世界最速のサーヴァント   作:yosiyosi

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ライダー

 結局聖遺物が手に入れられなかった僕は、焼けカスと化した聖遺物の破片を手に必死の形相で追いかけてくるケイネスのアホから命からがら極東の地、日本まで逃げ切った。

 何とかその地に在住する老夫婦の元に転がり込んで、近くの森で英霊を召喚したはいいけど、出てきたのはなんというか、魔力を毛ほども感じないただの女の子だった。それでも神秘的までに美しく、その格好も風格高い者だというのはわかる。

 黒い髪を膝丈まで伸ばし、鼻は低く掘りも浅いけどその顔は恐ろしく整っている。服装はとにかく軽そうで美しいローブのような服だった。

 でも品性の欠片もなさそうにそこにあった石に腰掛けて目をこすり、右手で頭をかいてからいつの間にか持っていたタバコに火をつけて気だるそうに口を開いた。

「あー、えー……何だ。ライダーの白波麟だ」

 どうして?

 

「えっと、僕はウェイバー・ベルベットだけど……何? 日本の英霊?」

「英霊? 英霊か……死した英雄ね。そんな良いもんじゃないよ。俺は誰も生かしてない。俺は誰にも敬われていない。俺は誰も助けられていない」

 白波麟と名乗ったこいつは歌うように、嘲るように僕の言ったことを否定する。

 じゃあ何だ? 何かの間違いで俺は英雄でも何でも無いようなわけのわからないヤツを召喚したって事か? そんなの無いよ。こんな事なら布に火をつけなきゃ良かった。だいたい、聖遺物なのにライターの火で燃やせるってどういう事だよ!

「おいおい、そんな落胆した顔すんなよ。お前は運が良い。俺を召喚したって事はまず死ぬ事は無い訳だからな」

「何でそんな事言い切れるんだよ」

「はははっ! まあ白波麟じゃあわからないわな。俺が呼ばれた名とその証拠をほんの少しだけ見せてやるよ」

 そう言ったコイツは僕の頭に右手を置き、僕の意識はそこで途切れた。

 

 目を覚ましたとき、ライダーは老夫婦と談笑しながら朝食を作っていた。

「あ、あぁああああ! お、お前! 何してんだよぉ!」

「なあにウェイバーちゃんったら、起き抜けいきなり叫んだらアゴが抜けるぞ」

 寝て起きる間にパンツルックになっていたライダーは半笑いで手を振る。

「ほら座れ。朝飯は一日の資本だぞ。なーばあちゃん」

「そうよウェイバーちゃん」

「しかしウェイバー、お前、友達と一緒に暮らしたかったのなら一言言ってくれれば断りもせんかったのに」

 おばあさんとおじいさんは完全にライダーを信用しているようだ。今下手な事を言って後々不和が出たらまたやり直さないといけない。それは面倒だし、何があったか後で聞いておかないと。

「ごめんごめん。僕も帰ってきたばっかりだったし、いきなり友達が泊まるなんていい辛くてさ」

 この返事に朗らかに笑う二人。

「あ、そうそう。この後街に行こうぜ。ここまで繁栄した街は久しぶりだよ全くオイオイ!」

 こういうヤツだったのか。でもこの頼みは受け入れられない。

「今下手に街に出るわけにはいかないんだよ。わかるだろ?」

「知るか!」

 

 さっきの『知るか!』で僕は今、街に向かって歩いている。自分でも信じられない。

「お前、おじいさんとおばあさんに何言ったんだよ」

「チャオー! ウェイバーたんのおホモだち、シュラナムィ・ルィンどぇす! ヨロピコ★」

「とは言ってないよな! 絶対言ってないよなぁ!」

「まあ普通にお前の友達だって言ったけどさぁ。話は変わるけどお前いまいちだな」

「この女ぁ……!」

「あぁそうそう……」

 僕の言葉に反応してか、ライダーは一度目を瞑り、これより上は無いというほどの綺麗な笑顔で僕に、こういう話をしたのだ。

「あたし、男の子だよ、マスターっ!」

「え……はぁああああああああああああああああ!?」

 

