SI -Second Irregular-   作:リンク切り

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対抗戦

 

 

 

 

 

 

 

「っ・・・・・ふう・・・・・・。」

「何気張ってんだ?普段通りでいいんだよ。」

「お、おう。」

 

そう言って落ち着かせようとするものの、一夏のそわそわは治まらない。

それも仕方はないな。

今日はクラス対抗戦当日。

第一試合目の、開始十数分前だ。

 

クラス対抗戦の開催日は全ての授業が無くなり、一年の全生徒がアリーナで観戦をする事になっている。

試合を見ることも学習の内ではあるからな。

俺達は特別に付き添いという建前の上アリーナを抜け出して一夏の元へと集まることが出来ていた。

一夏の付き添いは、俺と篠ノ之箒と、セシリア・オルコットだ。

セシリア・オルコットは、「代表候補生なら近くで戦闘を見た方が為になるんじゃないか」などと言って俺が呼んできた。

こいつが客席に閉じ込められたら、ストーリーの流れが変わってしまうかもしれないからな。

その事を懸念して、だ。

ちなみに、苹果はツインテールの付き添いとして反対側の入場ゲート付近にいる。

危ないから、試合が始まったら入口からあまり前に出てくるなと釘を刺しておいたので大丈夫だろう。

普段なら俺がいない所であんな位置に立たせてはおけないが、今回は状況が状況だ。

どちらかと言うと強く出れない苹果は、むしろアリーナ席の中にいた方が危険かもしれない。

 

「一夏。私が教えたことを全て活かせば、あんな奴に負ける道理などない。」

「ああ。ありがとな、箒。箒がいてくれたお陰でISの練習できた。正直助かったぜ。」

「うむ。このくらい当然の事だ。」

 

感謝されたのが嬉しかったのか、目に見えて機嫌が良くなる篠ノ之箒を尻目に、俺は一夏へと問いかける。

 

「一回戦目からツインテールが相手とは、幸先がいいな。一夏?」

「・・・・・そうだな。どうせなら鈴とは決勝で会いたかったけど、仕方がない。」

「そうそう。お前の言う通り、トーナメントの順番を嘆いても仕方が無いんだ。今回の試合、クラスメイトからの期待もかかってるぞ。」

「わかってる。」

 

ぐっと一夏の手が強く握られる。

気合を入れてやろうと思ったが、かえって肩に力が入ってしまった。

これはセリフの選択ミスだな。

 

「一夏。お前は前回の試合で宣言していたが・・・・・」

「ん?何のことだ?」

「クラス代表決定戦の。セシリア・オルコットとの戦いでの話だ。」

「あ、ああ。」

「織斑千冬の名を守るんだろ?なら、こんな所で負けてられないぜ。」

 

ニヤっと笑いかけてやると、はっとした表情になり今度は顔が引き締まる。

自分で発言した事には、責任を持たないとな?

 

「そうだな、そうだったな。俺は千冬姉の弟なんだ。無様な負け姿なんて見せられないぜ。」

「そうそう、その息だ一夏。まずはこの対抗戦(リーグマッチ)で1勝を勝ち取れ。」

「おう!今回の試合、勝つぜ!」

 

サムズアップをして見せ、眩しい笑顔を浮かべる一夏。

やっと緊張が抜けたのか、いつもの調子が戻ってきたな。

この試合はツインテールにとっても大切な試合なのだ。

どうせなら、万全の状態で双方悔いのないように争いあって欲しい。

途中で中断させられる事はわかっているから、それだけに少しやるせないが。

 

()()()()の事もあるしな。」

「そうだ、約束の意味って何なんだよ?箒や漣夏もわかってるみたいだけど・・・・」

「それはお前自身で気付かないとダメだ。本当にわからないなら、この勝負に勝って本人に教えてもらえ。それが一番手っ取り早い。」

「・・・・・よく意味がわからないが、どうせ俺は負けるつもりは無いからな。」

「まあ、自分でもよく考えてみることだな。だが、今は試合の方に集中しろ。」

「わかった。」

 

そう言って、一夏は白式を展開させる。

多少は慣れてはいるのだろうが、やはり展開にはまだ時間がかかっている。

試合の十数分前ということもあって、一夏はまだ白式を展開していなかった。

しかし、ツインテールの方は既にISを展開させてグラウンド内へ入っている。

機体を体に馴染ませるためか場の雰囲気を掴むためなのかは知らないが、とても集中しているように見えた。

なるほど、あいつが代表候補生なのも頷けなくはない。

俺のようにお遊びでやっている訳じゃないのは伝わってくる。

 

『凰鈴音さんの専用機は、甲龍(シェンロン)。織斑君のIS、白式と同じく、近接格闘型のISです。』

 

一夏が白式をまとったタイミングに合わせて開放回線(オープンチャンネル)で聞こえてきたのは、山田教諭の声だ。

事前情報として、ISの形や属性を知ることが出来るようになっている。

勿論、それ以外の事は実戦で対応しなければならない。

ここで知り得る情報が全てでないことは、一夏だってわかっているはずだ。

 

だが、ツインテールの専用機には知っていないと初見では防ぐことの難しいであろう空気砲もどきがある。

近接格闘型と言っておいて、中距離攻撃がメインなのはちょっと卑怯だとは思う。

しかし、これも奇襲という面での立派な戦術だ。

それがツインテールが意図していなかったとしてもな。

 

白式の眼前に、甲龍についての情報がウィンドウのように出現する。

そこには、山田教諭の話と同じような内容の浅い説明文しか書かれていない。

武器や特性の事はネットで調べるなり何なり出来たはずだが、一夏はどうやら相手の情報を何も知らないみたいだ。

これはいつか、早いうちに負けるな。

 

