SI -Second Irregular- 作:リンク切り
ありがとうございます!!ありがとうございます!!
今回の話はアレです。
「つくずく馬鹿な奴だな。起動時間など関係ない腕の違いだ!」
な感じの話です。
「白式の武器って、この雪片弐型だけなのか?」
俺は、雪片を起動して軽く振ってみる。
ISの筋力面の保護機能で、かなり重いであろう雪片は生身で持つ竹刀よりも軽く感じられた。
ちょっと前まで箒とは竹刀で訓練してきたために、昔の勘が少し戻ってきている。
これなら絶対に勝てるとは断言できないものの、勝負にすらならないなんてことはないだろう。
「私も、それだけで優勝した。その一振りだけで十分だ。」
俺の問に答えたのは千冬姉。
俺の実の姉だ。
漣夏が練習に付き合ってくれなくなってからは、箒と操縦訓練をしていた。
たまにセシリアに頼んで練習にも参加してもらってはいたが、数回だけだ。
毎日付き合ってもらうのも、なんか悪いしな。
それに、セシリアがいると箒が少し不機嫌になるんだよな。
一夏には私が教えるのだ、なんて言って追い払おうとするし。
そこで、俺は数日の間だけ千冬姉にコーチを頼むことにした。
ISの世界大会優勝まで行った人物なのだから、コーチとして不足という事はないだろう。
箒も、千冬姉ならばと納得したようで手を引いてくれた。
俺は千冬姉に箒と一緒に操縦を見てもらうつもりだったんだが、私はいいと一蹴されてしまった。
鈴もそうだが、箒も千冬姉の事は苦手だよな。
確かに、厳しいってのには同感だけど。
「世界大会の優勝者と一緒にされても、困るんだけどな・・・・・」
心からの本心だった。
だが、今思うと千冬姉は越えなければならない人だ。
無意識に、どこかで千冬姉には追いつけないと思っていたのだろうか。
いくら頑張っても追いつけないような気もする。だけど・・・・・
俺は強くなって、千冬姉も守りたい。
「大体お前のような素人が、射撃戦闘など出来るわけがないだろう。」
バシッと喝を入れるかにように、持っていた竹刀を叩き下ろす千冬姉。
弱気になっていた俺は、その音にびくっと反応した。
いつものように、出席簿で叩かれなかっただけマシか。
あれは本当に痛いからな・・・・・・
「反動制御、弾道予測から距離のとり方。一零停止。
それ以外にも、弾丸の特性、大気の状態、相手武装による相互影響を含めた思考戦闘。他にもあるぞ。出来るのか、お前に。」
う、うわあ・・・・・
セシリアは、こんなに多くの事を毎回考えながら戦っているのか?
そりゃあこんなに多くの戦略を考える事とイメージインターフェイスのビット兵器を四つ同時に動かす事を同時に行ってたら、ビットを動かしながら自分が動けないのも無理はないな。
俺には確かに射撃は無理そうだ。
「ごめんなさい・・・・・・」
俺は素直に謝った。
正直俺は、射撃やビーム兵器を使うことを軽く見ていた。
ただバンバン撃ってたらいいだけでは無いのはわかった。
勿論射撃訓練とかは必要だとは思っていたが、こんなに必要な知識が多いのか・・・・・
「お前には一つの事を極める方が向いてるのさ。なにせ、私の弟だ。」
俺の事など全てわかっている、というように俺にニヤッと笑いかける千冬姉。
千冬姉のそれは漣夏とは違う、慈しむかのような笑みだった。
そうだよな。器用貧乏になるよりは、そのほうが幾分かマシだ。
それに、千冬姉はこれと同じ条件で世界を取って見せたんだ。
俺にできない通理は無いぜ!
『鈴。』
『・・・・・何よ?』
『本気で行くぞ。』
『そんな事、当たり前じゃないっ!』
これまでずっと逃げに徹していた一夏が、動いた。
何かを決意したかのように試合を仕切り直す。
『それじゃ、格の違いってのを思い知らせてあげるわ!』
これまでと同じように、ツインテールが双天牙月を振り回した。
やはりその速度は速く、一夏は回避するのに精一杯だ。
今は零落白夜を使うタイミングではないと考えたのか、また距離をとり様子を伺う一夏。
先程と同じように避けてばかりだが、今度は明確な意思があっての回避行動だった。
距離を開けたことにより、またツインテールの龍咆が火を吹いた。
「織斑君、何かするつもりですね。」
山田教諭がボソリと呟く。
誰の目から見ても、今の一夏が何かを狙っているのは見て取れた。
その問いに答えたのは織斑千冬だった。
「
「瞬時加速、ですか?」
「そうだ。一瞬でトップスピード並のスピードを出して敵へと接近する奇襲攻撃だ。」
スラスターから放出したエネルギーをまた内部へと取り込み、圧縮。
そして再度放出する事で、文字通り一瞬のうちに加速する。
スラスターへ取り込むエネルギー量によって、速度を調節することも出来る。
しかし、その性質上途中で曲がることや止まることが出来ない。
織斑千冬が、IS世界大会で愛用していた技だ。
当時の織斑千冬が使用していた専用機『暮桜』には、武器が雪片しか積まれていない。
そのため、こちらの手札はかなり少ない状態だった。
その中の一つ、瞬時加速は、武器も事前の準備もいらず、スラスターさえあれば使える。
そして使い勝手もかなり良い。
織斑千冬の機体は、白式とほぼ同じ性能だ。
だからこそ、手札の少ない中でどういう戦術が組めるかを一番よく理解していた。
「出しどころさえ致命的に間違えなければ、あいつでも代表候補性と渡り合えるだろう。」