「納得いかない」

「世の中納得のいかない事だらけだぞ」

「お前の事だよ! 何で三枚連番で買った宝くじ削ったら三つとも1等出るんだよ!」

「さあ? 売り場のお姉さんもかなり焦ってたな。ははっ!」

「ははっ! じゃないよ! もう外出るなとかは言わないけどせめて目立つなよ!」

「大丈夫だって。俺なんか魔力も全く出してないし、こうしてる限りどう見ても普通の小娘だろ」

「ぐぐぅ……!」

「ほら、行くぞ。銀行でしか換金してくれないんだからよ」

「ってかお前戸籍とか……」

「何とかするっつってんだろうが」

「うわっ、ちょ、はな……!」

 僕は、僕より背の低いヤツに引きずられていた。

 

「ほら見ろウェイバー」

「なんだよ、ただのバイクじゃないか」

「コレを買う」

「は? いや、ちょ、は?」

「だからこのNSR250Rを買うんだって」

「いや、この際名前はどうでもいい! 何でこんなもん買うんだよ! 第一、買っても運転できないだろ!」

「ばかちーん!」

「あべん!」

 僕は、ライダーの体躯ではどう考えても出ないだろってくらいの力で頬を張られた。

 クソッ、涙が出てきた。

「俺のクラスは何だ!」

「ライダーだろ、騎乗兵とかの」

「バカ言え。ライダーっつったらお前モトレースだろうが!」

「んなわけあるか! 英雄がバイクに乗るなんて興醒め過ぎるぞ!」

「仮面ライダーに謝れぇ!」

「ぶぼん! すいまえんでした」

 もう一方の頬までビンタされる。理不尽だ。

「すんません、このNSRほしい。今日中に」

「いつでも乗り出せるようにしてあるよ。六十九万。分割かい?」

「一括」

「まあ別にお前の金だからいいけどさぁ!」

「じゃあ黙っとけ。あとそこのメット二つ」

「あいよ。じゃあ丁度七十万に負けとくよ」

「テンキュー。自賠責は五年で」

「25,130円」

「ほれ」

「おう。所で嬢ちゃん。まさか持ってないことは無いとは思うが、免許は大丈夫だよな? コレに乗るにゃあ中型免許が要るぜ」

 っておいおいどうすんだよライダー。こんな極東の地で乗り物に乗る時免許が必要だとは思ってなかった。

 と思ってライダーを見ると何故か自慢顔で免許証を持ってた。バカみたいな話だけど、全項目埋まってる。バカみたいな話だけど。

 偽造免許を作るならもうちょっとマシな作り方しろよなぁ。とか思ってたらどういう訳かライダーのバイク、その後ろに座ってた。

「え? 何で?」

「掴まっとけよ。最悪死ぬぞ」

 という言葉と共に、ライダーが何かを踏み込んだらバカみたいな音量の排気音がした。

「ちょ、ま、あぁああぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」

 後ろに吹っ飛ばされそうな衝撃とともに景色が線になる。

「止ま、と、とまれぇええええええ!」

「ブレーキは止まるためにあるんじゃねえ! もっと速く走るためにあるんだよぉバッキャロー!」

「うるさいバカぁあああああ! ってお前何で前輪浮いてるんだよぉお!」

「長い人生、そういう事もある!」

「二輪車なんだから二輪で走れよ!」

「うるせぇアホボン! 世の中全部が思い通りに行くと思うなよ!」

「そこまで壮大な話してないよ! 普通に走ってくれよ!」

「俺以上に普通に走るヤツなんか見た事ねえよ!」

「ンな訳あるかぁ! 横見てみろよ! 普通に走ってる人居るだろ!」

「横見て良いのか? 今、時速150kmだぞ!」

「嘘です! やっぱ前見ろ!」

 僕は、自分のサーヴァントに殺されるかもしれない。

「止まれぇぇええええええええええ!」

 

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