SI -Second Irregular-   作:リンク切り

11 / 42
淡紅兎

 

 

 

 

コンコンコン

 

「・・・・・・誰だ?」

「俺の名は天龍。フフフ、怖いk「乃至か、入れ。」・・・・せめてあと1文字言わせてくれれば・・・・・」

「馬鹿な事を言ってないで入れ。」

「ああ。邪魔するぜ。」

 

扉を開け、部屋に入るのを促すのは織斑千冬。放課後に来いとのご指名の事だ。

今現在、授業が全て終わっての放課後。今頃一夏は、篠ノ之箒と剣を打ち合っている所だろう。

 

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・何だ、言いたいことがあれば言え。」

「いや、世界のブリュンヒルデ様も、こう見れば人間なんだな・・・・」

 

俺の視線の先には、転がる缶ビールの空き缶に投げ出された衣類、散らばる書類と、空き巣か台風が通ったかのような惨状が繰り広げられていた。

 

「まあ座れ。」

「座れる場所も限られてるじゃないか・・・・・」

 

俺は机の前に座り、織斑千冬はその対面に座った。机の上には缶ビールが置いてあり、それに彼女が一口飲む。まだ中身はあるようだ。

 

「下着くらいはしまっておこうぜ・・・・」

 

座った場所の近くに落ちていた黒色のレースのような物を摘んで見せる。すると彼女は俺の手から()()を取り返し、自分の背後に投げた。

 

「返せ、まったく。」

 

仕舞(しま)えよ!

・・・・・・まったくはこっちのセリフだ。少し頬が赤いのは、羞恥の心は欠片だけでも残っているという事か。生徒を部屋に呼ぶならせめて片付けておけよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、用件は?」

「その前に1つ。乃至、今日のアレは何だ。」

「アレ?」

「オルコットとの賭けの内容だ。冗談にしてもタチが悪いぞ。」

「1つの失言がどういうことになるのか、危機感を分かってもらいたかったんだよ。それに、先に奴隷って言葉を出して来たのはアイツだ。『わざと負けたら奴隷にする』ってな。ま、俺の要求は隷属だったが。」

「だとしても言い過ぎだ。」

「そうか?あの上からものを言う言動から鑑みるに、アイツは自分と相手を対等に見ていない。高貴な生まれみたいだから、庶民との当然な差だとでも思っているんだろう。クラスメイトを対等に見ないっていうのは、一個人としても性格に難があるとは思わないか?」

「お前ほどではないがな。」

「進めるぞ。対等に見てないから奴隷なんて発言が出てくる。自分が奴隷になるという同じリスクを背負うならまだしも、だ。それで負けた時に奴隷になるという条件にしたって訳だ。

だが、賭けの内容を受け入れたのには本当に驚いた。それは1/2(にぶんのいち)で自分が隷属する可能性も視野に入れつつも勝負に乗ったという事。誰もが出来ることじゃない。」

「分かった、賭けの内容の事はもう言わん。」

「ヤハハ、そいつは良かった。」

「ここからは教師としてではなく、一般の意見、織斑千冬として話そう。」

「ん?」

「何故そこでやめた?もっとわからせてやっても良かっただろう。」

「お、おい、織斑千冬・・・・?」

「オルコット、アイツも調子に乗りすぎだ。私もわからせてやろうかと思ったが、お前が言ってくれて良かった。」

「アイコンタクトはそういう事か・・・・・」

「幻滅したか?」

「・・・・いや。完璧な人間なんてこの世には俺しかいないしな。」

 

ちょっと、いやかなり織斑千冬の像が崩れたのは否めないが。

 

「大した自信だな。私を前に、そんな大口叩いていいのか?」

「お前こそ、俺相手に1回負けてるの忘れてないか?」

「・・・・そうだな。いつか、お前とは本気でやり合ってみたい。」

「ああ、同意見だぜ。」

「ふふ、こんな気持ちになったのは初めてかも知れないな。柄にもないが、楽しくて仕方が無い。」

「それは奇遇だな、俺も同じ気持ちだ。」

「では、いつかな。期待してるぞ。」

「こっちこそ。善戦を期待してるぜ、最強さん?」

「勿論だ。ただでやられる気は無い。」

 

その時見たのは、誰も、一夏でさえも見たことの無いかもしれない程、心から楽しそうに笑う彼女の顔だった。

俺からはわからないが、多分俺も同じような顔をしていたんじゃないかと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、本題に入るぞ。」

「え?あ、ああ・・・・」

 

携帯を操作して何かをピッピと入力する織斑千冬。その後、パタンと携帯を閉じる。

ちなみに黒いガラケーだ。

 

「乃至、お前・・・・・あのブレスレットはどこで手に入れた?」

「あれは・・・・いつの間にか身につけていたものだ。」

「嘘、ではないようだな。いつの間にかというのは大体どのくらいの事だ?」

「そうだな、俺が初めてISを触った、つまり、IS適性検査があった辺りだ。」

「・・・・そうか。」

「何か、あのブレスレットのことについてわかったのか?」

「・・・・・・コレには両方ISコアが入っていた。」

「だろうな。」

 

そうじゃないと俺が困る。

ポケットから、白と黒の両方のブレスレットを取り出して言う織斑千冬。

 

「授業ではまだ習っていないが、ISコアには1つ1つに識別番号が振ってある。1から467という具合にな。」

「・・・・まさか、」

「このブレスレット2つには、識別番号振られていなかった。つまり、」

「468個、及び469個目のISコア・・・・って事か?」

 

俺の問いに首肯で応える織斑千冬。まさかこのブレスレット、面倒事の種じゃないだろうな!