「固くなるな。練習の時と同じようにやればいい。それで勝てる。」

「私の時とは勝手が違いますわ。油断は禁物。わかりまして?」

「おう。」

 

一夏は、ゲート付近にあるグラウンドを写したディスプレイを見上げた。

そこには、一夏を待ち構えんと佇むツインテールの姿が映されている。

ツインテールが纏っているのは、情報にあった形と寸分も違わないIS。

しかし、ウィンドウで見たものよりも実物の方が何倍も屈強に、攻撃的に見えた。

事前情報にはなかった武器が、ツインテールの背中に背負われている。

見た目しか情報がないため、あれがどういう武器なのか一夏はまだ正しく理解出来ていないはずだ。

 

「あれで殴られたら、すげえ痛そうだな・・・・・」

「何呑気なこと言ってるんだ。全部避けるくらいの気持ちで行け。」

「そんな無茶な。」

「気持ちだ気持ち。まずは気持ちで勝たないと始まらないぞ。」

「それもそうだな。・・・・・じゃ、行ってくるぜ。」

「ああ。勝ってこい。」

「半年フリーパスは、一夏さんの手にかかっていますのよ。」

「負けたらグラウンドをうさぎ跳びで100周してもらうからな。」

「ハハハ・・・・それは勘弁してもらいたいな・・・・」

 

 

『それでは試合を開始します。両者、規定の位置まで移動してください。』

 

 

俺達の方のゲートも開き、アナウンスが流れる。

この調子なら、今回の試合に関しては大丈夫そうだな。

俺達観戦陣は、白式から何歩か下がって距離をとる。

それを確認した一夏は白式の推進装置を起動して、ゲートから飛び立った。

一夏を見送った俺は、踵を返してアリーナの入口へと向かう。

 

「じゃ、俺はアリーナ席へ行こうかな。」

「あれ?漣夏さんは、ここで観戦するんじゃないんですの?」

「いいや違う。俺は一夏をからかいついでに気合を入れに来ただけだ。」

「そうなんですの?残念ですわ。」

「でも、別にここにいてもいいのだろう?観客席まで戻る必要は無いだろう。」

 

残念そうに呟くセシリア・オルコット。

だが、その後篠ノ之箒がセシリア・オルコットへさりげなく助け舟を出す。

お前そんな気遣いもできたのか。

原作では別ヒロインといがみ合っているイメージしかなかったから、少し驚いた。

 

「アリーナ席側から試合を見たいだけだ。俺の事は気にするな。」

「そこまで言うなら、私は引き止めはしない。」

「ああ。じゃ、また後でな。」

「うむ。」

「はい。また後ほど。」

 

すぐに引き下がったようだが。

まあ、引き止められても何かしら理由をつけてアリーナ席まで行くつもりだったのでそれは有難い。

 

俺がクラス代表になれなかったことで、無人機の襲来は間違いなくあると思っていい。

もしクラス代表が変わっていても、無人機はやって来たのかもしれないが。

無人機事件の対処法だが、どこからかやってくる無人機を、アリーナへ侵入する前に俺が壊してやろうかなどの案も浮かんだ。

しかしこの事件の主犯も、目的ももうわかっているのだ。

別に防がなければならないものでもないため、もうそのまま勝手にやらせることにした。

その方が面白いしな。

 

そしてその時の俺の動きだが、どうせアリーナには一夏とツインテールしか入れないんだ。

ならばもういっそアリーナ席の生徒を守ることに徹する事にした。

無人機と戦ってみたくはあったが、まあ今回は運が無かったって事で諦めることにする。

この事件での怪我人は一夏だけだが、集団でパニックになると普通に危ないからな。

 

『今謝るなら、痛めつけるレベルを少し下げてあげてもいいわよ。』

『そんなのいらねえよ。全力で来い!』

 

開放回線で喋った内容は、繋げていればアリーナに常設されているスピーカーからも聞こえてくる。

そのため、アリーナ席に移動していた俺の耳にも届いていた。

 

確かに、ISの試合での規約では直接傷つけるのでなければ相手をいたぶったり痛めつけたりする事は出来る。

だが、それはどう考えてもモラルに反している。

あまり滅多な事は口に出さない方がいいぜ。

ここでは軽い脅しのつもりなんだろうが、揚げ足を取って楽しむ嫌味な奴らもいるからな。

 

『一応忠告しておくと、絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドを突破する攻撃力があれば、殺さない程度にいたぶる事は可能なの。』

『わかってる。』

 

一夏は、殴られるのを覚悟したのか、あるいは勝てる自信があるのか、厳かに呟いた。

零落白夜を使う一夏には、絶対防御の事を正しく把握してもらわないとならない。

だから、俺は絶対防御の事を何度も復習させている。

あれだけやれば流石に絶対防御の安全性も危険な所がある事をしっかりと覚えているはずだ。

一夏も、人を傷つけたり殺したくはないだろうしな。

 

会話の途切れに、アナウンスが入る。

 

 

『それでは、試合を開始してください。』

 

 

その言葉を皮切りに、二人が同時に動いた。

 

 

 




やっとアニメ版での第三話が終了しました。
えぇ、まだ3話目!?ひぇー......
二十何話も話が進んでいるのに、なんて思っていたらもう合計で三十話超えてました。
もう何なんでしょうね。
はい、私が設定を盛り込みすぎて風呂敷を畳むのに時間がかかったせいです。
本当に、申し訳ございません。
何話か前に、次の展開そろそろ行きますみたいな事書いてたのに。
この体たらくですよ。閑話書いてるの楽しかったです。

今回からストーリーが前進していきますよ。きっと。きっと.....
これからも、どうかお付き合い下さい。

次回は無人機くんがアリーナで暴れ回ります。
縦横無尽にのたうち回る無人機くんを乞うご期待。
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