瑞鶴奮闘記(完結)   作:冷しゃぶ

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大和型と阿賀野型で爆乳戦隊を踊る動画を視聴。ぷるんぷるんだった。
瑞鶴、瑞鳳、葛城、大鳳、RJで爆乳戦隊を踊る動画を視聴。泣いた。

そして今話は少々手こずりました。


第六話

 

 勝った。

 

 高揚感。達成感。肩で息をしつつ、顔には自然と笑みが浮かぶ。隣に立つ姉も私と同じなのだろう。目を合わせると、額に汗を浮かべながらニコリと微笑みを返してくれた。

 他の子達も、皆一様に晴れやかな顔をしていた。傷を負い、服は破れ、艤装もボロボロだというのに、嬉しそうに表情を緩めている。

 

 帰ろう。

 

 誰かがそう言って、みんながそれに頷く。

 

 そうだ。帰ろう。そしてその後は何をしようか。

 まずは提督さんに報告かな。「褒めてくれるかな」と翔鶴姉に聞くと、クスクスと可笑しそうに笑われた。なんで?

 

 その次は──あの一航戦にでも会いに行くか。癪だけど。

 翔鶴姉は「きっと褒めてくれる」と言うが、それはあり得ないと思う。赤城さんが一日何も食べ物を口にしないくらいあり得ない。そもそもあの人が私を褒めている姿が想像できない。

 そのことを言うと、また翔鶴姉は可笑しそうに口元を緩めた。

 

「加賀さんだって人を褒めることはあるわよ。ただその人の前でしないだけで」

 

 ……それはつまり、私がいない場では私のことを褒めていると? あの一航戦が? 口を開けば小言ばかりのあの鉄仮面が? 翔鶴姉には悪いけど、それだけは信じられないわ。

 

「素直じゃないわね」

 

 ……うっさい。

 

 微笑ましいものを見る目で私を見つめてくる姉から顔を逸らす。

 その時の私の顔は、きっとだらしないものだっただろう。

 

 

 ◆

 

 

「ねえ、ちょっといい?」

「あ、はい……っ、ず、瑞鶴さん!?」

 

 驚きに目を見開き、二歩後ずさって私を見るのは駆逐艦吹雪。

 私が話し掛けると、たいていの駆逐艦連中は今のような反応をする。偶然耳にした情報によると、どうやら私は多くの駆逐艦から恐れられてるらしい。

 特に何かした記憶はないけど、向こうから勝手に距離を置いてくれるのだから、避けられている現状はむしろ好都合だ。必要以上に関わらなくて済む。

 

「赤城さん、どこにいるか知らない?」

「あ、赤城さん、ですか? ついさっき食堂の方へ行くのを見ましたけど……」

「そう。急に呼び止めて悪かったわね」

 

 おどおどしている吹雪を置いて歩き出す。

 

 ここではただの一駆逐艦の吹雪だけれど、私本来の居場所である向こうでは、初めて鎮守府に着任した艦娘──いわゆる初期艦だった。錬度も高く、幼い姿ながらも率先して皆のまとめ役を務めていた彼女を、私は素直に尊敬していた。

 ……が、ここではただの駆逐艦。改二でもなく、特にこれといって役目を担っていることもない、ただの艦娘。

 

 ──そういう些細な違いを見るだけで、この場所が私の居場所ではないと嫌でも認識させられる。

 まあ、同時に感謝もしている。それらの差違を見つける度に、私に向こうのことを思い起こす切っ掛けを与えてくれているのだから。

 

 

 食堂にたどり着き、まずは目的の人物を探す。

 現在の時刻はヒトサンマルマル。もっとも艦娘達がこみ合うピークは過ぎているが、それでもまだ食堂内には多くの子達が席に座り、各々食事なり会話なりしている。

 

 ……入り口付近にはいない、か。

 

 一通り周囲を見渡すが、どこにもあの人の姿はなく。

 となれば奥のカウンター席の方か、と足を踏み出すと、何やら先程までの喧騒が止み、次第に周りがざわつき始めた。

 どうやら普段から食堂に足を運ばない私が今この場にいることに驚いているようで、「うそっ」やら「なんで」と言った声がちらほら聞こえてくる。

 

 それらを無視して、奥へと足を進める。疑惑、困惑、いろいろな視線を浴びる中、私の瞳は目的のあの人の姿を捉える。

 

 予想通り、彼女はカウンター席にいた。

 

 そして、私をまっすぐに見つめていた。

 

「…………」

 

 近づき、見下ろす。私は立ち、向こうは座っているのだから、この形になるのは当然で。

 彼女の隣にいる青い色の片割れが何やら喋りかけてきているが、そんなものは私の耳には届かない。意識の外へと追い出す。

 

「話があります」

「今からですか?」

「できるなら」

「……いいでしょう。ちょうど食事も終わったところですし」

 

 言って、席を立った彼女と改めて視線を交わす。

 向こうは私を見下ろし、私は向こうを見上げる。背が低いのは私の方だから、この形になるのは必然だ。

 

「できれば二人きりでお願いします」

「初めからそのつもりですよ。ということなので、加賀さんは着いてこないように」

 

 「赤城さん!?」と咄嗟に席を立つ加賀を尻目に、私と隣の彼女は歩き出す。

 食堂を出る際、チラリと背後を盗み見ると、私達を追うべきか追わないべきかで悩み挙動不審になっている加賀がいた。

 

 ──ああ、そういうところは変わらないんだな。向こうも、こっちも。

 

 

 

 いつかの射抜くような日差しはなく、空の半分は灰色の浮遊物で覆い隠されていた。

 風でなびく髪の毛が鬱陶しい。頬に貼りついていたそれを手で払いのけ、そのまま後ろに流す。髪を括ってはいるが、風向きのせいで変に前へ流れてくる。

 ふと横にいる彼女に目を向けると、同じように手で髪を後ろへ流していた。ただ私と違い、その顔にはどういうわけだか楽しそうな笑みが浮かんでいる。

 