いや、もう面倒事になるのは明白か。その辺融通利かせてくれないのかよ、本当にサービス精神の無い神様だぜ。

 

「全ての機体の有無の確認をとってみたが、それで間違い無い。」

「・・・・・・面倒なことになって来てるな。これが世間に露見すれば、教科書の記述を変更しなきゃならない大事件だ。」

「それだけならまだいいがな。何にせよ、これが外部に漏れれば確実に他国が黙っていない。」

「だが、俺は使うぞ?折角の専用機だからな。使わないなんて選択肢はない。」

「・・・・・お前ならそう言うと思っていた。別に取り上げたりするつもりは無いから安心しろ。」

「それならいい。ところで、ISコアの作成が出来るのは事実上篠ノ之束だけ。出どころがあるとすれば、彼女が作成したという線が1番現実的ではあるが・・・・・」

「アイツと何か関わりが?」

「まさか。生で見たことさえないぜ。」

「だろうな。だが、興味の無い人間に対しては全く心を開かない奴だ。見ず知らずの相手にISコアを持たせる、なんて事はもっと考えられない。」

「篠ノ之束は行方不明なんだろ?なんでも、国家や企業が全力で探しているとか。それが本当なら、確認する術はないぞ。」

「・・・・・分かっている。だから呼んだ。」

「呼んだ?」

 

その瞬間、バーンと扉を開け放ってピンク色の兎が乱入して来た。

 

「やーやー!!ちーちゃんからお呼び出しなんて、珍しい事もあるんだね!どうしたのどうしたの、もしかして私に会いたくなっちゃったのかな!?いいよー!ちーちゃんなら束さんはいつでもWelcomeだよー!」

「うるさい。少しは静かにできんのか。」

「ひどーい!折角会いに、もとい愛に来てあげたのにー!感謝の念をもっと抱こうよー!?」

「こ、コイツは・・・・篠ノ之束・・・・?」

 

部屋に入ってきたのは、通称『天災』、篠ノ之束だった。完全に無視されてるな俺。

 

「え、何君。私とちーちゃんの邂逅を邪魔するなら殺すよ?社会的に。明日には痴漢の常習犯かつ凶悪強盗犯として犯罪者リストに名を連ねる事になっちゃうよ。それが嫌ならこの部屋から早く出ていk痛っ!?」

「やめろ、束。それに、全然邂逅じゃない。」

「細かい事はいいんだよ!さあさあ、めくるめく快楽の世界へいz痛っ!?私じゃなきゃ脳みそがこんにちはしちゃう威力だよこれ!!」

「・・・・・これに見覚えはあるか?」

「あーん無視したー!ひどいよちーちゃん・・・・ん?何この腕飾り?もしかして私にくれるの!?やったー!ちーちゃんとペアルックだね!・・・・ッ!?」

 

()()ブレスレットを掴んだ瞬間、目の色を変えて凝視する篠ノ之束。コイツレベルになると触るだけで分かるのか?

 

「ちーちゃん、これ・・・・・IS?」

「そうだ。」

「そんな、はず無い・・・私、こんなの作った覚えは・・・・・・」

「予想はしていたが、やはりそうか。」

「・・・・これ、持って帰って解析してもいい?」

「ダメだ。コイツは俺の物だ、持っては行かせない。」

 

パシッと篠ノ之束が持っている黒の方のブレスレットを奪う。ついでに、織斑千冬の持っている白い方も返してもらった。

 

「あれ、君まだいたの?いい加減にしないと、束さんでも怒っちゃうよ?」

「やめろ、束。乃至の言う通りにしろ。」

「なんでー!?ちーちゃんは私の味方だと思ったのにー!!」

「こいつは私の認める生徒だ。お前よりかはよっぽどはっきりしている。」

「えー、ちーちゃんは認めても、私は認めないよー!」

「なら、試してみればいい。」

「え?」「は?」

 

正気か織斑千冬?

 

「ちーちゃん、本気?あれ、死んじゃうよ?」

「冗談。どう頑張っても俺は殺せやしないぜ。」

「ふーん。じゃあ、どうなっても知らないからね。」

 

そう言うと篠ノ之束は回し蹴りを放ってくる。

それを俺は、最小限の動きでバックステップをする事で()けた。この部屋、物が多くて動きにくいな。

 

「初撃を(かわ)したのはびっくりしたけど、それじゃあまだまだだね。」

 

そう言いながらスカートを(ひるがえ)しながら高速で迫って来て、今度は拳、掌底での攻撃だ。それを特に難なくいなす。

 

「流石だ篠ノ之束。だが、今ひとつ物足りないな。」

 

そして、攻撃と攻撃の間にこちらから初めて攻撃をする。後ろ回し蹴りだ。

 

「ッ!?」

 

ガラガラガラガラガラ

 

床に落ちていた缶ビールの空き缶を巻き込みながら吹き飛ばされる篠ノ之束。内蔵や骨まで行かないようには手加減をしたつもりだ。

だが、これで立っていられるのには驚きだ。やはりコイツも、織斑千冬と並ぶ人外なのだろう。

 

「・・・・・・ね・・・・・・」

「ね?」

「ねえねえ君、名前なんて言うのかな!?」

「!?」

「さっきはごめんね、冷たくあしらっちゃってさ!私、君のこともっと知りたいな!!」

 

まさか・・・・・(なつ)かれた・・・・?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。