつられる形で他の児童も「そうだ! 帰れ―!」といい始めた。しかし神城はというと、
「なんてことだ。なのは達はそいつに無理矢理言わされているんだね。貴様はクズだ!」
とかなり都合のいい解釈をした上に、訳のわからないキレ方をした神城は、幻に殴り掛かってきた。
「……いい加減、鬱陶しいな。」
だんだんイライラしてきた幻はため息交じりに呟くと、殴り掛かってきた神城の腕を掴んで、そのまま一本背負いの要領で近くの空いている窓から外に向かって投げ飛ばした。
「……は?」
クラス「「「「「ええぇぇえ?!」」」」」
神城の間抜けな声とその時クラスにいたクラスメイト全員の驚く声を気にも留めずに、幻は一言
「よし、寝よう。」
直後に窓の外からドボーンと水しぶきが上がったのだった。
「(……まぁ、着弾点はプールだし、あいつ転生者だし大丈夫だろ。)」
その後、1時間目の授業の時に先生が
「そういえば、隣のクラスの神城君が飛天君にプールに落とされたって騒いでるんだけど、本当なの?」
と幻に聞いてきた。
その件について意見を言おうと幻が口を開こうとすると、その言葉を他の児童たちが遮った。
彼らは、幻は何もしていない、神城の言っていることはウソだ、と幻を庇ってくれた。そのことにちょっとした友情を感じて嬉しくなった幻は、その日の昼食時間にクラスメイト全員にジュースを奢ったのだった。
しかし、それらの嘘はすぐにバレてしまい、お咎めなしというわけにもいかず、後日、幻は反省文の提出と担任の雑務の手伝い、先に手を出してきた神城は反省文の提出とトイレ掃除という罰をそれぞれ受けた。
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その日の放課後、幻は迎えに来た朧と人の姿に戻った月影たちと共に高町家にやってきた。
幻たちがここに来た理由は、昨夜の帰り際に恭也からこっそりと対戦を申し込まれたからである。幻はその申し出を受け、わざわざ家と逆方向の高町家まで足を運んだのである。
「よく来たな、飛天 幻君。わざわざ来てくれてありがとう。」
幻たちが高町家の敷地内に入ると、玄関の前で恭也が腕を組んだ状態で仁王立ちで立っていた。ちなみに、彼は稽古着姿で気合十分というのが目に見えていた。
「では、道場に行こうか。」
「分かりました。……手加減しませんよ?」
幻は不敵に笑うと恭也の後について高町家母屋の隣にある道場に入っていった。
「武器はそこにあるのを自由に使ってくれ。」
そう言って恭也は2本の小太刀(木刀)を手に取った。なのはの兄 恭也と父の士郎、姉の美由希の3人は、小太刀二刀御神流という剣術を使う。
「あー、俺は素手でいいです。」
「?!……。」
そう言って幻は拳を構え、それを見た恭也は驚いたが、何も言わずに木刀を構えた。2人は動かずに相手の出方を窺っていた。
先に動いたのは恭也で特殊な足さばきで一気に間合いを詰め、右手に持った木刀で幻の頭を狙った。幻はその攻撃を体をひねって避け、恭也を狙って正拳突きを放った。
「(!? 重い?!)」
恭也はとっさに木刀で防いだが、幻の重い一撃を受け止めた右手の木刀が粉々になった。天狗の半妖である幻は、普通の人間よりも怪力であり、素の状態でも木刀を粉砕するくらい簡単なのである。
「ば、馬鹿な?!」
恭也はいきなりのことに驚いた。そして幻はその一瞬の隙をついて恭也が左手に持つ木刀を上段廻し蹴りで蹴り飛ばし、恭也の鳩尾のあたりで拳をピタリと止めて微笑んだ。
「降参します……よね?」
「あ、ああ、参った。」
恭也は両手を上にあげて降参のポーズを取った。結果は幻の圧勝で終わった。
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闘いを終えた幻たちは高町家の縁側でのんびりしていた。
「そういえばさ幻くん、なんでさっきの対戦で木刀を使わなかったの?」
月影が幻に尋ねてきた。
「ん? ああ、体が縮んだ状態で、さらに素手でどれくらい戦えるかなーと思ってさ。」
「幻らしい考え方ですね。で、どうでした?」
雪羅が聞くと幻は腕を組みながら、しばらくの間うーんと考え
「動体視力や反応速度は大丈夫なんだが、やっぱり腕力に限界があるなー。この体だと拳圧がほとんど出ないんだよな。また修行しようかな。」
と答えた。前世での幻は拳圧だけで人間4、5人を吹き飛ばすくらいのことはできた。
「でもさ、もし幻くんの力が前世のままだったら、恭也くん大変だったんじゃない?」
「それに今日の1件で幻の正体に疑問を持ったのでは? 明らかに人間業じゃないですよ?」
と月影が苦笑しながら言い、雪羅は真面目な表情で幻に聞いた。
「まぁ、別に正体を隠すつもりはないし、機会を見て話すさ。それよりも、恭也さんが大変なのは今だよな?」
とそれを聞いた月影たちは確かにと言いながら道場の方を見ていた。
先ほど幻に敗北した恭也があれからどうしているかというと……
「恭也ぁ? あなた、小学生の子相手に何をやっているのかしら?」
「お兄ちゃん? 私の友達に何してるの?」
家(母屋の方)にいたなのはと母・桃子から説教を受けていた。
ちなみに2人は対戦が終わった後に来ているため、試合内容・結果は見ていなかった。
「か、母さん、なのは?! だからあれは、軽い手合せのつもりで」
「お兄ちゃん。」
「恭也。」
2人は、恭也の言葉を途中で遮り、そして同時に言った。
「「……O☆HA☆NA☆SHIだね。」」
その日、高町家の道場からは、とても人間のものとは思えない凄まじい悲鳴が聞こえたという。
続く
というわけで恭也さんドンマイです。
そして、幻はどんな時でも手を抜きません。
では、また次回!!