 食堂でこの人に声を掛けた後、私は彼女を連れて桟橋まで来ていた。ちらほらと艦娘の姿は見えるが、声の聞こえる範囲にはいないことだし、二人きりと言っても間違いはないだろう。

 

「たまには、こうしてただ海を見つめるのも悪くないものですね」

 

 晴れやかな天気でないのが少し残念ですが、と、赤城さんは微笑んだままこちらを振り向いた。

 

 桟橋の縁に腰を下ろし、足をぶらりと垂らす。隣では私に座るように勧めた赤城さんが足をぶらぶらさせながら水面を見つめている。

 

「瑞鶴さん、最近調子の程はどうですか?」

「……普通ですよ。特に問題はありません」

「それはよかった。……ああ、そういえばこの前葛城さんが貴女のことを話してましたよ。初めて瑞鶴さんの射を見た、ととても興奮していました。余程嬉しかったんでしょうね」

「そうですか」

「実はこの話、翔鶴さんにもしたんですよ。そしたら──」

「赤城さん」

 

 ──ピタリ、と話す声が止まった。

 露骨なまでの会話の誘導。私の心に余裕があればもう少しだけ聞き流してもよかったけれど、今はこんな茶番に付き合ってられない。

 

「単刀直入に聞きます。貴女は──私と、同じですか?」

「…………」

 

 無言。

 互いに瞳を見つめ合い、そして互いに視線を外さない。

 

「どういう意味か、なんて今さら聞き返すのは無しですよ」

 

 この人は私が二人きりでと話を持ちかけた時、“初めからそのつもりだった”と答えた。それはつまり、私達以外の人前では話せない内容だとあらかじめ知っていたということ。いや、知っていたというより察していた、かな。まあそこはどっちでもいい。

 ここで重要なのは私にとって人前で話せないことはなにか、だ。そんなもの、考えるまでもなくひとつしかない。

 

 そしてわざわざ“人前では話せない私の事情”に赤城さんが付き合ってくれた理由は──この人自身が、私と共通の秘密を抱えているから。

 

 ……ただ単に私に配慮してくれただけとも考えられるけど。

 

「…………」

 

 赤城さんは、まだ口を開かない。

 もし私の当てが外れていて、今の考察がまったくの見当違いだとしても誤魔化すことはできる。それが切っ掛けでこの人に頭のおかしい奴扱いされようが、周りにそういう噂が流れようがどうでもいい。避けられるのも今さらだし。

 

 ただまた一から調べ直すことになるのは……きつい。ちまちまと、周りに不審がられないようにと注意しながら、ようやく見つけた現状を打破する可能性なんだ。

 違ったとしても諦めるつもりはないけど、私がいつまで耐えられるかわからない。

 

 だから、お願い。どうか──。

 

 

「……この鎮守府に身を置いてから、もう随分経つ気がします」

 

 ──!

 

「気がついたら、この鎮守府近海で立ち尽くしていて。そんな私を初めに見つけてくれたのは加賀さんでした。初対面で、その時はあまり言葉を交わせる状況ではなかったのですが……たった一言二言話しただけで、嬉しく思えたのを覚えています。

 前の──元いた世界では、私は加賀さんと出会うことはなかったので、その反動もあるのかもしれませんが」

 

 言った。確かに、言った。

 今この人は、私の聞き間違いではなければ。

 

「恐らく瑞鶴さんの考えている通りです。私は以前、此所とはまた別の──世界。そう、“世界”にいました」

 

 

  ◇

 

 

「そこは、貴女のいた場所はっ、どんな──!」

 

 突然の動きに反応することもできずに、私は瑞鶴さんに肩を掴まれた。余程力をいれているのか、服越しから掴まれているにも関わらず私の皮膚にくい込んだ指先の痛みに、思わず顔を歪めてしまう。

 

「教えて赤城さん! 貴女はどうして此所に、いやどうやって──ああ違う違う違う、そうじゃないっ、そうじゃなくて──っ!」

「っ……落ち着いて瑞鶴さん。詳しく話しますから」

 

 彼女の手をそれとなく外そうとするも、まるで絶対に離さないと言わんばかりの力でさらに掴まれる。

 艦娘である私の体は普通の人間より丈夫だ。多少の衝撃や攻撃に痛みを感じることはない。けれど、同じ艦娘の瑞鶴さん相手では話は別。

 流石にこれ以上強くされるのは御免だ、とこちらもそれなりの力を加えてみたが、やはり離れない。

 

「瑞鶴さん、肩、痛いので、手を……っ!」

 

 言葉は、最後まで出てこなかった。

 今にも泣き出しそうな顔で。けれど、どこか嬉しそうにも見える笑みを浮かべる瑞鶴さんを見て。

 私の口は、紡ぐ言葉を忘れた。

 

「…………」

 

 安堵と、期待。

 この子がここまで表情を変えたのを見るのは初めてだ。

 

 そしてそれだけで確信する。

 私と違い、この子にとって“元いた世界”はとても大切な場所だったのだろう。

 

 不意に、瑞鶴さんが顔をうつむかせた。変わらず私の肩を掴む手は離さないが、もうあまり気にならない。

 うつむく彼女は、なにやら小さな声で呟いているようで。

 

「やっとだ……提督さん(・ ・)、翔鶴()……やっと……」

 

 

 …………。

 

 ごめんね、翔鶴さん。

 やっぱり私は、貴女の力になれそうにない。

 

 

 そしてごめんなさい、瑞鶴さん。

 

 




なんかすごいシリアスになった。
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