そう呟き、期待したような表情を浮かべながらディスプレイを見つめていた。
「しかし、通用するのは1回だけだ。」
所詮、奇襲は奇襲という事だ。
2度目はない。
距離を開けながら、龍咆を使わせる一夏。
セシリアとの闘いでビーム兵器の避け方を学んでいる一夏は、見えない砲弾をするすると躱していく。
衝撃波が当たらなくなったことに、ツインテールは焦り始めた。
「凄いですわ・・・・・一夏さん、砲弾が見えていますの?」
「いや、見えていないはずだ。」
「だったら、どうして・・・・・・」
そう考えるのも不自然ではない。
白式は最初の2発以外、一度も被弾していないのだ。
だが、一夏の様子を観察していれば違う事にすぐに気が付く。
一夏は、砲弾を見ようともしていなかった。
「避けられる原因は、凰の方にある。」
「凰さんの?」
「そうだ。凰は確かにISの操縦がそれなりに上手い。そしてブレードの扱い方も、棒術もかなりのものだろう。だが、砲撃を扱う技術はまだまだだった、という事だ。」
いくらISの性能が高くとも、操縦者が未熟だとその本領は発揮されない。
つまりは、ツインテール自身が龍咆を完全に活かせていなかった。
一言に砲撃と言っても、撃つためには考えなければならないことが山ほどある。
その中の、回避先の予測と着弾誤差の修正、そして射撃時間と到達時間の差異の把握。
ツインテールは、射撃に重要なこれらの技術が出来ていなかった。
「そうかもしれませんわ。ですが、それでも一つも砲撃が当たらないのは異常ですわ!」
少々ヒステリック気味に叫ぶセシリア・オルコット。
いやお前、どっちの味方なんだよ。
「確かに、そう何度も撃たれていたらいくつかは当たっても不思議はないな。」
「でしたら何故!?」
「織斑は、どこを狙われているかを予測して躱している。それだけの事だ。」
いくら砲弾や砲身が見えなくても、砲撃されるであろう場所を予測されてしまったら意味は無いのだ。
それに、空気砲が当たらなくなり焦るツインテールの砲撃は、段々と軌道が直線的になってきている。
一夏にとっては、どんどんと戦いやすい相手になってきていることだろう。
「なっ!?」
「あいつは二度の攻撃で凰の攻撃を見切り、どの辺りに攻撃が来るか見当をつけている。オルコット。お前にも覚えがあるだろう。」
思い返してみれば、確かにそうだ。
一夏さんとの初めての交戦の時、あの人は途中から私の攻撃をすべて読んで回避していた。
「私のブルー・ティアーズを初見でここまで耐えたのは貴方が初めてですわ。」なんて言っていたことを思い出す。
あの時は、「少しは手応えがありますわね」と思っていたのだが落ち着いて改めて考えてみれば明らかにおかしい。
ISに搭乗したのは2、3回目で、しかも試合で使用した専用機が来たのは試合のほぼ直前。
それに、私もまだまだビット兵器の操作は上手いとは言えないものの代表候補生だ。
自分でもそれなりに射撃の腕もある方だと思っている。
そんな相手の射撃を、初心者があんなに完璧に回避出来るはずがない。
漣夏さんの、全てにおいて完璧な天才だけ目立って隠れてはいたが、一夏さんの対応力もおかしい。
いくら砲撃が下手でも、二度、三度見ただけで射撃の軌道予測など、到底できるとは思えなかった。
やはり、彼は織斑千冬の弟なのだろう。
「世界には、そういう奴らがごろごろいる。覚えておけ。」
「わ、わかりましたわ・・・・・」
これは、ただの生粋の才能だ。
習得するものでも、盗み取ることも出来ない。
これまでは、羨望とは自分が受けるものだと思っていた。
庶民の、ただの悲観だと。そう思っていた。
まさか人の才能を羨む日が来るなんて。
『っ・・・・・・ちょこまかとっ!』
ディスプレイの先の、ツインテールが苛立たし気に荒い声を上げる。
龍咆を一夏へと打ち続けるがやはり当たらない。
完全に一夏のペースに飲まれているツインテールはさらに焦る。
一夏が使っている操縦技術の名称は、
これはセシリア・オルコットに享受してもらった技であり、これが勝負の決め手のきっかけとなった。
旋回する白式のスピードは相当早く、とうとうそのスピードにツインテールの反応が追いつけなくなったのだ。
『ここだッ!』
『!?』
一夏はツインテールの背後に回り、雪片を構える。
ツインテールが振り向こうとするが、防御に双天牙月が間に合わない。
龍咆には死角が無いが、それを使いこなせるかは別問題だ。
ここで正しく衝撃砲を放つことが出来れば、また結果は変わっただろう。
ツインテールは、咄嗟の判断で致命的な隙を見せた。
その一瞬は、一夏に零落白夜を使わせるには十分すぎる時間だった。
これは勝負がついたな。
瞬時加速を使うため、一夏がシールドエネルギーを放出しようとしたその瞬間。
スバァァアアアン!!
遮断シールドがぶち抜かれた。
無人機くんきました。でもまだ姿が現れていませんね。
という事で、無人機くんの登場は次回に持ち越しです。
次回こそ、次回こそ!無人機くんが出現します。
クロスグリットターンって使い方これで合ってるのでしょうか。
どういう操縦技術なのか軽く検索してみましたが有力な情報は得られませんでした。
なんだよこの技。
三次元で跳動する旋回ですね、わかりません。
ちなみに今回のサブタイトルの奇襲は、瞬時加速と無人機のビーム、両方のことを言っています。
なかなか上手なタイトルですね。